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えっ! 源泉徴収票ってそういう意味だったの!? 所得や納税額の数字のナゾ、図解で説明【令和7年分(2025年分)】
「源泉徴収票の見方」がわかると 税金の仕組みが見えてくる<前編>
2026年1月27日 06:00
税金に関心がない人も、自民党が国民民主党の「103万円の壁を178万円に引き上げる」選挙公約に合意したなど、税制が変化していることを耳にしているだろう。令和6年から令和7年、さらに令和8年と所得税の仕組みは大きく変化し、多くの人が減税の恩恵を受けることとなりそうだ。今回は「源泉徴収票」の見方を理解しつつ、実際に所得税が減税され、どれくらい手取りが増えるかをお伝えしよう。
毎年12月か1月の給与明細と一緒に受け取る源泉徴収票には年収・所得・納税額が記載されている。受け取った源泉徴収票を見れば、ご自身の令和7年分(2025年分)の年収・所得・納税額がわかるのだが、手元の源泉徴収票を見ても「年収」「所得」「納税額」とは書かれていない。
扶養親族の構成、生命保険の加入状況など、さまざまな情報が1枚の紙にコンパクトにまとめられた源泉徴収票だが、その見方はわかりにくく、少し税に関する知識がないと、書かれた数字の意味が理解できない。今回の前編では「源泉徴収票の見方」を理解していただき、次回の後編では実際に所得税が減税され、読者自身の手取りがいくら増えるかを、具体的な算出方法で説明したい。
[前編 目次]
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、1年間に会社から支払われた給与等の金額や、給与から天引きした所得税の金額などが記載されている書類だ。会社側の視点なので「支払金額」と記載されているのが、ご自身の「年収」となる。年収から納税額を算出するために必要な「配偶者控除」「扶養控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」など、個人個人で異なるさまざまな控除も記載されているので、これを見れば納税額が算出された根拠までわかる。退職時に受け取った源泉徴収票は1月から退職までの収入、社会保険の支払い額、納税済みの所得税が記載されている。転職した場合や、再就職をせずご自身で確定申告をする場合に必要となるので大切に保管したい。
1分57秒でわかる 源泉徴収票
先にお伝えしておくと「この記事はメッチャ長い」。目標として、最後まで読めた人はご自身の源泉徴収票に書かれた数字の意味が理解でき、計算すると納税額がピターッと合うことを目指している。とはいえ、受け取った源泉徴収票を目の前にして「数字の意味がわからん! とりあえずどこに年収・所得・税金が書かれているか知りたい」と思う人もいるだろう……ということで、まずは1分57秒で源泉徴収票に何が書かれているかわかるように説明したい。では「ストップウォッチ、スタート(笑)」。
記載例は河野一太郎さんの令和7年分の「給与所得の源泉徴収票」。河野さんの家族構成(扶養親族)は、パート勤めの妻、大学生と中学生の子、同居する72歳の父がいる。
最初の「支払金額」の欄に書かれているのが年収(紫色)。その右側の「給与所得控除後の金額」の欄が所得(青色)。年末調整で記入の目安にするのはこの2つ。1つ飛ばして右端の「源泉徴収税額」の少なめな金額が納税額(緑色:所得税+復興特別税)。最低限この3つを知ると、スルーよりは大幅な進歩となる。
ピンクの部分は控除(=税金の計算対象から差し引かれるもの)で、一番下が本人の基礎控除額、その上の横列が支払った生命保険料の明細。点線+矢印の先は、それから算出した生命保険料控除の額。その右側が地震保険の控除額。左側が支払った社会保険(厚生年金+健康保険+雇用保険)。さらに左の特定親族特別控除は新設された特定親族特別控除の控除額。
その上の行は扶養する家族で、左端の「○」は配偶者控除(この事例では妻)、右がその控除額。その右側の「特定」と3つ右の「特親」に「1」があれば“ほぼ大学生”が1人、「老人」は爺ちゃんか婆ちゃんが1人、もう少し右側の「16歳未満扶養親族の数」は中学生以下の子が1人を表している。この1行で河野一太郎さんの扶養している家族の構成がおおよそわかる。これらピンクの控除の合計額が、上段の所得と納税額の間に書かれている。「ストップウォッチ、ストップ」……1分57秒(iPhoneの読み上げ機能で計測)。
これで納得された人は以上だ。「給与所得控除? 配偶者控除? 何それ?」という人は、続きを一読いただきたい。
念のために付け加えると、この記載例の画像は印刷できるように解像度を高くしている。この記事をPCで閲覧している人は画像をクリックすると拡大画像が開く。さらに左上の+マークをクリックすると、より高解像度な元画像を表示することができる。INTERNET Watchの記事は何年経っても削除されないが、保存したい人はこの手順で行っていただきたい。
「源泉徴収」と「源泉掛け流し」
源泉徴収票、あるいは源泉徴収という言葉は、聞き覚えはあるもののイマイチわかりにくい。また、納税額の欄は「源泉徴収税額」となっている。「源泉徴収税額って意味わからん」と思われた人がいるだろう。
「源泉」と聞いて思い浮かぶのは「源泉掛け流し」だろうか。源泉掛け流しは、温泉の元(=源泉)から引いたお湯を、そのまま湯船に満たすこと。水で薄めたりしていないという意味だ。源泉徴収は、源泉=元から(←会社が従業員に給与を支払う前に)税金を徴収することを意味している。平たく言うと「あとから自分で税金を納めてね」ってすると、納税しないヤツがいそうだから、会社(=源泉)が税金分を差し引いて(=徴収)給与を支払うことを言う。源泉徴収税額=事前に(会社が代行して)納税済みの税額、と解釈しよう。
源泉徴収票のフォーマットが変更された
税制改正により、令和7年分の源泉徴収票はフォーマットが変更された。主に大学生のアルバイトの働き控え対策として「特定親族特別控除」が新設されたため、記入欄が追加されている。
従来は「控除対象扶養親族の数」の下段が「特定」「老人」「その他」に分かれていたが、そこに「特親」が追加された。さらにその下の段の左端に「特定親族特別控除の額」が追加された。細かな点では「控除対象扶養親族の数」に“等”が加わり「控除対象扶養親族等の数」となった。特定親族特別控除に関しては後述したい。
源泉徴収票と所得税の計算式を3つのパートに色分けしてみた
源泉徴収票にはさまざまな数字(人数、金額)や○印が記載されているが、それらの関連性は所得税の計算方法を知らないと理解できない。所得税の計算式と源泉徴収票に記載された数字や印を照らし合わせながら、順番に説明していこう。
手元に「令和7年分 給与所得の源泉徴収票」をご用意いただき、自身の源泉徴収票で実際に計算・検証してみると、より深く理解できる。ピターッと計算が合うと“快感”だ。
まずはサラリーマンの所得税の計算式を確認してみよう。1行目は収入(年収)から所得を求める式。2行目は所得から課税所得(税金の計算対象となる所得)を求める式。3行目は課税所得の額に応じた税率を掛け、所得税の納税額を求める式となっている。

この3行の式を、1行目をブルー、2行目をピンク、3行目をグリーンとして、源泉徴収票の該当する部分を大まかに色分けしてみたのが下の図だ。1行目と3行目の部分はわずか。この2行は決まった式で計算できるので理解も容易だ。大きなピンクの部分は独身、既婚、扶養する子や親の有無、生命保険の支払い額……など、さまざまな個人の事情により異なっている。
「収入」と「所得」ってどう違うの? 「給与所得控除」って何??
順番に式と源泉徴収票の該当する部分を見ていこう。1行目の式と源泉徴収票のブルーの部分。事例では(会社から見た)「支払金額」が650万円、「給与所得控除後の金額」が476万円となっている。650万円は給与と賞与の合計額、令和7年の(自分から見た)「収入」=年収だ。「年収は?」と尋ねられたら、ここに記載された金額を答えればよい。
右側の476万円は収入から「給与所得控除」というものを引いた金額で、「所得」と呼ばれている。2020年から年末調整の申告書に記入することとなった「収入」と「所得」の関係は1行目の式で求めることができる。
給与の収入金額-給与所得控除=給与所得
この式を見て「給与所得控除って何?」と思われた人がいるだろう。給与所得控除はサラリーマンの必要経費と言われ、「スーツ、カバン、クツ代、自腹スマホ&電話代、自腹PCなど、会社には請求できないけど仕事に必要な経費があるはず」ということで、収入に応じて一定額を「税金を払わなくていいよ」と課税の計算対象から差し引いて(控除して)くれるものだ。給与所得控除は年収に応じて以下の計算式で求められる。
| 給与等の収入金額(年収) | 給与所得控除額 |
| 190万円以下 | 65万円 |
| 190万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
事例の河野さんの給与所得控除を計算してみよう。年収が650万円なので「360万円超 660万円以下」に該当し、計算式は「収入金額×20%+44万円」となる。
給与所得控除
650万円×20%+44万円=174万円
源泉徴収票には書かれていない給与所得控除の174万円を年収から差し引くと、所得の476万円が算出できる。
給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
650万円-174万円=476万円
ご自身の源泉徴収票を見ながら「支払金額は638万2000円だから、所得額は466万5600円……」などと計算すると、源泉徴収票に書かれた額と微妙に金額差が発生した人がいるはずだ。
年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の算出は「令和7年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」という速算表を使用してほしい。この表の638万2000円に該当する部分を見てみよう。
年収638万円以上638万4000円未満の人の給与所得控除後の金額は466万4000円となっていて、年収が638万1000円でも638万2000円でも一律466万4000円となる。これが金額差の原因だ。おそらくパソコンが普及する以前、そろばんや電卓の時代には1円単位の細かな計算をするより速算表の方が便利だったと思われ、その時代のルールが今も続いているのだろう。
ご自身の源泉徴収票を正確に計算したい人は、この速算表で確認していただく方法が1つ。もう1つは年末調整の書き方の記事でも紹介した国税庁の給与所得控除のページの下段にある、給与収入から所得を計算するサービスの利用だ。ご自身の年収を「給与収入の合計額(令和7年分以降)」に入力すれば、年収の金額が1円単位まで細かくなっていてもサクッと所得が計算できる。
暗号? 嫌がらせ? 超わかりにくい「所得控除」欄を解読する
2行目の計算式は、1行目で算出した給与所得から各種所得控除を引き算して「課税所得」を算出する式だ。
給与所得-各種所得控除=課税所得
この式の各種所得控除が源泉徴収票のピンクの部分、やたら広い。源泉徴収票の大きな面積を占めていて、○印や人数、金額が混在し、税の知識がないと暗号化された控除を解読することができない。個人個人の納税額を左右する重要な部分であり、源泉徴収票のわかりにくさのある意味で主役、「これは嫌がらせですか」とも感じられる部分なのでジックリ見ていこう。
ピンクの部分の最上段「所得控除の額の合計額」に336万円と記載されている。その下の段には○印や数字の「1」、38万円、63万円、96万円、12万円などの金額が記載されている。これらの金額を足しても引いても合計額の336万円にはならない。予備知識なしにこれらの関係を理解することはできない。
最初に「所得控除とは」から説明しよう。所得控除は「大学生の子がいるとお金が掛かるよね」「親と同居していると生活費が増えるよね」といった感じで、扶養する家族や、生命保険の支払いなどの個人個人の事情を考慮して、所得から一定額を差し引き(控除し)、課税所得(税額を算出する金額)を引き下げ、納税額を減らすものだ。控除額が増えれば納税額は減ることになる。同じ年収のサラリーマンを比較すると、養う家族が多い人は独身の人より納税額が少なくなる。
ピンクの部分が大きいのは、障害者控除、ひとり親控除など、さまざまな控除の記入欄があるからだ。その中で多くの人が関係するのは配偶者控除、扶養控除といった人的控除。毎月天引きされている厚生年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料控除。生命保険に加入している人の生命保険料控除だろう。代表的なこれらの所得控除について順番に説明していこう。
「配偶者控除」は年末調整の判定が反映されている
左上の「(源泉)控除対象配偶者の有無等」の「有」に○印が付いていれば控除対象となる配偶者がいるということだ。配偶者とは夫から見た妻、妻から見た夫で、家庭によってどちらも配偶者控除の対象者となりえる。
事例は河野一太郎さんの源泉徴収票なので、控除対象の配偶者は妻となり、「有」欄に○印が付いていて、その右側の「配偶者(特別)控除の額」の金額が38万円となっている。
この38万円はどこから来たか。もし年末調整で提出した「令和7年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」というウルトラハイパーアホみたいに長い名称の申告書のコピーかスマホで撮った写真があれば見ていただきたい。
事例の「令和7年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 ……(長いので略)」を見ると、河野一太郎さんの年収と妻の河野景子さんの年収から判定された控除額が38万円となっている。年末調整で提出した申告書により控除額や納税額が計算され、その結果が源泉徴収票に反映されている。
もし河野一太郎さんの妻が正社員としてフルタイムで働いていて、年収が201万6000円以上になる(所得で133万円を超える)と配偶者(特別)控除の対象とならない。また、本人の年収が1195万円(所得で1000万円)を超えると、妻が専業主婦でも配偶者控除を受けることができない。
「控除対象扶養親族等」の人数から「控除額」を算出する
配偶者控除の右側は「控除対象扶養親族等の数(配偶者を除く。)」という欄がある。先ほどの配偶者控除は控除額が記載されていたが、こちらは新設された「特定親族特別控除」以外は人数しか記載されていないので、該当するそれぞれの控除額を別途算出する必要がある。
扶養控除は、子や親を養っていると受けられる控除だ。対象となる親族の年齢により控除額が異なっている。かなり複雑なので図を見ていただこう。
令和7年の年末時点の年齢が16~18歳(ほぼ高校生)であれば控除額は38万円。19~22歳(ほぼ大学生)であれば所得に応じて3万円~63万円。23~69歳であれば38万円。70歳以上で同居していれば58万円(同居老親等)、別居であれば48万円(同居老親等以外)となっている。年齢以外の条件もあり、控除対象となるのは所得が58万円以下の扶養親族だ。
19~22歳
控除が増額になっている19~22歳はほぼ大学生で「大学に通う子がいるとお金が掛かるから控除を増やして税金を減らしましょう」という趣旨だ。ただし、大学に通っていることは条件となっていないので、浪人中でもフリーターでも年齢と所得の条件を満たし、生計を一としていれば(親が養っていれば)、別居でも控除の対象となる。
令和6年までの「特定扶養親族」は、年収103万円(所得48万円)を超えると親の特定扶養親族の控除額63万円が0円となり、大学生の子がうっかり働き過ぎると親の負担が大きかった。それが令和7年からは、特定扶養親族の上限年収が123万円(所得58万円)に引き上げられ、さらに「特定親族特別控除」の新設によって、子の年収が150万円以下であれば親は63万円の控除を受けられる。また、150万円を超えても188万円までは段階的に控除額が減る仕組みとなり、従来のように103万円を超えると天国から地獄へ落ちるようなことはなくなった。
令和6年までは年収103万円を超え親の扶養親族から外れることを避けるため、年末近くになると働き控えをしていた人は気にすることなく働けるし、忘年会シーズンの居酒屋など雇用する側もバイト確保が容易になりそうだ。
19~22歳の子の年収が123万円以下は、従来の特定扶養親族。123万円を超え188万円以下は特定親族特別控除となる。特定親族特別控除の所得・年収と控除額は以下の表を参照していただきたい。
| 所得金額 | 年収 | 控除額 |
| 58万円超 85万円以下 | 123万円超 150万円以下 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下 | 150万円超 155万円以下 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 155万円超 160万円以下 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 160万円超 165万円以下 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 165万円超 170万円以下 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 170万円超 175万円以下 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 175万円超 180万円以下 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 180万円超 185万円以下 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 185万円超 188万円以下 | 3万円 |
注意点は、早生まれの大学1年生。従来の特定扶養親族も新設の特定親族も該当するのは、年末時点で年齢19歳以上23歳未満。大学1年生だが早生まれで年末時点の年齢が18歳の子は、対象となる19歳以上23歳未満に該当しない。これは学年は4月から翌年3月、いわゆる年度となっているが、個人の所得税は1月から12月=年が基準となっているために発生する不整合だ。
人的控除で最も控除額が大きい特定扶養親族・特定親族は、早生まれの人は3年しか控除が受けられない(4年後に社会人になると所得が123万円を超えて対象外となる)。早生まれ=約4人に1人の学生と親が損をするアホな仕組みだが、政治家や役人は世間知らずなのか、知識がないのか、悪意があるのか、改善されないままの状態が永遠と続いている。アルバイトを雇うお店側も早生まれの大学1年生のシフトには注意していただきたい。
70歳以上
もう1つ控除が増額されているのは70歳以上で、「老人扶養親族」と呼ぶ。老人扶養親族は同居(同居老親等)なら控除額は58万円、別居(離れた実家や老人ホームなど)なら控除額は48万円となる。
事例で具体的に見ていこう。「控除対象扶養親族等の数(配偶者を除く。)」の下の「老人」の真ん中に「1」、左に「1」となっている。真ん中の「1」は70歳以上の老人扶養親族が1人いることを表し、左側の「内」に「1」とあるのは老人扶養親族のうち、同居老親が1人いることを表している。もし別居の老人扶養親族がいる場合は真ん中が「1」、左側の「内」は空欄(0人)となる。
右側の新設された「特親」に「1」とあるのは、特定親族が1人いることを表している。アルバイト年収が123万円超の大学生など19~22歳の親族が1人ということだ。もし年収123万円以下であれば、「老人」の左側の「特定」が「1」となり、特定扶養親族が1人ということになる。
「老人」と「特親」の間の「その他」は16~18歳、23~69歳の一般の扶養親族の人数。16~18歳は主にアルバイト収入のある高校生や早生まれの大学1年生。23~69歳は、70歳未満の定年退職した親などが想定される。
さらに右側の「16歳未満扶養親族の数」は16歳未満の子の人数で、所得税の控除対象とはならない。
新設された特定親族特別控除は控除額の欄があるが、それ以外の控除対象扶養親族は人数しか記載されていないので、それぞれ人数を控除額に換算する必要がある。
事例では、同居老親が1人で58万円(青色)。大学生の特定親族(特親)が1人で、その控除額は下段左端に記載されていて63万円(緑色)。同様に左側の特定扶養親族(特定)が1人なら控除額は63万円となる。16歳未満の扶養親族が1人となっているが、控除額は0円。もし「その他」の欄に1人と記載されていたら控除額は38万円となる。
「生命保険料控除」も年末調整の申告内容が反映されている
ピンクの部分の次の段は、左端が新設された「特定親族特別控除の額」、その右が「社会保険料金等の金額」。これは毎月の給料から天引きされた厚生年金、健康保険、雇用保険の合計額で、事例では96万円。その右側は「生命保険料の控除額」で12万円。その右側は「地震保険料の控除額」で1万円となっている。「摘要」の下の段には12万円、7万5000円、12万円の金額が記載されている。ここでは生命保険の控除を理解しよう。
「摘要」の下の段の項目名は左端に「生命保険料の金額の内訳」とあり、その右側は
「新生命保険料の金額」
「旧生命保険料の金額」
「介護医療保険料の金額」
「新個人年金保険料の金額」
「旧個人年金保険料の金額」
となっていて、5つに分類された保険料ごとの支払った金額が記載されている。
生命保険は平成23年以前に契約したものは「旧制度」、平成24年以後に契約したものは「新制度」と分けられている。さらに旧制度は「一般」「年金」の2つ、新制度は「一般」「介護医療」「年金」の3つに分けられ、計5つに分類されている。
保険料ごとに控除額を算出し、合計した額が上段の「生命保険料の控除額」となる。ただし生命保険料控除には上限額があり、この例では上限額の12万円となっている。5つに分類された保険ごとの控除の限度額は図のとおりだ。

年間に支払った保険料と控除額の関係は以下の表のとおり。旧制度の控除額の上限は5万円。新制度の控除額の上限は4万円。事例では「旧生命保険料の金額」と「旧個人年金保険料の金額」でそれぞれ支払金額が12万円なので、控除額は上限額の5万円ずつ。
新制度の「介護医療保険料の金額」の支払金額が7万5000円になっているので、控除額は3万8750円。3つの保険の控除額は5万円+5万円+3万8750円=13万8750円だが、全体の上限額が12万円なので最上段の「生命保険料の控除額」は12万円となる。

上の図の計算式を見ると「支払保険料等×1/2+1万2500円」などと少し面倒くさい計算をしなければならない。ここも年末調整の書き方の記事で紹介した保険会社の「生命保険料控除申告サポートツール」を活用しよう。
生命保険料の控除額(12万円)の右側は、地震保険料の控除額(1万円)。生命保険料も地震保険料も、年末調整で提出した「令和7年分 給与所得者の保険料控除申告書」の結果がここに反映されている。
今年から「基礎控除の額」が明記された
令和2年から源泉徴収票に「基礎控除の額」の欄が用意されたが、昨年までは多くの人が空欄だった。所得2400万円を超える高額所得者は32万円・16万円・0円を記載、所得2400万円以下の人(=ほとんどの人)の48万円の基礎控除額は記載しないルールだった。
令和7年から基礎控除は所得に応じて95万円・88万円・68万円・63万円・58万円・32万円・16万円・0円と細分化されたので、今回の源泉徴収票からご自身の基礎控除の額が記入されることとなった。
では、事例の控除額を合計してみよう
配偶者控除 38万円
特定親族特別控除 63万円
同居老親 58万円
社会保険料控除 96万円
生命保険料控除 12万円
地震保険料控除 1万円
基礎控除 68万円
合計 336万円
ピンクの部分の控除額が336万円と算出できたので、2行目の計算式に当てはめると、課税所得は140万円となる。
給与所得-各種所得控除=課税所得
476万円-336万円=140万円
「控除」はたくさんある
この記事の事例で触れた控除は「配偶者控除」「扶養控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「基礎控除」。該当する人の多い控除を選んで説明しているが、これだけでも「長げ~」「面倒くせ~」と思われた読者が多いだろう。
控除の種類は多く、「障害者控除」「勤労学生控除」「医療費控除」「寡婦控除」「ひとり親控除」……などがある。全ての控除を説明すると、読み切れないほど長い記事になりそうだ。それらの控除に該当する人には申し訳ないが、ご自身で検索して調べていただきたい。
参考程度に各種控除の適用者割合を見ていただこう。国税庁が令和7年(2025年)2月に発行した「令和5年分 申告所得税標本調査」を見ると、控除を受けている人の割合の1番目は基礎控除、2番目は社会保険料控除、3番目は生命保険料控除となっている。
| 各種控除名 | 令和5年分 控除適用者割合 |
| 基礎控除 | 96.1% |
| 社会保険料控除 | 94.3% |
| 生命保険料控除 | 78.2% |
| 地震保険料控除 | 38.5% |
| 医療費控除 | 29.5% |
| 寄附金控除 | 22.0% |
| 配偶者控除 | 19.5% |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 13.2% |
| 扶養控除 | 12.0% |
| 障害者等控除 | 5.3% |
| 配偶者特別控除 | 4.0% |
| 寡婦控除 | 3.0% |
| ひとり親控除 | 0.7% |
| セルフメディケーション控除 | 0.2% |
| 雑損控除 | 0.1% |
ちなみに、控除額の総額の割合の1番目は控除額が大きい社会保険料控除。2番目は基礎控除、人数ベースで7番目だった配偶者控除が3番目に浮上、同じく9番目だった扶養控除が4番目に浮上と、控除額の大きさを反映している。逆に人数ベースでは3番目の生命保険料控除は、控除の上限が12万円となっているので金額ベースでは8番目となっている。
課税所得に税率を掛けて「納税額」を算出
所得税の計算式、最後の3行目は課税所得に税率を掛けて所得税の納税額を算出する式だ。
課税所得×税率=所得税
この式は源泉徴収票のグリーンの部分に該当する。グリーンの面積が小さいので内容も簡単だ。課税所得の額に応じた税率を掛ければ簡単に納税額は計算できる。まずは税率を確認しよう。所得税の税率は以下の表となっている。
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
| 900万円超 1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
| 1800万円超 4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
| 4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
税率は課税所得の額により5%から45%まで上がっていくが、課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、“その金額の部分”に対する税率となる。
例えば課税所得が295万円の場合、195万円までの部分の5%と、195万円を超え295万円までの部分(=100万円分)の10%を合計した額が納税額となる。実際に計算してみよう。
課税所得295万円の所得税
195万円×5%=9万7500円 ①
100万円(295万円-195万円)×10%=10万円 ②
①+②=9万7500円+10万円=19万7500円
となる。税率表の右側にある控除額(差し引く額)を使用すると、計算が簡単にできる。
課税所得金額×税率-控除額=納税額
295万円×10%-9万7500円=19万7500円
では、事例の河野一太郎さんの所得税を計算してみよう。
課税所得×税率=所得税
140万円×5%=7万円(課税所得は1000円未満の端数は切り捨て)
源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額」の7万1400円にかなり近づいたが、まだ1400円の差異がある……あとチョットだ。
忘れちゃいけない「復興特別所得税」
所得税の納税額は計算のとおり7万円で間違いないが、平成25年(2013年)から令和19年(2037年)まで25年間は東日本大震災の復興特別所得税が上乗せされることになっている(※防衛費の財源確保のための増税で、さらに延長予定……森林環境税と同様、何らかの屁理屈で永久に増税は続きそう)。復興特別所得税=「所得税の納税額の2.1%分」を上乗せしよう。
7万円+(7万円×2.1%)=7万1470円
100円未満を切り捨て =7万1400円
これで源泉徴収票に記載された金額とピッタリ一致した……“快感”。ご自身の源泉徴収票で手順に沿って計算をして、納税額が合うとかなりの達成感があるだろう。応用すれば「生命保険に加入 or 解約すると、控除と税金はどうなる?」「歳をとった親を実家から呼んで同居すると、控除で税金はいくら減る?」など、先々のご自身の税金を知ることも可能だ。
計算して微妙に違った人は以下の点を確認していただきたい。
- 年収660万円未満の人の所得は計算式ではなく速算表を利用する
- 課税所得は1000円未満の端数は切り捨ててから税率を掛ける
- 復興特別所得税は100円未満を切り捨て
サラリーマンの税金は年末調整で記入した内容により所得税が決まり、その結果が源泉徴収票となる。次に、ご自身が住民票を置く自治体に送られ、6月より給与から住民税が天引きされることとなる。もし年末調整で控除の記入漏れがあると、所得税も住民税も納税額が増えるので年末調整は慎重に行いたい。
前編、源泉徴収票の見方の説明はここまで。日本の税制がいかに複雑で理解しがたいものか、おわかりいただけただろうか。ご自身の源泉徴収票の内容が理解できていたらうれしい。次回、後編は令和7年・令和8年の所得税減税で、読者自身の手取りがいくら増えるかを、具体的な算出方法で説明したい。
[後編 目次]
- 税制が大きく変化、あなたの手取りはいくら増える?(近日掲載)
- 「103万円の壁」とは(近日掲載)
- 壁が動いた(近日掲載)
- 令和7年分の減税を算出する(近日掲載)
- ついに? やっと? 一応? 年収の壁「178万円」へ(近日掲載)
- 令和8年分の減税を算出する(近日掲載)
- 減税はいつから、いつまで(近日掲載)
- 最後に(近日掲載)




















