山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

中国オンラインショッピング市場の規模は約20兆円~2013年4月

  本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

オンラインショッピング市場の規模は約20兆円

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は、中国オンラインショッピング市場に関する調査レポート「2012年中国網絡購物市場研究報告」を発表。2012年のオンラインショッピング市場規模は、前年比66.5%増となる1兆2594億円(約20兆1500億円)となった。

 また、オンラインショッピングユーザー数は2億4200万人で、これはインターネット利用者の42.9%にあたる。利用者の増加以上に頻度の増加は顕著で、年に10回以上利用する人は2011年では30.7%であったが、2012年では54.5%と半数を超えた。男女比では、男性が62.6%を占める。インターネット利用者全体では学生の割合が高いが、オンラインショッピングに関しては若い社会人に利用者が集中している。

オンラインショッピング市場規模の推移
オンラインショッピングユーザー数と利用率

 利用者のサイト認知度では個人での出店も可能な「淘宝網(88.1%)」が圧倒的に高い。続いて、淘宝網との兄弟サイトで大型店を集め信頼度を高めた「天猫(50.7%)」が2位となった。以下、家電に強い「京東商城(29.9%)」、書籍販売が強い「当当網(16.9%)」、アパレルの「凡客誠品(12.2%)」、「Amazon中国(11.1%)」となった。淘宝網など1サイトのみで購入する利用者の割合は、前回までと比べて減少したもののまだ51.1%と約半数に上る。年間消費金額は、「2000~5000元(32000~80000円、22.6%)」「500~1000元(8000~16000円、22.3%)」が多かった。

オンラインショッピングユーザーの所得分布
オンラインショッピングユーザーの年間利用額分布

 利用者が1年間で購入した商品ジャンルは、多い順から「アパレル(81.8%)」「日用雑貨(31.6%)」「デジタル製品(29.6%)」「家電(22.9%)」「書籍・CD・DVD(18.4%)」「ゲームなどのプリペイドカード(16.6%)」「化粧品(15.2%)」「食品(14.5%)」「かばん(12.8%)」「レストランのチケット(8.5%)」「映画や演劇のチケット(8.5%)」「ベビー用品(6.9%)」「文房具(6.8%)」「宝石貴金属(6.7%)」となった。

 また、スマートフォンを含む携帯電話でのオンラインショッピングサイト訪問は、利用者全体の40.7%が経験。オンラインショッピングサイト訪問者の53.6%が専用のアプリで、28.6%がブラウザー経由で名称を検索して、26.4%が直接URLを入力してサイトにアクセスしている。スマートフォンなど携帯電話での商品購入経験者は、携帯電話利用者の13.2%にあたる5544万人。携帯電話経由での年間オンラインショッピング支払額は少額に集中しており、PCよりずっと低い。

モバイルによるオンラインショッピングユーザーの年間利用額分布
オンラインショッピングサイト「天猫」を見るアプリ「微淘」。こうしたスマホ向けオンラインショッピング用アプリも充実してきた

 オンラインショッピング利用者の4.7%が海外の出品者から購入経験がある。出品国は「アメリカ(47.3%)」「日本(15.5%)」「イギリス(13.6%)」「フランス(12.7%)」「ニュージーランド(7.3%)」「オーストラリア(7.3%)」「ドイツ(6.4%)」。購入理由は「中国国内の価格より安い(39.3%)」「外国ブランドが好き(33.9%)」「品質がいい(30.4%)」と続いた。商品ジャンルは「服、かばん(50.0%)」「化粧品(26.8%)」「ベビー用品(15.2%)」「デジタル製品(10.7%)」が続いた。

個人輸入利用者の半年あたりの個人輸入利用回数
個人輸入利用者の半年あたりの個人輸入利用額

FTTH利用戸数、1億戸を超す

 中国の情報産業省にあたる工業和信息化部によると、FTTH利用戸数が1億戸を超えたという。同部はまた2013年の目標を「公衆無線LANスポットを130万カ所、3Gの基地局を18万カ所、FTTH新規加入戸数3500万戸、4Mbps以上のブロードバンド加入回線を加入者全体の7割とする」とした。

 現在中国各地ではFTTHへの切り替え工事が行われていて、ブロードバンドが光ケーブルが届き、FTTHが利用できる集合住宅は増えている。地域によって進捗はまちまちで、そのニュースは毎月中国各地から報じられる。例えば4月のニュースをとっても、たとえば広東省では100Mbpsのサービスが毎月5時間利用可能となった一方、湖北省の武漢では20Mbpsのサービスにスマートフォンとモバイルルーターをつけて年2200元(約3万5000円)で提供するプランが利用可能となった。

ブロードバンド新規利用者数推移

世界知的所有権の日に合わせ、複数の動画サイトが閉鎖

 4月26日の世界知的所有権の日を意識し、4月頭より中国政府が海賊撲滅活動「緑書簽行動2013」を宣言。各地で莫大な数の光ディスクや出版物が処分されたことを発表した。4月26日には、老舗の動画サイト「思路網」をはじめとした動画サイトほか、「BTChina」「天天BT」などのダウンロードサイトが次々と閉鎖された。

 「思路網」は2003年にオープンしたHD動画を提供するサイト。毎月50元の会費で、ブルーレイディスクの映像をダウンロードしたり、HD動画が視聴できることから、140万人の会員を抱え、同時オンライン数は3万を超える規模に成長した。思路網は139人のスタッフがいたが、会社の幹部、および5万ファイル以上のファイルをアップロードしたスタッフ30名もまた逮捕の対象となった。

 このニュースに少なからず関心を持つ人がいたが、その感想は「ブランクメディアの価格に比べて、ブルーレイビデオやDVDビデオの上乗せ価格は高すぎる」という意見が多く、コンテンツの対価という概念がない人は結構いるようだ。

突然海賊版問題で閉鎖された動画サイト

中国メーカーのスマートフォンへの注目度が高まる

 IT系ポータルサイト最大手でデジタル製品の価格比較サイトでもある「中関村在線」は、2013年第1四半期のスマートフォン製品の関心についての調査レポート「2013年第一季度中国智能手机市場研究報告」を発表。アップルとサムスンの2強以下は、華為・レノボ・ZTE・小米・魅族などの中国メーカーと、ソニー・HTC・モトローラ・ノキアなどの外資系メーカーとの混戦模様を呈している。以前は中国メーカーの携帯電話・スマートフォンの評価は低かったが、中関村在線以外のメディアの報道や実感からしても随分イメージは改善してきており、中国メーカーのスマートフォンへの注目度が高まる傾向となった。

 低価格な機種を数多く揃えるのではなく、性能が高く、かつコストパフォーマンスが高い機種をリリースすることで、メーカー自体への関心も高まるようだ。なお、スペックでは「デュアルコア」「4.1~4.5インチ」の機種が人気。

2013年第1四半期に中関村在線利用者が関心を持った機種
スマートフォンのOSシェア
高性能と価格を両立して人気の「小米(Xiaomi)」
約2万5000円の人気スマートフォン「小米2A」

電子ブック市場は参入企業と書き手の増加およびモバイル普及で620億円規模に

 調査会社のiResearchは電子ブックに関する調査レポート「中国数字閲読行業研究報告」を発表。2012年の電子ブック市場は前年比41.7%増となる38億8000万元(約620億円)となった。

 中国で地下鉄やバスなどの公共交通内では、電子ブックを読む乗客が多く確認できるため、モバイルの普及が理由のひとつといえるが、それだけではない。コンテンツサイトや中国移動(China Mobile)、中国電信(China Telecom)、中国聯通(China Unicom)の電信会社3社が参入し、スマートフォンでの電子ブック利用のハードルが一掃低くなったことも寄与していると考えられる。

 調査レポートを見ると、電子ブックの価格は日本と比べ非常に安価だ。相場は紙の本と同じコンテンツであれば紙版の3割、連載コンテンツであれば千字で0.03元(約0.5円)で読めるほか、電信会社へ月10元(約160円)支払うことで同サイトの電子ブックコンテンツを無制限に読むことができる。様々なサイトが商用コンテンツを囲い込んでいる結果、海賊版は依然としてあるものの、数としては減少しているという。男性には歴史モノや軍事モノのコンテンツが、女性には恋愛モノのコンテンツが特に人気。

 価格面の強みから、既に一部の雑誌などでは電子ブック版が紙版を凌駕する一方、電子ブック発のコンテンツが紙メディアで販売されることも出てきた。やはり価格面の話となるが、E-Inkが安くならないことから電子ブックリーダーは普及が進まず、スマートフォンや携帯電話での利用が進んでいる。移動中の暇つぶしに利用されることから、短いコンテンツが人気だという。

電子ブック市場規模の推移
4半期毎の月平均のモバイルデータ通信量

スマートフォンの普及で交通広告離れが鮮明に

 4月10日、地下鉄やバスに設置されたディスプレイで広告枠を売る、NASDAQにも上場している中国最大の企業「華視伝媒」が年度末決算を発表、同社の過去の業績で最大の損失額を記録した。その一因がスマートフォンの普及だ。

 同社の広告枠は主に大都市の公共交通にあるが、大都市であればあるほどスマートフォンの普及率は高いため、企業も公共交通のテレビ広告に広告を出したがらなくなっているのだ。上場廃止論も出る中、同社は最近になって中国で普及しだしたQRコードをモニターに表示させて、スマートフォン上に広告で掲載した商品サービス情報を提供するなど、スマートフォンとの融合を模索している。

スマートフォンに見入る地下鉄乗客

四川大地震でマイクロブログ「微博」が活躍

 四川省雅安での地震で多数の犠牲者が出た。今回の大地震は2008年に大地震が起きた頃と異なり、救援隊が微博で救援状況をつぶやき、震災に関心を持つ人の多くがマイクロブログ「微博(weibo)」を情報ソースとした。一般人のほか各地の政府窓口もまた震災の情報を転載した。ニセ被害状況の写真や、団体や著名人の虚偽の義援金報告など、様々なデマ情報もまた微博を駆け巡ったが、多くの情報が検証され、虚偽情報への注意もまた駆け巡った。

四川雅安地震での情報ソースは微博がニュース(新聞)を上回る
大震災直後はポータルサイトは黙祷の意をこめて白黒に
地震発生後、百度は同社の地図サービス「百度地図」を活用し救済地図サービスを迅速にリリースした

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。