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「私的録音録画小委員会」の第17回会合
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私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の第17回会合が、23日に行なわれた。今期最後の小委員会となる今回の会合では、2月までに著作権分科会に提出する予定だった報告書がまとまらなかったことから、来期も継続的に審議する方針が示された。
1月17日に開かれた前回の会合で小委員会の事務局は、将来的に補償金制度を縮小する方針を示した上で、「無料デジタル放送からの録画」と「音楽CDからの録音」については、当面補償金制度によって、権利者が被る経済的不利益を補うことを検討することを提案。また、音楽CDや無料デジタル放送以外からの私的録音録画については、デジタル著作権保護(DRM)の環境下で、権利者が利用者との契約により経済的利益を確保できる場合は、契約モデルに移行すべきと提案していた。これらの点については、権利者やメーカー、消費者の関係団体で検討されている状況で、結論が出ていないことから報告書をとりまとめることはできず、来期も審議を続ける必要があるとした。
補償金制度による対応を検討することについては、日本記録メディア工業会著作権委員会委員長の井田倫明氏が「対応の必要性を含めて検討する」と述べ、補償金制度による対応が決定事項ではないと念を押す場面も見られた。この意見に文化庁著作権課の川瀬真氏は同意しつつも、「検討が進展することを期待している」とコメント。補償金制度による対応について関係団体から理解を得ることで、議論の進展を図りたい胸の内を垣間見せた。
慶應義塾大学教授の小泉直樹氏は、違法サイトなどからダウンロードする行為などを違法化することに関して、パブリックコメントで反対意見が多数を占めたことを指摘。こうした問題について、来期の小委員会では継続して審議されるのかどうかと質問した。これに対して川瀬氏は「当初の課題は継続して検討する」と回答。小委員会終了後の記者の取材に対しても、「報告書をまとめる段階では、ダウンロード違法化の話を含むすべての検討事項に意見を述べる機会はある」と話した。
● 「補償金制度は機能不全」権利者団体からは早期決着求める声
権利者団体側からは、補償金問題の早期決着を求める声が挙がった。「今回の議論は、総務省の(ダビング10に関する)議論と並行して進んでいるが、こちらだけでも結論を具体化してもらいたい」(日本民間放送連盟事務局次長の大寺廣幸氏)。日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター運営委員の椎名和夫氏も、「補償金制度に関する議論は足かけ4年にもなる。補償金制度が機能不全に陥る中、いたずらに時間ばかりが経過してきた」と苛立ちを見せる。椎名氏は、デジタル放送の録画ルール「ダビング10」の運用が開始する予定の2008年6月がタイムリミットであるとして、補償金制度の早急な見直しを訴えた。
こうした意見に対して、小委員会の主査を務める東京大学教授の中山信弘氏は、「補償金問題は著作権法の中の一部に見えるかもしれないが、著作権法の本質に関わるもの。デジタル技術やインターネット技術が発展する中で、非常に大きな問題となっている」と述べ、慎重な検討が重要であると説明。その一方で、「時代の流れには拮抗していかなければならない」と述べ、早期に報告書をまとめる意向を示した。
なお、川瀬氏によれば、来期の小委員会は早ければ2008年2月下旬、遅くとも3月上旬にはスタートしたいとしている。参加委員については、特別な事情がない限り今期の委員が再任される予定だという。
関連情報
■URL
私的録音録画小委員会(第17回)の開催について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/08011102.htm
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( 増田 覚 )
2008/01/23 15:46
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