無限責任中間法人インターネット先進ユーザーの会(MIAU)は20日、内閣官房知的財産戦略本部などに対して「日本版フェアユース」の議論についての要望書を提出したと発表した。権利者側とユーザー側とのバランスのとれた「フェア」な検討を行うよう求めている。
MIAUによると、同本部に設置された「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」の7月29日の第6回会合において、日本版フェアユースの必要性や課題についての議論は概ね合意が得られ、10月からの会合で報告書のとりまとめに入る予定だったという。
第6回会合の議事録では、調査委員会の中山信弘会長が「これまでの議論を通じまして、フェアユースの規定につきましてはその導入の必要性とか導入に当たっての課題については、大体大方合意ができたものと思います。このため、フェアユース規定についての議論は今日で終わりといたしまして、次回はコンテンツの違法対策について検討することを予定しております」と述べている。
しかし、音楽著作権関連7団体が10月1日、内閣官房知的財産戦略推進事務局に要望書を提出。大きな影響を受ける権利者側の代表が調査会の構成員に含まれていないなどとして、権利者が参加した上で改めて議論されることを求めた。MIAUでは、これにより専門調査会の報告書のとりまとめが延期され、権利者側のヒアリングの場を設けることになったと聞いていると説明している。
専門調査会の10月14日の第8回会合の議事次第を見ると、確かに、日本版フェアユース規定の参考人ヒアリングとして、日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(CPRA)の名前がある。CPRA運営委員の椎名和夫氏による説明資料では、フェアユース規定の導入に関する権利者の懸念事項として「『カジュアルな侵害』と『確信犯的侵害』の混同の可能性の懸念」「権利者の『負担増大』の懸念」を挙げている。
さらに、専門調査会においては、「早急に対応するべき課題」(「検索サービスの適法化」「通信過程における一時的蓄積の法的位置付けの明確化」「研究開発に係る著作物の利用の円滑化」「コンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングの適法化」)に関する検討がまだ十分ではないとし、まずはこれら個別の権利制限規定の導入について検討した上で、フェアユースの一般規定の導入についてさらなる慎重な検討を求めている。
こうした流れを受けてMIAUは、今回の要望書の中で「『フェアユース』とは社会通念上権利を及ぼすべきではないと考えられる範囲の利用態様であり、その基準は、権利者側のみならず、ユーザー側も参画し、訴訟・議論等の中で模索していくべきもの」と述べ、議論の中で権利者に対するヒアリングが少ないことを問題とするならば、ユーザー側からのヒアリングの機会も十分に設けるよう求めている。
関連情報
■URL
ニュースリリース
http://miau.jp/1224491400.phtml
デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/digital/index.html
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( 永沢 茂 )
2008/10/21 16:58
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