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法人向けWi-Fi 7機器に価格破壊!? エレコムが本気で作った高性能なのに低価格な法人向けWi-Fi 7アクセスポイント「WAB-BE187-M」を検証する
出社率が高まるオフィスでも快適に使えるか? 複数のPCを接続した状況でさらに妨害電波を出して安定性をテストした
- 提供:
- エレコム株式会社
2024年11月18日 06:00
エレコムから発表された「WAB-BE187-M」(12月上旬発売予定)は、トライバンド合計18700Mbpsの速度、10G PoE++と2.5Gの有線ポート、同時接続最大768台というトップレベルの性能を持った製品でありながら、税込み12万5950円という前世代のWi-Fi 6並の低価格に抑えた画期的な法人向けWi-Fi 7アクセスポイントだ(特設サイトでは無料オンラインセミナーも募集中)。
発売から5年以上が経過したWi-Fi 5やWi-Fi 6のアクセスポイントのリプレイスに適した製品となっており、特にWi-Fi 7ならではの「MLO(Multi-Link Operation)」を利用した同時接続時の安定性に特長がある。その実力を同社のテスト施設で一足先に体験してきたので、その模様をお届けしたい。
Wi-Fi 7普及で時期もいい! 法人向けWi-Fiも5年を目安に買い替えを
現在、オフィスに設置されているWi-Fiアクセスポイントは、どれくらい前に購入した機器だろうか?
もしも、5年、もしくは、それ以上前に購入した製品である場合は、この機会にリプレイスを検討してみることをお勧めする。
理由は大きく3つある。 「セキュリティの強化」「管理負担の軽減」「通信品質の向上」 を実現できる可能性が高いからだ。
セキュリティの強化
脆弱性が放置された古いWi-Fiアクセスポイントやルーターが乗っ取られるニュースを目にした人も少なくないかもしれないが、管理が煩雑な法人向けルーターはファームウェアの更新や管理用パスワードの変更などの対処が見逃されがちで、攻撃の対象になるリスクが高い。
また、法人向け製品は、比較的長くサポートされる傾向があるが、それでもWi-Fi 5世代など、古い製品はメーカーによるサポートが終了しているケースもある。
最新のWi-Fiアクセスポイントは、昨今の通信機器のセキュリティ被害の状況を受けて、設計段階から対策がしっかりと実装されている。組織の情報を保護するためにも、最新の対策がなされた製品に買い替えるメリットは大きい。
管理負担の軽減
続いての「管理負担の軽減」は、主に管理機能の進化だ。管理や設定が難しいと思われがちな法人向けのWi-Fiアクセスポイントだが、最近の製品はGUIベースの管理ツールやリモート管理機能を備えた製品が増えており、設定や管理が簡単にできるように工夫されている。
いわゆる「ひとり情シス」など、IT担当者のリソースが限られた環境も少なくないと思われるが、複数台のアクセスポイントを一括管理したり、遠隔地のアクセスポイントをリモート管理したりできるだけでも、最新の製品にリプレイスする価値がある。
通信品質の向上
最後の「通信品質の向上」は、Wi-Fi 7によるメリットが大きい。Wi-Fi 7は、従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて6GHz帯も通信に利用できるうえ、4096QAM や320MHz幅による高速化、複数帯域を利用したMLO、複数機器同時接続時の効率化を測れるマルチリソースユニット、干渉時でも通信帯域の効率的な利用ができるプリアンブルパンクチャリングなどの数々の新技術が利用できる。
中でもMLOは、後述するオフィスでの利用を模した検証環境のように、複数端末の接続時の遅延低減や安定性向上に大きく寄与する。ビデオ会議やクラウド電話などが一般化しつつある法人向け環境では、このメリットは非常に大きい。
Wi-Fi 7は、AppleのiPhone 16シリーズやGoogle Pixel 9で対応しているほか、Copilot+ PCを中心に最新のPCでも標準的に搭載されつつある。今後、スマートフォンやPCでWi-Fi 7が当たり前になることは確実なので、それに合わせてオフィスのWi-Fi環境もWi-Fi 7にしておくといいだろう。
10Gbps有線搭載、18000Mbpsクラスの法人向けWi-Fiが12万円!?
エレコムが発表した「WAB-BE187-M」は、こうした法人向け市場のニーズを的確に製品づくりに反映したWi-Fiアクセスポイントと言える。
対応する規格はもちろん最新のWi-Fi 7(IEEE802.11beドラフト)で、2.4GHz+5GHz+6GHzのトライバンドに対応。通信速度は、いずれも4ストリーム対応で1376Mbps(2.4GHz、40MHz幅)+5765Mbps(5GHz、160MHz幅)+11530Mbps(6GHz、320MHz幅)の合計18671Mbpsとなっている。
有線ポートも高速で、10Gbpsと2.5Gbpsを1ポートずつ搭載しており、Wi-Fi 7の高い速度を損なうことがないうえ、オフィスならでの複数台同時接続時でも有線がボトルネックになることがない。
10GbpsポートについてはPoE++(IEEE802.3bt)に対応しているため、ACアダプタでの動作だけでなく、LANケーブルを使った給電により、オフィス内のさまざまな場所に柔軟に設置可能となっている。
法人向けの場合、価格が安い2ストリーム、1~2.5Gbps有線対応モデルをフロアに複数台設置するケースもあるが、本製品は4ストリーム対応で10Gbps対応の大容量通信に耐えうる製品となっており、1台で、多くの台数をカバーできる設計になっている。
このように高スペックな製品ながら、特筆すべきなのは、価格が税込みで12万5950円と極めて安いことだ。
前述したように、本製品は合計18671MbpsというWi-Fi 7アクセスポイントとしてはトップクラスの性能を持つ製品だが、法人向けとしては破格と言っていいほど価格が抑えられている。
現状、そもそもWi-Fi 7に対応した法人向けアクセスポイントという存在が希少なため、互角の性能で比較できる製品が市場にほとんど存在しないが、12~13万円台というのは、価格だけ見れば、現状は1世代前のWi-Fi 6Eクラス、それも2ストリーム対応の普及モデルと同等となる。
新機能満載のWi-Fi 7対応で、しかも2.4GHz、5GHz、6GHzのすべての帯域が4ストリーム対応のフラグシップクラスの製品が、前世代の製品の同等以下の価格で手に入るというのは驚異的だ。競合のWi-Fi 7対応製品が20万円台、場合によってはそれ以上の価格設定もなされていることを考えると、法人向け市場の価格破壊と言っても過言ではないだろう。
法人向けならではの機能を搭載
もちろん、法人向けならではの機能も充実している。
端末の同時接続台数が最大768台(推奨は384台)となっており、多数の従業員が利用するオフィス、学生数の多い学校、多数の顧客が利用するホテルやカフェ、制御用デバイスやIoT機器が多数存在する工場など、多くのユーザーが利用する環境向けに高いキャパシティを実現している。
また、学校など、多数の端末が一斉に同じ操作を実行する環境での利用も想定されており、「平等通信機能」によって、端末ごとの通信時間を均一化し、同時接続時の動画再生やダウンロードのばらつきを解消することができる。
もちろん、マルチSSIDによって部署ごとに接続先を分けたり、来客向けのゲストWi-Fiを設定したりすることも可能だ。
冒頭で触れた「管理負担の軽減」という点では、コンソールコマンド設定に加え、分かりやすいWeb UIが用意されており、プロから初心者までニーズに合わせて設定や管理ができるようになっている。
しかも、リモート管理サービス「アドミリンク」が無料で提供されており、インターネット経由で遠隔地の機器の監視、メンテナンスが可能になっている。再起動、ファームウェアアップデート、ログのダウンロード、設定ファイルのダウンロードなどが可能になっているため、簡単なメンテナンスで出張しなくても済む。
このほか、初期設定のアクセスポイントの検索や設定画面へのアクセスが可能な「WAB-MAT Lite(無償)」、最大3000台のアクセスポイントの死活監視や設定変更、SYSログ、メール通知などが可能な「WAB-MAT(有償)」といった管理ツールも用意されており、環境に合わせた管理の効率化が可能だ。
メーカー保証3年(センドバック保障)に加え、購入から3カ月以内でのユーザー登録による2年の延長保証で、合計5年の保障も受けられるうえ、オプションでデリバリー保守サービスも受けられるなど、保障も充実している。
価格だけでもお買い得な印象だが、機能やサービス面が充実しているのも本製品の特徴と言えるだろう。
これがMLOの威力! 実機を使った通信環境を体験してきた
気になる実力だが、今回は同社のテスト施設でWi-Fi 7のMLOの実力を体験してきた。
テスト環境は、普段はコンシューマー製品の検証に利用している一軒家だが、今回は特別に法人向けの製品の検証を実施してもらった。
具体的には、2台のアクセスポイント用意し、廊下の端に1台目を設置。その反対側、8mほど離れた反対側のリビングの端に2台目を設置。2台のアクセスポイント間をWDS(Wireless Distribution System)でワイヤレス接続する構成となる。例えば、回線の引き込み口がオフィスの端にあり、その反対側の離れた場所でも安定した無線接続を提供したい場合に、通信距離を延長する例となる。
この環境で、1台目のアクセスポイントに1Gbpsの光ファイバー回線を接続し、リビング側には合計5台のPCを5GHz帯で接続し、同時にYouTubeのライブ配信映像(1080P固定)を再生した。一般的なオフィスで、多数の端末が同時にビデオ会議を実施したケースや、教室で生徒が一斉に教材の動画の再生を開始したケースを想定したテスト環境と言える。
そして、動画の生成中に意図的に干渉を発生させた。
2台のアクセスポイントのWDS接続の経路近く(1mほど離れた距離)に、独立した3台目のアクセスポイントを設置し、5台のタブレットを2.4GHz帯(9ch、20MHz幅)で接続し、1台をサーバーとして、ほかの4台からiPerf3の連続実行によるデータ転送を実行した。オフィスに設置した複数のアクセスポイント間で干渉が発生したり、近隣のオフィスのアクセスポイントの干渉が発生したりするケースを想定したものとなる。
結果は、動画の再生状況を目視すると共に、スペクトラムアナライザーを利用して干渉の発生状況を確認した。
検証1:[干渉なし]最新WAB-BE187-MによるMLOのWDS接続構成
まずは、今回登場した新製品となる「WAB-BE187-M」を利用した検証だ。
2台のアクセスポイントの間は、Wi-Fi 7ならではの機能となる2.4GHz+5GHz+6GHzのMLOによってリンクされている。
まずは、干渉なしの環境を確認する。上記の環境で5台のPCで同時にYouTubeのライブ配信映像を再生しても、すべてのPCでスムーズに動画を再生できていることが確認できた。どの端末も映像が止まることはもちろんのこと、映像が乱れたり、特定の端末だけ再生が遅れたりすることもない。
5台のPCすべてが同じ映像を淡々と再生するだけ。正直、5台程度の同時接続なら、苦も無く処理できるといった印象だ。
以下はスペクトラムアナライザーで2.4GHz帯の使用状況を確認した結果だ。横軸が周波数帯(チャネル)で、縦軸が信号の強さ、色が使用状況(混雑度合い)を示す。2.4GHz+5GHz+6GHzを合わせたMLO環境なので、データが3つの帯域を使ってうまく分散して配信されており、WDSで使用中の11ch付近の色もわずかに赤い黄色が中心で、2.4GHz帯にトラフィックが集中している様子もない。
検証2:[干渉あり]最新WAB-BE187-MによるMLOのWDS接続構成
続いて、検証1の状態のまま、前述した3台目のアクセスポイントとタブレットを稼働させ、干渉を発生させてみる。2.4GHz帯を利用してiPerf3の通信を実行するため、2.4GHz帯の状況が悪化するはずだ。
WAB-BE187-Mを利用したケースでは、この干渉はまったく問題にならず、5台のPCで、そのままスムーズに映像がされ続けた。目視ではいつ干渉が発生したのかも分からない状況で、こちらも「何事も起こらない」。
念のためスペクトラムアナライザーの様子を見てみると、きちんと干渉発生用端末が使用している2.4GHz帯の9ch部分が黒から赤に表示されており、電波の利用率がMAXに達していることが分かる。
WAB-BE187-Mは、11chとチャネルを分けて利用しているが、9chから伸びた右半分が完全に重複しており、帯域が半分ほどつぶれてしまっていることが分かる。
つまり、MLOで使用している2.4GHz+5GHz+6GHzのうち、2.4GHz帯は事実上使えない状況になっているが、残りの5GHzと6GHz(しかも2つのうちの5GHz帯は5台のPCの接続でも併用している!)に転送をうまく振り分け、2.4GHzが使えなくなった状況を自動的にカバーしていることが分かる。
検証3:[干渉なし]古いWAB-M2133による2.4GHz WDS接続構成
次に廊下とリビングの2台のアクセスポイントの両方をWi-Fi 5(5GHz帯がIEEE802.11ac、2.4GHz帯はIEEE802.11n)対応の「WAB-M2133」に交換して同じ検証を実施した。
WAB-M2133は、2.4GHz(400Mbps)+5GHz(1733Mbps)のデュアルバンドに対応した製品で、前の検証で利用したWAB-BE187-Mと異なり、WDS通信はいずれかひとつの帯域しか利用できない。今回は、アクセスポイント同士の接続に2.4GHz帯(同じく11ch)を利用し、PC(5台)の接続に5GHz帯を利用した。
このケースでも、干渉がない状況であれば実用は可能だ。5台のPCで、まれに映像がコマ落ちしたり、しばらく再生を続けると再生が遅れ始める端末も登場するが、完全に再生が止まったりすることはなかった。
5年以上前の古いアクセスポイントを使い続けているオフィスに近い環境で、普段は問題ないが、オフィスに人が増え、業務が忙しくなってくると、「なんだかWi-Fiの調子が悪い」と感じられるケースと言える。
スペクトラムアナライザーの結果を見ても、2.4GHz帯の11ch付近は、ほんのり赤い黄色が中心で、目立った混雑はない状況だ。
検証4:[干渉あり]古いWAB-M2133による2.4GHz WDS接続構成
最後は、以下の図のように、古いWAB-M2133の利用時に干渉を発生させたケースとなる。
これは、なかなか厳しい結果となった。
干渉が発生しても、YouTubeの再生なのでキャッシュがあるうちは5台とも再生できていたが、しばらくすると1台が「クルクル表示」で再生が中断され、もう1台も中断。最初の1台が復帰したかと思えば、別のPCが2台まとめて中断。というように、最終的にはすべてのPCで再生がまともにできない状況になってしまった。
スペクトラムアナライザーの結果も壮絶の一言だ。
干渉波となっている9ch付近が黒くつぶれているのはもちろんだが、WAB-M2133の中継に利用している11ch付近も真っ赤で使用率が限界に近くなっている。
検証2と比べて、9ch付近の干渉はそのものも弱くなっているのも印象的で、干渉波側もWAB-M2133の中継に利用されている帯域の干渉を受けている様子が分かる。例えるなら、狭い道路に複数車線からクルマが合流した結果、どちらの道路も身動きが取れなくなっている状況だ。
こうなるとチャネルを変えたくなるが、上記の図のように3ch付近も赤くなっており、今回の検証環境以外の電波(おそらく近隣の住宅)で帯域が使われていることが分かる。中継やクライアント接続に使える帯域の選択肢が少ないと、干渉を避ける手立てすら限られてしまうわけだ。
Wi-Fi 7というと最大速度に注目があつまりがちだが、そもそも2.4GHz+5GHz+6GHzを使えるトライバンドのメリットと、その3帯域を賢く活用できるMLOによって、混雑や干渉に強く、安定した通信ができるという特徴もある。
今回の検証は、こうしたWi-Fi 7の地味なメリットがよく分かるものと言える。多くの端末が存在し、複数アクセスポイントの共存を考えなければならないオフィスでの利用に適していることがよく分かる結果と言えそうだ。
中小規模のオフィスなら1台で価格も性能も十分
以上、エレコムから登場した法人向けのWi-Fi 7アクセスポイント「WAB-BE187-M」の概要や検証結果を紹介しながら、法人向けWi-Fiアクセスポイントの買い替えの重要性を解説した。
セキュリティの観点から、法人向けの通信機器も5年を目安に買い替えを検討したいところだが、それだけでなく管理の手間の軽減や通信環境の快適さの向上という実践的なメリットが多く得られることがポイントとなる。
特に「WAB-BE187-M」は、価格が安い割に、性能が非常に高い点が競合にはない大きな特徴と言える。中小規模の環境ならフロアに1台だけでも十分にWi-Fi 7の快適さを体験できる製品となっている。今回の実験結果のように、2台以上なら、より快適に使えることも分かっているので、まずは1台導入し、将来的に増やすことを検討してもいいだろう。
PCやスマートフォンなどWi-Fi 7の普及が始まったが、今回の検証のようにアクセスポイント間の通信だけでもWi-Fi 7のメリットを享受できる。真剣に組織のWi-Fi環境を見直すタイミングが到来したと言っていいだろう。