月1000円を切った、複数サイトをGUI管理できるVPS「GMOクラウドVPS」を試す


GMOクラウドVPS

 「GMOクラウドVPS」は、GMOクラウド株式会社が提供する仮想専用サーバー(VPS)サービスだ。KVMベースの完全仮想化環境の上で、サーバーOSだけでなく、ウェブアプリケーションのためのプラットフォームのパックや、サーバー管理ツールなども提供しているのが特徴だ。そのため、Linuxサーバーの構築管理に慣れた技術者だけでなく、ウェブサイト製作者なども意識したサービスといえる。

 料金プランは、マイクロ(メモリ2GB・ディスク100GB・CPU 3コア)、スモール(メモリ4GB・ディスク200GB・CPU 4コア)、ミドル(メモリ6GB・ディスク400GB・CPU 5コア)、ラージ(メモリ8GB・ディスク600GB・CPU 6コア)、グランデ(メモリ12GB・ディスク800GB・CPU 7コア)の5種類。

 利用OSとしては、CentOS 5.5(64bit/32bit版)と、CentOS 6.0(64bit版)、Debian 6.0(64bit版)、Ubutu 10.04/11.04(64bit版)をインストール時に選べる。さらに、スモール以上では、有償のオプションとして、後述するCloudLinux 6.1(64bit版)と、Windows Serer 2008 R2 Standard/Enterpriseも用意している。

 7月5日に価格を改訂し、マイクロプランで月額980円、初期費用2980円に値下げした。月額で1000円未満のラインに参戦した形だ。

 今回は、低価格VPSサービスに参戦したGMOクラウドVPSを、編集部からアカウントをお借りして試用してみた。借りたのは、スモールプランにCloudLinux、オプションのコントロールパネルPleskの組み合わせだ。


ドラッグ&ドロップで操作する管理画面

 GMOクラウドVPSのポータルからログインし、画面上部のメニューから「VPSコンソール」を選ぶと、VPSの管理画面が表示される。

 この管理画面でユニークなのは、その操作方法だ。画面の左端に契約している仮想サーバーが一覧表示され、中央から右にかけて操作が並ぶ。そして、サーバーに対して何か操作をするときには、一覧から操作対象の仮想サーバーのアイコンをドラッグして、右の目的の操作の上でドロップするようになっている。

 例えば、最初にアクセスしたときには、仮想サーバーはオフになっている。これを「起動」にドロップすると、そのサーバーが起動する。同様に、停止や再起動、サーバーの情報の確認、パスワードの変更も、サーバーのアイコンをドラッグ&ドラップして実行できる。

 また、「OS再インストール」にドロップすると、契約しているOSを再インストールして、サーバーを初期化してくれる。

 この操作方法は、最初はとまどったが、わかってしまえば直感的に使える。

VPSポータルのログイン画面VPSポータルの「VPSコンソール」画面。画面左に仮想サーバーが、右に操作が並ぶ。なお、上部のメニューはウェブブラウザーのウィンドウサイズに応じて表示形式が変わる
仮想サーバーのアイコンをドラッグして「起動」でドロップすると、そのサーバーが起動する
サーバー情報の表示や、サーバーのパスワードの変更も、サーバーのドラッグ&ドロップで呼び出す
サーバーのアイコンを「OS再インストール」にドロップすると、契約しているOSを再インストールしてサーバーを初期化する

 起動したサーバーには、ssh経由でrootアカウントでログインできる。また、「コンソール」へのドラッグ&ドロップによって、仮想コンソールから操作することもできる。なお、仮想コンソールを利用するには、ウェブブラウザーにJavaプラグインが必要だ。

 ログインしてみると、ウェブやメールなどのいくつかのサーバーソフトがすでに動いていた。ファイアウォール(パケットフィルタ)はデフォルトでは特に設定なし。CPU情報としてはKVMのデフォルトである「QEMU Virtual CPU」が表示された。

 なお、冒頭でも書いたように、GMOクラウドコアVPSではWindows Server 2008 R2をオプションで選べるようになっており、リモートデスクトップ経由で利用できるのも特徴だ。

サーバーのアイコンを「コンソール」にドロップすると、新しいウィンドウが開き、仮想サーバーのコンソールが利用できる
Windows Server 2008 R2も仮想サーバーのコンソールやリモートデスクトップから利用できる


複数の仮想ホストからなるウェブサーバーを作れるPlesk

 オプションになるが、GMOクラウドVPSでは、Parallels社が開発したコントロールパネル「Plesk」が利用できる。これもなかなかユニークだ。

 コントロールパネルといっても、VPSコンソールのように、仮想サーバーの外で動き仮想サーバー自体をコントロールするものではない。Pleskは、仮想サーバーの中で動き、ウェブサーバーやユーザー、ファイル、サーバーの動作状況などを管理するというソフトだ。

 特にPleskでは、Apache ウェブサーバーの仮想ホスト機能を使ったマルチテナント(複数ホスト)構成を作り、ほぼすべてウェブブラウザー上から管理し編集できるところが特徴だ。いわば、1つの仮想サーバーを共用サーバーのように分けて使えるわけだ。

 Mac用ユーザーの中には、Parallels社を仮想マシンソフト「Parallels Desktop」で知っている人もいるだろう。一方でParallels社は、コンテナ型サーバー仮想化ソフト「Virtuozzo」およびそのオープンソース版「OpenVZ」を古くから提供しており、ホスティング事業者などに採用されている。Pleskは、そうしたParalles社のホスティング事業者向けソリューションを元にしたコントロールパネルだ。

 前置きはこのぐらいにして、実際に使ってみよう。前述のとおり、Pleskは仮想サーバーの中で動くため、仮想サーバーが起動している必要がある。その状態の仮想サーバーをVPSコンソールで「コントロールパネル」にドロップすると、Pleskのログイン画面が表示される。

 最初にPleskを利用するときには、初期設定やライセンスキーの追加が必要だ。なお、ここではPleskの試用ライセンスキーを使ったためPleskの画面上部にそのメッセージが表示されているが、GMOクラウドVPSでPleskを契約すれば正式なライセンスキーでPleskを利用できる。

 なお、「Plesk」は現在日本語化されているが、筆者は当初英語環境で利用していたため、以下では初期設定画面などが英語版になっている。これから利用する場合は、設定なども含め日本語化されているのでご安心いただきたい。

サーバーが起動している状態でアイコンを「コントロールパネル」にドロップすると、コントロールパネル「Plesk」のログイン画面が表示される
Pleskのライセンス許諾が表示されるので同意する。なお、この画面はじめ、設定画面やメニューも現在は日本語化されているホスト名やパスワードなどの初期設定
管理画面の表示スタイルなどの初期設定。ここでは主に個人で管理する用途向けの「Power User View」を選んだ管理者の情報を入力
Pleskのライセンスキーを追加するPleskのホーム画面

 Pleskでは、サーバー内のさまざまな管理ができる。ここでは例として、仮想ホストを追加し、サイトを編集して、さらにウェブアプリを追加してみよう。

 仮想ホストを追加するには、「ウェブサイトとドメイン」画面の下部で「新しいドメインを追加する」をクリックする。そこでドメイン名などの情報を入力すると、「ウェブサイトとドメイン」画面下部の仮想ホスト一覧に追加される。

 この一覧からは、それぞれの仮想ホストのプレビュー、ウェブブラウザー上でのファイル管理、ウェブブラウ上でのサイト編集、ログ管理などができる。そのうち、「サイトをWeb Presence Builderで変更します」のアイコンをクリックすると、「ウェブ Presence Builder」が起動して、ウェブブラウザー上でコンテンツを編集できる。多数の雛形が用意され、それを元にテキストや画像などを入れていけばサイトができる。ただ、テキストのフォントのリストでは日本語フォントは選べなかった。

「ウェブサイトとドメイン」画面の下部で「新しいドメインを追加する」をクリックドメイン名などの情報を入力
「ウェブサイトとドメイン」画面の下部に2つの仮想ホストが表示された。ウェブブラウザーからウェブサイトのファイルを管理
ウェブサイトを選んで「Web Presence Builder」を起動したところ。多数の雛形を選べるウェブブラウザー上でページを編集する
編集したサイトに外部からウェブブラウザーでアクセスしたところ

 仮想ホストのサイトには、PleskからCMSなどのウェブアプリケーションを簡単に追加することもできる。

 Pleskの「アプリケーション」画面では、App Store感覚で、無償のウェブアプリケーションや、ウィルス対策ソフトのような有償のソフトなどを入手しインストールできるようになっている。WordPressやDrupal、SugarCRMなど、300以上のソフトが用意されている。

 それらの中から、WordPressをインストールしてみたところ、ウェブ上の2ページの操作で、WordPressの最低限のサイトが動作した。

「アプリケーション」の画面。App Store感覚で、無償のウェブアプリケーションや、ウィルス対策ソフトのような有償のソフトなどを入手しインストールできるWordPressをインストール。ライセンス許諾の画面
WordPressをインストールするための設定WordPressがインストールされた
インストールしたWordPressに外部からアクセスしたところ


特定のアプリがリソースを占有しないようにするCloudLinux

 マルチテナント構成で使う場合には、契約時にオプションで選べるOS「CloudLinux」も強力だ。

 CloudLinuxでは、ユーザーごとやプロセスごとに使えるCPUやI/Oなどのリソースに割り当て制限を設ける「LVE」という機構を備えている。これにより、特定のサーバーアプリケーションやユーザーがCPUやメモリを占有することなく、複数のアプリケーションやユーザーが強調してサーバーを使える。いわば、コンテナ型仮想化技術で使われているリソースを分けあう機能を、コンテナを分けない1つのサーバーの中で使うものといえる。

 CloudLinuxはCentOSやRed Hat Enterprose Linuxに追加して使えるということで、今回試したCloudLinuxもCentOS 6がベースになっているようだった。

 GMOクラウドVPSでCloudLinuxとPleskの両方を契約している場合には、Pleskの画面からCloudLinuxのリソースを管理でき、使用量のグラフ表示もできる。上でインストールしたWordPressの設定を確認したところ、管理者ユーザーとひもづけられて実行されるようになっており、ユーザーごとのリソース制限が適用されるようになっていた。そこで、WordPressに対してab(Apache Bench)ソフトで大量に自動アクセスしてみたところ、リソースの使用具合と制限が確認できた。

 例えば、ECサーバーとブログサーバーを同じサーバー上で仮想ホストを分けて動かす場合など、ブログサーバーが高負荷になったときにECサーバーが巻き込まれないようにする対策に有効だろう。

「サーバ」画面の「モジュール」タブから「LVE Manager」を呼び出すリソースのデフォルトの割り当てや、特定のユーザーごとの割り当てを設定できる
ユーザーごとのリソースの画面で、CPUやメモリなど項目ごとにリソース使用量と制限ラインがグラフ表示される

 以上、GMOクラウドVPSを試してみた。ここで紹介したほかにも、ウェブアプリケーションのためのプラットフォームのパックを用意するなど、自分で一からすべてサーバーをセットアップするような人でなくてもVPSを使えるようにしているところが特徴だ。さらに、ウェブからのサイトの管理や、マルチテナントの管理やリソース制限など、ウェブサイトの製作者にも便利に使えるVPSと言えそうだ。



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(高橋 正和)

2012/7/17 00:00