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手が届く価格の「40Gbpsの超高速NAS」で業務を改善、プロカメラマンが聞く「QNAP Thunderbolt 4 NAS」の威力とは

映像・写真スタジオの制作フローを圧倒的改善?

理論値40Gbpsの転送ができるThuderbolt 4を備えたQNAPのNAS「TVS-h674T」。Thunderbolt 4のほか、2.5GbEのポートも搭載、拡張カードを使えば10GbEや25GbEにも対応する

 NAS、といえば共同作業やデータの保管に便利なストレージデバイスだ。

 複数のSSDやHDDを組み込むことで100TBを超えるような大容量ストレージを実現することができる上、SSDやHDDが故障してもデータを失うことが無いようRAIDなどによる保護機能も搭載、そしてネットワークを介して様々なところからアクセスできる。また、最近は2.5GbEや10GbEに対応した製品も出てきており、速度も高速化されている。

 しかし、2.5GbEや10GbEを搭載したノートPCなどはまだまだ少数派。本格的に活用するには、ノートPCなどにもかなりの制限が出てしまう。

Thunderbolt 4のコネクタ。最近のMacやWindowsでは搭載している製品が非常に多い。コネクタはUSB Type-Cと同じだが、雷マークがついていることで判別できる。

 そうした状況で、興味深い製品と言えるのがThunderbolt 4で接続できるQNAPのNAS「TVS-h674T」(6ベイ)と「TVS-h874T」(8ベイ)だ。

 Thunderbolt 4は、最近のMacやWindowsでは搭載している製品が非常に多く、最大速度も理論値で40Gbpsと極めて高速。1000Base-T(1Gbps)が普通だった一昔前の有線LANとまさに桁違いのスピードだ。その実効速度も「8ベイの製品で1700MB/s以上出ることを確認している」(QNAP)という。

 こうした特徴から「大容量のデータ転送や共同作業が多い、クリエイターの作業効率を大きく向上させる」(QNAP)のがポイントで、小規模から大規模までの映像スタジオや写真スタジオなどを中心に、様々なクリエイターに利用されているという。価格の点でも「HDD/SSD無しの小売価格が50万円台ぐらい」(販売代理店のテックウインド)で、事業用と考えると手が届かない価格というわけでもない。

写真家の若林直樹氏。スタジオ海童を主宰し、雑誌や広告のほか公的機関のカレンダーやポスターなども手がける。最近は映像の仕事も多く、自社スタジオのほか客先のスタジオでの撮影/収録も多い。ライフワークとして自然や癒される空間を求めて国内外を旅しており、国内は全都道府県、海外は25ヶ国を歴訪。トラベルWatchでトラベルフォトギャラリーも連載中。「ICチップからアフリカ象まで撮影する男」

 そこで今回、自社スタジオやスタッフとの共同作業も多い写真家、スタジオ海童の若林直樹氏に「Thunderbolt 4の活用でクリエイターの制作環境はどう変わるか」をQNAPに聞いていただいた。

 お話をお伺いしたのは、QNAPのプロダクトマーケティング部 部長の原 幸人氏と、QNAPの販売代理店であるテックウインドのシニアエンジニア 泉洋行氏。テックウインドでは、映像/写真スタジオなどのクリエイターがどのようにThunderbolt 4搭載NASを活用し、ワークフローを改善できるかをテーマにしたオンラインセミナーを3月に実施予定。

 今回のインタビューでは、製品については原氏に、導入時のサポートについては泉氏に語っていただいた。

圧倒的に高速なThunderbolt 4で接続することで、「DASの高速性」と「NASの利便性」を両立可能

――今のデジタルカメラは、例えば5,000万画素クラスで1枚45MBといったデータ量になり、1日撮影するとかなりのデータ量になるのですが、最近はさらに映像も扱うようになり、4Kは当たり前、さらに「素材を8Kで撮影しておく」といったリクエストも出てきました。私のスタジオは大きな規模ではないですが、データ容量が大きいのでスタッフやお客さんとの受け渡しやバックアップが大きな課題になっています。また、撮影を依頼主のスタジオで行い、作業は自分のスタジオや自宅で行う、といったことも多く、データを持ち運ぶ必要もありますし、「急に出先でデータを取り出す必要がある」みたいなことも時折あります。データの受け渡しや共有の手段として、これまでもポータブルSSDやNASを活用してきましたが、Thunderbolt 4に対応したNASではなにが変わるのでしょうか?

若林氏のスタジオ
編集用の環境は別にある

QNAP プロダクトマーケティング部 部長の原 幸人氏

[原氏] はい、今回ご紹介させていただく「TVS-h674T」や「TVS-h874T」はThunderbolt 4を備えたNASキットで、ネットワークは2.5G/1G/100M/10Mbps対応のLAN端子を備えています。

 ベイは「TVS-h674T」は6つ、「TVS-h874T」は8つありますので、SSDを入れて速度を求めたり、昨今、20TB超まで大容量化が進んだHDDを組み合わせて非常に大きな容量のストレージを構成することもできます。拡張スロットも設けており、ここにカードを追加することで25G/10G/5GbEにアップグレードすることもできます。

TVS-h674Tの背面

TVS-h674Tの背面にあるThunderbolt 4コネクタ

 そして最大の特徴であるThunderbolt 4は、筐体背面に2ポート搭載しています。

 Thunderbolt 4は最大40Gbpsの速度が出ますので、まず、圧倒的に転送時間を短縮できます。

――Thunderbolt 4でNASと接続するというのがイメージできないのですが、それはThunderbolt 4対応ポータブルSSDをつなぐのと同じような感覚なのでしょうか

[原氏] ポータブルSSDを接続する場合は外付けドライブとして認識されます。DASと呼ばれる接続ですね。一方、TVS-h674TなどとPCをThunderbolt 4で接続する際は「IP接続」になります。

 つまりNASと同様に「ネットワークドライブ」として認識されます。

Thunderbolt 4でPCとNASを直結したときのWindowsからの見え方。IPアドレスがつき、ネットワークドライブのように扱える

 この結果、さらに3つのメリットが出てきます。

 「ファイルシステムに依存しないこと」と「大容量を実現でき、容量も増やしやすいこと」そして「そのまま共有でき、セキュリティも確保できること」です。

 まず、一つ目の「ファイルシステムに依存しないこと」ですが、昨今はMacだけでなくWindows PCで作業するクリエイターも多いですし、スタジオ内でもこの作業はMac、この作業はPCといったように分かれていることも多く見受けられますが、USBメモリやDASでは、どうしても「ファイルシステムが違う」といった問題が起きてしまうことがあります。これはThunderbolt 4対応のポータブルSSDでも避けられません。

 「注意していれば大丈夫」な話ではありますが、データが大容量なので、起きてしまうとかなり面倒なことになってしまうかと思います。NASはネットワークドライブとしてアクセスするので、MacでもWindowsでもファイルシステムに関係なくアクセスできます。分担作業などを円滑に行なうことができます。

 二つ目の容量ですが、DASの場合、多くても4TBや8TBが多く、クリエイターが扱うデータ量からすると少なく、足りなくなった際は買い足しになります。結果、台数が増え、データが分散するといった問題が生じます。NASなら最初から80TBや100TBのような大容量ストレージが構築できます。不足してもエンクロージャを追加し、ベイを増やすことで後から拡張可能です。

 三つ目の共有とセキュリティですが、NASはさまざまな方法でデータ共有できるのが本分ですし、アクセス権を設定して制御することもできます。設定すれば、Web経由でアクセスしてもらうこともできますし、例えば、「お客さんが確認するための少容量データをNASが自動作成し、お客さんに見てもらう」なんてこともできたりします。

 一度に複数人で共有することも便利ですし、DASに入れたデータを直接渡すよりもセキュアです。

 若林さんのような小規模のスタジオでお使いいただいても便利ですし、大規模なスタジオさんでは、部署ごとにこの製品を設置し、撮影から戻ってきた場合など、一気にデータ転送をする場合はThunderbolt 4を活用、普段の作業は2.5GbEなどで行う、といった例があるようです。

【外付けSSDやUSBメモリと比べた、Thunderbolt 4 NASのメリット】
ファイルシステムに依存しないMacでもWindowsでもアクセスできる。原理上、「ファイルシステムが違うのでアクセスできない」というトラブルが発生しない。
大容量を実現でき、容量も拡張しやすい100TBのような大容量ストレージを実現できるため、データが分散してしまうことがない。容量が不足しても拡張が容易。
そのまま共有でき、セキュリティも確保できる転送したらすぐに共有できる。「小容量のデータを自動作成」なども可能。アクセス権を設定することでセキュリティも設定できる。

――それは便利そうですね。単純に速度だけではなく、元からあるNASの機能と組み合わせることでワークフローを改善できる、ということですね。

[原氏] はい、その通りです。

 まとめると、「Thunderbolt 4接続による高速さ」「MacやWindowsの混在環境でも問題なく活用できる柔軟さ」「ストレージ容量を大きく拡大できる拡張性」「事務所内はもちろん、社外も含めた共有の高速さ、便利さ」がポイントと言えるでしょう。

 我々としては、小規模から大規模までの映像スタジオや写真スタジオ、デザイン分野のワークフローを大きく改善できると考えています。

クリエイターのワークフローをスムーズにする「NASならではの機能」

――なるほど、では、私の場合の例を相談させてください(笑。私は依頼元を含め、よく使う2つのスタジオがあり、そこで撮影したデータを自宅で作業することが多いのですが「スタジオと自宅でデータを同期する」といったこともできたりするのでしょうか。

[原氏] もちろん可能で、いくつかやり方があります。

 例えば、スタジオにTVS-h674Tを設置でき、自宅 - スタジオ間をVPN接続できるなら、PC/MacからTVS-h674TへはThunderbolt 4で高速転送し、QNAPのクラウドサービス「Hybrid Backup Sync」を介してスタジオと自宅の2つのNASを同期することができ、さらにクラウドにもバックアップする、といったことができます。

「Hybrid Backup Sync」の概念。NASの内容をリモートのNASやクラウド、ローカルPCなどと同期できる

「Hybrid Backup Sync」の設定画面
クラウドを含めた複数のストレージを同期できる

 また、PC/MacのフォルダとNAS内のフォルダを同期する「QSync」や「myQNAPcloud」を使うことで、スタジオや自宅にあるQNAPのNASのデータを手元のPCやMacに同期し、すぐに使えるようにすることも可能です。

 求められる仕事のワークフローに応じて、ご活用いただければと思います。

PC/MacのフォルダとNAS内のフォルダを同期する「QSync」

――なるほど。同期機能を活用できるとよいのですね。また、製品紹介ページを見ていると「リアルタイムトランスコーディング」という機能が気になりました。これについて教えてください。

[原氏] この機能はTVS-h674TやTVS-h874Tに搭載されている高性能なCPUおよびGPUを利用し、動画を自動でリアルタイムにトランスコードできる機能です。

 NASなので簡単に共有できますし、リモートアクセスも可能です。たとえばクライアントが構成チェックをしたいといったニーズがあると思います。構成チェックなら低ビットレートでもかまわないため、この機能が活用できると思います。

――この機能を使ってトランスコード済みのファイルを作成するようなことは可能でしょうか。複数人がチェックを行なう場合などはトランスコード済みファイルにアクセスしてもらったほうが軽負荷でよいこともあります。

[原氏] 可能です。設定の「Multimedia Console」で監視フォルダと出力形式を指定すれば、所定のフォルダにトランスコード済みファイルが出力されます。

 また、クライアントとの情報共有、という点では画像や動画を整理して共有できる「QuMagie」という機能もあります。AIによる画像の自動整理機能もありますので、シーンによっては便利にご活用いただけるのではないかと思います。

「QuMagie」の画面
AIによる自動整理機能も利用できる

――データ自己修復ができるといったことも掲げられています。たとえば壊れてしまった映像ファイルを復元できるのでしょうか。

[原氏] はい。この機能は、NASが持っているRAIDとは違うレベルで実現しているもので、ファイルシステムの「ZFS」によって実現しています。

 具体的には、ファイルの読出し時、常にデータの健全性を確認しており、宇宙線などの影響で一部のビットが反転してしまったようなデータの壊れ方をしても、元のデータに戻すことができます。HDDやSSDの故障についてはRAIDで保護していますが、そのようなレベルではないものについてもしっかり保護している、とご理解いただければと思います。

 なお、TVS-h674TとTVS-h874Tは「QuTS hero」と「QTS」という2つのOSを選べますが、ZFSはデフォルトの「QuTS hero」で利用可能です。

SSD×8台なら1700MB/s超の読み書き可能

――パフォーマンスを引き出すためにはどのようなHDD/SSDを選ぶのがよいでしょうか。

[原氏] TVS-h674Tを例にすると、3.5/2.5インチベイが6つあるので、3.5インチHDDや2.5インチSSDを搭載できます。これらを使って、4基のHDDでRAID 5、2基のSSDでRAID 0(ストライピング)を構成するような組み合わせもできます。これとは別に2基のM.2スロットがあり、こちらにもSSDを搭載できます。M.2スロットのSSDについてはキャッシュとして利用し、メインのHDDの速度を向上させるといった使い方も可能です。TVS-h874Tでは3.5/2.5インチベイが8つになります。

 2.5GbEのパフォーマンスを引き出すならHDDのRAID 5でも十分な速度です。ただし、Thunderbolt 4を含めた性能を引き出すならSSD、とくにM.2に搭載するNVMe SSD(PCI Express 4.0 x4対応)を選ぶのがよいと思います。

 そしてSSDの性能を引き出すには、サーマルスロットリング対策も重要です。製品の背面にはストレージ用に2基のファン、システム基板を冷やすワンサイズ小さなファン、そして電源ファンがあり冷却を行なっています。それでもM.2 SSDのとくに高速なモデルの大発熱対策としてはM.2ヒートシンクもオプションでご用意しています。

 なお、速度については、8ベイのTVS-h874Tの検証結果で、読み書きともに1700MB/s以上となることを確認しています。これは、SSDを8台搭載し、Thunderbolt 4で接続することによるものですが、6ベイのTVS-h674Tでもかなりの速度が出るかと思います。

――HDD/SSDを選ぶ際のポイントを教えてください。

[原氏] そうですね。基本的には、HDDもSSDも製品サイトで公開している互換性検証済みのリストから選んでいただければと思います。HDDやSSDは同じインターフェイスのものでも、普通のPCとNASで細かい制御の仕方が異なります。リストにない製品でも、接続できますし、インターフェイス通り動くはずですが、NASが設計された通りの品質や性能を出すためには、互換性検証リストに掲載された「NAS向け」の製品が必要です。

 テックウインドさんが取り扱うウエスタンデジタル製品で言えば「Red Plus」と上位の「Red Pro」ブランドですね。

 NAS向けモデルのHDDでは振動対策や24時間365日の連続稼働、複数ドライブ搭載時の信頼性が考慮されていますし、SSDでは書き換え可能回数がより余裕をもって設計されているといった違いがあります。

 また、速度についてですが、やはり速度を重視してThunderbolt 4を使うのであれば、SSDを複数台搭載していただくのがよいでしょう。一方、容量を重視するのであればHDDを選ばれるのが良いと思います。100TB以上の大容量ストレージも構築可能です。

チーム作業に最適なThunderbolt 4搭載NASテックウインドが導入をサポート

――最後にポイントをまとめてください。

[原氏] TVS-h674TやTVS-h874Tは10~15人程度の小規模スタジオや、より大きなスタジオではチーム内での設置に最適な製品です。

 Thunderbolt 4に接続して高速伝送を利用する際は、ケーブルの長さに制限がありますから、使う人の近くに本製品がある必要があります。「どこかにしまっておくNAS」ではなく「手元において使うNAS」というイメージですね。

 こうした使い方をすることで、「Thunderbolt 4で手早く転送し、そのままスタッフと共同作業をする」といったことが手軽に行えます。オフィスとスタジオ、収録現場もQNAPのアプリで接続できますし、データをセキュアに集約することができます。現在のクリエイターニーズに応える製品です。

――なるほど。それは便利に使えそうですね。保存するにせよ、共有するにせよ「データ転送の待ち時間」はどうも面倒だったので。ただ、僕もNASは長年使っているのですが、なかなかそこまで考えて導入するのも大変そうです。

テックウインドのシニアエンジニア 泉洋行氏

[泉氏] そうですね。そこで我々、代理店であるテックウインドをご活用いただきたいです。

 TVS-h674TやTVS-h874Tは、基本、HDDレスで販売されるモデルで、お客さまにHDDやSSDを選んでいただくのですが、弊社にご相談いただければ、ニーズに応じてHDDやSSDのご提案をさせていただきます。また、弊社工場でのHDD/SSD組み込みや初期セットアップなども承っていますので、すぐにお使いいただける形でお手元にお届けすることも可能です。

 また、若林さんのようにお悩みの方向けのオンラインセミナーも3月に開催いたします。具体的な内容はこちらにまとめましたが、映像・写真だけでなく、様々なクリエイターの方がスムーズに作業できるよう、「QNAP Thunderbolt NAS」のポイントを1時間でお伝えいたします。定員も余裕をもって用意していますので、「ちょっと興味がある」と思う方がいましたら、ぜひ軽い気持ちでご参加ください。