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Androidタブレット、実は「最高の業務機材」になっていた! ~レノボに聞く、Androidタブレット最新事情~

飲食店、ホテル、教育機関、ショッピングカートまで……

ホテルの客室用端末として導入される事例も多い、スピーカードック付きタイプのレノボ製Androidタブレット「Lenovo Smart Tab M10HD with Amazon Alexa」
飲食店やホテル、教育機関、医療など、さまざまな目的で利用されているという

 数年前に国内外のメーカーから発売され注目を集めたAndroidタブレットだが、「そういえば最近、店頭での存在感が薄いな」という人は多いのではないだろうか?

 実際、新製品を継続的に提供しているメーカーは以前より減り、店頭に並ぶ製品も数えるほどになってきた。だから「話題性のある製品」という感覚を持っている人も少ないと思う。

 だが、その一方で、実はAndroidタブレットの活躍の場はますます広がり、今後も期待できる状況になっているという。

 それが「業務用」の世界。

 最近注目されている「デジタルトランスフォーメーション」や、テレワーク・巣ごもり需要に応える手頃な製品としてさまざまな方面で注目され、本格的な活用が広がっているのだという。実際、世界のタブレット市場全体でのAndroidのシェアは6割を超えているという。

 そこで今回は、業務用Androidタブレットでも大きなシェアを持つレノボと、業務用端末としての販売を担うテックウインドの双方に、「最近のAndroidタブレット事情」をお伺いした。

今年の出荷数は「昨年比2倍以上」なぜそんなに業務用が売れるのか?

レノボジャパン合同会社の喜多昭彦氏(コマーシャル事業企画本部ソリューション企画部マネジャー)

 レノボのAndroidタブレットは、2020年の出荷数が前年に比べて台数・シェアともに大きく伸張しており、今やAndroidタブレットの一大ブランドと言っても過言ではない存在になっているという。個人ユーザー向けだけでなく、業務用製品も多く手がけており、近年大きく市場拡大を続けているとのことだが、なぜ今、レノボの業務用Androidタブレットがシェアを大きく伸ばしているのだろうか。

 レノボジャパン合同会社の喜多昭彦氏(コマーシャル事業企画本部ソリューション企画部マネジャー)は、同社のAndroidタブレットが選ばれる理由を「PCメーカーならではのスケールメリットを生かした製品供給力、リーズナブルな価格帯の製品展開、安心の国内サポートを提供できる点、主張しすぎないデザインと価格・性能のバランス」にあると指摘する。

圧倒的なブランド力の「あのタブレット」より、導入しやすいAndroidに注目が

 これまで国内の業務用タブレット市場でも、「圧倒的なブランド力で高性能な競合製品」が市場を席巻していた。ただ、業務用タブレットは飲食店でのオーダー端末といったように比較的単機能で使われることが多く、その競合製品は高性能かつ導入費用が高額になることも多く、導入を検討してもコスト的に難しいという企業も少なくなかった。

 そういった中、近年は単機能であれば比較的安価なAndroidタブレットでも十分に業務で使えると見直されてきた。以前は低価格なAndroidタブレットといえば性能が低いものが多かったが、現在の製品は、業務利用の限られたアプリを利用する場合は不満を感じることなく快適に動作する性能に仕上がってきている。また、Android OSもタブレットに最適化されるとともにセキュリティも向上。あわせて、アプリを提供するデベロッパーの充実や、各企業におけるAndroid向けアプリ開発の経験が豊富になってきたことなどもあって、業務用Androidタブレットへの注目度が高まっている。

修理・サポート体制も重要に

 そして、リーズナブルな価格帯で豊富な製品をラインアップするレノボのAndroidタブレットに注目が集まった。実際、レノボの業務用Androidタブレットの受注数は、ここ数年の市場の拡大基調に加え、2020年は新型コロナウイルス感染症対応という要因も重なったことで、市場全体の増加率を上回る前年比2倍以上の引き合いとなっているという。この数字を見るだけでも大きく需要が拡大していることが分かるだろう。

 また、「修理などのサポートを国内で対応しているという点も、選ばれる大きな理由になっている」と喜多氏は指摘する。通常、レノボのような外資系企業の製品では国内に修理拠点を備えていないことも珍しくなく、トラブル時の対応などに時間がかかる場合が多い。しかしレノボは国内でのサポート体制が整えられており、迅速な対応を実現。これによって、導入企業に大きな安心感を与えることとなり、選ばれる理由になっているという。

【レノボ製Androidタブレットの例】
レノボ製Androidタブレット(ストレートタイプ)のラインアップ

売れ筋は1~2万円台の「価格・性能バランス重視の10型モデル」、スピーカードック付きも人気

 現在、レノボが扱っている業務用Androidタブレットは、ディスプレイサイズが7型、8型、10型の、いわゆるスレートタイプの製品と、スピーカードックが付属する製品など8モデルほどをラインアップしている。

 そういったレノボの業務用Androidタブレットの中でも、価格が1~2万円台の比較的リーズナブルな製品が売れ筋で、サイズ別では10型ディスプレイを搭載する製品が全体の6割ほどを占めるとのことで、大型ディスプレイを搭載するスタンダードな製品がよく売れているそうだ。

 そういった比較的リーズナブルな10型ディスプレイ搭載製品の中で、「Lenovo Tab M10 HD」や、スピーカードックが付属し、Amazon Alexaに対応する「Lenovo Smart Tab M10HD with Amazon Alexa」の人気が特に高いという。

主張しすぎないデザインと価格・性能のバランスが特徴――スタンダードな「Lenovo Tab M10 HD」

「Lenovo Tab M10 HD」

 Lenovo Tab M10 HDは、業務用製品の中で最も売れ筋の製品だ。こちらは喜多氏が「主張しすぎないデザインと価格・性能のバランスが特徴」と言うように、Android OSにあまり手を加えず、シンプルな状態で提供しているスタンダードな製品となっている。また、主張しすぎないデザインはさまざまな業種や業務へのマッチングにも優れている。

 ディスプレイは必要十分のHD解像度(1280×800ドット)。約8.45mmの薄型、約480gの軽量ボディで、扱いやすい点が特徴。また、Wi-FiモデルとLTE対応モデルが用意されており、専用ネットワークが設置されていない場所などにはLTEモデルの存在が重要となってくる。LTEはNTTドコモとソフトバンクのネットワークに対応している。

ホテルの客室端末などに「Lenovo Smart Tab M10HD with Amazon Alexa」

「Lenovo Smart Tab M10HD with Amazon Alexa」

 Lenovo Smart Tab M10HD with Amazon Alexaは、10.1型ディスプレイ搭載タブレットに、3W+3Wのステレオスピーカーを内蔵するドック「Lenovo Smart Dock」が付属となった製品。

 個人ユーザー向けとしても販売されており、迫力あるサウンドで音楽や映像を楽しむことも可能。ボイスアシスタント「Amazon Alexa」に対応し、スマートディスプレイとしても利用できる点が大きな特徴の製品だ。

 日本国内では現在、Amazon Alexaの法人向けサービスが正式提供されておらず、業務用でAmazon Alexaの機能を使うことはできないが、Lenovo Smart DockにはBluetoothスピーカー機能とタブレットへの充電機能があるため、これらを活用している例が多いという。

 例えば、飲食店のテーブルオーダー端末のように、オーダー時にタブレットをLenovo Smart Dockから取り出して注文し、注文が終わったらLenovo Smart Dockに戻す、といったような使い方だ。また、スタイリッシュに設置できるということから、ホテルの客室用タブレットとして使われる例も多いという。

 ところで、レノボの業務用AndroidタブレットのOSのバージョンは、基本的にはAndroid 9ベースで提供されている。喜多氏によると、アップデート対象モデルにおけるAndroid 10への準備は完了しており、個人ユーザー向けでは一部モデルで提供を開始しているが、業務用として利用されている場合はアプリの対応期間を考慮し、現時点ではAndroid 9を中心に提供しているという。今後のAndroid 10へのアップデートについては、導入済み企業の検証を待って提供を開始する予定とのこと。

 また、対応しているモデルでは、アップデート後にOSを旧バージョンに戻す対応も可能とのことだ。その場合はAndroid OSの最新バージョンで提供されている新機能やキュリティ面の恩恵が受けられないということを導入企業において考慮してもらう必要があるが、柔軟な対応ができるという点も特徴の1つになっていると、喜多氏は説明した。

飲食店やデリバリー代行サービス、教育機関、大手メーカーなど、幅広い業種でAndroidタブレットを活用

 では、実際の導入事例をいくつか紹介しよう。

利用例1:飲食店のオーダー用端末

飲食店のテーブルオーダー端末での導入が増加

 過去1年で特に目立つ事例の1つが、飲食業界だ。レストランチェーン店やファストフード店など、テーブルに設置するテーブルオーダー端末として導入する例が多いそうで、人材不足の解消、正確な注文が行えること、メニューアイテムの更新のしやすさ、多言語対応などのメリットから導入例が大きく伸びているという。

利用例2:テイクアウト・デリバリー代行サービスのオーダー確認用端末

 もう1つ、同じく飲食業界で伸びが特に目立つのが、テイクアウト・デリバリー代行サービスだ。新型コロナウイルス感染症拡大による在宅勤務や外出自粛を契機に、テイクアウト・デリバリー代行サービスの利用が急増、それにともなって加盟する飲食店も急増したことで、店舗に設置されるテイクアウト注文確認用端末として大きく増えたそうだ。

利用例3:学習塾などの反復学習、オンライン授業の受講端末

 教育市場向けも伸びている分野の1つ。以前からAndroidタブレットを活用した特定の教育サービスはあったが、近年、特に学習塾やeラーニング専業の企業による採用が増加傾向にある。ここでも新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために集合学習を控えていた教育機関から、リモート授業やビデオ学習用途の端末として、均一な受講環境を生徒に届けたいという理由での引き合いも急増しているという。

利用例4:外勤営業スタッフのデバイスを集約

「Lenovo Tab M8 HD LTE」

 特定の業界に限らない利用法として、外勤営業スタッフの働き方改革のため導入事例がある。ある国内の生活用品メーカーでは従来、携帯電話、タブレット、PCと3つの機器を持ち歩き、場面に応じて使い分けていたという。それを、通話機能を備える「Lenovo Tab M8 HD LTE」を導入することで、携帯電話とタブレットを1台に集約。これによって、外勤営業スタッフの負担が軽減されるとともに、社内イントラネットへのアクセスやテレビ会議、Bluetoothヘッドセットとの併用で通話しながらタブレット操作を行えるようになるなど、社内や顧客とのコミュニケーションも円滑にできるようになったという。

「ドリンクサーバーのタッチディスプレイ」「医療用機器のディスプレイ」「POSレジ機能付きショッピングカート」などにも……

 このほか、アミューズメント施設に設定されているドリンクサーバーのタッチディスプレイや、訪問医療に医師が持ち運ぶポータブル超音波エコー検査装置、スーパーマーケットの高機能ショッピングカートへの設置など、タブレットを他の装置などに組み込んで利用する事例もあり、レノボが想定していた使い方を超えた活用事例も増えてきているという。

POSレジ機能付きショッピングカートでの導入事例
ポータブル超音波エコー検査装置での導入事例

企業のタブレット導入をサポートするのが「代理店」「各種設定やアプリのインストールをした上で出荷が可能」

 このように需要が高まっているレノボの業務用Androidタブレットだが、「業務用」で重要になるのが、事前の設定やアプリのインストールだ。

 数台ならまだしも、何十台、何百台の設定を今いるスタッフにやってもらう、というのは手間でもあるし、トラブルの元になりかねない。

 そうしたサポートを担うのが企業向けの販売代理店であり、今回一緒にお話をお伺いしたテックウインド株式会社がその1つだ。

 同社では、企業への業務用Androidタブレットの販売と同時に、「タブレットキッティングサービス」を提供している。これは、導入企業のニーズに合わせたAndroidタブレットの各種設定やアプリのインストールなどをテックウインドが行った上で製品を納入するというサービスだ。

テックウインド株式会社の下村博章氏(営業本部PM1部プロダクトマネージャー)

 テックウインドの下村博章氏(営業本部PM1部プロダクトマネージャー)によると、「もともとテックウインドはサーバーやPCなどの組み立てを代理店として行ってきていたので、その経験を生かして高品質かつスピーディーに対応できる点がタブレットキッティングサービスの大きな特徴になっている」と説明する。あわせて、顧客の要望に応じてOSやアプリのインストールから設定まで柔軟に対応できる点や、他社の同様なサービスでは10台以上の受注からという場合が多い中、1台から受注が可能という点も特徴となっている。

 タブレットキッティングサービスの作業は、埼玉県春日部市にある工場で一括で行っており、アプリのインストールや設定、ネットワークの設定などはもちろんのこと、標準で用意されているアプリのうち不要なものを削除したり、ブラウザーに特定のブックマークを登録するというように、納入後に即運用できるかたちでの設定までサポート。また、標準の付属品を省くことで納入企業側の廃棄費用を軽減したり、特定の付属品のみを同梱するといったサービスも提供しており、利用する企業の要望を最大限反映できるようになっている。

タブレットに特化したレノボとのビジネス協業

 そして、テックウインドとレノボは現在、さまざまな協議を行っているという。

 ハードウェアの動作を制御するカスタマイズの提供など、レノボ製の業務用Androidタブレットとあわせて、テックウインドの独自サービスを付加価値として提供することにより他社と差別化していく予定とのことで、この点でも同社の大きな強みとなるだろう。

 こういったサービスを提供するため、テックウインドはレノボと業務用Androidタブレットに特化したビジネス協業を行っているそうだ。そのため、「自社工場によるキッティングサービスの提供とあわせて、受注から短期間で納入できる体制が整っているという点が大きな強みになっている」と下村氏は説明。実際に、タブレットキッティングサービスを利用した場合の納期は、発注台数やキッティング項目によって変わるものの、平均で1~2週間前後と、キッティングを行った上での納期としては非常に短いものとなっている。

 ところで、なぜテックウインドは企業に提供する業務用Androidタブレットとしてレノボの製品を選んでいるのか。その理由の1つが、信頼感だ。レノボはグローバル展開の企業ということでブランドの信頼感と、海外メーカーながら国内でしっかりとしたサポート体制が用意されているという点での信頼感に大きな強みがあると考えているという。あわせて、レノボからは業務用Androidタブレットの1年先まで生産計画のロードマップが提供されているそうで、供給体制が把握しやすい点も大きな強みとしてレノボ製品を選択する理由になっているそうだ。

「Androidタブレットでデジタルトランスフォーメーションを促進していきたい」

 昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されており、多くの企業がさまざまな取り組みを行っている。そういった中、今回紹介してきたように、Androidタブレットの業務利用が大きく広がっている。

 Androidタブレットの業務利用がさらに広がることで、世の中が今後どのように変化していくのか? その業務用Androidタブレットを提供しているレノボと、企業への導入をサポートしているテックウインドは、そしてそういった変化にどう関わっていきたいと考えているのか? 最後にレノボの喜多氏とテックウインドの下村氏にコメントしていただいた。

 「レノボは、先進的でスマートなテクノロジーを活用し、最高のユーザー体験を生み出すスマートデバイスとインフラを通じて、多くの人々の働き方や生活がより充実した社会の実現に貢献することを目指しています。

 Androidタブレットは、スマートフォンに慣れた利用者にも分かりやすいタッチ操作、コストパフォーマンスの高さから、多くの業種・業務で、PCの利用とは異なる広がりを見せています。特に飲食店、宿泊施設、アミューズメント施設や作業現場等といった分野では、単に正確で迅速なサービス提供のためだけでなく、それぞれデータ化されたお客様の行動の動向や志向などを分析し、さらに良い顧客体験を提供することで、社会変革が実現される未来を期待しています。

 レノボは、これら新しい社会変革実現のために、それぞれのお客様が期待する新しい顧客体験の創造と実現に向けて、タブレット、PC、ITインフラやサービスといったキーとなる製品群を通して貢献していきたいと考えております。」(レノボ喜多氏)

 「デジタルトランスフォーメーションが進む中で『Androidタブレットの業務利用』がより現実的な存在となり、意識せず日常の一部として活用されるようになっています。弊社としても、お客様のニーズに対してより最適なレノボ製の業務用タブレットをご提案させていただき、お客様のデジタルトランスフォーメーションや、『Androidタブレットの業務利用』のお手伝いが少しでもできればと思っております。」(テックウインド下村氏)

(協力:テックウインド株式会社)