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個人事業主必見、今からできる年末の節税対策

この記事の内容は、2015年12月に掲載した当時のものです。個人事業主の節税対策についての最新記事(2017年12月現在)は、こちらをご覧ください。

 今年も残りわずか。12月は師走、年の瀬、年末、年賀状、大掃除など、人それぞれとは思うが、慌ただしさを感じさせる言葉が思う浮かぶ時期だ。個人事業主は12月が決算となるため、さらに慌ただしくなる。2月から始まる確定申告には少し時間があるが、もうかったと感じている人は、12月に節税対策をしなければならない。

 本記事では、今年起業したばかりの個人事業主や、数年前に起業し利益が出始めた個人事業主を対象に、年末の節税対策について説明したい。これから起業を考えている人、法人を立ち上げようとしている人も参考になるだろう。

節税の例

 まずは節税の例を見ていただこう。東京在住30代独身のある個人事業主の今年の売り上げを600万円、経費を180万円としよう。そのまま節税対策をしなければ、所得は420万円(600万円-180万円)となる。節税対策も兼ねて前から仕事用に欲しかったPCを新調し、ガジェット類も数点購入、経費を20万円増やすと、所得は400万円となる。経費が20万円増えたことによる節税効果は

 この例では所得税が2万円、住民税も2万円、国民健康保険が1万7000円。納税額と保険料の合計を5万7000円も減らすことができた。20万円の買い物をして5万7000円のキャッシュバックをもらえた気分だ。

 このように、経費を増やすと納税額が減るが、節税のために、やみくもに買い物をするのはお勧めできない。ある程度の税金の知識と事業の収支を照らし合わせて、効果的な節税対策を行いたい。

所得税の算出方法

 節税を考える前に必要なのは、税金を算出する知識だ。まずは所得税の算出方法から確認していこう。個人事業主の所得税は以下の計算式で算出できる。

売り上げ-経費=所得
所得-各種所得控除=課税所得
課税所得×税率=所得税

所得税の計算式の概念図

 順番に見ていこう。売り上げの注意点は、発生主義という考え方。例えば、12月に納品して月末に請求書を出したとしよう。月末締めの翌月末振り込みで、1月末に入金された取引は、売り上げが発生した12月の売り上げとなる。

 経費は、事業に必要なさまざまな費用だ。パソコンで原稿を書く仕事であれば、パソコンの購入費、購入する際に掛かった交通費、電気代、ネット回線費、修理費なども費用となる。売り上げと同じく発生主義となるので、12月に購入してカードの引き落としは2月でも、その経費は12月の経費となる。売り上げから経費を引いたものが所得となる。

 各種所得控除は、事業よりも個人にかかわるものが主となる。代表的なものは配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などで、大半はサラリーマンと共通する。

 所得から各種所得控除を引いたものが、課税所得=税金を課すための所得だ。この課税所得に、額に応じた税率を掛けたものが所得税額となる。課税所得が少なくなれば納税額は減るという仕組みだ。

 税率は一定式で決められている。所得税の税率は、下記の表のように課税所得が増えると5%、10%、20%……と上がっていく累進課税となっている。

所得税の税率
課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%9万7500円
330万円超 695万円以下20%42万7500円
695万円超 900万円以下23%63万6000円
900万円超 1800万円以下33%153万6000円
1800万円超 4000万円以下40%279万6000円
4000万円超45%479万6000円

 表の税率の欄を見ると、5%から45%まで課税所得に応じて上がっていくが、課税所得全体にその税率が掛かるわけではない。例えば課税所得が300万円の場合、195万円までの部分は5%、195万円を超え300万円の部分は10%となり、それらを合計した額が納税額となる。課税所得が195万円から196万円になったら納税額が倍になるわけでないので、神経質になる必要はない。実際に計算してみよう。

【お詫びと訂正】
初出時、税率の最高を40%としておりましたが、45%の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

 税率表の税率の右側にある控除額を使用すると、簡単に計算することができる。

 税率の上がる境目で神経質になる必要はないが、税率が高い(=課税所得が多い)人ほど節税効果が高いことは認識したい。課税所得が300万円の人が20万円の経費を増やすと、所得税は増えた経費の10%=2万円の減額となる。課税所得が500万円であれば、増えた20万円の経費の20%=4万円の減額となる。逆に課税所得が195万円以下の人は、年末に経費を使うより、年が明けてから使った方がよいかもしれない。もし、翌年にガッツリもうかって課税所得が増えたら、来年の経費にした方が節税効果は高い。

 所得税の計算式は単純だ。よって節税の方法も単純。「経費を増やす」「各種所得控除を増やす」この2つだ。売り上げを減らすという方法もあるが、特別な場合を除くと本末転倒だろう。

経費と控除を増やせば納税額は減る

住民税の税率はほぼ全国一律10%

 住民税は各種所得控除の控除額が所得税と異なるが、所得税の課税所得が下がれば住民税の課税所得も下がるので、所得税の節税対策に住民税は連動すると考えてよい。

 住民税の税率は、ほぼ全国一律で10%。10%の内訳は都道府県民税が4%、市町村民税が6%。一部例外があり、神奈川県の県民税が4.025%(+0.025%)、名古屋市の市民税が5.7%(-0.3%)などがあるが、全国的に見れば一律10%と考えればよいだろう。「○○市に住むと住民税が安い」といった都市伝説があるが、実際には住民税の地域差は少ない。多くの人が数百円~数千円の差なので、それを理由に引っ越すほどではない。

名古屋市の市民税は税率5.7%、均等割3300円

 住民税の納税額の計算は、各種控除額が所得税と異なることや、所得割、均等割、調整控除など計算項目が多くやや複雑だが、節税という視点で考えれば、経費が10万円増えたら、その10%(税率)にあたる1万円分、納税額が減ると理解すればよい。

国民健康保険は市区町村で計算方法が異なり、保険料の地域差も大きい

 国民健康保険は、市区町村ごとに計算方法が異なっている。所得から計算する地域もあれば、持ち家などの固定資産税を計算に加える地域もある。そのため同じ所得であっても市区町村ごとの保険料に差があり、住む地域によっては10万円を超える金額差が生じている。

 住民税と異なり、「引っ越した方が得」というほどの差があるのは事実だ。しかし、計算に用いる係数や金額が毎年のように変更されるので、「国保が安い」と思ってある地域に引っ越したら、その翌年から高くなることもあり得る。また、以前は課税所得や住民税の額から国民健康保険料を算出するところが多かったが、現在は所得から算出する方法に変わったので、生命保険料控除や医療費控除といった各種控除を増やしても保険料が下がらない市区町村が多い。

節税対策その1――経費を増やす

 事業では、売り上げを増やし経費を抑え、利益を出すことが大切だ。経費を増やして利益を減らし、納税額を減らす節税は相反する行為だ。節税は事業の目的ではないので、バランスを重視することを忘れないでほしい。

 冒頭の例のように、売り上げ600万円、経費180万円でザックリと計算してみよう。

 課税所得が330万円ほどなので、経費を330万円使えば納税額は0円となるが、現実的には難しい。所得の420万円から社会保険料、住民税、生活費(食費、衣類、趣味、旅行……)などを支払っているはずだ。仮にそれらの支出が360万円なら、手元に残っているのは80万円。60万円は将来のために貯蓄し、20万円を節税のために支出するなど、バランスを取ることを忘れないようにしよう。

 では、具体的に経費による節税対策を見ていこう。経費には水道光熱費、旅費交通費、通信費、接待交際費、修繕費、消耗品費、地代家賃などがある。この中で節税に即効性のある経費は消耗品費だ。ここでいう消耗品とは、10万円未満または使用可能期間が1年未満の少額減価償却資産のことで、ザックリ言うと10万円未満の備品だ。PC系であればプリンター用紙、マウス、ハードディスク、Wi-Fiルーター、PC本体など、10万円未満であればOKだ。起業したばかりの個人事業主は免税事業者なので、消費税込みで10万円未満のものが対象となる。

 消耗品費以外にも、取引先と忘年会を行えば接待交際費、遠方の取引先に年末のあいさつに行けば旅費交通費など、事業に有効な出費をして経費を増やすことは正しい節税と言える。

 今年はドカンともうかったから、数万円じゃなく数十万円のものを買って一気に節税したいと思う人もいるだろう。残念ながら10万円以上の機械、器具などは消耗品費ではなく固定資産として扱われる。固定資産は製品ごとに耐用年数が定められていて、カメラは5年、PCは4年、クルマは6年などとなっている。高額なものは長期的に使用するから、買った年の経費ではなく数年に分けて経費とする考え方だ。このように価格(=資産価値)を分割して経費にしていくことを、減価償却という。

 例えば、取材で使うため一眼レフカメラの「EOS 5Ds R」を45万円で買ったとしよう。カメラの耐用年数は5年(60カ月)なので、12月に購入した場合は1カ月分の7500円がその年の経費となる。翌年は1年分の9万円、その翌年も9万円と5年間に分割して経費とする仕組みだ。

 「なんだ、10万円を超えるiPad Proを買っても節税対策にならないのか」と落胆することはない。10万円以上20万円未満の資産と、10万円以上30万円未満の資産には特例がある。10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産としてその価格を3年で均等に割って償却することができる。一括と言うわりに全額経費にできないのは疑問を感じるが、気にしないことだ。この特例を使うと、12万円で買ったiPad Proを4万円ずつ3年で経費とすることができる。月割りは不要なので、12月に購入しても4万円をその年の経費にすることが可能だ。

 10万円以上30万円未満の資産は、条件付きで全額を経費とすることができる。その条件は青色申告を行っていることだ。青色申告を行っていれば、10万円以上30万円未満の資産を少額減価償却資産(少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例 措置法28の2)として、全額経費計上が可能となる。

 これを利用すれば、iPad Proの購入費12万円を丸々経費にすることができる。合計金額に300万円という上限はあるが、個人事業主であれば上限額はそれほど気にならないであろう。20万円台の資産を複数購入すれば、かなり大きな節税となる。

 お勧めはしないが、「今年だけ節税したい」という人には家賃の前払いという手がある。10万円の家賃を1年分前払いすれば120万円の経費となるが、大家さんと契約書を交わすことや、翌年以降も年払いを継続する必要がある。その年は地代家賃が増え、1年だけ節税効果があるが、翌年は月払いが年払いになっただけで、地代家賃の年間の支払額は元に戻る。支払額は同じだが、毎月支払うのと1年分をまとめて支払うのではプレッシャーが違う。よほどの理由がなければ避けたい節税だ。

 残り数週間で即効性のある節税対策は、消耗品や30万円未満の資産の購入だが、繰り返しとなるが節税は目的ではない。ポチッと購入ボタンを押す前に、「本当に事業に必要か」を自分に問い掛けていただきたい。

節税対策その2――控除を増やす

 各種所得控除を増やすと節税にはなるが、配偶者控除、扶養控除といった一般的な控除は、残り数週間で即効性のある節税とはならない。たまたま籍を入れようと考えていて、奥さんとなる人の今年の年収が103万円以下であれば、年内に籍を入れると配偶者控除(38万円)が受けられ節税となるが、万人向けとは言い難い。

 配偶者控除を見逃すことはないと思うが、扶養控除は、大学を卒業して就職できなかった子や遺族年金をもらっている母親など、調べてみると扶養控除の対象となることがあるので、少し知識を付けた後で再確認をお勧めしたい。扶養控除に関しては、先日掲載した「マイナンバーで変わった年末調整の書き方(前編)」を参照していただきたい。

小規模企業共済

 年末の節税対策として即効性のある控除は、「小規模企業共済等掛金控除」だ。今年はもうかって普通預金に100万円程度のゆとりがあるとしよう。消耗品を購入すればそれなりの節税となるが、必要でないものを購入しても、ただの無駄遣いだ。そのまま普通預金に預けていても節税にはならないし、金利も期待できない。そんな時にお勧めなのが小規模企業共済(http://www.smrj.go.jp/skyosai/)だ。

 小規模企業共済は経営者の退職金制度と呼ばれていて、その年に支払った掛け金全額が、小規模企業共済等掛金控除の対象となる。年払いが可能なので年末の節税対策にはうってつけだ。具体的に見ていこう。

 小規模企業共済の掛け金は、月額1000円から500円刻みで7万円まで。掛けた共済金は、将来一括受け取りや分割受け取りができる。積立預金をして事業をやめた時に退職金、あるいは年金として受け取るイメージだ。銀行に預金しても節税にならない。経費を支出する節税は支払いが発生し手元の資金が減る。小規模企業共済は掛け金が将来戻ってくると考えれば、普通預金から移動するだけで、支出することなく節税ができる。貸付制度もあるので、緊急時は共済金を解約することなく資金を借りることもできる。

 小規模企業共済が即効性に優れているのは、年払いに対応していることだ。掛け金は月払い、半年払い、年払いから選択できる。12月に1年分(初回は13カ月分)を年払いすれば、掛け金の全額が控除対象となる。毎月の掛け金を上限の7万円に設定すれば年額84万円だ。所得税の税率が10%であれば所得税で8万4000円、住民税で8万4000円、合計16万8000円も節税することができる。

 運悪く翌年の業績が落ち込んだ場合、掛け金を1000円に減額し月払いに変更すれば翌年の掛け金は12月分の1000円だけとなる。その後業績が回復したら増額することができるので、業績の変化に柔軟に対応することが可能だ。申し込みは金融機関などで受け付けている。銀行などの12月の最終営業日までに手続きをすれば年内に加入ができ、払い込んだ額がその年の控除の対象となる。

 筆者は申し込み、減額、増額など何回か銀行で手続きを行った。銀行の窓口に小規模企業共済の手続きに来る人は少ないようで、毎回窓口の女性では対応できず後方にいる行員がマニュアルを取り出して処理方法を確認していたため、銀行にとってレアな手続きのようだ。書類の不備など不測の事態も考慮すると、最終営業日は避け、数日前には手続きをすることをお勧めしたい。

 確定拠出年金国民年金基金も小規模企業共済等掛金控除の対象となるが、年末ギリギリに年払いをすることはできない。年間を通じて掛け金を支払えば全額が控除の対象とはなるが、即効性や柔軟性を考慮すると、年末の節税対策は小規模企業共済の方が優れている。

青色申告特別控除

 即効性もあり節税効果も高いが、対象となる人が限定的なのが青色申告特別控除だ。青色申告にはさまざまなメリットがあるので、現在白色申告をしている人は青色申告に切り替えることをお勧めしたい。ただし、青色申告に切り替えるには手続きが必要だ。

 今年開業した人は、業務を開始した日から2カ月以内に、税務署へ「青色申告承認申請書」を出さなければならない。春や夏に開業した人は、来年から切り替えるしかないということだ。来年から青色申告に切り替えるためには、3月15日までに手続きをしなければならない。従来はどんぶり勘定が許されていた所得300万円以下の白色申告が、平成26年(2014年)分から記帳の義務化が始まった。節税に興味のある人は、この機会に青色申告に切り替えることを検討していただきたい。

 青色申告の代表的なメリットは青色申告特別控除だ。単式簿記による記帳を選択すると10万円。複式簿記による記帳を選択すると65万円の控除が受けられる。経費で65万円を使うのは、そこそこハードルが高い。小規模企業共済に65万円を掛けるには、手元資金にゆとりがなければできない。青色申告特別控除は支払いも資金のゆとりも必要なく、頑張って複式簿記で記帳すれば65万円の控除が受けられる、という嬉しい制度だ。

 青色申告特別控除のほかにも、固定資産のところで説明した、10万円以上30万円未満の資産を全額経費にできる「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」や、赤字の3年繰り越しなど、節税メリットがいくつもある。

 手書きの時代に複式簿記で記帳し貸借対照表、損益計算書を作成することはかなり高いハードルだったと想像できるが、日常的にパソコンを使用しているINTERNET Watchの読者であれば、青色申告ソフト/サービスを使うことで簡単に超えられるハードルだろう。

生命保険料控除

 大きな節税は望めないが、生命保険料控除も年末の節税対策となる。大前提として、生命保険は節税のために加入するものではない。生命保険に入るなら節税を考慮した方がよい、というレベルの話だ。生命保険は平成23年以前に加入した旧制度と平成24年以後に加入した新制度に分けられ、控除額などが異なっている。旧制度の医療保険を見直して新制度の介護医療保険の対象に切り替えると控除額を増やすことができる。生命保険料控除はサラリーマンと共通する部分なので、先日掲載した「マイナンバーで変わった年末調整の書き方(後編)」を参照していただきたい。

 筆者は数年前に保険の見直しをした。両親ともがんで亡くなったこと、30年ほど前にがん保険に加入したが、最近は通院治療が重視されるようになったので保障の見直しがしたかったことなどが主な理由で、従来のがん保険に付加する形態のがん保険に加入した。特殊事情としては、税金の原稿を執筆しているので、新制度の介護医療保険料控除の控除証明書が欲しかったこともある。加入したのが12月だったため、節税を意識して年払いを選択した。家賃の年払いと異なり生命保険の年払いはそれほど負担ではないので、この時期に保険を見直すのであれば、選択肢の1つと考えてよいだろう。

介護医療、新制度、年払いは節税の可能性大

 あくまで保険の新規加入や見直しを考えていて、そのついでに節税を考えることが大切だ。必要もないのに生命保険に入るのは無駄遣いだと認識してほしい。

いざ節税対策……その前にまずは収支の確認

 節税対策を始める前に行わなければならないのが、売り上げ、経費、各種所得控除の確認だ。各種所得控除は毎年大きく変動するものではないので、容易に把握できるであろう。問題は売り上げと経費だ。日ごろから記帳をしていればすぐに集計できるが、確定申告までにまとめて集計しよう、と思っている人は急いで集計をしなければならない。

 表計算ソフトで集計することもできるが、2月~3月に確定申告を行うことを考えると、最初から青色申告ソフトに入力した方が二度手間を避けられる。確定申告書Bや貸借対照表、損益計算書を記入できる人は少ないと思うので、自力で青色申告をする人に青色申告ソフトは必須と言えよう。最近の青色申告ソフトは、アグリゲーション機能と呼ばれる銀行口座やクレジットカードの履歴を取り込む機能に対応しているので、短時間で入力作業を済ませることが可能だ。

弥生

 代表的な青色申告ソフトを紹介しよう。青色申告ソフトで長年にわたりトップシェアを獲得しているのが「やよいの青色申告」だ。BCNランキングによるとシェアは60%を超えている。筆者は起業直後に「やよいの青色申告07」を購入して初めての青色申告を行った。以来使い続けていて、最新バージョンの「やよいの青色申告16」で10年目の確定申告を行うことになる。

BCN AWARD 申告ソフト部門
http://bcnranking.jp/award/section/soft/soft32.html

 前バージョンの「やよいの青色申告15」でアグリゲーション機能に対応。「やよいの青色申告16」では、電子証明書を必要とし取り込みの難しい法人口座にも対応した。ちなみに筆者が使用している三菱東京UFJ銀行は、個人事業主も屋号で口座開設をすると法人口座の扱いとなる。個人用のインターネットバンキングと法人用のインターネットバンキングは全く別のもので、セキュリティの厳しさから取り込みが難しかった。

やよいの青色申告16

 弥生はパッケージソフトに加え「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」というクラウドサービスも提供している。「やよいの青色申告 オンライン」は、サービス開始当初は消費税課税業者に非対応などフリーランスを意識した作りとなっていたが、サービス開始から1年が経過し課税業者に対応するなど、対象となる範囲が広がってきた印象だ。「やよいの白色申告 オンライン」は、文字通り白色申告用のサービス。白色申告用とうたわれた製品は少なく、白色申告の記帳義務化に合わせて提供が開始されたサービスだ。弥生製品は確定申告書などの出力機能が充実している。例えば子どもの生年月日を入力すると、扶養控除の有無や控除額が自動計算されたり、計算の複雑な生命保険料控除も旧制度、新制度などから自動計算してくれたりする。税金の知識に疎い人には安心な製品だと思われる。

やよいの青色申告 オンライン
やよいの白色申告 オンライン

 「やよいの青色申告15」と「やよいの青色申告 オンライン」は昨シーズンにレビューを行っているのでそちらも参考にしていただきたい。

クラウドと連動した最強の申告ソフト? 「やよいの青色申告15」レビュー・前編
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20150219_688544.html
初年度無料、話題のクラウドサービス「やよいの青色申告オンライン」を使ってみる
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20141226_681659.html

マネーフォワード

 マネーフォワードが提供する「MFクラウド確定申告」は、その名の通りクラウド型の申告サービスだ。こちらも電子証明書が必要な法人用銀行口座の取り込みに対応している。アグリゲーション機能は優れているが、出力機能がやや弱い印象だ。各種所得控除額を自分で計算できる程度の知識がある人にお勧めしたい。

 「MFクラウド確定申告」も、昨シーズンにレビューを掲載しているので参考にしていただきたい。

個人事業主の確定申告、「MFクラウド確定申告」でどこまで楽できる?
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20150223_687515.html

freee

 「freee」は、アグリゲーション機能に対応したクラウド型の申告サービスとしていち早く登場したので、知名度が高い。全自動とうたったテレビCMを見た人も多いと思われる。実際には、寝ている間に確定申告書や損益計算書が完成することはなく、全自動ではなく一部自動といった印象だ。全自動までは行かないが、freeeだけでなく弥生製品、MFクラウドなどアグリゲーション機能に対応した製品、サービスが増えてきた。最も手間の掛かった入力作業が大幅に軽減されたのは個人事業主にとって朗報だ。

 2015年も後わずか。もうからなかった人は来年もうける方法を考えていただき、もうかった人は節税対策を考えていただきたい。今からでもチョット頑張ると10万円~20万円の節税は可能なはずだ。