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米Mozilla、次世代レイアウトエンジン「Servo」を韓国Samsungと共同開発

 米Mozillaは3日、次世代コンピューティング環境で最適なウェブブラウザーレイアウトエンジン「Servo」と開発言語「Rust」を、韓国Samsungと共同でAndroidとARMに移植、開発する計画を発表した。

 プロジェクトはまだ初期段階にあり、即座に利用できるわけではない。Samsungとの提携により、Servoのモバイル、マルチコア環境での可能性を検討できるようになる。

 発表はMozilla公式ブログにてMozilla CTOのBrendan Eich氏が行った。発表文によれば、「Servoは、過去の前提条件を見直し、モダンなハードウェア上で、根本からウェブブラウザーを再構築しようとする試みだ。ウェブ上で新しい、より豊かな体験を可能にするために、将来の超並列ハードウェアの性能を十分に活用できるプラットフォームを設計しながら、同時にセキュリティ脆弱性の原因にも対処していく」と説明している。“将来のハードウェア”の具体的な内容としては、「高速化、マルチコア、ヘテロジニアスコンピューティング・アーキテクチャ」が挙げられている。

 Mozillaの研究部門であるMozilla Researchでは、Servoの開発に数カ月間から取り組んできた。とくに秘密のプロジェクトというわけではなく、あくまでも実験的プロジェクトとして認識されていた。それが、急遽Mozillaのレイアウトエンジンとして昇格する計画が持ち上がったことになる。

 Servoは、独自言語「Rust」によって開発される。Eich氏はその特長として、「効率的なハイレベル、マルチパラダイム抽象化、ハードウェアリソースの正確な制御」、また「クラッシュやセキュリティの脆弱性につながるようなメモリ管理エラーを防ぐため『デフォルトで安全』」であり、「軽量な並行処理プリミティブ」によって、「現在および将来のコンピューティング・プラットフォームで提供されている多数のCPUコアのパワーを、プログラマが簡単に活用できるようになる」、と説明している。Rustは現在バージョン0.6がGithubにて公開されている。

 Mozillaの計画では、この1年をかけてRustの最初のメジャーバージョンを完成させると同時に、レイアウトエンジンServoの開発も進めていく。いずれのプロジェクトもアーリーステージ(初期段階)にあるため、即座にMozillaのウェブブラウザーでServoが採用されるといった話ではない。

 ウェブブラウザーのレイアウトエンジンをめぐっては、最近様々な動きがある。これまでのメジャーなレイアウトエンジンとしては、ChromeとSafariがWebKitを、Mozilla FirefoxはGecko、Internet ExplorerはTridentを使用している。Operaは、シェアは小さいながら独自レイアウトエンジンPrestoを採用していたが、最近それを破棄、ChromeやSafariと同じWebKit採用を発表したばかりだ。

 WebKitに収束していくかに見えた流れの中、今回Mozillaの「Servo」開発計画が発表された。また、このServo計画と同日、米GoogleはWebKitをフォークし、「独自」のレイアウトエンジン「Blink」を開発すると発表した。ウェブブラウザーレイアウトエンジンがWebKitに収束してしまう危険が叫ばれていた中で、にわかに動きが見え始めている。

 一方、「Servo」を共同開発するパートナーとして発表されたSamsungの役割および戦略については、まだ多くは明らかになっていない。現時点でのMozillaとの具体的協力関係に関して言えば、RustのARMバックエンドを提供したことと、Androidへクロスコンパイルするためのビルドインフラを提供したことなどが挙げられているのみだ。

 SamsungはAndroidスマートフォン製品で知られているが、そのほかにもWindows Phoneスマートフォンも販売している。その上で、独自のスマートフォンOS「Bada」の開発、またインテルと共同開発しているHTML5ベースの「Tizen」開発も行う。Samsungが今後、Servoをどのように位置付けていくかはまだ不明だ。

(青木 大我 taiga@scientist.com)