本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)を毎月ピックアップ。中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、幅広い話題をレポートしていきます。
■中国政府「インターネット依存症の未成年者は400万人」
中国では未成年のインターネット利用者が4000万人いるが、その1割にあたる400万人が「インターネット依存症」であると、中国全国人民代表大会で報告された。
同大会副委員長の李建国氏は、オンラインゲームとインターネットカフェの規制強化が必要であると説いた。具体的には、未成年のインターネットを利用する権利を保障すると同時に、違法な内容が含まれるオンラインゲームをチェックし、インターネットカフェを常時チェックする体制を強化し、違反した責任者に対しては法的責任を追及するとのこと。
すでに中国では、長く遊び続け過ぎるとゲーム内のお金がなくなるゲームシステムの採用や、ネットカフェを利用する際の身分証明書の提示、それに一部の地域ではインターネットカフェ内の監視カメラの設置などが行われている。
■北京オリンピック開幕で、中国のインターネット関連も記録尽くめ
8月8日、遂に開催された北京オリンピック。中国国内では開会式の視聴率が最高98%に達するという凄い記録が出たが、中国国内のインターネットもまた記録づくめだった。
開会式の8月8日から翌9日にかけて、中国国内の北京オリンピック公式パートナーであるニュースサイトのオリンピック特設サイトに訪れたユーザー数は1億6100万人に達し、3200万人がインターネットを利用して開会式の動画を見た。
また、中国国内向けの携帯電話用オリンピック主題歌のダウンロード数が573万を記録、携帯電話向けゲームのダウンロードも100万を突破した。
これらの数字は、いずれも中国における新記録となった。その後も、各ポータルのオリンピック特設サイトの勢いは衰えることはなく、オリンピック特設サイトを抱える多くのポータルサイトが過去最高のPVを記録した。
オリンピック終了後、中国網站排名網は開催期間中に人気だったオリンピック特設サイトランキングを発表。トップは老舗ポータルサイトの「新浪(Sina)」で、以下「捜狐(SOHU)」「網易(NetEase)」「TOM」「CCTV」が続いた。
その一方で、動画などオリンピック関連コンテンツを非公認で公開した中国国内サイトでは、発見後25分でサイトが閉鎖させられた例も(河北省、8月8日)。動画サイト「迅雷」や「央視国際」に対しては、未許可でコンテンツを公開したとして、「迅雷」に対し210万元(3500万円弱)、「央視国際」に対し410万元(6500万円強)の損害賠償請求が行われるなど、当局による厳しい処置が度々報じられた。
中国国外に対しても、中国国家版権局が「未許可のオリンピックコンテンツ配信の85%は先進国で行われている」と、国外での未許可コンテンツ配信を非難するコメントを出してアピールした。
■百度、検索サイトとしては初となるサーバーストレージにSSD採用へ
百度は、サーバーのストレージとして、従来のハードディスクに代わってSSD(Solid State Drive)を採用すると発表した。百度によれば、検索サイトとしては初だという。
百度によれば、検索インデックスなどがすでにSSDに置き換わり、Webページの検索サービスについては、サーバーストレージのすべてがSSDに置き換わった。これにより、サーバーのリード・ライトなど各性能が数倍速くなったという。
百度の開発責任者は「大規模のフラッシュメモリによるシステムは技術的に難しい。世界中で多くの企業がテストの段階にあり、実用段階にはたどり着いていないが、百度はすでに様々な問題を解決済みである」と、中国のメディアに対しコメントしている。
■「孫正義氏、携帯電話でSNS」でSNSが話題に
8月初旬、孫正義氏が中国で開催された会議に参加。会議において、「今後3Gが普及する中国において、発展が見込めるSNSサービスに投資を行う」と語ったことを、中国のIT系メディアが大きく報じた。
その後、それまでは滅多に見かけなかった、中国におけるSNSの将来について考察する記事がいくつも登場。孫正義氏は、誰でも知っているというわけにはもちろんいかないが、中国でも知名度と影響力があることを立証することになった。
ちなみに、孫正義氏率いるソフトバンクは4月末、SNSサイト「校内網」を運営する「オーク・パシフィック・ インタラクティブ(千橡互動)」に資本投資し、グループ傘下に収めている。
■レノボ、デルやHPに続き、通販ポータルに直販ショップ開設
8月26日、中国最大のPCメーカーであるレノボが、中国最大のショッピングサイト「淘宝網」に店舗を出店した( http://lenovo2008.mall.taobao.com/ )。淘宝網には、すでにデルやHPなどが出店しているが、それに続くオンライン直売参入となる。
レノボは従来(デルやHPもそうだが)、所得の高い都市部から、所得の高くない小都市、農村地域へと展開を進めてきたが、それとは別の方向性で「オンラインショッピングが普及したため出店に踏み切った」とレノボの担当者はコメントした。
淘宝網のレノボ直売ショップは9月頭現在、中国のリアル店舗とは異なり、低価格ミニノート「ideapad S9」(2799元~)をはじめとした、低価格ミニノートを前面に押し出している。
■2008年上半期に猛威をふるった「Aiboの画像が目印」のウイルス
日本では「キングソフト」の名で知られる、中国のセキュリティソフトベンダー「金山軟件」が、「2008年上半期のウイルス状況とインターネットの安全報告(2008年上半年中国電脳病毒疫情及互聯網安全報告)」を発表( http://www.duba.net/zt/08report/ )した。
発表によれば、2008年はトロイの木馬が急増し、中でもウイルスのファイルのアイコン画像がソニーのロボット犬、Aiboになっている「機器狗」というウイルスが猛威を奮った。機器狗ウィルスに感染したインターネットカフェのPCも少なくないが、ネットカフェではこれに感染した場合は営業を停止し、OSを再インストールするしか方法はない。
こうした、機器狗ウイルスによる損害は、総額1000億円以上に達したと見られる。2007年に猛威を奮った「お祈りパンダ」ウイルスを超えたとも言われており、機器狗ウイルスの犯人探しに50万元(約800万円)の懸賞金を出す企業まで現われた。
■「網易」関連サイト、中国企業としては初の翻訳サービス
中国の老舗ポータルサイト「網易(NetEase)」配下の検索サイト「有道」が、中国企業が開発したものとしては初となる中英・英中翻訳サービスをリリースした。
中国の検索サイト市場シェアは、百度中国、グーグル中国、ヤフー中国の3社でシェアのほとんどが占められている。そうした中で数%のシェアを持つポータル系の検索サイトは、新規ユーザー獲得とシェア拡大のため、今回の翻訳サービスなど、新サービスを続々と投入している。
■湖南市株洲市で、公務員党員腐敗通達システムの運営が開始
湖南市株洲市で、中国で初となる、市民が公務員や共産党員の腐敗をネットを通して密告する、公務員党員腐敗通達システムの運営が開始された。
公務員や共産党員の腐敗対策は中国政府も力を入れているところで、以前は腐敗をなくすことを目的とするオンラインのRPG(MMO RPG)も登場したのだが、失敗に終わった。今回の腐敗通達システムが狙い通りに腐敗撲滅につながれば、中国全土でこうしたシステムが採用される可能性もあり、成果が注目されている。
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山谷剛史の海外レポート
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http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2008/04/25/19367.html
四川大地震に関する情報を得るための中国サイトリンク集
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2008/05/14/19539.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2008/09/10)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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