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Google、西陣織や京薩摩などの工芸品を高品質な写真と解説で紹介、「Made in Japan:日本の匠」プロジェクト始動

 グーグル株式会社は26日、世界の博物館や美術館の展示・コレクションをデジタルアーカイブ化して公開する「Google Cultural Institute」において、日本の工芸作品を紹介する「Made In Japan:日本の匠プロジェクト」を開始した。

 Google Cultural Instituteには、メトロポリタン美術館やオルセー美術館、東京国立博物館など、世界各地の美術館や博物館1000施設以上が参加しており、600万点を超える美術作品や歴史的文献を閲覧できる。

 新たに開始したMade In Japan:日本の匠プロジェクトは、青森県観光国際戦略局観光企画課、秋田県産業労働部地域産業振興課、伊勢半本店紅ミュージアム、仙台観光国際協会、立花家史料館、立命館大学アート・リサーチセンターの6施設とのパートナーシップのもと、西陣織や京薩摩、九谷焼、輪島塗など日本の工芸品82種をオンラインで展示するもの。工芸作品を高画質の画像で鑑賞できるほか、それらにまつわる歴史や制作過程も見ることができる。また、サイト内に表示された日本地図からも、工芸を紹介したオンライン展示を閲覧できる。日本語と英語で提供されるため、日本文化に関心のある海外のユーザーも楽しめるとしている。

英語による解説を見ることもできる。
スマートフォンやタブレットに合わせたレイアウトで閲覧可能。
「Made in Japan:日本の匠」掲出工芸品リスト 27都府県82種
青森県こぎん刺し、津軽塗、南部裂織、ブナコ、あけび蔓細工、津軽金山焼、
八幡馬、きみがらスリッパ
秋田県川連漆器、樺細工、大舘曲げわっぱ
宮城県堤焼乾馬窯、仙台箪笥、玉虫塗
山形県深山和紙、月山和紙
新潟県越後門出和紙
石川県珠洲焼、山中漆器、九谷焼、輪島塗、大樋焼
富山県悠久紙
群馬県木工芸
栃木県栃木 竹工芸、益子焼
埼玉県江戸蒔絵、盆栽
東京都自在置物、江戸指物、江戸からかみ、江戸結桶、和更紗、紅
神奈川県箱根寄木細工、日本の甲冑、日本の組紐
静岡県駿河竹千筋細工
愛知県瀬戸焼、常滑焼
三重県伊勢型紙、伊賀焼
岐阜県美濃焼
京都府京焼、朝日焼、和鏡、京友禅(手描き)、京友禅 《型友禅》、西陣織、京つげ櫛、
花かんざし、黒谷和紙、京漆器、京唐紙、京薩摩、京繍、印籠、京七宝、芝山象嵌
大阪府堺 竹工芸
奈良県赤膚焼、奈良墨
滋賀県信楽焼
兵庫県丹波焼、出石焼、赤穂緞通、日本刀
広島県宮島御砂焼、熊野筆
岡山県備前刀
香川県讃岐かがり手まり
山口県萩焼
福岡県日本の線香花火、蒲池焼、明治時代の有田焼、加茂人形、雛調度、蒔絵盃、
小笠原流折形、芦屋釜
熊本県肥後鐔、山鹿灯籠
カルチュアルインスティテュート統括責任者のアミッド・スード氏

 カルチュアルインスティテュートの統括責任者であるアミッド・スード氏は、同プロジェクトについて「啓蒙・教育活動として始めたため、長い目で取りかかるもの」と述べた。工芸品に関する正しい知識を提供することを重要視しており、作品の背景にあるストーリーなども伝えたいという。

 Googleストラテジックパートナーマネージャーの山崎志信氏は、「日本の隠れた工芸品や地域の良さに目を向けてもらうことが重要」と述べ、現時点で掲載されていない地方、工芸品を今後も追加することで、プラットフォームを充実させていくとした。

 京都女子大学の前崎信也准教授は、「日本の工芸品はこれまで高品質の写真が提供されていない状況だった。製品の写真がある場合でも制作過程の分かるサイトがなかった。今回注目しているのは、綺麗な画像を作るということ。最終的にどのようなプロセスや材料を使っているか簡単に分かるように取り組んできた」と述べた。プロジェクトは昨年夏に始まっており、プロのカメラマンによって300枚程度が新しく撮り下ろされ、全体で900枚程度をそろえた。

 英語による解説にも対応しているが、「海外に工芸品の情報を発信する上で、専門用語を正確に伝えることは困難だった」という。しかし、プロの翻訳家に依頼した後、京都国立博物館で英語の監修をしている担当者が確認することで“博物館クオリティ”に仕上げることができたという。「存在のあまり知られていない、小さな地域の工芸品などにも対応するようにしている。地域ごとのステレオタイプなものに絞ると作品の広がりが失われるため、専門のライターにも依頼して新しい物を取り入れた。このように、日本の工芸品を残していきたいと思っている人達が多く集まったことで公開することができた」と締めくくった。

(磯谷 智仁)