編集部コラム
IIJの皆さんと「掘り下げると長くなるネットの疑問~IIJに聞きました」という連載を始めます
2025年7月9日 07:30
インターネットが一般に普及し始めてから、約30年。さまざまな新技術や新サービスが登場し、インターネットは大きく進化・変化してきました。
そうした中で、昔からインターネットの進化を見てきた世代と、物心がついたときには「進化したインターネット」があった若い世代との間で、「インターネット観」とでも呼ぶべき認識のギャップが大きくなっているように感じられます。
これは、技術的な知識がある/ないというだけの話だけではありません。
たとえば、今の30〜40代は、多感な年齢のときに「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」の影響を強く受けた世代だとしましょう。対して、普及初期からインターネットを使い続けていた50代以上には、それらは新興サービスの1つ、一過性の流行だ、といった感覚を持つ人も少なくありません。一方で10〜20代の人たちは、LINE、YouTube、Instagram、TikTokなどの、より新しいサービスにはじめから触れており、インターネットを、それよりも上の世代とはだいぶ違うものとして受け止めているでしょう。
企画のきっかけは、ライターの松永さん(20代)との雑談で、「この時代にも有線LANが存在していることに、いまだにちょっと納得が行っていない」という話が出たことでした。もちろん、有線LANを知らないとか、用途が分からないとかいうことではありません。インターネットを使い始めたときから高速で安定したWi-Fiがあり、身の回りのデバイスはみんなWi-Fi接続で使っている中で、有線LANの存在意義について、いまひとつピンと来ないところがある、ということです。
無線LAN初期の不安定さを経験し、有線でつなげられるものは有線で、という感覚が染み付いている50代の私とは全く違う感覚であることに、興味深いな、と思いました。
「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない」という言葉がありますが、人により「これがインターネットか」と思う体験が異なれば、当然、形成される「インターネット観」も異なってきます。世代によるインターネット観のズレは、今後もどんどん大きくなっていくのでしょう。では、そこを少しでも埋め、世代を超えた共通認識や共通言語を作ることはできないでしょうか……?
そう考えたとき、日本の商用インターネット黎明期から今日まで、個人・法人の幅広いユーザー層に向けてさまざまなサービスを提供してきた、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)の皆さんにお話を聞いたら、面白いのではないかなと思いました。
各種サービスを通し、ユーザーと向き合い続けているIIJのスタッフの方と会話する中で、互いの認識や感覚の違いを知り、すり合わせていくことができたら、ただ教わったり調べたりするだけよりも、より「深み」のある結論にたどり着けるのではないかなと思い、企画を提案し、承諾していただきました。「掘り下げると長くなるネットの疑問~IIJに聞きました」は、第1回を本日公開し、ひとまずシーズン1として全5回(不定期)を予定しています。
本企画の取材は、3月末から始めました。そして、「パスワード」をテーマにした取材(第2回として公開予定)を4月6日に行い、「最近ではゼロデイ攻撃にも注意する必要があります」といったお話を伺ったのですが、その直後、IIJのサービスで情報流出の可能性があることが明らかになり、後日の発表によって、原因は第三者によって開発されたソフトウェアへのゼロデイ攻撃だったことが明らかになりました。これには、驚きで、本当に言葉になりませんでした。
このインシデントにより取材も中断していましたが、IIJ広報チームの皆さんに尽力いただいて再開でき、記事の公開にこぎつけることができました。そんな裏話もある第2回を含め、皆様にお楽しみいただければ幸いです。