レビュー
安いのにUSBポート付き、メッシュもできて9千円のWi-Fi 6ルーター「RT-AX1800U」が登場
通信速度や範囲も優秀。Wi-Fi 6を手軽に安心して導入できる1台
2023年4月7日 06:55
安価なWi-Fi 6対応Wi-Fiルーターに新モデル
ASUSがWi-Fi 6対応ルーターの新機種「RT-AX1800U」を発売した。エントリーモデルに位置する製品で、安価にWi-Fi 6の環境を導入できる。実売価格は9千円前後だ。
同社のエントリーモデルには、以前から「RT-AX55」という機種がある。本機と似通ったスペックで、代替わりと言えなくもないのだが、違う部分もいくつかある。その辺りも踏まえつつ、実機で検証していく。
エントリーモデルながらUSBポートを搭載
まずはスペックを確認しよう。参考として「RT-AX55」のスペックも併記する。
RT-AX1800U | RT-AX55 | |
CPU | MediaTek MTK7621A(デュアルコア、880MHz) | Broadcom BCM6755(クワッドコア、1.5GHz) |
メモリ | 256MB | ← |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6 | ← |
最大速度(2.4GHz帯) | 574Mbps | ← |
最大速度(5GHz帯) | 1201Mbps | ← |
Wi-Fiストリーム数 | 2×2(5GHz帯)、2×2(2.4GHz帯) | ← |
WAN | 1000BASE-T×1 | ← |
LAN | 1000BASE-T×3 | 1000BASE-T×4 |
USB | USB 2.0×1 | なし |
Wi-Fi 6対応ルーターで、5GHz帯での最大速度は1201Mbps。有線LANはWAN/LANとも1000BASE-Tで、LAN側は3ポートとなる。
CPUはデュアルコアのMediaTek MTK7621Aを採用し、メモリは256MB。この辺りのスペックも確かにエントリークラス並だ。ただ同社はこういったスペックを、上から下まで全てのモデルで包み隠さず公開しており、好感が持てる。
同じエントリーモデルの「RT-AX55」と比較すると、CPUが全く違うものになっている。コア数やクロックだけ見るとグレードダウンに見えるが、CPUメーカーから違うので単純比較はできない。ASUSではこれまでBroadcomのCPUを採用してきたこともあるので、ここは後ほど実機の性能を見ていきたい。
ほかにはLANポートの数と、USBポートの有無で違いがある。
USBポートを使いたいなら「RT-AX1800U」、有線LANポートが4基欲しいなら「RT-AX55」という見方もできる。USBポートは、USB 2.0なので最大速度は480Mbpsだが、USBストレージを接続してNASを作ったり、プリンタを接続してネットワークプリンタにしたり、USBモデムやスマートフォンなどを接続してインターネット接続回線にしたりといったことが可能だ。
平置き筐体に4本のアンテナを搭載
続いて「RT-AX1800U」の外見を見ていく。筐体は平置きが基本の平らな形状で、サイズは190×126mmと同社のWi-Fiルーターの中ではコンパクト。底面には壁掛けできそうな十字の穴もある。色は全面ブラックで統一されている。
4本の外部アンテナを備えており、本体後方に2本、左右に1本ずつの配置。アンテナの向きは調整可能で、直立時は高さ188mm。安価な製品の割には長いアンテナを4本装備しているのを、電波が飛びそうで安心感があると見るか、どうしても場所を取るので邪魔と見るかは、ユーザーの環境次第だろう。なお「RT-AX55」は本体後方に4本のアンテナが並ぶ形なので、スペックは近くとも見た目は完全に別物だ。
端子やスイッチは全て背面にまとめられている。配置も横1列とシンプルで、接続に悩むことはないだろう。ACアダプターもコンパクトで場所を取らない。
セキュリティ機能などソフトウェア周りも充実
本機はエントリーモデルながら、同社のWi-Fiルーターに搭載されている多くの機能を受け継いでいる。
セキュリティ関連では、トレンドマイクロとの協業による「AiProtection」を搭載。悪質サイトへの接続をブロックしたり、ウイルス感染したデバイスを通信を阻止するなどの機能を有する。セキュリティ対策はPCなど端末側でも行っていると思うが、ウイルスやフィッシング詐欺などに触れる機会を減らせるため、安全性は確実に増す。
また子どもが使用する端末を時間で区切って通信制限するペアレンタルコントロール機能も搭載。PCやスマートフォンのみならず、ゲーム機やIoT機器などインターネットに接続する機器の通信なら何でも制御できるので、「この時間はオンラインゲームは禁止」といった制限をかけられる(通信を必要としないアプリケーションは動作するが)。
ほかにもゲスト用のWi-Fiを用意する機能や、トラブル時に原因を探れるネットワーク診断機能など、多彩な機能が用意されている。ポート開放など一般的なWi-Fiルーターにも搭載されている機能はもちろん使える。
なお、普及モデルであるだけに、一部省かれている機能もある。具体的には、2.4GHz帯と5GHz帯を自動で振り分ける「スマートコネクト」や特定の通信種別を優先させる「Adaptive QoS」がある。これらの機能が必要なら、上位モデルを選ぶことになるだろう。
Wi-Fiルーターを後からメッシュ化できる「AiMesh」も搭載
機能面で大事な点をもう1つ。本機は同社のWi-Fiルーターと組み合わせてメッシュネットワークを構築する「AiMesh」を搭載している。
メッシュ対応のWi-Fiルーターは、2台セットの高価なものが多いが、同社の製品はほぼ全てのWi-Fiルーターが「AiMesh」に対応しているため、あえて「メッシュ用」の製品を選ぶ必要がない。
これは特にエントリークラスの製品では価値がある。例えば「試しにWi-Fiルーターを導入してみたが、家の遠い場所ではWi-Fi接続が不安定」ということは起こりうる。そんな時に、普通ならメッシュ対応製品をイチから購入し直すことになるが、本機であればもう1台買い足すことで対応できる。
「AiMesh」は対応機器であれば相互に接続可能なので、同じ製品を揃える必要もない。例えば既に「AiMesh」対応製品を持っていて、より広い家に転居した際にWi-Fiの範囲が物足りなくなったら、本機のような安価な製品を導入して「AiMesh」を使うことで、簡単にWi-Fiの範囲を広げられる。
設定もスマートフォンアプリ「ASUS Router」だけで完結できる。ハード・ソフトともに導入が簡単で、なおかつ低コストで済むというのがのメリットだ。
十分に広い通信範囲を確保
次にiperf3を使ってWi-Fi接続の通信速度をテストする。子機となるPCは80MHz幅の1201Mbpsで接続。通信相手は1Gbpsで有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。5GHz帯の制御チャンネルは120に設定。アンテナは全て直立で使用した。
\ | 上り | 下り |
近距離 | 704.1 | 756.9 |
遠距離 | 23.5 | 78.2 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
近距離での通信は上り下りともに700Mbps台となった。1Gbpsの有線接続端末に対して、リンク速度が1201Mbpsで実効速度が700Mbpsを超えているのは良好な値で、エントリークラスであることを考えればかなり優秀と言える。
遠距離でも速度は落ちながらも接続が切れるようなことはなく、安定して通信できていた。リンク速度が2402Mbpsになる上位機種でも同環境では良くて下り100Mbps程度で、1201Mbpsであることを加味すれば、これもやはり優秀な値だ。
今回はテストとしてワーストケースの設置場所を想定しているが、家の中央付近に置けば、本機だけで家中カバーできそうだ。1人暮らしのワンルームなどであれば、電波が届かない場所はほぼないはずだ。
Wi-Fi 6を始めたいならとりあえず試して間違いない1台
本機はエントリークラスのWi-Fiルーターとして、何ら不満のない性能を発揮している。新たにWi-Fi環境を導入したいとか、Wi-Fi 5以前の環境からアップグレードしたいというニーズには、本機で十分に答えられる。
またエントリークラスでありながらUSBポートを搭載しているのは、本機の特徴と言える。簡易なNASやプリンタサーバーなど、意外と便利な機能が使えるので、Wi-Fiルーターの製品選びの際にはUSBポートや機能についてチェックしておくのがいい。
安価な製品だと、通信や動作が不安定なのではないかとか、Wi-Fiの電波が飛ばないのではないかといった不安があるものだ。本機に関しては、少なくともスペック表記を裏切るようなことはなく、通信範囲も上位機種と変わらないほど優秀だ。
スマートフォンアプリ「ASUS Router」による設定もとても簡単で、ネットワークに詳しくない人も安心して使える。安価でも確実に使えて、なおかつ機能面にもこだわりたいという人も含め、「迷ったらとりあえずこれ」と言える1台だ。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)