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著作物の保護期間延長などを審議、著作権分科会の小委員会が初会合


文化審議会著作権分科会の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」第1回会合
 文化審議会著作権分科会は30日、著作物の保護期間や過去の著作物の円滑な利用などについて検討する「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」の第1回会合を開催した。初回ということもあり、議論の中心は今後の検討の進め方や検討課題の確認などとなったが、保護期間の延長問題については出席した委員の間で早くも意見が交わされた。

 著作権に関しての審議を行なう文化審議会の著作権分科会では、2007年は4つの小委員会を設置することを3月12日に決定。このうち、「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」では、過去の著作物の利用の円滑化に関する方策や、保護期間延長などの問題を審議する。著作権分科会にはこのほか、「法制問題小委員会」「私的録音録画小委員会」「国際小委員会」が設置されており、それぞれの小委員会での検討結果が報告書としてまとめられ、今後の文化行政や法制度の整備などの参考とされる。

 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会では、主に著作権保護期間の延長問題と、著作物の円滑利用についての議論を行なう。30日に開かれた第1回会合では、今後の検討課題として、1)過去の著作物等の利用の円滑化方策について、2)アーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策について、3)保護期間のあり方について、4)意思表示システムについて――の4点についての審議を行なうことが確認された。

 初回の会合ということもあって、議論は主に今後の検討の進め方や小委員会での問題意識の共有が中心となり、「著作権の保護期間を死後70年に延長することを求める要望と、慎重な議論を望む要望がある」「過去の著作物を円滑に利用できるようにするため、裁定制度などより使いやすい制度の整備を進める必要がある」といった課題が存在することが委員の間で確認された。


 ただし、著作権保護期間の延長問題については、早くも出席した委員から発言が相次いだ。保護期間の延長を求める作家の三田誠広氏は、著作権保護期間の延長とともに権利者データベースや裁定制度の整備を進め、利用の円滑化を図ることが重要と主張。一方、慶應義塾大学の金正勲助教授は、「著作権法は文化の発展に寄与することが目的とされている。著作者の権利保護や利用の円滑化は、あくまでもそのための手段。保護期間延長という手段が目的であるかのような議論は避けるべき」と意見を述べた。

 こうした保護期間延長の是非など、具体的な議論については第2回以降に実施する関係者ヒアリングなどを経た上で進めるとしたが、ヒアリングの対象者については権利者や事業者だけでなく、エンドユーザー側など幅広い意見を聞くべきとの意見が挙がった。IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏は、「この小委員会の参加者にはクリエイターや権利者側の人が多いが、そうした人も一方では著作物の利用者でもある。こうした議論には利用者側の意見があまり反映されないことが多いのが不満。インターネットの普及により、誰もが利用者であると同時にクリエイターにもなれる時代であることを意識して議論を進めてほしい」とした。

 小委員会の今後の進め方については、4月に第2回、5月に第3回の会合を行ない、関係者からのヒアリングを実施。ヒアリングの内容を総括した後、各課題について順次検討を行なうことで合意し、第1回の会合を終了した。


関連情報

URL
  過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第1回)の開催について
  http://www.bunka.go.jp/1osirase/bunkasingi_chosaku_hogoriyou1_070316.html

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( 三柳英樹 )
2007/03/30 19:55

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