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回線品質を落とさず、お手頃価格なのは「締め日を半月ずらしたから」 工夫にあふれる、法人向けモバイル通信サービス「フリーモ」とは?

実はみんな使える「スマホ1台で、私用・社用の2回線」という使い方も

 フリービット株式会社は、法人向けのモバイル通信サービス「freebit mobile Biz(フリーモ)」の提供を1月16日に開始した。

 価格は、音声SIM+SMS+データ通信3GBで月額480円(税別)から。オプションで完全かけ放題月額も1,500円(税別)で契約できる。なお、モバイル回線はNTTドコモを使用し、5G(NSA)にも対応している。このほか、4月末までのキャンペーンとして最大3ヶ月無料のキャンペーンも行っている。

物理SIMに加え、eSIMにも対応

 SIMとして、物理SIMまたはeSIMを選べるのも特徴だ。これにより、社員が個人で利用しているスマートフォンに、eSIMによって2回線目として会社負担の回線を追加し、仕事に利用するといった使い方ができる。

 企業で契約している回線は、管理者がオンラインで一元管理して利用状況などを確認でき、プラン変更やオプション追加等もオンラインで手続きできる。さらにeSIMであれば、eKYC(電子本人確認)により、オンライン完結で回線の追加契約も容易だ。

 そして、興味深いのが、毎月の締めを(一般的な)月末ではなく15日としている点。実は、このちょっとした工夫で「回線品質を落とさずに、導入しやすい価格を実現している」(同社)という。「まさかそんなことが」と思う話だが、利用者の利用動向を分析した結果、導き出された答えなのだという。

「freebit mobile Biz(フリーモ)」

 実は同社は、もともとISPにネットワークインフラを提供する「ISP's ISP」や、MVNO事業者にインフラを提供するMVNE(仮想移動体サービス提供者)として実績を積んできた企業。そうした「裏方」での技術や実績、データをもとに、こうしたサービスが成り立っているのだという。

 そうした同社が一般企業向けにサービス提供するのが「freebit Business」ブランドであり、フリーモもそこに含まれる。

 普通に見えて意外と工夫されている、フリーモのサービスの特色や背景について、フリービット株式会社の遠藤大氏(インフラ事業本部 通信事業推進部 シニアリーダー 事業企画開発室)に話を聞いた。

フリービット株式会社 遠藤大氏(インフラ事業本部 通信事業推進部 シニアリーダー 事業企画開発室)

MVNOのインフラを支える黒子から、直販の法人向けサービスを開始

――まず、フリービットについてご紹介ください。

[遠藤氏]フリービットは2000年創業で、現在25年目です。もともと、社長の石田宏樹(社長)が、DTI(ドリーム・トレイン・インターネット)というISP(プロバイダー)を運営していて、そのノウハウを全国のISPに展開するホールセール(卸売)の「ISP's ISP」として始まりました。「Building Blocks」というサービス基盤を用い、様々なインターネットインフラや技術、サービスをお客様のニーズに合わせて自由に組み合わせて構築できるモジュール型のサービスを提供しています。

 モバイルにおいても、同様にMVNO事業者がアウトソースするMVNE事業として「freebit MVNO Pack」というサービスを展開しています。どちらかというと、ISPやMVNOなど事業者が自社サービスを提供する黒子としてやってきました。

――ちなみに、どのぐらいのMVNO事業者さんがホールセールでフリービットのサービスを利用しているのでしょうか?

[遠藤氏]「たくさん」とだけ言わせてください(笑)

――それだけのインフラと運用実績があるわけですね。その中でフリーモを始めた経緯を教えてください。

[遠藤氏]もともとホールセールのサービスをやっていて、エンドユーザーに直接販売する接点がありませんでした。そこで2023年に「freebit Business」という法人向けの直販サービスを始めました。法人向けといっても、営業マンが一社一社契約する形ではなく、クレジットカード決済とオンライン完結で、簡単にすぐ買って使えるものです。「freebit Business」の第一段としては、固定IPサービスの「どこでもIP」を2023年9月にリリースしました。

 そして「freebit Business」の第二段として、「freebit MVNO Pack」の技術を使った小売のサービスとして、フリーモを立ち上げました。5Gと、eKYCによる本人確認、eSIMという新しい技術を組み合わせた、法人に特化したモバイル通信サービスです。音声SIMとSMS、データ通信3GBで月額480円(税別)から利用できます。

月額480円(税別)プランのほか、通話やデータ容量が多いプランもある

狙いは「個人の端末に社用電話を追加する」という使い方現代のスマートフォンは物理SIM+eSIMで「2回線」を駆使できる

――フリーモの利用者としてはどのような方やユースケースをターゲットにしていますか?

[遠藤氏]たとえば大きな企業では会社から外回りの営業マンに社用携帯を支給するケースもありますが、そうでなくて、個人の携帯をそのまま使ってお客様に電話するというケースもあります。しかし、プライベートの電話番号を公開したくない場合も多いと思います。

 そのような場合に、個人の携帯で物理SIMを使っていてeSIMが空いていれば、フリーモをeSIMで導入し、会社が負担する形でセカンド回線として活用することも可能です。それによって、プライベートと仕事の番号を1台で使い分けるのを実現できるわけです。

――ちなみに、いま販売されている端末は、みな物理SIMとeSIMの2回線に対応していて、使い分けられるようになっているものでしょうか?

[遠藤氏]iPhoneもAndroidもけっこう前から使えていて、iPhoneでいうとiPhone XR/XSシリーズ以降はeSIMが使えます。

 対応機種であれば、たとえばこの人に電話するときにはこちらの電話番号で発信する、といった設定ができるので、取引先の人を登録しておくということができます。データ通信も、どちらを使うかを設定で切り替えられます。

 なので、少し話がそれますが、eSIM対応端末では、たとえば「通話は大手キャリアの低容量プランを契約した物理SIMを利用し、データ通信は格安SIMの大容量プランを契約したeSIMを利用する」など、組み合わせて併用することが可能です。

 さらに、片方の回線状況が悪ければもう片方に切り替える、といった機能もあります。これによって、回線の冗長化のようなこともできると思います。MVNOも大手キャリア網の回線を使っているわけですが、過去にも大手キャリアで通信障害が発生しました。そこで、異なるキャリア網を使った回線を2つ入れておけば、万が一のことが起きても、仕事の通話やデータ通信ができなくなるようなことがなくなるわけです。私の周りでは結構やっている人もいます。

――万一のときのためだけにもう1回線契約するのは、なかなかハードルが高いと思います(笑)

[遠藤氏]この業界ならではかもしれません(笑)

――そのほか、個人向けと違った法人向けSIMのメリットを教えてください。

[遠藤氏]管理する会社側の視点としては、新しい人の入社や退社があるたびに、端末やSIMを渡したり受け取ったりと、管理が発生します。eSIMであればそうした手間が省けるのがメリットです。

 また、会社の情シスなどのために管理ページを用意しています。そこから、通信量を確認したり、紛失したときに停止したりといったこともできます。

フリーモの管理ページ。プランや利用状況などがわかる

――個人であればeKYCによりオンラインでeSIMの手続きが完結しますが、法人の場合はどのような手続きになるのでしょうか?

[遠藤氏]法人の場合は、初回の申し込みには登記簿謄本など必要な書類をオンラインでアップロード頂きます。eKYCで申込担当者の本人確認が完了次第、SIMを発送(※)して法人の実在性確認を行います。(※eSIMの場合は確認書類を発送)

 所在地等情報の変更がなければ2回目以降のご注文は、eKYCによる申込担当者の本人確認のみで済みますので、eSIMであればその日の内にご利用頂くことが可能です。

お手頃価格を実現するための「15日締め」はコロンブスの卵「締め日を変えるだけで、回線品質を落とさずに価格を抑えられる」のは何故なのか?

――営業マンの2回線目を想定されたということですが、そのほかのユースケースはありますか?

[遠藤氏]実は、サービスを開始したところ、1回線目として使うお客様も多いことがわかりました。いままで社用携帯を支給していなかった会社が、端末を用意してフリーモのSIMをセットして渡す、ということのようです。この場合には物理SIMが好まれています。

――ちなみに現在として、物理SIMとeSIMのどちらが需要が多いんでしょうか。

[遠藤氏]いまはまだ物理SIMが多いですね。

――1回線目など以前からある使い方にも選ばれるのは、どういった点でしょうか。

[遠藤氏]おそらく、料金を見ていただいて、安さで選んでいただいていると思います。

――ただし、利用者としては回線などのサービス品質も気になります。

[遠藤氏]はい。もともとMVNEとしてモバイル回線を扱ってきましたし、ISP's ISPとしてネットワークのインフラも長く扱っています。そうした実績をもとに、「安かろう悪かろう」ではなく、安定した品質を維持するために回線増強を行い、サービスの向上に努めています。

 実は、この価格を実現できている大きな要因に、料金を15日締めにした点があります。

 ほとんどのモバイル回線は月末締めで、翌月初の0時にカウンターがリセットされます。そのため、お客様が毎月1日にどっと使うので、その日の昼間が一番混むんですよね。通信事業者はそのピークに合わせて帯域を用意しなくてはならず、ほかの日はあまり混まないまま、ピークの分だけインフラ費用がかかります。

 そこでフリーモでは、15日締めで、16日の0時にリセットすることにしました。フリービットではMVNEとして多くのMVNO回線を収容している中で、フリーモをほかの回線と半月ずらして15日締めにすることで、16日にピークが来ます。1日以外は比較的回線に余裕があるため、ピークを分散することができ、コストを抑えてモバイル回線を安く提供できますし、回線品質も保てます。

――なるほど。コロンブスの卵ですね。どこからそれがわかったんですか?

[遠藤氏]これまで固定網のISPやモバイルなどネットワークのインフラを見てきた経験によって、昔からそういう構造があることはわかっていました。たとえば1日の中では、10時から12時に固定網のトラフィックが多く、12時から13時はモバイルが増えて、夕方の帰宅時間もまたモバイルが増えるといったことがあります。さきほど言ったように月内でもそういう変動があって、法人と個人の動きが合わさって、帯域が空いている時間帯もある程度見えてきます。

 モバイル通信サービスがほぼ一律で月末締めというのは、締め日を変えると売りづらいからかもしれません。しかし、フリービットは新しい取り組みに柔軟に対応できる企業であり、この方法を試してみることが可能でした。

契約前に10日間使える「お試しプラン」も予定

――今後のサービス展開について教えてください。

[遠藤氏]フリーモの回線品質について、よく問い合わせいただきます。そのため、近く、お試しプランを始めることを予定しています。eSIMで50GB分使えるものを10日間お貸し出しして、通信品質や、自分たちの端末で使えるかなどを試していただけるようにします。これを使って、契約前にご自身でどんどん試していただきたいと思います。

 また、端末の販売やレンタルのご要望も多いので、検討はしています。さきほどお話した、1回線目としての需要での話ですね。キャリアさんが端末と回線をセットで販売しているので、そのイメージだと思います。

――最後に読者へのアピールをお願いします。

[遠藤氏]これまでホールセールで売ってきたものを、直販で販売するサービスとして「freebit Business」を作り、フリーモも開始しました。

 今後も、ホールセールで培ったものを直販向けにカスタマイズしてサービス展開を増やしていきたいと思います。2025年4月末までのお申込でSIM全プランと完全かけ放題が最大3ヶ月間無料になるリリースキャンペーンも行っていますので、この機会に是非ご検討いただければと思います。

 また、Web3その他、いろいろな新しい技術が今後も出てきます。そうした新しい技術と既存のサービスを組み合わせた新しいサービスを提供できるようになると思います。そのあたりも ご期待いただければと思います。

4月末までの加入者限定で最大3ヶ月無料のキャンペーンを行っている。