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Kazaa側がオーストラリア連邦裁で敗訴、著作権侵害の認定


 P2Pファイル交換ソフト「Kazaa」を開発する豪Sharman Networksらを相手取り、レコード業界が著作権侵害で訴えていた裁判で、オーストラリア連邦裁判所は5日、Kazaaの著作権侵害を認定する判決を下した。

 この裁判では、原告側に5大レコードレーベルを含むレコード会社30社が着き、被告側にはSharman Networksや同社CEOのNicola Hemming氏のほか、KazaaのP2Pネットワーク上で合法的ファイル販売の仕組みを提供しているAltnetとその親会社である米Brilliant Digital Entertainmentなどが含まれる。

 判決では、Sharman Networks側がレコード会社の音楽の著作権を侵害したことが認定された。理由としては、音楽ファイルを容易にコピーしたり、一般に公開できるようにしたことや、容易にダウンロードできるようにしていたことが挙げられている。また、Kazaaが存在し、運営が継続されるならば、著作権保持者に対して大きな脅威となると指摘。オーストラリア国内でKazaaユーザーが違法なファイル交換を正当であると誤認するような一切の行為を明確に禁止した。

 このままではKazaaの運営停止を求められているように思われるが、判決を下したWilcox判事がKazaaの技術的な部分に一歩踏み込む決断をしたことが興味深い。それは、2カ月の期間を与えてKazaaネットワークの中で合法的なファイルのみが流通できるようにソフトウェアそのものを改造するよう求めていることだ。

 この改造とは、Kazaaの新バージョンにデフォルトで「キーワードフィルタリング技術」を組み込むことだ。音楽ファイルのタイトルや作曲者、アーティスト名で検索できようにし、これらのキーワードをレコード会社が頻繁にアップデートするよう求めている。将来発表されるKazaaの新バージョンはすべて、このキーワードフィルタリング技術を搭載していなければならない。その上でKazaaのWebサイト上では、既存のユーザーに対してソフトウェアをアップグレードするよう最大限の圧力をかけ続けることが要求されている。

 これと関連して、Altnetは合法的なファイルを提供し、それをKazaa上で金色のアイコンで表示しているが、これらのファイルを圧倒的な量に増やすことによって違法なファイルを発見しにくくすることを求めた。これら2点の改造は判決から2カ月以内に行なうことが求められており、費用の90%を被告側が、10%はを原告側が支払う。

 Wilcox判事は、このような方法によって著作権侵害を100%なくすことができるとは期待していないようだが、そうした方法が存在するにもかかわらずそれを怠ってきたSharman Networks側の責任を問うた形だ。

 その一方でAltnetの技術開発を実質的に行なった米Brilliant Digital EntertainmentやSharman Networksの関連会社であるSharman License Holdingsなど4被告に対しての訴えは棄却された。


 P2Pファイル交換の世界でKazaaはすでにシェアを大きく落としている。また、交換されるコンテンツの多くが音楽から映像へとシフトしつつある。こうした中でレコード会社が提供するキーワードに基づいて強制的にフィルタリングされることになると、Kazaaが今後、有力なP2Pファイル交換ネットワークとして存在しうるのかどうかは疑問だ。また、Napsterの時のようにフィルタリングを命じても結果として実行されない場合もあり、オーストラリア連邦裁がどこまでSharman Networks側を正当に監督できるかが問われることになる。

 この判決を受けてSharman Networksは直ちに声明を発表した。「判決はこれから詳細を分析しなければならないが、Sharman Networksはこの判決に対して明らかに失望している。しかしながら我々はこの判決に対して精力的に控訴するつもりであり、控訴審で我々は勝利する自信がある」とコメントしている。

 もっとも原告側によって申し立てられていた損害賠償などに関しては、金額の認定などについて判断が下されなかったため、その件に関して考慮されるまで実質的に控訴することはできない。Sharman Networks側は当面ネットワークを維持するために命じられたフィルタリング技術の搭載を急ぐことになりそうだ。


関連情報

URL
  判決文(英文)
  http://www.austlii.edu.au/au/cases/cth/federal_ct/2005/1242.html
  Sharman Networks(英文)
  http://www.sharmannetworks.com/

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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2005/09/06 12:19

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