本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)を毎月ピックアップ。中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、幅広い話題をレポートしていきます。
■反仏運動~止まらない愛国主義
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中国各地で起こった反仏カルフールデモ
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4月は、フランス系スーパーのカルフールに対する抗議デモや不買運動など、ネットを中心とした反仏運動が大きな話題となった。中国メディアは連日のように「不買運動などの愛国行動は真の愛国行動にあらず」とさまざまな切り口で沈静化を促す記事を投入している。しかし、そうした記事にも、「真の愛国者なら態度で示せ」というコメントが並び(中国のニュース記事には通常コメント欄がある)、いまだカルフール不買運動は治まる気配がない。カルフールへの抗議行動は実店舗だけに止まらず、カルフール中国のWebサイトもDDos攻撃などを受けて12日間にわたってダウンした。
また、米CNNのアナウンサーがサンフランシスコでの聖火リレー実況中に、「中国人に対する暴言」発言があった件でも、インターネット上でアナウンサーに対して公開謝罪を求める署名運動を展開したり、「西側国家のメディアの報道は嘘であり、中国を馬鹿にするな」という内容の歌がインターネット利用者により作られたり、反CNNをテーマとしたWebサイトが立ち上がり話題になったりした。正式謝罪の後も「謝り方が悪い」などという声が上がるなどして、完全にはおさまっていない。
このほか、特定の国をターゲットにした活動ではないが、MSN Messengerのネームの前か後に「(L)CHINA」と書くことで、中国人による愛国を示す行動が、中国国内だけでなく、中国国外の華僑にまで広がった。また、中国ではMSN Messenger以上に人気のチャットソフト「QQ」で利用できる、5つの黄色の星が描かれたハートのアイコンが有志により作られ、それが一気に普及した。
さて、ここまでは4月の話だ。中国メディアの報道によれば、5月1日メーデーの日に反カルフールデモが行なわれたが、当局によって収束したという。その後は、一切ニュースでも反カルフールデモについては報道されておらず、当局の介入によってデモは収束したようだ。
■CNドメイン数が1,000万を突破
CNNIC(中国インターネット情報センター)は4月11日、2月末の時点でCNドメイン数が1000万を突破し、ドイツのdeドメインに続く、世界第2のドメイン登録件数となったことを発表した。2007年の年初の時点ではCNドメイン数は180万だったが、この年、1元(約15円)でドメインが取得できるキャンペーンをCNNICが開始して以降急増し、2007年6月の時点で600万、11月の時点で800万、そして今年の2月末の時点で1,000万を超えた。
■中国のインターネット利用者数、世界最多に
4月23日、中国政府工業和信息産業部は、2月末の時点で中国のインターネット利用者は2億2,100万人を記録、アメリカの同利用者数を超え、中国は世界でもっとも多くのインターネット利用者を抱える国となったことを発表した。ただし、利用者は世界1位となってはいるが、普及率では全世界平均をまだ下回るという結果となっている。
■ソフトバンク、ポータルサイトを運営する「千橡互動」の大株主に
4月はじめ、ソフトバンクはポータルサイト「猫撲(MOP.com)」の運営で知られる千橡互動(Oak Pacific Interactive)の大株主となった。投資額は千橡互動が発行した株の40%にあたる約400億円。
同社が運営する猫撲(MOP.com)は、中国のインターネット利用者の多くが知る著名サイトではないが、中国のポータルサイトとしては初めてWeb2.0をアピールしており、新世代のポータルサイトというポジションにある。
■中国版Second Life「HiPiHi」、第2段階を宣言
中国における最も人気のメタバースの「HiPiHi」が、充分な利用者数やコンテンツ数が整ったことから、第1段階の「創世記」から次の段階となる「社会初顕」とすることを宣言した。中国メディアはこの「次の段階」について、Second Lifeに近い形の商業運営が行なわれるのでは、と分析している。5月はじめの時点で、HiPiHiの登録数は5万を、コンテンツは65万をそれぞれ突破している。
■上海人が興味ある海外旅行先は日本、北京人は北朝鮮~百度調査
百度は、定期的にある特定の分野において、同社の検索サイトの利用状況から、検索傾向について調査しまとめているが、4月10日に、2007年第4四半期における旅行関連の検索利用状況についてまとめたレポートを発表した(中文PDF、http://data.baidu.com/lvyou/baogao.pdf)。
その中で、百度を通して検索した海外旅行先についてまとめたレポートがあり、中国全体では「香港(20.09%)」「韓国(8.60%)」「日本(7.31%)」「アメリカ(4.86%)」「シンガポール(4.80%)」の順になった。
これを都市別に見てみると、上海だけでは、「日本(17.43%)」「韓国(11.53%)」「タイ(9.92%)」の順で日本がトップ。一方、北京単独では「北朝鮮(11.18%)」「韓国(9.87%)」「シンガポール(7.57%)」の順で、北朝鮮がトップという結果に。北京では日本(3.29%)はかろうじて10位に入っており、北京人にとって日本は旅行先としての魅力がないようだ。
レポートでは、どんな旅行に興味を持っているのか、どの旅行情報サイトに注目が集まっているのか、どの旅行予約サイトに注目が集まっているのか、中国国内のどこに旅行先として興味を持っているのかなども紹介されている。旅行業に関わる方などは、翻訳サイトを利用して詳しく見てみるといいかもしれない。
■デル、C2Cサイト「淘宝網」に店舗を出店。PCメーカーとしては初
デルの中国法人は4月7日、PCメーカーとしては初となる、C2Cショッピングサイト「淘宝網」に店舗を出店した。さまざまなジャンルのメーカーが淘宝網に店舗を構えているが、PCメーカーの直営店としてはこれがはじめて。
淘宝網は中国で最も人気のオンラインショッピングサイトで、B2Bで知られるアリババの子会社。「ネットで欲しいものが安く買える」以上に「無料で店舗を持ち、金稼ぎができる」ということで人気を博している。
■ネット同人作家も、作家協会の仲間に入れる?
中国の作家協会の副主席の陳建功氏が、近年中国で台頭しつつあるインターネット上で作品を発表する同人作家についても、実力さえ伴えば作家協会に加えることを考えているとコメントした。
中国では、インターネット上の同人文学は、ポータルサイトで大カテゴリに登録されるほど人気コンテンツのひとつ。多数の小説をはじめとした作品がさまざまなサイトに投稿されている。陳建功氏はインターネット上の同人文学について、「紙媒体に比べて読者とのやりとりが強く、また発表のための敷居が低いため、新鮮な言葉が生まれ、また文章に活力がある」と評価している。
これに関して、中国メディアが同人文学作家数人にインタビュー。「本業があるので、協会に参加したところで会に参加する時間がないかもしれない」ということから参加に前向きでない作家もいれば、「大きな勢力に入ることができるなら、ペンネームではなく本名でぜひ参加したい」と前向きな作家もいるようだ。
■中国青年報、バーチャルマネーに関する調査結果を発表
4月11日、中国メディアの中国青年報は、同誌主催で約5,000人の青年が参加したオンライン調査で、調査に参加した人の83.5%がバーチャルマネーを利用しており、また23.5%がバーチャルマネーの利用を禁止すべきという結果になったというコラムを掲載した。
またバーチャルマネーは年15~20%の成長率で成長し、現在中国におけるバーチャルマネーの総額は数十億元が流通しているといわれるが、21.2%が本当の金ではないと認識しているという。逆に言えば、21.2%の人以外はバーチャルマネーはリアルマネーでもあると認識しているとも解釈できる。
中国青年報によれば、バーチャルマネーを利用する年齢は低くなっているとし、特に中学、高校、大学生の利用が多いという。半数近い人が、バーチャルマネーの存在がため、一部の学生が金儲けしようとせんとネット中毒になると回答している。
■関連記事
山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国の「愛国行動」をネットから分析する
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2008/04/25/19367.html
四川大地震に関する情報を得るための中国サイトリンク集
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2008/05/14/19539.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2008/05/14)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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