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「オン・オフだけのフィルタリングは無益」施策の再検討を求める声も

総務省の検討会でヤフー、楽天、ミクシィが意見

 総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第3回会合が29日に開催された。18歳未満が使用する携帯電話でのフィルタリング適用を原則化する携帯電話キャリアの施策の進行状況が報告される一方で、ヤフー、楽天、ミクシィがそれぞれ意見を述べ、それが実施された際に懸念される問題点を指摘する声が多く挙がった。


子供の成長に応じた有益なフィルタリングを〜ヤフー

「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第3回会合
 ヤフーCCO(最高コンプライアンス責任者)兼法務部長の別所直哉氏は「Yahoo!あんしんねっと」など同社のサービスを説明した後、四半期に1度行なっているというフィルタリングサービスの精度の検証結果を紹介した。

 別所氏は、有害サイトを有害サイトと正しく判定する「ブロック率」と、無害サイトを誤って有害サイトと判定する「オーバーブロック率」について、Yahoo!あんしんねっとを含む3社のフィルタリングサービスを調査したデータを提示。サービスによって、ブロック率で約60%から95%以上、オーバーブロック率で約0.6%から1.6%と差があることを説明し、フィルタリングの性能を踏まえた議論が必要であるとした。具体的には、ベンチマーク方法も含めて議論した上で、同じベンチマーク方法でフィルタリングを評価したデータを公開。利用者がフィルタリングサービスを比較・選択できるようにしていくべきだという。

 今回導入されようとしているフィルタリングが、小学生から高校生まで同じポリシーで一律に制限されることについては、同社のアドバイザリ委員を務めている一貫校の校長先生のコメントを紹介。「オン・オフしかできないフィルタリングでは、今の親子の力関係では、外されてしまう」とも指摘した。

 別所氏はまた、プレゼンテーションの中で「フィルタリングは事業者のためのものではなく、言い訳の道具でもない。『使えない』フィルタリングは、使われないことを期待しているのと同じ」などと表現し、子供のために有益なサービスでなければ、フィルタリングは使われるようにはならないと強調。子供を「無菌室」に閉じこめるための「隔離の手段」ではなく、子供の成長過程で必要に応じたフィルタリングがかけられる有益なツールこそが必要だと訴えた。


指摘されている問題を議論すべき、施策そのものの再検討が必要〜楽天

 楽天CEOオフィス渉外室室長の関聡司氏は、「違法・有害情報対策は、バランスよく総合的に取り組んでいくべき。ことさらフィルタリングという技術的対策に頼ることなくやっていくことが大切」とし、フィルタリングの原則化を現状のまま進めることに疑問を示した。

 関氏によれば、フィルタリング原則化の問題点は3つある。まず、いろいろな問題が指摘されているが、それが解決されないまま進められている点が問題だという。「とりあえず始めて、後で修正すればいいのではないかとして進められているが、小さな問題ではない。指摘されている点についてはきちんと議論してもらいたい」。

 2つ目は、フィルタリングの導入を求めた総務大臣要請の中で「健全なコンテンツビジネスの展開の妨げとならないよう配慮」するよう記述されているにもかかららず、そのような状況になっていないこと。3つ目は、各キャリアがとろうとしている措置について、ホワイトリストを原則にするキャリアがいる点を挙げ、措置の理由や内容の妥当性について十分な説明がされていないとした。

 関氏は「現状を考えると、施策そのものについて再検討が必要ではないか」という。また、「SNSなどコミュニケーションそのものまで規制してしまうのはやりすぎではないか」とも述べた。


日本のインターネットサービス産業に悪影響〜ミクシィ

ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏
 ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏は、同社が運営するSNS「mixi」のサービスや機能などを簡単に説明した後、ユーザー数やページビューなどの数値とともに、ユーザー属性のデータを提示した。年齢層では、全ユーザーのうち20〜24歳の層が32.2%と最も多く、25〜29歳の24.0%、30〜34歳の16.5%、18〜19歳の11.1%が続く。モバイルからの利用に限定すると、20〜24歳が39.6%、25〜29歳が22.0%、18〜19歳が17.1%、30〜34歳が12.1%で4位となる。18歳未満についてはデータがないが、mixiでは規約で18歳未満の利用を禁止しているためだ。

 このようにmixiは、SNSとはいえ、フィルタリング原則化による影響はそれほど大きくはないようだが、笠原氏は2つの懸念を示した。まず、SNSなど情報発信型のインターネットサービスに関する産業全体の成長性や競争力が減退すること。Web 2.0の流れとしてコミュニケーション性をフルに生かしたサービスが出てきているところを、フィルタリングにひっかかりアクセスできなくなれば、ユーザーが情報を発信したり共有している中で生まれているメリットを受け入れることができなくなる。事業者側もそういったサービスを提供したくてもできなくなるとして、フィルタリング原則化で「日本のインターネットサービスに悪影響があるのではないかと懸念している」という。

 もう1つは、対象となる年齢と、フィルタリングが外れる際の条件についてだ。フィルタリング原則化が適用される年齢について、状況によって一部、未成年者(20歳未満)と18歳未満という2つのパターンがある点について、整合性に「若干の違和感がある」とした。また、18歳未満だということでフィルタリングを適用した利用者が、数年後に18歳になった場合に、身分証を持って契約変更手続きに行かなければならないとし、フィルタリングが自動的に外れるようにならなければ、年齢が上がってもフィルタリングされたままのユーザーが増えると指摘。「Web 2.0サイトや、場合によってはYahoo!オークションやGoogleの検索結果ページなど、一般的に使われているメジャーなサービスに関しても使えない環境が増えていく。そうなれば、携帯向けのサービス自体が成り立たなくなる」。笠原氏は、少なくとも、18歳になったユーザーは自動的にフィルタリングが外れるようにする必要があるのではないかと述べた。

 なお、ユーザー参加型のコンテンツが一律に遮断されることについては、「なぜ、フィルタリングの対象になっているのか? 一律にブロックするのは行きすぎではないかという話もあるが、実態として、現状では危ないところが多いからではないか。ユーザー参加型のコンテンツに関しては、事業者がしっかり管理しなければいけない。ビジネスモデルとしてコストをかけられないのはわかるが、一律にブロックされるのもやむをえない状態になっている。しっかりやっていただけると、もう少し状況よくなるのではないか」(インターネット協会副理事長の国分明男氏)との意見もあった。これについては、前回の会合同様、管理を怠っているサイトと、健全性維持のための対策をとっているサイトが一律にブロックされる点が問題であるとの反論も挙がった。


親権者の同意書に「SNSやブログが使えなくなる」との説明追加

 このほか今回の会合では、電気通信事業者協会(TCA)専務理事の坂田紳一郎氏から、携帯電話キャリア各社におけるフィルタリングサービス原則化の施策状況が報告され、新規契約時に使用する親権者同意書を改定することが説明された。フィルタリングサービスについて「不要」を選択していない場合は「要」を選択したことになる――との文言を追加する。

 同時に、フィルタリングを利用することによって、ユーザー自身や学校・塾などのサイト、家族や友人で利用しているSNSやブログなどのコミュニティ、掲示板などにアクセスできなくなる可能性があることを、同意書の書面などで説明することにした。実際にソフトバンクモバイルで使用する同意書も資料として配布されたが、フィルタリングを利用することで、それらのサイトが「すべて利用できなくなりますのでご注意ください」との説明が入っている。これに加えてソフトバンクモバイルでは、フィルタリングの利用によりアクセスできなくなるサイトの一覧を店頭に用意し、顧客に説明できるようにするという。

 この点に関しては、「自分がこれまで使っているサイトが実際に遮断されるのかどうか、実際に店頭で試すことができる端末を用意できないのか」との要望が挙がったが、ソフトバンクモバイルでは、今は検討していないが、今後検討すると回答した。

 また、今まで使っていた有料サイトが遮断されて利用できなくなれば、解約しようにも解約ページにもアクセスできず、解約できないまま課金のみされるのではないかとの指摘もあった。これについては、ソフトバンクモバイルとNTTドコモでは、フィルタリングがかかってもアクセスできる解約専用のページを設けることで対処するという。auでは、フィルタリングが適用されたユーザーに対しては、遮断される有料サイトが自動的に解約される仕組みを導入するとした。

 ただし、この対応も公式サイトのみに限定されるようだ。勝手サイトの場合は有料・無料を問わず、キャリア側で対応することは難しい。例えばゲームサイトでは、いったん解約すれば、長い間育ててきたキャラクターが使えなくなることや、ブログで自分が書き溜めてきたものが見られなくなるなど、金銭的被害ではない問題も考えられるとの指摘もあり、「自分が今まで使っているサイトが突然使えなくなり、利用者が不利益を被ることはないようにしてもらいたい」との意見もあった。

 こういった指摘に対して、TCAの坂田氏は「実態をよく調査し、金銭的なものとそれ以外のものなど、どういったものがあるかを十分に調査させていただき、対応ができるものは対応する。十分に周知することでご理解いただけるものは、周知する、検討の時間をいただきたい」と回答した。

 なお、検討会は当初、全5回を予定しており、次回の第4回からは中間報告のとりまとめに入る予定だった。しかし、さまざまな問題が指摘されており、まだ議論され尽くしていないことから、2月下旬の次回会合では「今後のフィルタリングのあり方」をテーマにもう1回議論することとなった。その後、3月下旬から4月上旬に開催の第5回会合で中間報告の骨子を提示、4月中旬の第6回会合において中間報告をとりまとめる方針だ。


関連情報

URL
  インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html
  関連記事:ソフトバンク、フィルタリングサービス普及促進の新施策[ケータイ Watch]
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/news/2008/01/09/37913.html
  関連記事:ドコモとau、未成年対象のアクセス制限サービス[ケータイ Watch]
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/news/2008/01/15/37995.html
  関連記事:ウィルコム、未成年向けアクセス制限サービスで新施策[ケータイ Watch]
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/news/2008/01/18/38057.html

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( 永沢 茂 )
2008/01/30 12:13

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