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ヤフー別所氏「補償制度や本人確認があっても自己防衛を」〜通販研究会


 経済産業省は7日、「通信販売の新たな課題に関する研究会」の第4回会合を開催した。ヤフーや楽天の研究会委員によるプレゼンテーションが行なわれた。


ヤフオク、多数出品の個人ユーザーに法人契約を促すも反応は少ない

 Yahoo!オークションの現状と問題を説明したのは、ヤフー法務部の別所直哉部長。別所氏によると、取扱高は2004年第3四半期で1,666億円で、2004年12月期の平均取扱高は1日あたり18億7,000万円、平均落札額は1件6,373円に達したという。

 「従来は企業と個人商店といった法人が主な売り手であったが、オークションでは個人も出品できる」と販売する側の多様化を指摘。法人と個人では、「特定商取引に関する法律」(特商法)を遵守する意識や取引に関する知識に差があるが、一方で消費者側はそうした違いを意識できているかどうかわからないと分析した。

 別所氏によると多数出品の個人利用者に対しては、「メールで書面による法人契約を締結しましょうと呼びかけている」という。ただし、メールに対する反応は少なく、「首根っこを押さえて強制的に法人契約にしてしまうのも問題がある。どういう線引きで個人と法人を区別するのか、こちらが伺いたいくらいだ」と対応に苦慮する一面ものぞかせた。

 このほか、連絡先が特定できないプリペイド携帯電話や、売買された銀行口座の利用などの犯罪や犯罪に悪用されかねない問題も増加。「私設私書箱や秘書代行業、ウィークリーマンションといったインターネットの匿名性を助長するようなサービスへの対応も考えていく必要があるだろう」とコメントした。


補償金額の減少は“モラルハザード”防ぐ狙い、自己防衛しっかり

 Yahoo!オークションでは、犯罪やトラブルを予防するために月額294円のシステム利用料を伴う本人確認を実施している。登録時に入力する住所や氏名、電話番号をクレジットカード会社や銀行に照合。該当する口座から定期的に引き落としされていることなどを確認することで、「クレジットカード並みの信頼性や『金融機関等による顧客当の本人確認等に関する法律』(本人確認法)に基づく確認の信頼性と同程度の確認ができている」という。

 また、出品者に対しては郵送で住所も確認している。「出品者にとっては利便性が損なわれるが、安全性という現状のニーズに配慮すれば必要な処置。ベストの方法ではないかもしれないが、今後安全性と利便性の双方を両立させつつ、どのように補完していくかが課題だ」とコメントした。

 なお、Yahoo!オークションでは商品未着などの詐欺被害に対して、被害額の8割、最大50万円まで補償する制度「Yahoo!オークション補償」を設けている。別所氏は「以前は被害額の100%を補償していたが、80%に引き下げた」と語る。「全額補償されているからということで、十分な確認をせずに落札して詐欺被害に遭うというケースが増加した。2割の負担を設定することで、利用者に自分自身で出品をしっかり確認していただきたいと考えた」と述べ、補償額の減額は全額補償による“モラルハザード”を防ぐ狙いがあったと解説した。

 このほか「以前の補償制度では保険会社の保険であったが、リスクを算出できないということで、保険会社との契約は終了してしまった」ことを説明。「現在はヤフー自身による自家保険で、新しい契約の可能性を模索すべく保険会社と交渉している」とコメントした。


特商法に従って電話番号を明記するとストーカーが発生してしまう場合も〜楽天

 「購入者と出店者に取引の場を提供するのが楽天の立場だが、トラブルはどうしても発生する」と楽天法務審査部の笹木直美部長。2004年第3四半期の流通総額が500億円を超えたという楽天でも、特商法に沿った会社概要の表示を義務づけるほか、出店時や扱う商材についての審査を行なっている。

 「出店審査では、関連する法律の知識や小売店の経営経験などを確認する場合もある。法人であれば登記簿謄本の提出を求める」と解説。商材については法令で禁止されているかどうか、必要な許認可届出がなされているかを確認するほか、例えば「悪用される可能性もあるためスタンガンは禁止」など楽天独自の基準もある。ただし、個別の商品に関しては、「3,000種類の商品を扱う店舗もあり、すべてをチェックすることは現実的に不可能だ」と限界も語った。

 店舗をオープンした後も、利用者や購入者のクレームやアンケートなどで店舗を評価。アンケートの平均評価点は4.3ポイントで、4.0以下の店舗については楽天自身でチェックし、「これ以上評価が下がれば、出店を停止する」とメールで警告することもあるという。

 今後の課題は、後払い詐欺やクレジットカードのなりすましなどをあげ、「万引きを捕まえてくれる警察が後払い詐欺を逮捕しないのは理解できない。詐欺に利用されるケースが多い私設私書箱は、本人確認を義務化するべきだ」とコメント。また、女性店長へのストーカーについても言及し、「特商法では電話番号を明記する必要があるが、インターネット通販で電話番号を掲載する必要性はあるのだろうか」と特商法についても一部見直しの必要性を訴えた。


ECOM ADR、PCの価格を間違って表示してしまった「価格誤表示」の相談にも対応

 通信販売の新たな課題に関する研究会ではこのほか、電子商取引推進協議会が経産省から委託を受けて2006年3月まで実証実験を行なっている「ネットショッピング紛争相談室」(ECOM ADR)の沢田登志子氏が、EC市場における民間ADR(Alternative Dispute Resolution)の現状などについて説明した。

 ECOM ADRは、電子商取引の事例を分析し、トラブルの解決支援を通じて民間ADRの可能性を検証するというもの。インターネット取引専門で、オンラインで相談を受け付けるのが特徴だ。沢田氏によれば2005年1月末時点で3,132件の相談を受け付けた。内訳は、通信販売が42%、オークションが28%、サービスが30%、国際取引が13%。

 最近の事例では、通販サイトの運営者から、販売するPCの価格を間違って表示してしまったという「価格誤表示」の相談を20件ほど受け付けたという。ECOM ADRの対応で、注文者1名の場合は、「代替品の提供」「定価との中間価格で販売」などの条件で調停が成立。注文者が複数の場合は、個別に分析してサイトの表記改善などを含めた調停案を提示した。

 沢田氏は、「ECOM ADRで受け付ける相談の8割が30万円以下の案件で、経済的に弁護士に相談するレベルではないし、こうした案件では裁判に訴えるケースも少ない。法的な拘束力はないにせよ、ECOM ADRが公式に発表するケースごとの考え方が蓄積されて、“判例”のような判断基準が作れたらと考えている」とECOM ADRの役割を評価。「今後は海外のトラストマークとの連携などを視野に、ADRのどの機能を重点的に強化していくかなどを議論していく必要がある」とコメントした。


関連情報

URL
  通信販売の新たな課題に関する研究会
  http://www.meti.go.jp/policy/consumer/tsuuhankenkyuukai/main.html
  ネットショッピング紛争相談室
  http://www.ecom.jp/adr/

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( 鷹木 創 )
2005/02/07 19:52

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