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Excelも3割高速に!最新ゲーミングPCと「7年前の高性能PC」を仕事視点で比べてみた

「昔のCore i7」もそろそろ替えどき?

「重いExcelファイル」は仕事の悩みの一つといえる
「デジタル一眼レフカメラの現像」もビジネス活用されるようになってきた

 現代は、仕事のかたちが様々に変化している時代だ。

 「仕事でPC」といえば、これまではWord、Excel、PowerPointといったオフィス系アプリが定番だが、昨今は、デジタル一眼レフカメラで撮影した写真をスムーズにRAW現像したり、製品アピール用の動画を快適に編集するといったことも増えている。また、一部ではVR(Virtual Reality:仮想現実)や3Dプリント用として3Dデータを活用する、といったことも徐々に増えているという。

 また、そもそものオフィス系アプリにしても、使用するデータが高度化、あるいは「秘伝のタレ」化して動作が重くなっている場合も多いだろう。

 そこで今回は、こうした使い方を前提に、ゲームプレイのための高性能PCである「ゲーミングPC」を活用する例を紹介してみたい。ゲーミングPCでは高性能なCPUやSSD、ビデオカードを搭載しており、最新のPCゲームを快適にプレイできるが、そうしたPCを使うことで、仕事環境がどうなるか、気にしてみてもらえれば幸いだ。

 また、昨今はサポート終了を前に、仕事で利用しているWindows 7搭載PCの買い換えを検討しているユーザーも多いだろう。

 そこで、比較対象として、Windows 7がプリインストールされていた7、8年前の古い高性能PCを用意した。古いと言ってもCore i7搭載機、「ビジネス向けでは買い替える意味はないでしょ?」と思ってしまう向きもあると思うが、実際のところはどうなのか、参考にしてもらえれば幸いだ。

内部は広く拡張性に優れ、安定して動作する

 今回取り上げるのは、ドスパラのゲーミングPC「GALLERIA XT(ガレリア XT)」シリーズだ。

 ミドルタワータイプの筐体を採用し、ちょっと大きめだが、その分、汎用性の高い高性能PCである。ウェブサイトのカスタマイズメニューから、CPUのグレードやメモリのサイズ、ストレージの構成などを細かく変更できる。最小構成の直販価格は12万9980円(税別)だ。

「GALLERIA XT」の主なBTOメニュー
CPUCore i7-8700(3.2GHz)/Core i7-9700KF(3.6GHz)
メモリ8GB~64GB
システムストレージ500GB~1TB(SSD)
ビデオカードGeForce GTX 1660 Ti搭載モデル
データドライブ1~8TB(HDD)、240GB~1TB(SSD)
光学ドライブDVD-ROM/DVDスーパーマルチ/Blu-ray対応
電源ユニット定格出力500~800W

 CPUは、Intelの第8世代Coreシリーズに属する「Core i7-8700」か、第9世代の「Core i7-9700KF」のどちらかを選択できる。Core i7-8700は6コア12スレッド、Core i7-9700KFなら8コア8スレッドに対応しており、いずれもハイエンドクラスと言ってよいCPUだ。12cm角ファンを採用する高冷却のCPUクーラーを組み合わせているため、熱暴走の心配もなく安心して利用できる。

 ビデオカードは、NVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce GTX 1660 Ti」搭載モデルを採用する。VRを含む3Dコンテンツの表示、3Dオブジェクトを作成する上でのスムーズなプレビュー表示といったライトな3D処理なら、十分にこなす能力がある。もっと高性能なGPUを搭載するビデオカードもあるが、ビジネス向けPCの場合、そこまで性能を追求しなくても、こうした作業には十分対応可能と考えられる。

CPUクーラーは12cm角ファンを備える本格的なタイプ
GPUに「GeForce GTX 1660 Ti」を搭載するビデオカードが組み込まれている。大型のヒートシンクとファンでしっかり冷却できる

 ストレージは、システムドライブのSSDと、データドライブのHDDという構成だ。SSDはリード/ライトがHDDに比べるとはるかに高速なので、Windows 10やアプリを快適に利用できる。一方、HDDは、同じ価格で比べるとSSDよりも容量がずっと大きいので、デジカメのRAWデータや動画の素材など、大容量のファイルを保存するのに向いている。高性能PCの最適解とも言える構成だ。

高速なM.2対応SSDをシステムストレージとして採用
データドライブのHDDはPCケースのシャドーベイに搭載する

 筐体は、スタンダードなミドルタワーケースを採用する。側板をあけて内部を見ると、この中にATX対応マザーボードや電源ユニット、ストレージなどが組み込まれていた。内部はかなり広く、光学ドライブを組み込める「5インチベイ」は5基(うち1つは3.5インチベイを兼ねる)、HDDやSSDを組み込める「3.5/2.5インチベイ」のトレイは5基装備していた。

 マザーボードの拡張スロットは、PCI Express 3.0 x16スロットをビデオカードが利用しているだけなので、さまざまな拡張カードを利用して機能を強化できる。また、拡張カードまわりのスペースはゆったりとしており、干渉する構造物もない。性能や機能を強化したくなったとしても、気軽に試せるわけだ。

 また、PCケースの前面や天板、底面には、多数の細かいパンチング穴をあけて風通しをよくした「メッシュ構造」を採用。前面と背面、そして天板にもケースファンを搭載しており、冷却性能が高い。高性能なパーツは発熱も大きく、冷却性能が低いPCケースでは熱暴走を起こすこともある。しかし、GALLERIA XTシリーズならそうした心配はいらない。

内部は広く、拡張性は高い。ケーブルは各所でしっかりとまとめられており、ファンへの干渉もない
メッシュ構造を採用する天板には14cm角ファンを搭載する

7、8年前のPCと比べると、概ね2倍の基本性能

 ここからは、古いPCと最新PCでいくつかのベンチマークテストを行ない、どのくらい性能が向上するのかを検証していこう。GALLERIA XTと古いPCの主な仕様を下の表にまとめた。古いPCは概ね7、8年前のミドルレンジモデルであり、当時の実売価格は今回のGALLERIA XTとほぼ同じと考えてよい。

検証したPCの主な仕様
GALLERIA XT比較PC
CPUCore i7-8700
(3.2GHz、6コア12スレッド対応)
Core i7-2700K
(3.5GHz、4コア8スレッド対応)
メモリ16GB8GB
ビデオカードGeForce GTX 1660 Ti搭載モデルGeForce GTX 660 Ti搭載モデル
システムドライブ512GB(M.2 NVMe SSD)1TB(SATA-HDD)
データドライブ1TB(HDD)なし
総合性能は「約2倍」、個別性能も大幅な伸び

 まずはPCの基本性能をScoreで示す「PCMark 10 Extended」の結果を見てみよう。このテストでは、Scoreの数値が大きい方が性能が高い。新PCにリプレースすることで、総合Scoreは約2倍にアップする。そのほかの個別項目についても、概ね2倍、あるいは2倍以上の大きな差を付けており、大幅な性能向上が見込めることが分かる。

 MicrosoftのWordやExcelなどの処理性能を計測できる「PCMark 10 Applications」というテストも実行してみた。傾向としてはPCMark 10 Extendedとほぼ同じで、一般的な事務処理でも性能は格段に向上し、作業効率が向上することが分かる。

PCMark 10 Extended計測結果
PCMark 10 Applications計測結果
「重いExcelファイル」で速度を実測、ソート速度が3割高速に
参照を多用したり、ファイル容量が大きかったりする「重い」Excelファイルの処理は、高性能PCの本領を発揮できる用途の1つ

 ただ、実際にどの程度高速化するのかが分からないと信用できない!という人もいるかもしれない。そこで今回は、参照を多用した「処理の重い」Excelファイルを使っていくつかのテストを行なった結果を紹介しよう。

 テストに使用したのは、「Web通販をしている会社の注文履歴データ」という想定のExcelファイルで、作業のシナリオとしては「注文金額の多いお得意様を探し、最後の注文日や注文商品を確認して印刷し、販促に活用する」といったイメージ。ファイルの規模は、30個の商品、3,000人の顧客、25,000回の注文記録が保存されており、データの追加が効率よくできるよう、セルやリストごとに複雑な参照関係ができている。

 このテストでは、処理時間が短い方が性能が高い。

 まずは2万5000件の注文データから、条件を付けてソートしてみる。参照関係が複雑なため、ソートするだけでも重いのだが、最初のソートにかかった時間は比較用PCでは8秒、GALLERIA XTでは5秒だった。つまり、ほぼ30%ほど早くなった計算だ。さらに、2回目以降のソートは、比較用PCで3秒、GALLERIA XTで1秒となった。ストップウォッチ計測のため、誤差はあるが、測定上は「ほぼ3倍速」というわけだ。ソートは検討作業の中でも基本的な処理なので、ストレスなく検討できるのはメリットだ。

 次に、この膨大なデータから小計を算出してみたい。小計作業はそれ自体が重い上、顧客数が多い場合は(今回は3000人に設定)、かなり時間のかかる作業になる。今回用意したExcelファイルで作業を行ってみると、比較用PCでは7分12秒かかったのに対し、GALLERIA XTでは5分21秒で処理が終了した。

 最後に行ったのが、シートを印刷用に整形するマクロの実行だ。

 具体的には、セル内容に応じて、セルのサイズを微調整するもので、比較用PCでは11秒、GALLERIA XTでは5秒という結果になった。なお、実はこのマクロ、実行中の再表示を抑止することで、昔のPCでも非常に高速に実行できる。ただし、その場合、実行中の様子が見えなくなるため、想定外のデータで誤動作したり、バグがあったりした場合、「まったく状況がわからない」ということになる。なので、それほど長い時間かかるのでなければ、「表示したまま実行」にしたいところ。処理時間の短縮には、こういうメリットもある、ということだ。

RAW現像の処理時間は半分に

 高品質な製品写真や証明写真の作成では、デジタル一眼レフカメラを使うことも多い。その場合、センサーが取得した「RAWデータ」をそのままPCにコピーし、「RAW現像ソフト」を使って、細部にわたって調整を行なって「RAW現像作業」で、一般的なJPEGデータなどに変換するのがベストの作業フローだ。

 ただしこのRAW現像作業、高性能なCPUがないと高速に処理できない。ローエンドPCに向いている作業ではないのだ。今回はソニーのミラーレス一眼カメラ「α6000」で撮影した10枚のRAWデータを、対応するソニー製のRAW現像/管理ソフト「Imaging Edge」を使ってRAW現像を行う時間を計測した。このテストでは、処理時間が短い方が性能が高い。

デジタルカメラメーカーが無償で提供するRAWファイル管理ソフトでも、RAW現像や細かい画像の調整は可能だ

 比較用PCでは全ての処理に48秒かかったのに対し、GALLERIA XTでは28秒と、約半分の時間で作業できた。ストレージの違いも考慮して、処理前のRAWデータや処理後のJPEGファイルの置き場所をHDDにした状態にしても29秒と、ほとんど変わらない。処理時間の短縮には、CPUの性能向上が大いに貢献することが分かる。

RAW現像の結果
VRのパフォーマンスは10倍、旧世代機での活用は無理?

 また、VR環境での快適さをScoreで検証できる「VR Mark」では、比較的負荷の低い「Orange Room」というテストでも、比較用のPCに比べ10倍以上という圧倒的な差を見せ付けた。VRコンテンツを作成したり、そのクオリティを検証したりする業務があるなら、旧世代のPCではそもそも仕事にならない、ということだ。

VR Mark計測結果
NVMeのSSDはSATA-HDDの10倍速以上! 大容量ファイルも快適に

 また、比較用PCのシステムストレージはSATA-HDD、GALLERIA XTはNVMe-SSDだ。前述の通り、SSDの読み書き性能はHDDと比べると非常に高く、特にNVMe-SSDを搭載するGALLERIA XTでは、Windows 10やアプリをサクサクと利用できる。GALLERIA XTのあとに古いPCでさまざまな作業を行なうと、1つ1つの操作すらもたつくその遅延感に愕然とするだろう。

 こうしたHDDとSSDの性能差を、「CrystalDiskMark 6.0.2」で実際に計測したのが下の画像だ。CrystalDiskMark 6.0.2では、数字が大きいほうが性能が高い。大型のファイルを読み書きする「シーケンシャル」性能はもちろん、OSやアプリの細かいファイルを読み書きする「ランダム性能」も、GALLERIA XTが圧倒している。

「GALLERIA XT」のCrystalDiskMark 6.0.2計測結果
比較用PCのCrystalDiskMark 6.0.2計測結果

ゲームのパフォーマンスは劇的に向上FFベンチでも約2.5倍に

 最後に、グラフィックス性能を比較してみよう。GALLERIA XTのビデオカードに搭載されているGeForce GTX 1660 Tiは、位置付け的には「GeForce GTX 660 Ti」と同じミドルレンジのGPUである。しかし世代的にはなんと6世代も進んでおり、PCゲームやVRコンテンツを快適に楽しむのに必要な3Dグラフィックス性能は、大幅に向上している。

 性能テストでよく使われる「3DMark」で、それぞれの3Dグラフィックス性能を比較したのが下のグラフだ。このテストでは、Scoreが高いほど性能が高い。実行したのは、DirectX 11世代の性能検証に適した「Fire Strike」と、DirectX 12世代に適した「Time Spy」の2つだが、どちらのテストでもGALLERIA XTが圧勝している。

3DMark計測結果

 PCゲームへの適性が高いゲーミングPCなので、実際のPCゲームを利用したベンチマークテストも実行してみよう。「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズベンチマーク」は、オンラインゲームの「ファイナルファンタジーXIV」をどれだけ快適にプレイできるかを検証できるベンチマークテストで、Scoreの数値が高いほど性能が高い。GALLERIA XTのScoreは比較用PCの約2.5倍であり、コマ落ちもなく非常に快適にプレイできることが分かる。

 ちなみにこのPCは、僚誌GAME Watchによる認定ゲーミングPCでもある。これについては「Apex Legends」を使った詳しいレビューがGAME Watchに掲載されているので、気になる向きはそちらも参考にしてほしい。

漆黒のヴィランズベンチマーク計測結果(解像度1920×1080、最高品質、フルスクリーンモードで計測)

「古い高性能PC」もそろそろ替え時?

 PCの世界では、日進月歩で世代交代が進んでおり、中核パーツの性能は大幅に向上していく。ハイエンドCPUとミドルクラスのビデオカードを搭載しているといっても、7、8年も前のPCでは、最新環境には対応し切れなくなっているわけだ。Windows 10へのアップグレードも考えれば、リプレースを考えるよい機会と考えるべきだろう。

 最新の高性能パーツを組み合わせたゲーミングPCのGALLERIA XTは、そうした“古い高性能PC”を利用しているユーザーにピッタリのPCといえるだろう。いわゆるビジネス向けのローエンドPCと比べればやや高めだが、ビジネスも含めてあらゆる用途でその高い性能を活用できることを考えれば、コストパフォーマンスは十分に高いレベルにある。

 また、他社のゲーミングPCと比べると、デザインがシンプルでうるさい感じもなく、一般的なオフィスに設置しても違和感がないのも好印象だ。パワフルなビジネスPCが必要なら、ぜひとも検討してほしい1台と言える。