日本弁護士連合会(日弁連)は27日、著作権保護期間の延長に反対する意見書を文化庁等に提出したことを明らかにした。意見書では、著作権の保護期間(著作者の死後50年)を20年延長して死後70年を原則とすることについて反対するとして、保護期間延長を検討する場合には十分な討議、実証的データの収集、影響が予想される関係者からの意見聴取といったプロセスを踏んだ上で、慎重に検討されるべきであるとしている。
日弁連では、著作権の保護期間延長には必要性が認められず、様々な弊害が生じる恐れがあるとして、反対を表明。保護期間延長による弊害として、「創作者の利益にならない」「利用許諾の取得が困難になる」「創造性のサイクルを害する」「我が国の知財戦略として適切な選択ではない」「戦時加算の解消とは無関係である」「著作物に対してファイナンスされる時期が早すぎる」を挙げている。
著作権制度のあり方については、今後の文化活動や創造活動のあり方に大きな影響を与えるものであり、保護期間は一度延長されると既得権の関係で短縮は極めて難しいことから、保護期間の延長については十分な議論や検討が必要であると主張。検討にあたっては、権利者団体だけでなく、実演家団体、図書館や電子アーカイブ等の保存・公開活動の主体、視聴覚障害等の福祉関連利用者、教育機関および研究機関、現場の著作者を含む各種のクリエーター、放送局・出版社等の事業者、その他関係者の意見を広く十分に聞くことを求めている。
さらに、延長が具体的にどれだけ著作者の意欲を高めるかの実証的なデータや経験に基づく検討、保護期間延長以外のより社会的影響の少ない実効的な創造振興策の調査検討、延長によって我が国の知的財産権収支がどのような影響を受けるか、延長を図らない場合には我が国の著作物の国際的流通に具体的にどのような影響が出るのかといった点について、文化政策論・経済学・国際ビジネス論等の観点から、実証的なデータや実体験に基づいた検討を尽くすことが必要だとしている。
また、議論と検討を尽くした上で、仮に保護期間の延長を決定する場合においても、実効性のある著作権者データベースが整備されることが前提条件だとして、さらに著作者死後の作品についての利用許諾制度の創設、相続人が多数または不明となった場合に備えた利用裁定制度の整備、小規模利用や非営利利用を困難にしないためのさらなる措置を事前に講じることを提案している。
関連情報
■URL
日本弁護士連合会
http://www.nichibenren.or.jp/
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( 三柳英樹 )
2006/12/27 21:04
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