米Microsoftの会長でチーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏が27日、東京都内で開催された「マイクロソフトセミナー~次世代検索を語る~」でMSNの検索技術などを説明した。
● ブロードバンドの普及率や携帯電話の所有率が高い日本は絶好のチャンス
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Microsoftのビル・ゲイツ氏
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マイクロソフトの塚本事業部長
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マイクロソフト執行役でMSN事業部の塚本良江事業部長に紹介されて登場したゲイツ氏はまず、「日本はブロードバンドの普及率や携帯電話の所有率が高く、ほかの国とは異なる特殊なニーズがある」と指摘。7,300万以上のモバイルユーザーや65%以上のブロードバンド比率を挙げ、「必要なものを必要な時に調べられる次世代検索技術を試す絶好のチャンスだ」と語った。
一方で「ますます情報が増えており、“情報のオーバーロード(過負荷)”を指摘する声もある」。今後、Web検索においては、情報を見つけたら共有する、もしくはコメントを付けるといった、一歩進んだ利用形態になると予想した上で、同じようにモバイル検索やデスクトップ検索を行なうためには「そのためのソフトウェアが必要だ」と強調した。
「インターネットの検索技術は4、5年前よりも良くなったと言われているが“宝探し”と同じような状況であるのは変わらない。ある調査では検索1件に11分かけているという結果になった。しかも、11分かけて見つけたものが前回と同じものだったり、そもそも見つけられないこともある。ユーザーごとのプロファイルや履歴を賢く管理するソフトが必要なのだ。」
例えば、ゲイツ氏は「検索する際には具体的なタスクを思いながら検索する」という。「カメラ」というキーワード1つとっても、「購入後のサポート」なのか「購入するための情報」なのかをPC側でインテリジェントに具体的なタスクを理解する必要がある。23日に日本国内で公開したMSNサーチの新検索エンジンや、「MSNサーチツールバー with Windows デスクトップサーチ」が、こうしたインテリジェントな機能を実現するためのソフトなのだと述べた。
● 「デスクトップサーチ」についてGoogleとの比較デモ
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インフォメーション・サービス開発統括部の部長に就任する予定の浅川氏
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会場では、7月1日付でMSN R&Dセンタに新設されるインフォメーション・サービス開発統括部の部長に就任する予定の浅川秀治氏が、MSNの検索技術についてデモンストレーションを行なった。
ゲイツ氏が“リーダーシッププロダクト”だとアピールする「デスクトップサーチ」についてはGoogleのデスクトップサーチと画面を比較。サムネイル画像が表示できる点やサムネイルからOfficeファイルが閲覧できる点などを強調した。なお、デスクトップサーチは次世代OSである「Longhorn」に標準で実装される技術。「将来の次世代技術が現時点でも利用できる。是非体験してほしい」(ゲイツ氏)と呼び掛けた。
MSNサーチの新しい検索エンジンについては、検索結果にURLだけではなく“答え”も表示する点を、「エンカルタ」と統合した「クイックアンサー」機能で実演。実際に「日本の人口」と入力したところ、クイックアンサーとして日本の総人口が「1億2,741万7,240」であることが表示された。MSNサーチではエンカルタのほか、ニュース検索やデスクトップ検索も利用できる。このほか、ツールバーを活用することでデスクトップ検索やWeb検索、ニュース検索などを1つの検索フィールドから利用できることもアピールした。
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MSNのデスクトップサーチ。画像のサムネイルなどを表示する
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こちらはGoogleのデスクトップサーチだ
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「日本の人口」と入力すると、検索結果には「1億2,741万7,240」と表示された
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● 米国で提供中の技術は? 日本のモバイル技術との融合も「最重要課題」
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Microsoftのクリストファー・ペイン副社長
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ベータテスト中の「start.com」
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「イチローの打率が3割を切っているのはソフトのバグ」だと会場を笑わせた
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続いてMicrosoftのクリストファー・ペイン副社長が登場し、米国で提供、あるいは実験中の検索技術について説明した。
まず、ベータテスト中の「start.com」を紹介。ユーザーごとにモジュールを組み込んで好みのポータルサイトを構築できるというサービスで、ペイン氏はシアトルの天気予報や好きなバスケットチームのニュースを閲覧できるように設定している。
次に米国版「MSN Search」でシアトルマリナーズのイチロー選手を検索。クイックアンサーによってイチロー選手の画像や現在の打率が直接表示された。「リンクではなく、本当の意味で答えを知りたい時にクイックアンサーは便利だ」という。「ただ、イチローの打率が3割を切っているのはソフトのバグ。すぐに修正されるだろうけどね」と会場を笑わせる一幕もあった。
日本では提供されていないサービスとしては、電話帳の情報をインデックスに取り込んでローカル情報を検索するサービスや自然文検索機能「MSN Answers」、地理的な条件で検索する「Virtual Earth」を紹介した。
MSN Answersのデモでは「Who is Bill Gates married to?」(ビル・ゲイツ氏の結婚相手は誰?)と文章を入力。答えはもちろん「Melinda French Gates」だが、下位の回答候補には「Paul Allen」という答えもあった。「今までの検索エンジンでは、自然な文章を入力しても回答を得られなかったが、新しいMSN Searchでは答えを表示できる。Paul Allenという回答はあくまで“可能性がある”という意味だ」と笑わせた。
Virtual Earthのデモでは、シアトルのSpace Needleという観光スポットを検索した。通常は地図画像が表示されるが、航空写真をオーバーレイしたり、駐車場やレストランなどの周辺情報を組み合わせて表示させるなど多機能ぶりをアピールした。また、Virtual Earthの検索結果は、MSNのブログサービス「MSN Spaces」にも貼り付けることができるという。
最後に再び登場したゲイツ氏は、検索技術について「まだまだ初期の段階。技術革新はこれから。URLだけでなく答えそのものを表示する時代になる。日本は特徴的なニーズがある。日本のMSNの検索技術に関しても研究開発を強化する」とコメント。また、携帯電話などモバイル技術との融合に関しても「最重要課題だ」という認識を示した。
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電話帳情報がインデックスに取り込まれたローカル検索でピザショップを検索
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ゲイツ氏の結婚相手を問う自然文検索では「Melinda French Gates」が第1候補に
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Virtual Earthのデモ
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航空写真をオーバーレイできる
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関連情報
■URL
MSN
http://www.msn.co.jp/
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/japan/
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( 鷹木 創 )
2005/06/27 22:33
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