清水理史の「イニシャルB」【特別編】

3階でも速い! 買いやすい価格なのにハイエンド並みの実力で10ギガを生かすパフォーマンスを実現したエレコム「WRC-BE72XSD-B」

 エレコムからWi-Fi 7ルーターの新製品「WRC-BE72XSD-B」が登場した。5764Mbps+1376Mbpsのデュアルバンドに対応し、10Gbps対応のWANポートも備えたミドルハイに位置づけられる製品だ。ダイレクトショップでの実売価格が2万2000円台という買いやすい価格ながら、有線も、無線も高い実力を持った注目製品だ。その実力を検証してみた。

エレコムのWi-Fi 7ルーター「WRC-BE72XSD-B」

買いやすい価格で10Gbps回線対応を実現

 エレコムから登場した「WRC-BE72XSD-B」は、10Gbps回線環境に適した製品だ。

 現状、10Gbps回線向けの製品は、デュアルバンドのミドルハイからトライバンドのハイエンド製品が中心となっており、価格は安くても実売で2~3万円、ハイエンドなら5万円という価格設定がなされている。

10Gbpsに対応しながら実売2万2000円前後を実現

 本製品は、こうした10Gbps対応ルーターの中でもリーズナブルで、WAN用の1ポートのみとはなるものの10Gbpsポートを備えながら、実売価格で2万2000円前後という買いやすい価格設定がなされている。

 それでいて、無線性能はWi-Fi 7の5764Mbps+1376Mbps対応となっており、5GHz帯+2.4GHzのみのデュアルバンド対応ながら、両帯域とも4ストリーム対応と、パフォーマンス重視の構成だ。

 しかも、詳細は後述するがベンチマークテストの結果も良好で、スペック的にはミドルハイ、実力はハイエンド機並み、価格的にはエントリーとまでは言わないがミドルレンジの中では安い方、というイイトコドリをした製品となっている。

 近年、Wi-Fiルーターは価格面での競争がひと段落した印象だったが、久しぶりに海外メーカーとも勝負できるコストパフォーマンスを実現した製品が登場したという印象だ。

エレコム WRC-BE72XSD-B
項目内容
市場想定価格2万2800円
CPU-
メモリ-
無線LANチップ-
対応規格IEEE802.11be/ax/ac/n/a/g/b
バンド数2
320MHz対応-
最大速度(2.4GHz)1376Mbps
最大速度(5GHz-1)5764Mbps
最大速度(5GHz-2)-
最大速度(6GHz)-
チャネル(2.4GHz)1-13ch
チャネル(5GHz-1)W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)-
チャネル(6GHz)-
ストリーム数(2.4GHz)4
ストリーム数(5GHz-1)4
ストリーム数(5GHz-2)-
ストリーム数(6GHz)-
アンテナ内蔵(5GHz×5、2.4×4)
WPA3
メッシュ〇(EasyMesh準拠)
IPv6
IPv6 over IPv4(DS-Lite)
IPv6 over IPv4(MAP-E)
有線(LAN)1Gbps×3
有線(WAN)10Gbps×1
有線(LAG)-
引っ越し機能
高度なセキュリティ
USB-
USBディスク共有-
VPNサーバー-
DDNS-
リモート管理機能-
再起動スケジュール-
動作モードルーター/AP/中継器
ファーム自動更新
LEDコントロール-
ゲーミング機能-
サイズ(mm)58×146×215

デザインも機能もシンプル

 それでは実機を見ていこう。デザインは、近年のエレコムの他のモデルと共通して、見た目はただの黒い箱というシンプルなものになっている。

 曲線的なデザインや余計な装飾はなく、前面はLEDとロゴのみとあっさりしていて、側面も放熱のためのメッシュ構造となっているだけで、主張がほとんどない。通信機器として裏方に徹しようという意思が感じられ、どんな環境にもなじむデザインになっている。

正面
側面
背面

 インターフェースは背面に集中している。前述したようにインターネット接続用のWANポートが10Gbps対応となっており、LAN側は3ポートすべてが1Gbps対応となる。LAN側にも10Gbpsや2.5Gbpsが欲しいと考える人も少なくないかもしれないが、本製品はあくまでも10Gbps回線を生かすという点に焦点が当てられている。

 このほか背面には、物理的なモード切り替えスイッチも搭載されており、「ルーター/AP/中継器」の切り替え、さらには無線の「通常/離れ家」モードの切り替えが可能になっている。

スイッチでモードを切り替え可能。「離れ家」モードも搭載する

 「離れ家」モードとは、母屋に設置した本機に離れから接続する場合など、屋外に電波が広がる可能性があるケースで、屋外利用も可能な5GHz帯の帯域(W56)のみを自動的に選択する機能となる。屋外利用できないW52/W53の帯域が知らず知らずのうちに使われて、意図せず法令に違反する使い方をしてしまうケースを防止できる機能だ。

 エレコム独自の親切機能で、屋外で利用する可能性がある場合でも法令に違反することなく、安心して利用できるのが特徴だ。

シンプルだが実用的な機能を搭載

 機能的にもシンプルだ。VPNサーバーやUSBポートでのストレージ共有などといった付加的な機能は搭載されておらず、あくまでも「無線でインターネットにつなぐ」という本質を追求した製品となっている。

 例えば、Wi-Fi 7のMLOが標準で有効化されており、Wi-Fi 7対応端末で標準のSSIDに接続すれば自動的にMLOが利用できるようになっている。製品によっては標準でMLOが無効になっているケースもあるが、そういった手間がかからないのがメリットだ。

シンプルな設定画面
MLOは標準で有効

 また、セキュリティ系の機能が強化されているのも特徴だ。PCやスマートフォンを無線で接続するためのSSIDとして、前述したMLO対応の通常のSSIDに加え、「セキュリティWi-Fi」というSSIDも用意されている。

 これは、リモートワークなどを想定したもので、他の端末との通信をブロックできる環境となる。例えば、家庭で利用した場合、家族のスマートフォンなどが接続された通常のSSIDとの通信がブロックされるうえ、仮に同じセキュリティWi-Fiに接続している他の端末があってもその間の通信もブロックされる。

通常のSSIDに加え、セキュリティWi-Fiを用意。端末間の通信を遮断し、マルウェアなどのネットワーク感染の可能性を低くできる

 つまり、このセキュリティWi-Fiに接続した端末は、基本的にインターネットとのみ通信ができる状態になるわけだ。これにより、万が一、家庭内にマルウェアに感染した端末が存在したとしても、ネットワーク経由での攻撃や感染の確率を下げることが可能だ。

 さらに、より高度なセキュリティ機能として、AI技術を利用したセキュリティ機能「F-Secure SENSE」も1年間無料で利用可能になっている。ウイルス対策やブラウザー保護、ペアレンタルコントロールなどの機能によって、本製品に接続した端末を保護できる。

F-Secure SENSEを1年間無料で利用可能

使いやすさも問題なし

 セットアップに関しても簡単だ。

 新規設置の場合であれば、IPv6(IPoE)などのインターネット回線も自動的に判別してくれるため、特別な設定は必要ない。シンプルにケーブルをつないで設置するだけで利用可能になり、付属の「かんたんセットアップシート」のQRコードで無線にもすぐに接続できる。設定らしい設定は必要なく、誰でもすぐに使い始められるだろう。

 また、本製品は、同梱のマニュアル(かんたんセットアップガイド)で、既存のWi-Fiルーターからの移行(交換)手順もていねいに記載されている(パッケージにも記載あり)。ボタン設定のWPSによって、既存のWi-FiルーターからSSIDや無線接続用パスワードを引き継ぐことができるので、すでに家庭内で利用している端末(PC、スマートフォン、テレビ、ゲーム機)などの設定変更をせずに利用を開始できる。

 マニュアルやパッケージに、LINEやWebのチャットサポートへの案内も掲示されているので、初心者でも安心して利用できるだろう。

交換手順もていねいに解説されている
交換方法やサポートへの連絡方法は、さまざまな場所に記載されている。パッケージでも確認可能

アンテナの威力? ベンチ結果は良好

 気になる実力だが、同クラスのボトムレベルという価格からは考えられないほど良好だ。以下は、木造3階建ての筆者宅にて、1階に本製品を設置し、WAN側(10Gbpsポート)にサーバーを接続してiPerf3の速度を計測している。

ベンチマーク結果
1F2F3F入口3F窓際
上り20601150632500
下り212013101060720

※単位:Mbps
※サーバー:Core i3-10100/RAM32GB/1TB NVMeSSD/Intel X540-AT2/Windows11 24H2
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2

 まず、1階の近距離だが、ここは実測で2Gbpsオーバーを実現できた。周囲の環境にもよるが、Wi-Fi 7対応のPCを利用すれば、10Gbps回線の速度を無線でも十分に堪能できる印象だ。

 そして床を1枚隔てた2階も速い。上り1.15Gbpsも下り1.31Gbpsと1Gbpsを超えており、実行速度で有線超えを果たしている。

 さらに3階も距離を感じさせない速度で、真上となる3階入口で上りは632Mbpsと若干落ちたものの、下りは1.06Gbpsと1Gbps超えを実現。最も遠く、遮蔽物も多く、窓から外部の干渉も受けやすい3階窓際でも、上り500Mbps、下り720Mbpsとかなりの実力を示している。

 過去使用した製品の中でも、デュアルバンド機の中ではトップクラスの実力を持っている印象で、ハイエンドモデルにも迫る実力と言ってよさそうだ。

 実際に計測してみた印象としては、今回の検証環境(3階建て)のような垂直方向の通信に強い印象がある。同社によると、「アンテナの指向性とレイアウトをチューニングすることで、指向性の偏りをなくし、より広範囲に強い電波を届けることができる」とのことなので、アンテナの要因が強いようだ。

 また、本製品は5GHz帯に5本のアンテナを搭載している。4ストリームなので本来は4本で済むところ1本追加されている。クライアントの位置に合わせて最適なアンテナを選択できる点も速度に影響していると考えられる。

 エレコムは、グループ企業であるDXアンテナの技術もWi-Fiルーターに応用しているので、こうしたアンテナのチューニングの効果が相当効いている印象だ。いずれにせよ、実力はかなり高い製品と言っていいだろう。

お買い得感が高い

 以上、エレコムの新型Wi-Fi 7ルーター「WRC-BE72XSD-B」を実際に使ってみたが、なかなかお買い得な製品という印象だ。デザインも機能もシンプルだが、無線でインターネットにつなぐという目的においては十分なうえ、セキュリティ面の工夫もされている。

 それでいて、デュアルバンド4ストリーム、10Gbps対応モデルではボトムクラスの価格設定となっているうえ、ベンチマークの結果はハイエンドモデルにも迫る値をマークできている。もともと同社は性能の割にリーズナブルな製品をリリースしてきたが、中でもとりわけ「コスパ」が高いモデルという印象だ。

 設定や交換も簡単なので、10Gbps回線を利用している、もしくはこれから検討しているユーザーにおすすめの製品と言えるだろう。

清水理史の「イニシャルB」チャンネル――お手頃価格なのに性能がスゴい!! エレコムの新型Wi-Fi 7ルーター「WRC-BE72XSD-B」を速攻レビュー

お手頃価格のミドルクラスなのに、WANは10GbE対応で、Wi-Fi速度も速い! でもそれだけじゃない!! 全方位でコスパがスゴいエレコムの新型Wi-Fi 7ルーターを清水理史が動画で紹介する。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中