ハードディスク故障時にやってはいけない4つのこと、データ復旧.comに聞く


左からエンジニアの安藤佳晃氏、コールセンターを担当する渡辺宏明氏と千葉陽平氏

 パソコンを正常に使っているときには、その状態が当たり前に思えるが、マシントラブルはある日突然やってくる。特にハードディスクに蓄えられたデータについては、油断してバックアップを怠っていると、不意のディスクエラーで読み出せなくなり、青ざめる羽目になる。

 ディスクが読めなくなったときには、あわてて自分で復旧を試みたり、復旧サービスを探したりする。このとき、落ちついて行動しないと、ディスクをさらに取り返しのつかない状態にしかねない。

 こうしたディスクのトラブルが起きたときにどう行動したらいいか、データ復旧サービス「日本データテクノロジー」(サイト名は「データ復旧.com」)を提供するOGID株式会社にて、コールセンターを担当する渡辺宏明氏と千葉陽平氏、そしてエンジニアの安藤佳晃氏の3人に話を聞いた。

PC再起動を繰り返すとデータ復旧率が下がる

正常なハードディスク(左)とプラッターに傷が付いたハードディスク

 いざハードディスクに障害が起きたときに、どう行動したらよいだろうか。これについては、3人とも異口同音に「むやみに触らないこと」を挙げる。ハードディスクが壊れているときに"やってはいけないこと"としては、次のような行為があるという。

 まず、よくありがちだというのが、パソコンの再起動を繰り返すことだ。パソコンの調子が悪くなったときは、つい再起動を何度かやってしまいがちだが、ハードディスクに負担をかけ壊れていない部分にまで影響を与えてしまう可能性がある。また、「再起動した」という情報がハードディスク内部に書き込まれ、データが上書きされたような状態になり、復旧率が下がってしまうのだという。

 次いで、フリーのファイル復旧ソフトを使うのも危険なケースがあると、安藤氏は指摘する。フリーのファイル復旧ソフトがハードディスク全体にスキャンをかけたことにより、ファイルシステムが壊れてしまうことがあるのだそうだ。

 さらに、ある程度パソコンの知識があるユーザーにありがちだというのが、ハードディスクを開封することだ。基盤を交換したり、ヘッドを取り出したりするユーザーもいるそうだが、「クリーンルームではないところで開け閉めして通電すると、スクラッチ(傷)が発生してしまって、直せなくなる。基盤はロットごとに異なるので、交換するとヘッドが正常に動作しなくなり、スクラッチが発生することもある」(安藤氏)。

 法人の場合では、RAIDで障害が出たときに、ディスクの入れかえやリビルドをしてしまうケースがあり、それで重症になるケースも多いという。中には、応急処置の結果、RAIDの4本がそれぞれ違う障害を起こしていたケースもあったそうだ。

 「自分では何もしないで、プロの復旧サービスに依頼するのが一番です。弊社では、電話やメールによる無料相談を受け付けているほか、ハードディスクの無料診断も行っているので、まずはプロに問い合わせてみることをお勧めします。」(渡辺氏)

RAID障害のイメージ図

電話で話を聞き出しその場で可能性を提示

コールセンターの様子
10年以上前に製造されたものから現在のものまで、約1万種類のハードディスクの部品、および数十万種類のファームウェアを保管しているという

 日本データテクノロジーのコールセンターは年中無休で、1日100件前後の問い合わせが寄せられるという。渡辺氏によると、コールセンターに連絡してくるのは、「予備知識がなくて検索サイトで調べてくる人」が多いが、パソコンやハードディスクに詳しいスタッフが対応しており、パソコンに詳しくない人には専門用語を使わずにわかりやすく説明し、知識のある人には専門用語を用いて説明をすることで、顧客の状況を正しく把握するのが強みだという。

 電話での問い合わせは20分ほどかけて症状や経緯を詳しく聞く。その時点で、データが読み取れない原因やデータ復旧の可能性などを伝える。千葉氏は「当社はスピード対応を心がけており、コールセンターのオペレーターもマニュアル対応だけではなく、知識を持って応対します。そのためにハードディスク技術の教育を受けていますし、新しい復旧技術が現れたときには、オペレーターも説明を受けています」と語る。

 電話の段階であきらかに復旧が無理と判明したものについては、復旧を断っている。例えば、データを上書きしてしまった場合や、削除して何年もたっていてその間通常にパソコンを使用してしまっている場合など。メールソフト内のメールの削除も、上書きされてしまうため、データ復旧が無理なことが多いそうだ。

 電話で話を聞いた後は、ハードディスクやパソコンを送るか、直接機器を持ち込んで初期診断を行う。持ち込みならここで障害の種類と状況がすべてわかり、復旧期間や費用などが弾き出される。診断結果が出るまで早ければ30分。契約が成立すると、すぐに復旧作業に入る流れとなっている。症状にもよるが、当日のうちに復旧作業が完了し、データを戻してもらうことも可能だという。

 「復旧完了までのスピードは、技術力はもちろんですが、ハードディスクの部品保有数も重要なポイントです。データ復旧の依頼を受けてからドナー部品の調達にあたるデータ復旧会社もありますが、そうなると部品到着まで3~7日間程度費やしてしまいます。当社では、数万台のドナー部品を保有しています。それにより、ご依頼後すぐに復旧作業にあたることができるので、お待たせせずにスピーディにデータ復旧を行えるのです」と安藤氏。渡辺氏は、「お問い合わせからデータ復旧完了まで、スピード対応できる技術があるから、官公庁や上場企業からも数多く選ばれている実績があるのです」と得意気に語った。

復旧サービスを選ぶ6つのポイント

 データ復旧サービスの選び方について聞くと、当事者ではあるが、3人は客観的なチェックポイントとして「スピード」「セキュリティ」「技術力」「金額があまりに安くはないか」「事例を実名で出しているか」「見学してみる」という6点を挙げる。

 「スピード」は復旧期間。あまりに長いようであれば、海外など外部に委託している場合もあるという。「セキュリティ」は、ユーザーの個人情報を含むデータを取り扱うために必要であり、また企業としての投資規模が伺える部分でもある。「金額」があまりに安い事業者は、個人や異業種の副業でやっている場合もあり、ひいては「技術力」にもつながる。「事例を実名で出しているか」はひとつの目安だが、嘘のつけない実績になる。

 そして、それらを含めて最後の「見学してみる」というのが有効だという。実際にディスクを持ち込むなど、事業者を訪問してみると、実際の姿が見える。個人や企業の副業だったりはしないか、ちゃんとクリーンルームを備えているか、セキュリティ体制はしっかりしているか、技術力はしっかりしていそうか、ということがある程度わかる。

金属探知ゲートや静脈認証、24時間365日撮影の防犯カメラも設置

防犯カメラ
防犯カメラの映像は1年以上保存される

 セキュリティの取り組みの実例として、OGIDの社内を見せてもらった。気付くのは、さまざまなところで防犯カメラが設定されていることだ。

 防犯カメラは人の動線をすべてカバーしているといい、24時間撮影し続けている。赤外線によって暗闇でも撮影可能で、バットでも割れないようカバーされている。撮影した映像は第三者機関のセキュリティ企業が監視し、データは1年間以上保存されるという。

 また、各エリアや部屋はセキュリティカードや静脈認証による入退室が義務付けられており、入退室のログを監視している。たとえば、A地点とB地点の間の移動時間が長くなりすぎたら警備員にレポートが上がるようになっている。これにより、不正や書類紛失などの事故を防ぐ。

 ハードディスクを扱う作業エリアの入口には、空港にあるような金属探知ゲートを設置。ベルトや靴、金属物などを外し、警備員に渡して通らなくてはならない。来客の場合も、荷物を外のロッカーに預けるか、カバンの中身を警備員にチェックさせる必要がある。USBメモリーなどの電子記録メディアは持ち込み禁止だ。

 セキュリティに関しては「日常の行動が重要」と渡辺氏。入社時には、アルバイトも含めて、何か起きたら損害賠償もありうる保証人が必要となる。入社後は、離席のときには必ずパソコンをロックしてモニターを消したり、紙はセキュリティボックスに入れたりといったセキュリティ研修を受けることとなっている。

 「家でもつい、席を立つときにパソコンのモニターを消してしまうんです」と苦笑する渡辺氏だが、「もし診断や修復の作業でハードディスクの状況を悪化させてしまうと、『1秒でも早く1つでも多くのデータを復旧します』という精神で日々取り組みを行っている我々でも直せなくなってしまう。絶対に戻したいデータなら最初から信頼のおける会社に頼んでほしい」と語る。

各エリアや部屋はセキュリティカードや静脈認証による入退室が義務付けられているハードディスクを扱う作業エリアの入口には、空港にあるような金属探知ゲートが設置されている
USBメモリーなどの電子記録メディアは入室時にロッカーに預ける必要がある

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(高橋 正和)

2010/11/8 00:00