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魔法のようにウェブやアプリのUI/UXをデザインできるプロトタイピグツール「Adobe Experience Design」、ベータ版を無償公開
(2016/3/15 20:32)
米Adobe Systemsは14日、UI/UX向けプロトタイピングツール「Adobe Experience Design CC(Adobe Xd)」のベータ版をAdobe ID(無料で作成可能)登録ユーザーに公開した。Mac OS X 10.10以降で利用可能。15日には、アドビシステムズ株式会社がメディア向け説明会を開催し、その主な機能・特徴を紹介した。
Adobe Xdは、ウェブサイトやアプリのUI/UXをインターフェイスデザインからプロトタイピングまでオールインワンで提供するツール。「Adobe MAX 2015」で「Project Comet」として紹介されたプロジェクトの製品版となる。これまで複数のツールを組み合わせて作ることの多かったUI/UXのデザイン作業を一貫して行えるだけでなく、修正が発生した場合の時間・手間を低減する。
ソフトを起動したら、まず「iPhone」「iPad」「Web」「カスタムサイズ」の4つから作成するデザインのサイズを選択する。利用頻度の高いUIも各OS別にまとめられており、必要な物をコピーするだけでデザイン可能。また、チュートリアルを兼ねたサンプルデータもあり、UIデザインの基礎がなくてもUIを組み立てていくことができる。
Adobe Xdには、「デザイン」と「プロトタイプ」の2つのモードが存在する。デザインモードでは、UIや構成する画面のデザインを行う。画面の追加はスムーズで、iPadやApple Watchなどサイズの異なる画面をアートボードに展開可能。PhotoshopやIllustratorで作成した素材を取り込めるほか、矩形ツールや円形ツールなどが実装されており、必要なUIアイテムをAdobe Xd上で作成できる。Ai形式やSVG形式などのベクターファイルはパスの編集も行える。
また、検索結果などで表示される文字など、同じデザインで複数のアイテムを配置する場合に、1つのアイテムから複製する「リピートグリッド」を搭載する。コピーしたアイテムは「プロパティ」と「コンテンツ」に属性が分かれており、間隔調整やアイコンの位置などは1つのアイテムを調整するだけで、コピーしたすべてのアイテムに反映される。文字や画像などのコンテンツは、コピーしたものを含めて独立しており、個別に編集することができる。
プロトタイプモードは、作成したUIや画面デザインの推移を設定する。例えば、「このボタンを押したら指定したページにジャンプする」といった設定を行う場合、ボタンから伸びた青い線を該当のページに接続するだけで完了する。その際、画面のスライドする方向、イージングの設定、移動時間などを細かく指定できる。ウェブ、iOS、Androidそれぞれに最適化した画像のエクスポート機能も備える。
完成したデザインは、プレビューで動きを確認可能。デザインを共有することもでき、タイトルとアイコンを付けてAdobeのサーバーにホストするとリンクを生成する。ユーザーはメールやSNSなどでリンクを共有でき、受信側はウェブブラウザーで確認可能。スマートフォンで閲覧すれば、実体験に近い動きをチェックできる。また、修正が必要な場合はAdobe Xd上で修正し、再度アップロードしてリンクを再取得すればすぐに反映される。
InVisionなど既存のプロトタイピングツールのパイを奪うことは考えていない
プロトタイピングツールとしては「InVision」や「Prott」など、すでにスマートフォンのUI/UXを直感的に作り上げることができるツールが存在する。Adobe Xdにも似た所があるが、決定的な違いは、デザイン制作からプロトタイピング、データ共有まで1つのソフトウェア上で実現してしまう一貫性と手軽さ、ほかのAdobe製ソフトとの連携にある。
轟氏によると、既存のプロトタイピングツールと、Adobe Xdとはパイを食い合わないように展開したいと考えているという。Adobe Xdは、「パワーポイントが使えればすぐに使える」ぐらいに初心者でも使いやすく設計されており“UXデザイン”の間口を広げる目的がある。すでにInVisionなどを使用しているユーザーは、Adobe Xdと使い勝手を比べてもらい、使いやすい方を選んで欲しいとしている。
Windows版を含む正式バージョンは年内リリースを予定している。今回リリースしたベータ版は、機能も限定的でUIもシンプルなものになっているが、毎月アップデートを提供することで機能追加を行う予定。また、ベータ版ユーザーからのフィードバックを受けて改良を実施する。4月には、Adobe Xd開発チームが来日し、日本ユーザーの要望をヒアリングする予定だ。