トピック

「SHURE」の会議システムがスゴい!! 会議室の音環境を自動で解析して、オンライン会議の音問題を解消

Amazonや家電量販店での販売も開始し、お手軽導入が可能に

Shureの法人向け会議システム「STEM」を試してみた
数々の賞を受賞している「STEM ECOSYSTEM」
複数のマイクで部屋全体をカバーする
実際に音の聞こえ方を検証してみた

 社外との会議や、社内メンバーとのちょっとしたミーティングは、Web会議で済ませてしまうことが多くなった。ただ、オフィスの会議室に集まって多対多でWeb会議するとき、声の届き具合が気になる……という会社も増えているのではないだろうか。大勢が同席する会議室で、ノートPC1台だけで相手側とやり取りしようものなら、互いに声が聞き取りにくくストレスが溜まるうえ、会議の円滑な進行の妨げにもなる。

 Web会議において音声は「生命線」。取引先企業とのWeb会議で音声が途切れれば、言った言わないのトラブルになり、会社の信用問題にもつながりかねない。だからこそ、会議室の広さと参加人数に合ったマイクや会議システムを見つけたいわけだ。

 けれど今や選択肢は多く、何を導入するのがベストなのか判断がつきにくい。そこへ現れたのが、あのShureが手がける会議システム「STEM ECOSYSTEM」だ。高音質のヘッドフォンやマイクなどで定評のあるメーカーだけに、会議システムにおいても音質にこだわっているに違いない。

 さまざまな会議室にマッチするように、「STEM ECOSYSTEM」ではタイプの異なる複数のモデルがラインアップしている。しかも自動で室内の音場環境を測定して最適化する機能もあって、DIYでの取り付けでも最適な音響セッティングが可能と言う。

 そこで今回は、ラインアップのなかでも特に手軽に、幅広い会議室環境で利用しやすいモデルを使って、実際にオフィスの会議室で試してみた。

「民生用では得られないクオリティ」のShure製品を一般販売

「STEM ECOSYSTEM」の製品ラインアップ

 音響機器のShureがプロデュースする「STEM ECOSYSTEM」(以降、STEMシリーズ)は、Web会議システム向けのマイクやスピーカー、制御用のタッチディスプレイなどを含む音響製品群。実は以前から法人向けに販売されてきたものだが、基本的にシステムインテグレーターなどを通じて導入する業務用製品に位置付けられていたため、一般のユーザーが目にする機会は少なかったかもしれない。

 ところが2023年からは、Amazonや家電量販店での取扱も開始し、ユーザーが直接購入して自らの手で自社会議室に設置できるようになった。ラインアップの一部には、壁や天井に穴開けが必要など、業者に依頼した方がスムーズに使い始められそうなものもあるが、テーブルの上に置くだけの、DIYで簡単に導入できるモデルももちろんある。民生用のマイクでは得られないクオリティを手軽に体感できるようになったのはありがたい限りだ。

 STEMシリーズには、スピーカーとマイクが一体になったスピーカーフォンや、単体のスピーカーやマイク、そしてそれらを制御するためのタッチディスプレイやハブがある。このうち最も容易に導入できるのが、今回主に試した「STEM TABLE」というスピーカーフォンだ。

スピーカーフォン「STEM TABLE」

 会議室のテーブルの中央に置き、周囲の人の声を拾いつつ相手側の声も聞けるスピーカーフォンは、企業のオフィスで採用されている例が多い。「STEM TABLE」もそういった広く活用されているスピーカーフォンと同じ役割をもつ製品だが、そこはShure、ひと味もふた味も違うユニークな特徴をもっている。

会議室のテーブル中央に置くことで、周囲の声をまんべんなく拾う

手軽に導入可能なスピーカーフォン「STEM TABLE」、ポイントはやはり「音質へのこだわり」

 「STEM TABLE」の特徴の1つは、やはり音質へのこだわり。

 筐体内には9個のマイクが円環状(と中央)に配置され、ビームフォーミング技術によって周囲で話している人の方向を特定して的確に収音する。一方でスピーカーは筐体底面に向けて配置することで、相手側の声が内蔵マイクに拾われてしまうことを防ぎ、しかもクリアな音声を実現しているという。マイクの聞こえ方については、後ほど紹介する動画で確認してみてほしい。

声に反応してその方向に青いライトが光る

 次の特徴は、USBケーブルでの利用ができること。とりわけUSB接続はSTEMシリーズにおいては一番リーズナブルな使い方で、一番簡単な使い方だ。

 「STEM TABLE」とPCをUSBケーブルで接続したときは、そのPC上で外部スピーカー兼マイクとして認識され、ZoomやGoogle Meet、Microsoft TeamsなどのWeb会議ツール上で音声デバイスとして指定できるようになる。なので、あとはいつも通りWeb会議を始めるだけ。6~8人程度のさほど広くない会議室であれば、1台のPCと1台の「STEM TABLE」で十分に間に合う。

1台の「STEM TABLE」をPCとUSB接続して使うときの配線例
Web会議ツールで、マイクとスピーカーに「STEM TABLE」を指定できるようになる

 8人以上が同席するような、より広い会議室で利用したいときは、2台以上の「STEM TABLE」を接続したい。そのような場合は、LAN接続することで複数台の「STEM TABLE」を同一の会議室に置いて連動させることができ、収音範囲や音声の聞こえる範囲を広げることができるのだ。これこそがSTEMシリーズの醍醐味と言えるだろう。

 この場合は必要な台数の「STEM TABLE」をLANに接続し、別途「STEM HUB EXPRESS」という周辺機器も追加して同じくLAN接続する。さらに「STEM HUB EXPRESS」をUSBケーブルでPCとつなげば利用準備OKだ。

2台の「STEM TABLE」をLAN接続して利用するときの配線例
Web会議ツールで、マイクとスピーカーに「STEM HUB Express」を指定できるようになる

会議室の広さ、間取りに合わせて音響特性を最適化する「RoomAdapt」

複数のSTEMデバイスを使用するときに必須の「STEM HUB EXPRESS」

 「STEM HUB EXPRESS」を導入するメリットは複数台のSTEMをリンクさせて1つの会議用システムとして動作させることだ。

 PCのWebブラウザーで「STEM HUB EXPRESS」のIPアドレス、または同じネットワークに接続されているSTEM製品のIPアドレスにアクセスすることで管理画面が表示され、会議室の構築など、より進んだ機能が使えるようになるのだ。

PCからアクセスした管理画面
ネットワークに接続しているSTEMデバイスの状況確認、設定変更などができる

 このうち「より進んだ機能」というのがSTEMシリーズの目玉と言える「RoomAdapt」という機能。

 「RoomAdapt」を使うことで、会議室の形状や広さに応じてマイクの収音特性などを、音響のプロに頼むことなく、自動で最適化できるのだ。使い方は、管理画面上でスピーカーフォンなどの設置場所、什器や壁などの配置を実際の会議室と同じになるようにして間取り図を作成し、「RoomAdapt」の実行ボタンを押すだけ。そうするとスピーカーからテスト音声が出力され、同時にマイクでそれを聞き取って、部屋の音の反射の仕方などを解析し、会議室の環境を考慮した収音方法などに自動で最適化してくれる。

2つの「STEM TABLE」を会議室に設置
管理画面上のツールで会議室の間取り図を描く
左下に見える「ROOM ADAPT」を実行
スピーカーフォンからテスト音声が流れ、1分もかからずに最適化が完了する
続いて「ROOM CHECK」機能で実際に声を出してテストしてみると……
声の届く範囲をヒートマップ化。人の座る場所が、声の届きやすい緑色ですっぽり覆われている

 会議室は単純な矩形の間取りになっていることもあれば、台形や円形になっていることもあるだろう。それによって参加者1人1人の声の届き方やスピーカーからの音の聞こえ方は変わるし、什器の配置や壁の素材などによっても音の反響の仕方は異なるはずだ。そうした会議室ごとに異なる音響特性を、管理画面上での簡単な操作で自動判定して、Web会議に理想的な環境を作り出せるというわけ。

「STEM TABLE」の音質をWeb会議ツールの動画でチェック

 では、実際のところ「STEM TABLE」で収音した音声がどんな風に聞こえるのか、Web会議ツールで発声時の様子を録画したので確認してみよう。

 ここではマイクの違いによる差がわかりやすくなるように、8人程度までを収容できる小会議室で「ノートPCの内蔵マイクを使った場合」と「1台のSTEM TABLEを使った場合」、14~15人程度を収容できる中サイズの会議室で「2台のSTEM TABLEを使った場合」の3パターンを試してみた。

「ノートPCの内蔵マイクを使った場合」と「1台のSTEM TABLEを使った場合」の2パターンを試した小会議室
「ノートPCの内蔵マイクを使った場合」と「1台のSTEM TABLEを使った場合」(Google Meetの録画機能を使用)
「2台のSTEM TABLEを使った場合」を試した中サイズの会議室
「2台のSTEM TABLEを使った場合」(Google Meetの録画機能を使用)

 「ノートPCの内蔵マイクを使った場合」は、ノートPC近くの人と離れた人との声量の違いは明らか。それなりに声を張っているので聞き取れはするものの、離れた人の声はやはり遠くに感じられ、ノートPC背面側から回り込むようにして届くことが影響しているのか、音の歪みが目立つ。

 対して「1台のSTEM TABLEを使った場合」は、しゃべっている人の位置に関係なく、音量は一定。人の声の周波数付近にフォーカスした輪郭のくっきりしている音質で、歪んで聞こえるところはほとんどない。いきなり滑舌が良くなったように感じるほどだ。

 次の「2台のSTEM TABLEを使った場合」で注目したいのは、室内を歩きながら話しているときの聞こえ方。スピーカーフォンの近くで座って話しているときにはっきり聞こえるのは当然として、歩いているときはスピーカーに近づいたり離れたりを繰り返しているにもかかわらず、音量は座っているときとほぼ変わらない。

座った状態だけでなく、歩きながら話したときの聞こえ方も確認したが、音量はおどろくほど一定だ

 これこそがまさしくSTEMシリーズの真価と言ってもいいだろう。もし会議参加者が大勢いて、1人1人マイクから異なる距離感のところで話すとしても、自動で全員同じ音量レベルにならして確実に収音し、相手に明瞭な音声で届けられる。「会議室の隅っこでぼそぼそしゃべっていて聞こえない」なんてありがちなシチュエーションとも、これでおさらばできる。

壁掛け型や天井吊り下げ型のスピーカー、マイクも

 今回は導入しやすいモデルである「STEM TABLE」を試したが、冒頭で少し説明したようにSTEMシリーズにはいくつかのバリエーションモデルがある。

 たとえば「STEM WALL」は、会議室の前方に置くか、もしくは壁掛けして使う横長のスピーカーフォン。幅は大きいものの、サウンドバーのようなスリムなシルエットは、中規模以上の会議室なら目立ちにくい外観だ。15基ものマイクを内蔵し、会議室のあらゆる場所からの人の声を正確に収音。フルレンジスピーカーだけでなくサブウーファーも搭載していることで、人の声はもちろんプレゼン中の動画音声なども高音質で再生してくれる。会議室に据え置きしている大型モニターや別体型のカメラを組み合わせて使うのに最適だ。

壁掛け対応のスピーカーフォン「STEM WALL」
大型モニターとの組み合わせはベストマッチ

 相手の声をさらにクリアに聞こえるようにしたい場合は「STEM SPEAKER」が役に立つ。スピーカー単体製品なのでマイクを別途組み合わせる必要はあるが、付属の脚を取り付けて使えるのに加え、壁面に取り付けたり、天井に埋め込める構造にもなっていて、設置の自由度が高い。壁や天井と一体にすることで室内の視界や見栄えを良くし、しかもさりげなく音量・音質アップを図れる。

壁や天井に埋め込み設置も可能なスピーカー「STEM SPEAKER」

 「STEM SPEAKER」を導入するなら、それと一緒に使いたいのが「STEM CEILING」。天井に埋め込んだり、天井から吊り下げて設置する円盤状の大型マイクで、内蔵している100基のマイクと3段階の指向性制御による収音で、会議室内の必要な範囲の声を効果的に拾える。会議参加者の声はきれいに捉えつつも、会議室外からの雑音はカットして、集中力を切らさずに議論できるだろう。

天井に埋め込んだり吊り下げたりして設置するマイク「STEM CEILING」
600mmのグリッド型システム天井にはまるスクエア型のマウントに加え、624mm、24インチに対応させるスペーサーも付属
天井などに吊り下げる部品も付属する。ただし、実際の施工には安全面を考慮し、必要に応じて専門業者による取り付けを推奨

 これらSTEMシリーズの製品は、先ほど説明した通り、PCから管理画面にアクセスして細かな設定ができたりする。とはいえ、そうした機能を使うためにいちいちPCを開くのが手間に感じることもあるかもしれない。

 そこで便利なのが、各種設定をPCなしで可能にするタッチディスプレイ「STEM CONTROL」だ。タッチ操作で管理画面にすばやくアクセスでき、もちろん「RoomAdapt」などの機能も利用可。さらに、PCまたはMacにインストールされたZoom Roomsなどの会議システムやビジネスコミュニケーションサービスを画面から直接呼び出せるようにもなっている。

専用タッチディスプレイ「STEM CONTROL」。スタンド一体型で2段階の角度で使える
画面はPCのWebブラウザーでの見え方とほぼ同じ
STEMデバイスの確認・設定も自在
接続したPCにインストールされたZoom RoomをはじめとするWeb会議環境の操作画面に切り替えることができる

PoE+で配線の手間は最小限、必要な機能だけ組み合わせて導入できる

 ところでSTEMシリーズにはもう1つ面白いポイントがある。

 それは、どの製品も電源供給はLANケーブル経由のPoE+のみに対応すること。社内LANへの接続と電源供給を1本のLANケーブルで実現するため、配線の手間が大幅に軽減されるのが利点だ。

STEMシリーズの各製品は共通してPoE+で電源供給する仕組み

 ただし、そのためにはネットワークスイッチ(ハブ)がPoE+による電源供給に対応している必要があり、そうした設備がない環境ではスイッチの交換(または通常のLAN環境で電源供給できるようにするPoE+対応PoEインジェクターの追加)は欠かせない。場合によっては利用ハードルが高くも低くもなりえることに注意しておきたい。

STEMデバイス1台あたりの消費電力は最大24W。PoE+対応ネットワークスイッチに複数台接続するときは、トータルの供給可能電力を確認しておきたい

 いずれにしろ、STEMシリーズの製品の組み合わせバリエーションは豊富で、性能にも隙はない。今の会議室に不足している機能だけを補完する形で導入してもいいし、いくつかまとめて導入してWeb会議環境全体を大幅にグレードアップするのもいい。会議室の大きさ、参加する最大人数、重視する機能や予算などを勘案して、自社にマッチするものを選んでみて欲しい。STEM ECOSYSTEMは3月17日よりAmazon、SOUND HOUSE、ビックカメラ、楽天市場、ヨドバシカメラなど、量販店・オンラインショップで購入可能だ。

●Stem ECOSYSTEMのページは こちら