第310回:USB接続でギガビットイーサネット環境を構築
MacBook AirやATOM環境で便利なバッファロー「LUA2-U2-KGT」
バッファローからUSB接続のギガビットイーサネット対応有線LANアダプタ「LUA2-U2-KGT」が発売された。「今さら有線LAN?」というイメージを持つ人もいるだろうが、実は意外なところでニーズがある製品だ。
●今年に入って購入した3つめのLANアダプタ
LUA2-U2-KGT |
今年に入ってから、今回のバッファロー「LUA2-U2-KGT」を含め、すでに3つの有線LANアダプタを購入している。
最近では、デスクトップだけでなく、ノートPCにもギガビットイーサネットが標準搭載されるようになってきている。また、無線もIEEE 802.11nドラフト2.0の登場で速く、使いやすくなってきているのに、「今さら有線LAN?」「しかも後付け?」と感じる人もいるだろう。
しかし、有線LANアダプタのニーズは、意外なところに存在するものだ。例えば筆者の場合、最初に購入した2枚の有線LANアダプタは、Windows Server 2008のテストのために購入した。
Windows Server 2008では、「Hyper-V」と呼ばれる仮想化技術が搭載されているが、仮想マシンの動作には複数枚のNICの使用が推奨されている。もちろん、ホストOSやゲストOSで1枚のNICを共有することも可能だが、ネットワークの負荷分散という点では各OSで個別のNICを使った方が有利だからだ。
そんなわけで、現在Hyper-Vのテスト用に使っているマシンには、内蔵×1、PCI×2と、合計3枚のNICが搭載されている。
自分でも、これほどNICを買う年も珍しいと思っていたのだが、まさかさらにもう1つ購入することになるとは思わなかった。それが、今回紹介するバッファローの「LUA2-U2-KGT」だ。
バッファローの1000BASE-T対応USB接続有線LANアダプタ「LUA2-U2-KGT」。Air Mac向けだが、VistaやWindows Server 2003にも対応。実売で3500円前後 |
●100BASE-TX止まりのATOMプラットフォーム
バッファローから発売された「LUA2-U2-KGT」は、もともと発売されていたUSB接続のギガビットイーサネット対応アダプタ(1000BASE-T)をMacbook Air向けとして発売した製品だ。
付属のUSB延長ケーブルを装着 |
Macbook Airは無線での利用と割り切って有線LANを搭載していない思い切った製品だが、電波の悪い場所での利用やオフィスなどでの利用、高いパフォーマンスが要求される用途での場合は、やはり有線LANで使いたいというニーズが少なからず存在し、このような用途向けに発売された製品だ。
Macbook Airではドライバレスでの利用が可能で、装着するだけで手軽に有線LANの通信が可能だ。残念ながら筆者宅にはMacbook Airは存在しないのでMacbookで試用したが、付属のCDからドライバをインストールすることで問題なく利用できた。Macbook Airユーザーは緊急用にでも持っておくと便利かもしれない。
MacBook(Mac OS X 10.5)で利用してみたところ。接続するだけで認識するが、そのままではDHCPでのIP取得に失敗する。付属のドライバをインストールすれば問題なく利用可能だ |
本題に戻ろう。Macbook Airを持っていないのに、なぜLUA2-U2-KGTを購入したか? と言うと、実はATOMプラットフォームでの利用が必要になったから。
いわゆる「ネットブック」と呼ばれるミニノートの一部にも存在するが、IntelのATOMを採用した製品の中には、なぜかLANインターフェイスが10BASE-T/100BASE-TXの製品が存在する。特に、自作ユーザー向けのATOMマザーボードは、Intel製「D945GCLF」、GIGABYTE製「GA-GC230D」のいずれもがLANの規格が10BASE-T/100BASE-TXのみの対応となっている。
クライアントとして利用するには100Mbpsでも問題ないのだが、Windows Home Serverの日本語版が登場したこともあり、ATOMでHomeserverを作ってみたのだが、省電力やCPUのパフォーマンスなどは申し分ないものの、どうしてもネットワークの遅さが足を引っ張る形になってしまうのだ。
もちろん、PCIにNICを増設するのも手なのだが、これまた1本しかないATOMマザーの貴重なPCIスロットをNICで占有するというのも気が引けるので、USB接続のギガビットイーサネットの出番と相成ったわけだ。
Windows Home Serverで利用しようと購入したGIGABYTEの「GA-GC230D」。標準LANが100BASE-Tのためサーバーとして使う場合のパフォーマンスが気になる |
●Windows Server 2003対応のLUA2-U2-KGT
USB接続のギガビットイーサネットアダプタは他社からもいくつか発売されているが、今回本製品を選んだのは、Windows Server 2003への正式対応を謳っていることが大きな理由だ。Windows Home ServerはWindows Server 2003がベースとなっているので、これなら動作に問題はない。
恐らく、他社製品でもチップのドライバを利用したり、XP用ドライバを流用することで動作させることはできると予想されるが、やはり安定動作を目指すサーバーには正式対応という安心感は大きい。
実際、ATOMプラットフォームにインストールしたWindows Home Server環境で利用してみたが、付属のドライバで問題なく認識し、問題なく1Gbpsでリンクさせることができた。
Windows Home Serverに装着。Windows Server 2003用のドライバで問題なく動作。1Gbpsでのリンクを確認した |
Jumbo Frameにも対応。ただし上限は4088byteまで |
気になるパフォーマンスだが、これは妥当なところだろう。同じく1000BASE-T環境で接続したクライアント(Core 2 Duo P8600/RAM2GB/HDD250GB)のネットワークドライブとしてサーバー上の共有フォルダを割り当て、CrystalDiskMark2.1で計測してみたところ、シーケンシャルリードで17.18MB/s(136Mbps前後)、ライトで23.19MB/s(184Mbps前後)、512KBのランダムリードで17.44MB/s(136Mbps前後)、ライトで20.32MB/s(160Mbps前後)という結果が得られた。
標準の100BASE-TXでの速度測定結果。80Mbps前後なのでやはり規格上の上限がボトルネックになっている | LUA2-U2-KGTの結果。標準の1.7倍程度のパフォーマンスを得られた |
標準の100BASE-T環境と比べると、リードは1.7倍見当、ライトに関しては3倍弱という高速化を実現できた。複数台のPCからのアクセス、ビデオなどの大きなファイルの書き込みなど、高いネットワークパフォーマンスが要求されるサーバーとして、これなら実用になりそうだ。
ただし、やはりUSBの480Mbpsという速度がボトルネックになっている影響か、PCI接続のNICと比べるとパフォーマンスはかなり劣る。パフォーマンスを追求するならスロットの消費を覚悟してでもPCI接続のNICを利用した方が良さそうだ。
PCIにNICを増設した場合の測定結果。パフォーマンスを追求するなら、やはりこちらが有利 |
●Windows Server 2008でも動作可能
このように、ATOM+Windows Home Server環境での利用にも適したLUA2-U2-KGTだが、同じサーバーということでは、実はWindows Server 2008でも動作できる。
本製品にはASIXの「ax88178」というチップが採用されているが、この64bit版ドライバを同社のホームページからダウンロードすることができる(http://www.asix.com.tw/)。64bit版と言ってもVista用ドライバとなるため、自己責任での利用が前提だが、筆者が試してみたところでは、Windows Server 2008で問題なく認識させることができ、Hyper-Vの仮想ネットワークアダプタとしても利用できた。
Windows Server 2008でも動作可能。Hyper-Vの仮想ネットワークとしても利用できる |
Hyper-V環境で複数のOSを動作させる場合も、やはりスロットをどこまでNICに割り当てるかというのが悩みどころになるが、USBで手軽に増設できれば、信頼性やパフォーマンスについての検証は十分に行う必要があるものの、これはこれでニーズがありそうだ。
LUA2-U2-KGTは、Macbook Air、ATOM、Hyper-Vと、決して一般的とはいえないが、必要なところには必要な意外なニーズがある製品だ。このような環境を利用している場合は、購入を検討してみることをお勧めしたい。
関連情報
2008/9/16 11:53
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