第123回:見せたくないサイトをルータで遮断
手軽で確実な対策が可能な「BUFFALOコンテンツフィルタ」サービス
バッファローから、コンテンツフィルタを実現する新サービス「BUFFALOコンテンツフィルタ」の提供が開始された。同様のコンテンツフィルタ機能はソフトウェアやISPのサービスなどでも提供されているが、本サービスの最大の特徴はルータで対策を行なうという点だ。そのメリットと具体的な効果を検証してみよう。
●ルータでの制御により容易な導入を実現
「BUFFALOコンテンツフィルタ」に対応したルータとカードのセット「WZR-HP-G54」 |
以前にも本コラムでコンテンツフィルタソフトやサービスを取り上げたが、ソフトウェアにしろ、ISPのサービスにしろ、当時はまだ完全な対策というのが難しい状況であった。
専用のコンテンツフィルタソフトはフィルタの精度が高く、機能も豊富だが、そもそもインストールしなければ利用することができないという欠点があった。1台のPCを家族で共有しているのであれば問題ないが、子どもが自分専用のPCを利用していた場合は、導入自体が難しいのが現状だ。また、ISPで提供されているプロキシ方式のサービスも同様に対象PCに設定をしなければならない上、設定を外すことも簡単にできてしまうという欠点があった。
現状のソフトウェアやサービスは、保護者と子どもが1台のPCを共有している場合であれば、その効果を発揮させることができるが、そうでない場合は現実的な運用が難しかったというわけだ。
そんな中、バッファローから画期的な新サービス「BUFFALOコンテンツフィルタ」が登場した。基本的には、前述したソフトウェアやISPのコンテンツフィルタと同様に、有害なサイトを判断して、閲覧の可否を制御するサービスとなるが、同社のルータ製品向けに提供されるのが最大の特徴だ。ルータにコンテンツフィルタの機能を持たせることで、LAN内のPCを一括して制御することが可能となっている。
これにより、前述したソフトウェア方式やプロキシ方式と異なり、子どもが自分専用のPCを利用している場合などでも、PC側の設定を一切変更する必要がないため、手軽にコンテンツフィルタの導入が可能だ。
●本格的なコンテンツフィルタ機能を提供
サービスの概要 |
もちろん、本製品以外にもコンテンツフィルタ機能を搭載したルータは存在する。しかし、これまでのルータに搭載されていたコンテンツフィルタ機能はあくまでも簡易的なものに過ぎなかった。禁止したいURLやキーワードを自分で登録し、そのルールに従って閲覧が制御されるだけなので、設定が厳しくなりすぎて使いにくくなったり、甘くなって穴だらけになったりと、あまり実用的ではなかった。
これに対して、本サービスは、ソフトウェアやISPのプロキシ方式などと同様に、きちんとデータベースを元にしたフィルタリングが行なわれるようになっている。具体的には、ブルーコートシステムズ社のサーベリアンのデータベースを利用する仕様となっており、アダルトや出会い系、ドラッグなどをはじめとした53カテゴリから選択したルールに従って、自動的に閲覧の可否が判断される(国内サイトもきちんと含まれている)。
このように説明すると、プロキシを想像するかもしれないが、実際に採用されているのはプロキシ方式ではない。また、ルータにデータベースを保持しているわけでもない。本サービスの仕組みは以下の図のようなイメージだ。ルータ配下のPCがインターネット上のサイトにアクセスしようとすると、そのリクエストをいったん、同社のサーバーに転送し、設定されたルールと照合する。その結果、閲覧が許可されていれば、そのままルータ経由でサイトに接続し、拒否された場合は遮断されるというわけだ。
このため、日々常に更新されているサーベリアンのデータベースを利用した確実な判断が可能なうえ、パフォーマンス的にも優れている。実際テストしてみたところ、ページによってはブラウザで表示されるまでに、多少時間がかかる場合があったが(画像が多いページなどではリンクを調査するため)、ほとんどの場合はフィルタ無しの場合と変わらぬレスポンスでページが表示されたうえ、インターネット上の速度測定サイトなどの結果もフィルタ機能の有無でほとんど変わることがなかった。
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表1:フィルタ機能による通信速度差 |
コンテンツフィルタを利用すると、どうしてもページの表示などが遅くなるというイメージがあるが、本サービスはこの限りではないようだ。データベースを利用した精度の高いコンテンツフィルタ機能を手軽に、しかも速度的な犠牲を払わずに利用できるのは大きなメリットと言えるだろう。
なお、本サービスはバッファロー製品向けの有償サービスであり、利用するには登録が必要となる。レポート機能の有無によって「BCF-001(レポート有:年額4,800円)」と「BCF-002(レポート無:年額3,000円)」の2種類のサービスが存在し、いずれもルータの設定画面から申し込むことができる。BCF-002は1カ月間無料で試すこともできるので、まずはこの機能を試してから、購入を決めるといいだろう。
コンテンツフィルタサービスの利用にはユーザー登録や申し込みが必要。ルータの設定画面から申し込みを行なうことができる |
●判断は的確だが、一部制限あり
それでは、肝心のコンテンツフィルタ機能がどれほどの能力なのかを検証してみよう。以前、本コラムでコンテンツフィルタサービスを検証したときと同様のサイトをテストしたのが以下の表だ。
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表2:アクセステスト |
結果を見ると、判断基準のバランスはかなり良好だ。むやみやたらと制限されるわけでなく、かといって有害と思われるサイトが表示されてしまうような不手際もなかった。合法ドラッグやグラビアサイトなど、判断が難しいサイトは他のソフトウェアやサービスと異なる判断が下されたが、全体的に見ると、遮断するサイトの基準は的確だと考えて良さそうだ。
もちろん、設定を変更すればフィルタの基準を変更することも可能だ。標準ではアダルトやギャンブルなど、「重要カテゴリ」に分類されている12のカテゴリが遮断の対象とされているが、これ以外に「一般カテゴリ」に分類されている「ゲーム」や「懸賞」などのカテゴリを禁止したり、「ストリーミング」や「チャット・インスタントメッセージ」などの項目も禁止することが可能となっている。また、特定のサイトのURLを指定して、直接、禁止や許可することも可能だ。通常は標準設定のままで十分だと思われるが、場合によっては、より厳しい設定、または甘い設定にすることもできるだろう。
カテゴリを選択することで、フィルタの基準を変更することもできるようになっている |
また、フィルタ適用のユーザーごとの管理も可能だ。ルータの設定画面に特定のPCを登録しておけば、フィルタリングの管理対象から外すことができる。保護者のPCなどは、この方法でフィルタの適用を解除しておけばいいだろう。
IPアドレス、コンピュータ名などでフィルタの対象を外すことも可能 |
残念ながら、フィルタの適用を管理する基準はコンピュータ名、IPアドレス、もしくはその両方のみとなっているため、1台のPCを家族で共有している場合などはユーザーごとの管理は不可能だが、このような場合はパスワードによる制限が利用可能だ。
本サービスの場合、サイトが遮断されると、画面にメッセージが表示されるが、ここであらかじめ設定しておいたユーザーID(製品固有のライセンスコード)とパスワードを入力すると、アクセス制限を一時的(30分)解除できるようになっている。この機能を利用すれば、保護者も含めてすべてのユーザーにフィルタを適用しておき、保護者が特定のサイトを閲覧するときだけ、パスワードで表示を許可することが可能だ。本サービスは、基本的にPCごとの管理を前提としたものだが、この機能を利用すれば、1台のPCを共有している場合にもユーザーごとの制限もできるだろう。
ユーザーIDとパスワードの入力により、一時的にサイトの閲覧を許可することもできる |
欠点を挙げると、標準設定のままでは、Googleのイメージ検索が全滅となってしまう。どうやら「ハッキング・プロキシ回避システム」と判断されているようなので、前述したフィルタのカテゴリで許可しておけばいいのだが、できれば標準で許可してほしかったところだ。
●行動分析に有効なレポート機能
このように、全体的に完成度の高いと感じられたサービスだが、個人的に気に入っているのはフィルタ機能に加えて、レポート機能が提供されている点だ。有償サービスであるBCF-001に申し込んだ場合、フィルタの設定ページから許可・禁止したサイトのグラフや実際に遮断したサイトのURLなどのレポートを参照できるようになっている。
この手のサービスやソフトウェアを利用する場合、どうしても有害なサイトの閲覧が禁止された時点で安心してしまいがちだが、実際にはそれだけでは不十分だ。確かに、本サービスのフィルタリング精度は高いが、それでも完全ではない。データベースに登録されていないために、有害なサイトが閲覧できてしまう場合もあるほか、有害ではないと判断された掲示板やチャット(禁止することも可能だが)などで、子どもに悪影響を及ぼす会話がなされている可能性も否定できない。
このため、本当に必要なのは、どのような子どもがどのようなサイトを閲覧し、そこでどのような行動をしているのかを保護者がきちんと把握することだと言える。その点、レポート機能を利用すれば、遮断されたサイトのURLはもちろんのこと、許可されたサイトのURLも保護者が知ることができる。
実際にそのサイトにアクセスすることで、インターネット上での行動を知ることも容易だ。ただし、残念ながらアクセス時間は参照できない。アクセス時間や滞在時間が参照できれば掲示板などの書き込みなどを特定できるため、この点は改良を求めたいところだ。
有償サービスの「BCF-001」ではレポート機能を利用可能。許可/禁止したサイトのカテゴリなどをグラフ表示できる | 実際にアクセスを許可/遮断したサイトのURLを参照することも可能。これを利用すれば、子どもの行動をある程度把握することができる |
個人的には、このレポート機能だけでも利用価値があると考えている。極端な話、保護者が毎日レポートを参照し、その行動を把握するのであれば、フィルタで設定できるカテゴリをほとんど無効化してもかまわないとさえ感じている。こうすれば、たとえ子どもが有害なサイトを閲覧した場合でも、その後の対処を保護者が考えることができるからだ。
本当に大切なのは、単純に閲覧を禁止することではなく、正しい方向性を保護者が示すことだろう。それをしない、もしくはできないというのであれば、コンテンツフィルタを導入する意味は半減してしまう。
本サービスは非常に完成度が高く、個人的にはもっともおすすめできるサービスの1つと言えるが、最終的に重要なのは保護者の意識だ。利用を検討している場合は、「有害なサイトの閲覧を禁止すること=有害なサイトから子どもを守る」ではないことを考慮し、サービスの利用と同時に保護者として何をすべきかをよく考えるべきだろう。
関連情報
2004/11/2 11:27
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