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必見! 個人事業主の節税対策まとめ

~年末は節税の最後のチャンス~

 11月に掲載したサラリーマン向けの年末調整の書き方に続き、税金に関する記事の第2弾として「個人事業主の節税」について説明しよう。今年も残り2週間ほどとなり慌ただしさを感じる時期となった。法人は3月決算、9月決算など決算期はそれぞれだが、フリーランス(個人事業主)は12月が決算となる。1月から12月の売り上げ、経費などの集計結果により納税額が確定する。その結果を申告するのは2月~3月の確定申告だが、2017年分の節税対策ができるのは年内=残り2週間だ。この記事では、年末ギリギリにできる個人事業主の節税対策をまとめてみた。起業したばかりの人、今年はガッツリもうかった人、年々事業が拡大している人で、節税したいと思っている人は必見だ。

節税のため筆者が年末に爆買いした備品(2015年撮影)
「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

20万円の買い物したら8万円税金が減った

 ザックリとした節税の例を見てみよう。東京都千代田区在住、30代独身の個人事業主の今年の売り上げが620万円、経費が150万円とすると、所得は470万円(620万円-150万円)となる。節税対策を考慮して仕事用にPCとスマホを新調し経費を20万円増やすと、所得は450万円となる。その節税効果は……。

 この例では所得税が4万円、住民税が2万円、国民健康保険が1万9000円減額となり、税金、健康保険の合計を7万9000円減らすことができた。20万円の買い物で約8万円のキャッシュバック、20万円のものが12万円で買えた気分。かなりうれしい。

 20万円で8万円なら、50万円、100万円の買い物をしたら……と妄想を膨らませてはいけない。確かに経費を増やすと納税額は減るが、それ以上に手元の現金や預金は減る。効果的な節税をするには税金の基本的な知識を知ることと、自分自身の事業の収支を把握することが大切だ。

所得税の算出方法を理解しよう

 まず基本となるのが所得税の算出方法。これを理解しないと節税は始まらない。所得税の算出式は以下のとおりだ。

所得税の計算式。納税額を知るには売り上げ、経費、各種所得控除を把握する必要がある

 売り上げは1月から12月まで1年間の売り上げ=年商だ。年をまたぐ売り上げは注意しよう。例えば、12月に納品し請求書を送り、翌年の1月末に入金された売り上げは今年の売り上げとなる。

 経費も同様に年末にクレジットカードで購入したものは、引き落としが2月でも今年の経費となる。経費にできるのは事業に必要なさまざまな費用だ。パソコンで原稿を書く仕事であれば、パソコンの購入費、電気代、ネット回線費、修理費なども経費となる。売り上げから経費を引いたものが所得となる。

 各種所得控除は、個人に関するものが大半だ。代表的な控除は基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などで、ほとんどの控除はサラリーマンと共通している。

 所得から各種所得控除を引いたものが課税所得。この課税所得に税率を掛けると所得税額が算出できる。

所得税算出の概念図

 税率を見てみよう。所得税の税率は以下の表となる。

所得税の税率表

 表を見ると、課税所得の額に応じて5%から45%まで税率は上がっていくが、課税所得が195万円から196万円になったら納税額がいきなり倍になるわけでない。課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、例えば課税所得が350万円の場合、195万円までの部分の5%、195万円を超え330万円の部分の10%、330万円を超え350万円の部分の20%を合計した額が納税額となる。実際に計算してみよう。

 課税所得350万円の所得税

 195万円×5%=9万7500円 ①
 135万円(330万円-195万円)×10%=13万5000円 ②
 20万円(350万円-330万円)×20%=4万円 ③

 ①+②+③=9万7500円+13万5000円+4万円=27万2500円

となる。税率表の右側にある控除額を使用すると、簡単に計算することができる。

 課税所得金額×税率-控除額=納税額

 350万円×20%-42万7500円=27万2500円

 税率の上がる境界線で神経質になる必要はないが、税率が高い(=課税所得が多い)人ほど節税効果が高いことは認識したい。課税所得が350万円の人が経費を20万円増やすと、増えた経費の20%=4万円の節税となるが、課税所得が300万円の人は、20万円の経費の10%=2万円の節税にとどまる。

 課税所得が195万円以下の人は積極的に節税をする必要はない。年末に経費を増やせばその年の所得税は減るが、年始の経費を増やせば来年の所得税が減る。2年を通して計算すれば同じなので、課税所得195万円以下の人に必要なのは「売り上げを増やす=もっと稼ぐ」ことだ。

 所得税の計算式を理解すると、納税額を減らす(=節税)方法も理解できるはずだ。納税額を減らすには

   1.売り上げを減らす
   2.経費を増やす
   3.各種所得控除を増やす

が考えられるが、売り上げを減らすのは望ましい方法ではないので「経費を増やす」「控除を増やす」が節税の基本となる。

「経費を増やす」「控除を増やす」が節税の基本

 住民税の税率はほぼ全国一律10%なのでザックリとした計算は、経費を10万円増やすと課税所得が10万円減り、その10%(税率)=1万円の節税となる。国民健康保険は自治体ごとに計算式が異なり、同じ自治体でも頻繁に(筆者が住民票を置く名古屋市は毎年)係数が変更される。加えて自治体(=住む市町村)により保険料は倍以上の差がある。節税による保険料の削減効果を正確に把握するには、自分自身の住む市町村のウェブサイトで算出方法を確認をしよう。住民税も国民健康保険も所得税に連動し上下するので、所得税を減らすことに注力すればよい結果につながるはずだ。

今からでも間に合う年末の節税対策

 節税対策はいくつもある。通年で行う節税対策もあるが、今回は年末ギリギリでも効果のある節税対策を紹介していこう。「経費を増やす」「控除を増やす」という節税対策の基本のうち、最初に考えるのは「経費を増やす」方法だ。

節税の最右翼は消耗品の購入

 損益計算書の経費の科目を見てみよう。代表的な経費として荷造運賃費、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、修繕費、消耗品費、地代家賃などが並んでいる。どの科目を増やしても節税はできるが、「大量に荷物を送る」「エアコンを動かし電気代を増やす」などは論外。来年以降の事業に有効な出費で経費を積み上げたい。

損益計算書の経費の科目

 節税の最右翼は消耗品の購入だ。消耗品という言葉はプリンターのインクのようにリアルに消耗するものを想像しがちだが、ここで言う消耗品とは10万円未満または使用可能期間が1年未満の少額減価償却資産のことで、ザックリ言うと10万円未満の備品だ。

 余談だが、この「消耗品」という言葉は税金用語としては一般的だが、普通の人にはなじみがないようだ。損益計算書に科目にはないが「会議費」もよく使われる。営業職の人は飲み会の領収書は「接待交際費」。喫茶店やファミレスで打ち合わせをしたときは「会議費」で精算するなど、会社のルールに沿って処理していると思われる。

 前都知事の資金問題がワイドショーなどで取り上げられたとき、アナウンサーや芸能人コメンテーター、現地リポーターが「文具店で消耗品の支出がありました」「会議費の使われたホテルで会議室が使われていません!」と大騒ぎをしているシーンを何度も目にした。どうやら「文具は消耗品じゃない」「会議費=会議室の費用」という解釈のようだ。

 筆者は仕事で筆を買った経験はないが、一般的な文房具は消耗品としている。また、我々フリーランス同士は喫茶店、ファミレスなどで打ち合わせをすることは珍しくなく、その費用は会議費とすることが多い。筆者は打ち合わせのためにホテルの部屋を取ったことはないが、もしそうしたら会議費とするはずだ。

 筆や打ち合わせが政治活動として妥当かは問われるべきだと思うが、「消耗品」「会議費」という言葉は政治資金規正法でも税法でも一般的な用語だと思われる。普通の人には違和感がありそうだが、ノートや定規は鉛筆や消しゴムのように減らなくも消耗品、9万円のiPhone 8も消耗品、スタバやマクドナルドやガストでの打ち合わせは会議費、という表現に慣れていただきたい。

 話を戻そう。仕事用の文房具なども経費の対象とはなるが、10万円、20万円の経費を積み上げようと思うなら数万円のものを購入した方が手っ取り早い。iPhone 8やHUAWEI Mate 10 Proといったスマホや10万円ギリギリのノートPCなら1つで経費をグッと増やすことができる。NAS、ルーター、AIスピーカー、ドライブレコーダーなども積み上げればそれなりの金額になるだろう。筆者の知り合いを見回すと、フリーランスのライター、カメラマン、エンジニア、プログラマー、システムインテグレーターなどさまざまな仕事をしている人がいる(フリーランスの外科医に知り合いはいない)。業務内容によって経費にできるものとできないものはあるが、どの業種でも消耗品の選択肢は無数にある。

スマホやPC、NAS、ルーターなどさまざまなものは消耗品

 備品の購入だけが経費ではない。時間にゆとりがあれば遠方の取引先に年末のあいさつに行って旅費交通費、取引先と忘年会をして接待交際費など、来年以降に有効な出費をして節税しよう。

 節税したいがため、カラ出張や架空請求はもってのほかだ。年に何十回も城崎温泉に出張すれば不自然だし、作ってもいない宣伝用のチラシを知り合いの印刷会社から架空請求させるのは脱税行為だ。税務署は新幹線の手つなぎデートは見逃しても、脱税行為は見逃さない。くれぐれも売り上げを隠したり、経費を水増ししたりしないよう、正しく節税をしていただきたい。

青色申告なら10万円以上30万円未満の備品も全額経費に

 ThinkPad X1 Carbonが欲しい、15インチのMacBook Proが欲しい……けど10万円以上。ニコンD850は40万円前後、新車を購入すれば数百万円だ。いずれも消耗品には該当しない。

 10万円以上の機械、器具などは消耗品費ではなく固定資産となる。固定資産は設備・機械・器具、車両、建物ごとに耐用年数が定められていて、PCは4年、カメラは5年、クルマは6年、鉄筋コンクリートの事務所は50年などとなっている。高額なものは長期的に使用するから、買った年の経費ではなく数年に分けて経費とする考え方だ。このように価格(=資産価値)を分割して経費にしていくことを「減価償却」という。

 カメラを例にすると、耐用年数は5年(=60カ月)。D850を12月に42万円で買ったとすると、1カ月分の7000円(42万円の60分の1)がその年の経費となる。翌年は1年分の8万4000円、それが5年間続くということだ。7000円は節税としては魅力的でない。

 「あぁ~ThinkPad X1 Carbonは無理か」とあきらめることはない。青色申告をしている人は10万円以上30万円未満の資産を少額減価償却資産(少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例 措置法28の2)として、全額経費計上が可能となる。30万円未満ならThinkPad X1 Carbonでも、MacBook Proでも年内に購入すれば全額経費にできる。

ThinkPad X1 Carbonも30万円未満なら全額経費にできる

 10万円未満や30万円未満の判定は、消費税の免税事業者であれば税込の購入価格で行う。多くのフリーランスは免税事業者だと思われる。過去に売り上げが1000万円を超え「消費税課税事業者選択届出書」を提出した記憶がなければ、税込の購入額で判定すればよい。

浮き沈みの激しい事業なら「経営セーフティ共済」

 「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」は、取引先が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で、掛けた金額の最高10倍(上限8000万円)まで無担保・無保証人で借入れができる。掛金は必要経費に算入できるので節税対策の1つとなっている。

 平たく言うと、60万円預けたら(掛けたら)その年の経費を60万円増やすことができる。60万円掛けてあれば、取引先が倒産して回収ができないときは、掛金の10倍の600万円まで貸してくれる、ということだ。

「経営セーフティ共済」は連鎖倒産を防ぐことに加え、節税対策にも利用できる

 倒産うんぬんは置いておいて節税について見ていきたい。掛金は毎月5000円から20万円まで5000円刻みで選択できる。年額にすると6万円~240万円を経費として計上できる。掛金の合計の上限額は800万円。掛けた金額に利子などはつかない。加入から40カ月以上経って解約すれば掛けた金額が全額戻ってくる。

 もうかった年の年末ギリギリに1年分(今年12月~来年11月)を前納すれば、20万円×12=240万円もの経費を増やすことができる。年末ギリギリに加入する場合の注意点は前納方法を「口座振替」ではなく「振込」を選択すること。口座振替にすると引き落とされたときの経費になるので、来年の経費となってしまう。

年内に「振込」による前納を行えば、1年分をその年の経費にできる

 銀行の最終営業日(2017年は12月29日)でも手続きは可能だが、この手の手続きは申し込む自分も銀行も不慣れなので、書類の不備で出直しになることを考慮し数日前に手続きをしたい。

 前納の期間は任意に選択できる。12カ月分でも8カ月分でも3カ月分でもよい。手元に50万円のゆとりがあり、月額10万円、5カ月分(今年12月~来年4月)を前納すれば、その後は5月分からは毎月10万円が引き落とされ、今年分の経費が50万円、来年分の経費は5~12月の80万円となる。掛金の増減、任意の前払いができるので業績に応じてコントロールが可能だ。

 ここまではよい話。経営セーフティ共済を利用する際の難しさは解約するタイミングだ。掛金は全額その年の経費となるが、解約したときは全額が事業所得となる。仮に毎年100万円を掛けて、40カ月(3年4カ月)が過ぎ5年目に4年分の400万円を解約すると、その400万円は売り上げに上乗せとなる。売り上げ急増=納税額も急増だ。シミュレーションをしてみよう。

 課税所得がずっと300万円の事業主がいたとしよう。そのままなら所得税は5年間ずっと20万2500円。経営セーフティ共済に毎年100万円を掛けると課税所得は200万円になり所得税は4年間は10万2500円と毎年10万円の節税となる。5年目に解約すると4年分の400万円が上乗せされるので課税所得は700万円。所得税は97万4000円に跳ね上がる。5年間のトータルの納税額は経営セーフティ共済を利用すると増えることになる。

ずっと課税所得が300万円の方が納税額は少ない

 同じ例で5年目に売り上げが激減し、課税所得が20万円になったとしよう。解約により課税所得は420万円となり、5年間のトータルの納税額はほぼ同じとなる。もっと大きな浮き沈みがないとトータルの節税にはならない感じだ。4~5年ごとに売り上げが激しく減少する人は節税に使えそうだが、収益が安定している人は解約のタイミングを見つけるのが難しい。

所得が急激に落ちたときに解約すれば、大きく納税額が増えることはない

 タイミングを見つける際に役に立ちそうなのは「掛け止め」という制度だ。例えば年100万円を掛け、400万円になったところで掛け止めをすれば、400万円を預けた状態で期限なく停止できる。掛け止めしている期間は節税にならないが、売り上げがドカンと落ちた年に解約をすれば、事業の安定化、納税額の減少、生活の安定につながりそうだ。

 経営セーフティ共済は起業初年度は加入できない。それ以外にも加入の条件、加入窓口、掛け止めの条件、解約の条件など理解するべき項目がいくつかあるので、詳しくはウェブサイトを参照していただきたい。

年末に増やせる控除は?

 各所得控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などがあり、これらはサラリーマンも個人事業主も同じだ。これらの控除を年末ギリギリにドカンと増やすことは難しい。たまたま婚姻届の準備をしていれば年内に提出する、初めて生命保険に加入しようとしているなら年払いにする、未払いの社会保険料があれば年内に納付する、などが考えられるが万人向けの節税対策とは言えない。

 即効性があり大きく控除を増やせるのが「小規模企業共済」だ。小規模企業共済は経営者の退職金制度と呼ばれていて、納めた掛け金全額が、小規模企業共済等掛金控除の対象となる。年払いが可能なので年末に1年分を納めれば大きな節税となる。

「小規模企業共済」は節税の切り札
確定申告書には小規模企業共済等掛金控除の欄が用意されている

 小規模企業共済の掛け金は、月額1000円から7万円まで500円刻みで選択できる。年額にすると最大84万円だ。掛けた共済金は将来、一括受け取りや分割受け取りができる。積立預金をして、事業をやめたときに退職金、あるいは年金として受け取るイメージだ。

 消耗品を購入して経費を増やすには支出をともなうが、小規模企業共済の掛け金は将来戻ってくるので、無駄な出費をするよりは安心だ。すぐに必要なもの、欲しいものがない人は年末の節税に最適だと思われる。

 申し込みは金融機関などで受け付けているので、普段使用している銀行の窓口に行けばよい。こちらも12月の最終営業日までに手続きをすれば年内に加入できるが、書類の不備なども考慮すると数日前には手続きをしたい。

 筆者は起業して10年を超えた。リーマンショック翌年に事業廃止の危機に遭遇したが、その後なんとか生き延びている。起業翌年に小規模企業共済、2年前に確定拠出年金に加入し(イマココ)、いつ来るか分からない危機に備えて経営セーフティ共済に入るか否か検討中だ。個人的には節税対策の優先順位は小規模企業共済、確定拠出年金、経営セーフティ共済の順だと思っている。確定拠出年金は通年の節税策としては有効だが、年払いができないので年末ギリギリの節税対策としては使えない。

 ちなみに小規模企業共済と経営セーフティ共済は、同じ中小機構の運営で加入者数などが比較できる。2016年を比較すると、加入数は小規模企業共済が10万人ほどで経営セーフティ共済の2倍、在籍数は134万人ほどで3倍と圧倒的に小規模企業共済の利用者が多い。

小規模企業共済の加入者数と在籍数の推移
経営セーフティ共済の加入者数と在籍数の推移

青色申告特別控除

 白色申告の人は青色申告に切り替えると節税が可能だ。ただし今年開業した人は、業務を開始した日から2カ月以内に、税務署へ「青色申告承認申請書」を出さなければならないので、11月以降に開業した人に限られる。過去に開業した人、10月以前に開業した人は来年から切り替えるしかないので年末の節税対策とはならない。来年から青色申告に切り替える人は、3月15日までに手続きをしよう。

 11月以降に開業した人は、青色申告をすると「青色申告特別控除」で65万円の控除を受けられる(10万円の控除もある)。経費で65万円を使うのは、それなりの決心がいる。小規模企業共済に65万円を掛けるには、手元資金にゆとりがなければできない。青色申告特別控除は消耗品を買う必要もなく、小規模企業共済のように掛金を用意する必要もない。頑張って複式簿記による記帳をすれば大きな控除=大きな節税ができるので積極的に活用したい。

 青色申告のさまざまな特典に関しては、3月に掲載した記事『申込期限は3月15日 白色申告から青色申告に切り替えて1000万円を節税しよう』を参照していただきたい。

いざ節税! すぐに収支の確認を

 節税対策を始める前に行うべきは「売り上げ」「経費」「各種所得控除」の確認だ。課税所得が多く税率の高い人ほど節税効果は高い。課税所得が少ない人は節税の必要はない。売り上げや経費の集計は、表計算ソフトを利用してもできるが、自力で損益計算書や貸借対照表、確定申告書が作成できない人は最初から会計ソフト/サービスを利用した方が近道となる。

 MM総研が実施したクラウド型会計ソフトの利用状況調査の結果によると、会計ソフト利用者のうちパッケージソフトの利用者は77.7%、クラウド会計ソフトの利用者は13.2%となっている。同調査によるクラウド会計ソフトのシェアは弥生が56.8%、マネーフォワードが19.9%、freeeが16.9%などとなっている。

 依然として利用者の多いパッケージソフトのシェアを、POSデータの集計によるBCNランキングで見ると、弥生が13年連続1位。会計ソフトのデファクトスタンダード的存在となっている。それぞれの製品を紹介しておこう。

やよいの青色申告 オンライン

http://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro_ol/index.html

 やよいの青色申告オンラインはクラウド環境で利用する申告ソフトで銀行口座、クレジットカード、電子マネー、交通カードなどの取り引き明細を取り込むことができる。膨大な領収書を手入力する手間が減るので、確定申告の作業時間を大幅に短縮できる。簿記の知識がない人でも、損益計算書、貸借対照表、確定申告書など必要な書類が全て作成できる。1年間(最大14カ月)はすべての機能が無料で使用でき、2年目からは「セルフプラン」で8640円(税込)となっている。

やよいの白色申告 オンライン

http://www.yayoi-kk.co.jp/products/shiroiro_ol/index.html

 やよいの白色申告オンラインは数少ない白色申告専用ソフト。昨年から無料化されたので、すべての機能がずっと無料で使用でき、白色申告ソフトでは一択と言ってよい存在だ。クラウド環境で利用でき、銀行口座、クレジットカード、電子マネー、交通カードなどの取り引き明細を取り込むことができる。とりあえず2017年分の確定申告は白色申告という人はぜひ利用したい。

MFクラウド確定申告

https://biz.moneyforward.com/tax_return

 家計簿アプリ「マネーフォワード」で有名な、マネーフォワードが提供しているクラウド環境で利用する申告ソフト。銀行口座、クレジットカード、電子マネー、交通カードなどの取り引き明細を取り込むことができる。月単位での利用ができ、月額は864円(税込)。年額プランは9504円(税込)。

クラウド会計ソフト freee

https://www.freee.co.jp/kojin/

 freeeは、やよいの青色申告オンライン、MFクラウド確定申告と同じくクラウド環境で利用する申告ソフト。銀行口座、クレジットカード、電子マネー、交通カードなどの取り引き明細を取り込むことができる。フリーランス、開業初年度、不動産業用のスタータープランは月額1058円(税込)/年額1万584円。店舗、EC運営用のスタンダードプランは月額2138円(税込)/年額2万1384円(税込)。

やよいの青色申告18

http://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro/index.html

やよいの青色申告18

 BCNランキングの申告ソフト部門で13年年連続1位を獲得している弥生の最新のパッケージソフトが「やよいの青色申告18」。パッケージソフトでありながら、銀行口座、クレジットカード、電子マネー、交通カードなどの取り引き明細を取り込むことができるクラウド対応型となっている。簿記の知識がない人でも複式簿記による記帳ができる「かんたん取引入力」が用意されている。実勢価格は1万1000円だが、“あんしん”キャンペーンを実施中で、次期バーションが無償提供されるので実質は5500円程度だ。

ツカエル青色申告18+確定申告

http://www.bizsoft.co.jp/products/accblue/

ツカエル青色申告18+確定申告

 最後にもう1つパッケージソフトをを紹介しよう。ビズソフトが販売するツカエル青色申告18+確定申告は、通常版に加えExcelを持っていれば有効な乗換・優待版も販売されている。通常版の実勢価格は7000円台(税込)だが、乗換・優待版の実勢価格は4700円(税込)ほど。しかも2ライセンスが同梱されていて、2人で使用することが認められているため、知人と一緒に買えば実質2000円台という低価格が魅力だ。もともと弥生で会計ソフトを作っていた人達が開発にたずさわっているのでインターフェースなどはやよいの青色申告と似ている。「かんたん取引帳」により簿記の知識がない人で複式簿記による記帳を実現している。

節税は行きすぎないように

 念のために言っておくと「節税は事業の目的」ではない。現金・預金に20万円のゆとりがあったとして、20万円を経費として使うことが得策か、10万円は残して10万円を使うことが得策か、いっそ20万円をすべて残すことが得策かを冷静に考えていただきたい。

 勢いで衝動買いをして経費を増やしても、事業の役に立たなければ無駄遣いとなってしまう。本当に事業に必要な投資なのか、よく検討して判断をしていただきたい。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。