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NTT、2025年ごろに固定電話をPSTNからIP網に移行、電話機やメタルケーブルはそのままでユーザー負担少なく

 日本電信電話株式会社(NTT)は6日、固定電話で使用しているPSTN(Public Switched Telephone Network=公衆交換電話網)からIP網への移行について、同社案を公開した。

 NTTでは、中継/信号交換機の老朽化および製造終了にともない、2020年ごろから2025年にかけて、順次PSTNからIP網への移行を予定している。ただし、IP網への移行といっても各家庭において機器の追加や工事は不要としており、ユーザーが使用している電話機はそのまま維持できるようにするという。また、加入者交換機をメタル収容装置として活用し、メタルケーブルは継続利用する。

 基本的な音声通話のほか、ISDNの通話モード、キャッチホン、ナンバーディスプレイ、公衆電話など、基本的な音声サービスは継続して提供する。基本料金は可能な限り現状と同等水準を維持。通話料は、IP網のメリットを活かし、より安価になるとしている。

 PSTN特有の機能は一部見直される。NTT東西経由で接続しているハブ機能を廃止し、主要事業者間は直接接続に移行する。また、優先接続機能(マイライン)/中継選択機能は実装されないほか、公衆電話から携帯電話などへの通話における事業者ごとの料金設定機能を、事業者一律に変更。NTT東西から他事業者への「片方向型番号ポータビリティ」は、携帯電話と同様「双方向型番号ポータビリティ」に移行する。110番や119番などの緊急通報にかかわる「回線保留機能」は、携帯電話やIP電話発信時と同じく「コールバック」で対応する。

主なPSTN特有の機能の見直し
PSTNからIP網への移行

 また、固定電話の提供方法もできる限り効率化するとしている。具体例として、自治体からの要請による無電柱化(ケーブルの地中化)などを行う際に、メタルケーブルを再敷設せず、光回線や無線での提供を行うという。また、固定電話に求められてきた遅延条件などの通話品質基準を、携帯電話並みに見直す。

 なお、NTTでは2010年11月に固定電話のIP網への移行に関する展望を公表していた。今回発表された案では、PSTN特有の機能の扱いなど、より細かな移行について言及している。ただし、今回の案も実際に決定した事項ではなく、関係事業者との対応なども踏まえて引き続き議論していくものだとしている。また、NTTの「思い」として、ユーザーへの負担が極力少なく移行できるよう検討していくという。

 NTTは固定電話回線の見直しの背景として、設備の老朽化以外にも、スマートフォンなどのモバイル環境、ブロードバンドネットワークの進展により、ソーシャルメディアや通話アプリなど、コミュニケーション手段が多様化していることを挙げ、固定電話のプレゼンスが大きく下がっていると説明。実際、2000年度末には6200万回線あった固定電話も、2014年度末には2400万回線に減少している。また、1日あたりの平均利用時間も、メール、ソーシャルメディアが20分を超えている一方、固定電話は1.7分と大きく差が開いている。

音声通話を取り巻く環境変化

(山川 晶之)