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営業秘密侵害が過去最多に。社内不正の4割を占める「情報持ち出し」について、デジタルデータソリューションに聞く
2026年7月27日 07:00
企業を退職し、転職・独立する人による情報持ち出しなどの社内不正事案が増加している。警察庁が2026年3月に発表した、2025年の営業秘密侵害(営業秘密とは、企業が持つ有用性・秘密管理性・非公知性をあわせ持つ情報。不正競争防止法により定義される)事犯の検挙件数は、前年より16件(72.7%)増加しており、過去10年間で最多の検挙件数となった。
同発表では検挙事例として、精密金型メーカーの元社員らが金型図面データをメールで海外法人へ送信したケースや、介護事業者の元社員が利用者情報を複合機で紙に印刷して持ち出したケースなどが挙げられている。
従業員が会社に損害を与える社内不正・内部不正は、IPAが発表している「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、法人にとって第7位の脅威とされている。今回は、社内不正事案、特に情報持ち出しの実態について、フォレンジック(証拠調査・分析)サービスを提供する、デジタルデータソリューション株式会社の熊谷聖司氏(代表取締役社長)と馬渡邦明氏(フォレンジクス事業部長)に、具体的な事例や最新の手口などを詳しく伺った。
社内不正の約4割が「情報持ち出し」、相談増加の背景は
同社が実施した実態調査によると、企業の社内不正事案の約41%が情報持ち出しだった。月別に見ると、情報持ち出しの被害は、人材の入れ替わりが活発な4月および10月に多く、被害企業の約94%がUSBメモリなどの外部媒体の接続を制限していなかったという。
さらに、社内不正相談件数自体も前年度比で約20%増加しており、依然として高い水準で推移している。被害が多い業界のトップは3年連続で「製造業」だが、今回新たに「情報通信業」が2位に浮上した。
馬渡氏は、社内不正が増加している背景について、コロナ禍以降のリモートワークやDX化の推進にあると指摘する。従業員の勤務環境やデータ管理の統制が複雑化し、アクセス権限の管理やセキュリティ設定に隙がある状態のまま運用されているケースが多く、不正が行える隙になってしまっているという。
そして、熊谷氏によると、相談の件数が増えている要因には不正自体が増えただけでなく、フォレンジックという手法が認知され、企業が相談しやすくなったこともあるという。実際に被害が出てからだけでなく、「退職直前の挙動が怪しいので事前に調べてほしい」といった疑惑段階での相談も増えているそうだ。
目的は金銭ではなく、転職先で有利に働くための「手土産」
情報持ち出しの目的として最も多いのは、転職先や独立先で有利に立ち回るための「手土産」としての流用だ。相談事例としても「取引先から突然契約を打ち切られ、理由を調べたら独立した元社員の会社と契約していた」といった事例が多く見られるという。その一方で、ダークウェブや海外企業へのデータ売却といった金銭目的の相談は少ないのが実態だ。
また、持ち出しの手口についても変化が見られている。同社の実態調査では、被害企業の約94%がUSBメモリなどの外部媒体の接続制限を設けていなかったことが判明しているが、最近では外部媒体を使用しない手口が増加している。
USBメモリなどの外部媒体を使用した場合は、端末への接続やファイル移動の履歴が残りやすい。しかし最近は、ウェブメールを使った外部送信や、個人のクラウドストレージへの保存といった手口が目立っている。
馬渡氏は「ウェブブラウザー上での操作はPC内部に痕跡が残りにくく、さらにシークレットモードなどを悪用されると追跡が極めて困難になるケースもある」と説明し、手口の巧妙化に注意を呼びかけた。
初期化されたPCも解析
情報持ち出しの発覚経緯として最も多いのは「社内データの削除」(39%)だ。退職者から返却された機器が全て初期化されていたり、「消すな」と指示したデータが削除されて返却されたりすることから、「証拠隠滅を図ったのではないか」と疑念を持って調査を依頼するケースが最も多いという。同社ではこうした初期化された端末に対しても、データ復旧技術とフォレンジックを組み合わせて解析を試みる。
こうした証拠隠滅に対抗するのが、同社が提供する「デジタルデータフォレンジック」だ。専門のエンジニアがPCやスマートフォンといった機器を調査・解析し、情報持ち出しの有無をはじめ、「いつ、どのファイルを、どこへ持ち出したか」といった操作履歴を特定していく。
別の調査がきっかけで不正が判明するケースもある。退職者から未払い残業代を請求された企業が「請求時間帯に本当に仕事をしていたかログを調べてほしい」と調査を依頼してくるケースだ。こうした調査の依頼が近年増えているといい、PCの動作ログを精査したところ、業務時間中に(業務と無関係な)動画サイトを見ていた実態が判明したりするだけでなく、精査の過程で横領や機密データの持ち出しといった、別の不正の証拠まで芋づる式に出てくることもあったという。
情報持ち出しを未然に防ぐために
事後対応としてのフォレンジック調査は強力だが、データを悪用されてからでは手遅れになるリスクも高い。企業が情報の持ち出しを未然に防ぐために、最低限やっておくべき対策として、馬渡氏は以下の3点を挙げた。
外部媒体の利用を制限
社内で使用するUSBメモリなどの外部媒体は、会社が支給・管理している物に限定し、それ以外の私物デバイスの接続をシステム上で遮断する。
IT資産管理ツールの導入
IT資産管理ツールを導入し、どのアカウントがいつ何をしたのかをログとして記録することで、情報持ち出しの兆候を早期発見できる。また、会社に操作を見られているという状況そのものが、従業員の不正に対する抑止力にもなる。
退職予定者のアクセス権限の見直し
ITツールやデータベースの権限は、退職が決まった段階で速やかに縮小・変更し、退職直前の「駆け込み持ち出し」を防ぐ。





