特集

定着してきた「オンライン記者会見」、新型コロナ禍1ヵ月で見えてきた工夫と課題

「午前中」開催や「50分ルール」も定着?

オンラインの会見/イベントまで中止・延期の動きあり「完全在宅勤務」では準備困難?

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、とどまるところを知らない。それに伴い、企業の記者会見やイベント開催への対応も、さらにもう一歩踏み込まざるを得ないところまで来ている。

オンラインによるバーチャルイベントとして5月に開催予定だった「Dell Technologies World」は10月に延期となった

 本誌で2月27日に掲載した『新型コロナウイルス対策、各社の「記者会見」はどう対応しているのか?』では、リアルの場での記者会見が続々と中止になっていることを示した。そして、3月13日に掲載した『「新型コロナのある社会」に適応しつつある「記者会見」の現場事情、「増えるオンライン会見」で変わるものとは?』では、オンライン会見が増加していることを報告した。だが、そこから約3週間を経過し、事態はさらに深刻化し、各社の対応はさらに変化しようとしている。

 というのも、オンライン会見そのものを中止するという動きが始まってきたからだ。

 米国に本社を持つあるIT企業は、4月8日にオンライン会見を開催しようとしていたが、会見延期を決定した通知を4月2日に配信した。理由は、新型コロナウイルス感染者の急増に対する予防措置として、4月6日から12日まで国内の日本法人本社を含む全てのオフィスを閉鎖し、在宅で業務をすることを決定したためだ。在宅勤務では、オンライン会見を開催する準備ができないという判断だったのだろう。

 一方、今年5月に米ラスベガスで年次イベント「Dell Technologies World」をオンラインによるバーチャルイベントに変更して開催すると発表していた米Dell Technologiesは、オンラインイベントのまま、今年10月に延期することを発表した。米国内での感染拡大により、オンラインイベントの開催も、その準備に支障が出ること、登壇者およびスタッフが現場に集まれば、そこにも感染拡大のリスクがあると判断したからだろう。

 このように、オンラインの記者会見やイベントでさえも、中止や延期という動きが出てきているのだ。

 実際、米国に本社を置く企業を中心に、オフィスに立ち入ることすらも禁止する「完全在宅勤務」の動きが加速している。ある米国のIT企業では、2月25日という早いタイミングからオフィスへの出社を全面的に禁止し、しかも、そのルールを同じタイミングで日本や韓国の現地オフィスにも適用した例があった。

 ここにきて、そうした動きが一気に広がっている。社会への影響や反応を懸念して、プレスリリースによる新製品発表さえも控えるようにといった通達が、米本社から行われている企業もある。

 日本でも3月30日以降、「原則在宅勤務」とする企業が増加。取材が中止になった例もあった。本誌を発行するインプレスでも同様の措置が取られているほか、多くの編集部で同様の動きが見られている。

 ⼿元の⼿帳で、4⽉6⽇の週に⾏われるオンライン会⾒は4件。それにイベント取材が3件ある。そして、もはやリアルの場での会⾒は、4⽉に⼊ってからは1件も予定されてい ない。4月7日に、政府が非常事態宣言を発令することで、今後はオンライン会見でさえも減る可能性がある。

 ちなみに個人的な動きとしては、リアルの場での単独取材は、4月3日まで毎日のように設定されていたが、今週以降の予定はない。

 各社の記者会見やイベント、単独取材への対応フェーズは、もう一段、進んだと言っていいだろう。

 東京都では、1日の感染者数が100人を突破する状況となり、小池百合子都知事の会見が毎日のように行われているが、その会⾒場に集まる記者のことも、そろそろ考えた⽅がいいかもしれない。すでにYoutubeを利用したメッセージの発信も行っているが、オンラインを活⽤した会⾒も可能ではないだろうか。

オンライン会見で用いるツールは「Zoom」が最多次いで「YouTube」や「Microsoft Teams」

 IT/エレクトロニクス業界における、この1カ月の記者会見およびイベント取材の状況を振り返ってみよう。

自宅からオンライン会見に参加している様子

 手元の手帳をもとに集計すると、今年3月2日~4月3日に、ちょうど30件のオンライン会見やオンラインでのイベント取材が行われた。これに、リアルだけで行われた3件の会見を加えると、合計では33件だ。

 これに対して、2019年3月4日~4月5日の期間を集計してみると、79件の会見やイベントが行われており、前年に比べて半減以下になった格好だ。

 オンライン会見のうち、4件が現場への参加も可能にしたリアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド型会見であり、残りの26件がオンラインだけでの会見であった。

 ちなみに、この26件のうち、社長自らが出席したオンライン会見は7件あった。

 その1人であるセイコーエプソンの碓井稔社長(4月1日から会長に就任)は、「聞いている記者の反応をじかに聞きたかったというのが正直な気持ちだが、しっかりと説明ができ、いいシステムだと思う」とコメント。同じく小川恭範取締役常務執行役員(4月1日から社長に就任)は、「対面でやるのとは、かなり雰囲気が違い、反応が伝わってこないのはもどかしさがある」などと述べた。また、リコーの山下良則社長は、「質疑応答の際に、どの方向を見て話したらいいか分からない」と戸惑いを見せる一幕もあった。無観客での会見は、やりにくいというのが、いまのところは本音といえそうだ。

 一方、30件のオンライン会見のなかで、各社がどんなツールを使っているのかを集計してみた。

 最も多かったのが「Zoom」の8件で、特に外資系IT企業での利用が目立っている。2番目は「YouTube」で6件。タレントが登場するなど、主にイベントの要素が強い会見に利用されていることが多かった。そして、3番目が「Microsoft Teams」の5件、4番目がCiscoの「Webex」の3件と続く。あとは1件ずつであり、「Google Hangouts Meet」や「コクリポ」「GoToMeeting」、ロゴスウェアやNTTビズリンクなどのサービスが利用されていた。

 さらに、YouTubeと同時に、TwitterやFacebook、LINEを活用する例もあった。これらを含めると、実に15種類 ものツールが使⽤されていたことになる。ただ、セキュリティ問題が表面化してきたZoomについては、4月に入ってから、各社が会見での採用に慎重な姿勢をみせはじめるといった動きもある。

 参加者側(記者側)としては、ある程度ツールが限定されている方が使いやすいのは確かだが、ツールが分散するのは当面は仕方がないと思っている。

会見開始前にアップデ―トが始まってあわてたこともあった

「質疑応答」は模索段階、「質問内容を繰り返してから回答する」ルール定着を

 会見の仕組みもさまざまだ。特に「質疑応答」については、各社とも模索段階にあるのが明らかだ。チャットボックスに質問を書き込んで質問する方法のほか、音声によって質問するケースも増えてきた。

 音声で質問する際も、方法はさまざまだ。音声ボタンをオンにした人を指名して質問を受け付ける方法、チャットで質問したいということを送ってから、指名によって質問する方法、少ない人数であれば先に声を出した人が質問するケースもあった。そして、チャットで電話番号を入力すれば、そこに電話をかけてくれ、電話を通じて質問する方法も取られた。

 ただ、音声やチャットでの質問も、主催者側には届いていても、参加者側にチャットの内容が届いていなかったり、質問者の声が途切れて聞こえにくかったりという場合があった。オンライン会見では、参加者の環境に差があるため、できれば質問内容を繰り返してから、回答するというルールを定着してほしいと感じた。

 また、質問については、時間内に受け付けられないものに関しては、チャットボックスで受け付けたもの、メールで送られてきたものには、全て回答するという⽅法が増えてきているのはありがたい。だが、あとからのメールでの質問内容は、あくまでも個別対応という範疇のようで、参加者全員には共有されないことが基本となっている。この点は、できれば広く共有してもらえる仕組みができればありがたいと思う。

「午前中」開催や「50分ルール」採⽤の動き、⾳声チェックのための「⼯夫」 も

 新型コロナウイルスの感染拡大以降の各社の記者会見の取り組みに関しては、これまで本誌コラムとして2回にわたって掲載してきた。その記事に対して、企業の広報担当者やPR会社の関係者から多くの反響をいただいたのは、とてもありがたかった。そして、この記事を参考にしてオンライン会見を開催したという声をいくつもいただいた。

 そして、記事のなかではオンライン会見におけるいくつかの提案をしてきたが、多くの企業がその提案に賛同してくれたこともうれしかった。実際にそれが数字にも表れている。

 1つは、オンライン会見はできれば午前中に開催してほしいという提案だ。これは、外出先でオンライン会見に参加することになると場所の確保が難しいため、自宅にいることが多い午前中にオンライン会見を設定してほしいという意味があった。

 30件のオンライン会見を見ると、午前中に開催された会見は22件。残りの8件が午後の開催であった。前年同期の会見では、むしろ午後に開催される会見の数の方が多かったのに比べると、オンライン会見は午前中に開催するという動きが、IT/エレクトロニクス業界で定着しようとしているのかもしれない。これはとてもありがたい。

 ただ、いまの「瞬間風速」としての状況だけを見ると、そのルールは少し緩めてもいいかもしれない。というのも、記者や編集部スタッフが実際に外出するケースが減っているからだ。先にも触れたように、各編集部も原則在宅勤務となっており、取材に出ることがない。そのため、午後の時間帯でも自宅の安定した環境で参加できるからだ。

 もちろん、原則在宅勤務のルールが解除されてくれば、取材に出ることも増えるため、午前中にオンライン会見を開いてもらう方がありがたいのは間違いない。

 もう1つは、会見時間を00分にスタートして50分に終わるという「50分ルール」の適用である。

 これは、オンライン会見が50分で終われば、次の00分から始まるオンライン会見に向けた準備ができるということを前提とした提案だった。ここでも、パナソニックやインテル、日本IBMといった大手企業が45~50分間の会見時間を設定して、実際にその時間枠内で会見を終了してくれた。

 これは意外な効果もあった。ある日、リアルの単独取材が午後2時からあったのだが、午後1時にスタートするオンライン会見に出席するために、1時間早く取材先に移動した。取材先が入居しているビルが大型複合ビルだったため、そこにある入館手続きフロアのソファでオンライン会見に参加。約40分で終了したため、余裕をもって単独取材にも臨むことができた。もしかしたら、オンライン会見を途中退席することになるかと思ったが、最後まで出席できたのだ。

早めに移動して、入館手続きを行うフロアで会見に出席してみた

 ただ、まだ日本での事業規模が小さい外資系ITベンダーなどでは、伝えたいことが多いのか、予定時間を上回ってしまうケースがいくつかあった。なかには予定の1時間を遥かに超えて、1時間30分に達するオンライン会見もあった。そのツールには参加者数や参加者名が表示されていたので、1時間を超えたところで何人もの記者が「退席」していたことも知ることができた。目の前の反応がないことで、自分のペースで話をしてしまい、結果として会見全体が長くなってしまったようだが、そのあたりは広報担当者がうまくコンロトールしてほしいと感じた。

 さらに、事前に資料を配布してほしいという提案に関しても、多くの企業が、会見開始1時間前~10分前をめどにプレスリリースやプレゼンテーション資料を配布してくれた。これは、会見に臨む準備をする上で、とてもありがたい措置だった。しかも、これに関しても意外なメリットがあった。資料の配布とともに、多くの企業がオンライン会見のURLやパスワードを再掲してくれていたので、埋もれたメールのなかから検索しなくてもよく、資料をダウンロードする作業とともに、サイトにアクセスする準備ができたからだ。

 そして、会⾒開催前には、⾳声チェックなどのために、⾳楽や映像を流してほしいという提案にもいくつもの企業が応えてくれた。ここでは、音楽を流すことが難しい場合には、司会者が会見開始時間までわずかであることや質疑応答の際のルールを説明するなど、繰り返しアナウンスをすることで代替措置としていた場合もあった。また、前日などに、事前に音声や画像の環境をチェックできるようにしてくれた例もあった。さまざまなかたちで、主催者側が工夫をしてくれたことには感謝したい。

会見開始前に音楽を流して音声チェックを可能にしていた事例
事前に接続チェックができる環境が用意されている事例

オンライン会見なら「二股」も十分可能!移動中の電車内からも参加は可能だが……

 ちなみに、外出先でオンライン会見に参加する際には、環境が整いやすいカラオケボックスが狙い目だという話を以前書いたが、小池都知事によるカラオケへの立ち入り自粛要請により、マイクを使わないとしても、カラオケボックスには入りにくくなった。それどころか、カラオケボックスそのものが休業する事態となっており、この案はしばらく使えないかもしれない。

 だが、こちらもオンライン会見には慣れてきた。いや、むしろ企業側は、インテルやソフトバンクが複数回行った以外は、各社とも1回だけの開催であり、30回もの参加機会を得た記者の⽅が慣れるのは早いといえるだろう。

 100年を超える歴史を持つ大手企業は、3月に行った会見が、まさに100年の歴史のなかで、初の完全オンライン会見となった。司会を務めた広報担当者は、「当日まで、ドキドキしてよく眠れなかった」と、百戦錬磨の経験があっても、かなり緊張していたようだ。

 筆者の場合、あるオンライン会見は、リアルの単独取材直後に参加することになり、会見開始5分前にあらかじめ想定していた喫茶店に入店。電源を確保できる席を探し、モバイルルーターを立ち上げて、PCを起動。念のために音声を録音できように設定し、サイトにログインしても、2分前に準備が完了。会見が開始するタイミングではちょうどコーヒーが運ばれてくるという環境で参加できた。我ながら、その手際の良さにびっくりしたほどだ。

喫茶店では短時間で設定ができ、会見に出席できた

 また、別の日にはオンライン会見が同じ時間に設定されており、それも2台のPCを使って、2つの会見に参加するということができた。この場合、片方の会見に集中するというスタイルになるが、それでも、あとから録音および録画した画像を見て必要に応じて広報にメールで質問ができるので、速報性を重視しなければ全く関係なく、2つの会見をカバーすることができる。なかには、会見後に画像データや音声データを用意してくれる場合もあるので、会見への出席という点では、記者の動き方は柔軟になったといえるだろう。

 一度、JRに乗りながら、オンライン会見に出席してみた。モバイルルーターでも安定した通信環境を確保できたが、結果としては、人の乗り降りや自分が降りる駅が気になって、あまり会見には集中できなかった。実験したのは、新宿方向に向かう総武線の車内であったが、四ツ谷駅を出てすぐのトンネルに入った途端、その騒音によって、ヘッドホンをしていても説明者の声が聞き取れない状況に直面した。一瞬、ノイズキャンセリング機能を搭載したヘッドホンを購入しようとも思ったが、それよりも移動中の会見出席は見送るようにした方がいいと感じた。

登壇者の「写真映え」にカメラ・照明の工夫を、録画データの標準提供も希望、「Xbox Game Bar」での録画もアリ?

 今回の記事でも、実際にオンライン会見に参加して気付いたことを、記者の立場からの新たな提案として、いくつか示しておきたい。

 1つは、IT分野のウェブ媒体の場合、説明者の顔写真を使いたいというケースが多いことから、そのあたりに工夫をしてほしいという点だ。

 PCに内蔵したカメラではなく、解像度の高いカメラを使ってもらったり、説明者が逆光にならないようにしたり、可能であれば照明をあててもらったりといったように、工夫があるとありがたい。さらに、カメラの位置も、説明者の顔写真をキャプチャーしやすい位置に設定をしてもらえると助かる。

 実は、この点はけっこう苦労した。キャプチャーしたものの、記事の掲載には使えないというものも多く、実際に掲載したところ、写真を差し替えてほしいという要望もあった。もちろん、広報部門に現場で撮影した写真を準備してもらい、あとからそれを提供していただくという仕組みでも構わない。その際には、画像の選択肢が多い方がありがたい。

 2つめは、録画データの提供を標準化としてほしいという点だ。実は、オンライン会見に参加している記者は、録音したり、録画したりしている。もちろん、ツールの多くは、主催者側しか録画ができないという仕様にはなっていたりするが、IT/エレクトロニクス分野の記者や編集部はもともとIT分野に精通しているだけに、さまざまなツールを活用している。

 例えば、この分野に詳しいテクニカルライターの阿久津良和さんは、ZoomやMicrosoft Teamsの場合には、Windows 10に標準搭載されている「Xbox Game Bar」を使って録画し、YouTubeの場合は「JDownloader2」を使ってMP4化して、動画視聴した経験を明かしてくれた。

 参加者側はこうした工夫をしているが、主催者側から公式コンテンツとして、会見の内容を記者に配信をしてくれるとありがたい。

 というのも、参加している環境によって、途中で通信が切れてしまうという事態が発生することもあるからだ。実は、ある会見では、質疑応答になった途端に通信状況が悪くなり、何度も回線が切れ、再接続を繰り返すということが起こってしまった。そのため、質疑応答の半分程度が聞けないという状況となった。一部の企業では、参加したことが確認された記者に対しては、会見後に録画データや音声データを提供する仕組みを採用しているが、参加者が同じ情報を得るという状況を確保するためにも、検討をしてほしい仕組みだ。

通信回線が切れてしまうことも

 オンライン会見の事例とは異なるが、シャープが、ユニークな取り組みを行ったので紹介しておきたい。

 シャープは3月26日にプラズマクラスター除加湿空気清浄機を発表した際に、新製品のプレスリリースの配信に続き、「報道関係者向け特設紹介ページ」のURLを記したメールを報道関係者に配信した。そのURLをクリックすると、そこにはプレスリリースや商品画像のほか、製品説明の詳細をまとめたプレゼンテーション資料、この資料を使った製品担当者による(報道関係者に限定した)約8分間の製品説明の動画、さらには衣類乾燥の比較実演動画をダウンロードできるようにしていた。

 これだけのコンテンツが用意されていれば、都合のいいタイミングで、商品説明を受けることができる。商品画像も豊富であり、商品の内部が分かるカットモデルの写真まで用意。記事化の際にも最適なものを選択できる。もちろん、質問があれば、別途、広報担当者にメールを送れば回答してくれる。新製品を理解することができる仕組みとしては、有用だった。他社にも真似してほしい仕組みの1つだ。

シャープが用意した「報道関係者向け特設紹介ページ」

 一方で、当初予定していたライブ形式のオンライン会見を中止し、説明は録画によるプレゼンテーションに変更するといった例も出てきた。

 質疑応答だけを、各担当者がリモートで参加して、ライブで回答できるような仕組みだ。複数の説明者が一か所に集まって会見をやるのは難しいが、それぞれの説明者のプレゼンテーションを事前に録画することで、こうした課題を回避。さらに、質疑応答であれば、説明者が在宅のままで説明できるというメリットがある。ここでは、プレゼンテーションの録画を参加者だけに限定で公開する対応も図るという。これもオンライン会見の新たな姿といえる。

(4/7 11:42:録画形式について追記)

単独取材もオンライン化へ………そのとき、広報担当者に提案したい「雑談」の重要性

 ところで、在宅勤務が前提となった先週以降、オンラインでの単独取材が始まっている。

 すでにいくつかの提案を受けているが、先週の時点で、Zoomを使った単独取材を初めて行ってみた。説明者と広報担当者、筆者の自宅を結んだ3拠点の取材であったが、スムーズに取材をすることができた。お互いの画像を表示するといったこともなく(もちろん表示してもいいのだが)、音声も明瞭に聞くことができた。むしろ、相手の方がオンライン会議には慣れており、ヘッドセットを使った環境で話してくれたのもよかったのだろう。

 これまでにも、企業の会議室から遠隔地の拠点を結んで取材をするということは何度も経験しているが、⾃宅からオンラインで取材する⽅が、会話のやりとりも⾃然で、やりやすいと感じた。

 それと意外によかったのは、取材5分前ぐらいに広報担当者と筆者だけが先に入り、そこでさまざまな情報交換ができたことだった。実は、記者にとっては、広報担当者から入る情報がヒントとなり、その後の取材につながることが多い。これから在宅勤務が増え、オンライン取材が増えるのであれば、記者と広報担当者だけが5分前に入って、雑談するという場があるといいな、と勝手ながら思った次第だ。

 冒頭に触れたように、新型コロナウイルスの感染拡大の影響はとどまる気配がなく、長期化することは明らかだ。そして、企業の会見やイベント開催も、さらに制限がかかる事態となってきた。

 こんな時期に新製品を発表したり、事業方針を発表したりといったことに懸念する企業もあるだろう。だが、そうした「忖度」は、現時点では必要ないと感じる。むしろ、企業の経済活動を促進し、日本の企業の元気ぶりを発信してもらいたいと思う。

 4⽉末には、主要各社の決算発表が⾏われる。すでに数社から通知が来ているが、そこには、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、発表日に変更が生じる可能性があること、説明会の開催形式については、状況を注視しながら継続して検討し、決定次第、改めて連絡することが明記されており、多くの企業が初めてオンラインでの決算発表を視野に入れていることがわかる。

 今回は、多くの企業が本決算を迎え、新年度の事業⽅針も発表される内容になる。「新型コロナウイルスの影響を、業績見通しにどう織り込むか」という点での苦慮はあるだろうが、広報およびIR部⾨には、しっかりとしたメッセージを伝えるための準備をしてほしい。それは、オンラインでもできるはずだ。