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2004年10月25日に開かれた第1回審判の様子。審判は、2007年8月6日の第17回まで行われた
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公正取引委員会は18日、米MicrosoftがWindowsのOEM販売契約において特許の“非係争条項”を盛り込んでいたことに関しての審決を出したと発表した。Microsoftの行為が独占禁止法違反にあたるとした上で、同条項の効果が将来的に及ばないようにすることや、今後、同様の行為を行わないことを求めている。
問題となっていたのは、MicrosoftがWindowsのOEM販売契約を締結するにあたり、OEM業者に対して「Microsoftと他のライセンシーに対して特許侵害を理由に訴訟を起こさないこと」を誓約させる“非係争条項”を含めていた点。公正取引委員会では、この行為が、AVパソコン市場の公正な競争を阻害する恐れがあるとして、2004年7月にMicrosoftに勧告。しかし、同社がこれに応諾しなかったために、判断の場が審判に移され、同年10月より審判手続きが進められてきた。
なお、この非係争条項は2004年8月1日以降の契約では削除されているものの、それより前に締結された契約では、それ以降も引き続き効力が及ぶことになっていた。
審決では、今後出荷されるすべてのWindows製品に関して、AV機能に関する特許権に関する範囲に限り、この非係争条項の将来的効力が及ばないことをMicrosoftで取り決めた上で、その旨をOEM業者に通知しなければならないとしている。また、今後、日本のPCメーカーに対して同様の行為をしてはならないとしている。
【追記 18:20】
この非係争条項が及ぼす影響について公正取引委員会では、OEM業者の持つ特許がWindowsに取り込まれてしまった場合でもMicrosoftに対して損害賠償請求を起こすことなどが困難になるとし、特にWindowsで拡張が著しいAV機能の技術開発の意欲が損なわれ、公正な競争が阻害されると指摘していた。
また、実際にAV機能に関する特許を有する国内メーカーがこの非係争条項に懸念を持ち、削除や修正を求めたにもかかわらず、Microsoftが拒否した事例も指摘。第1回審判で公正取引委員会は、テレビ録画ソフト「Giga Pocket」を持つソニーなどの3社の名前を挙げていた。
審判は2004年10月25日に開かれた第1回から、2007年8月6日の第17回まで行われ、2008年9月16日に審決が出された。
審判では、1)OEM業者はこの非係争条項が付された直接契約の締結を余儀なくされていたか否か、2)2004年7月31日以前においてOEM業者のパソコンAV技術の研究開発意欲が損なわれる高い蓋然性が存在したか否か、3)2004年8月1日以降においてもOEM業者のパソコンAV技術の研究開発意欲が損なわれる蓋然性が高いか否か、4)この非係争条項によるパソコンAV技術取引市場およびパソコン市場における競争への悪影響の有無、5)この非係争条項は正当化事由を有するか否か、6)この非係争条項の排除措置の相当性――が主な争点になったという。
Microsoftでは「現在、審決の内容を確認中」とコメントしている。なお、WindowsのOEM販売契約については、米国司法省との取り決めにより、特定のメーカーのみ異なる契約内容をとることが認められないという。同社がどういう対応をとるにせよ、その影響はグローバルに及ぶものと考えられる。
関連情報
■URL
ニュースリリース(PDF)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.september/08091801.pdf
審決書(PDF)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.september/08091801shinketu.pdf
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( 永沢 茂 )
2008/09/18 16:20
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