本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。
■YOUKU(優酷網)など動画共有サイト、日本からの視聴を遮断
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中国の動画共有サイト「YOUKU」に日本からアクセスすると、「この動画はあなたの地域から視聴できない(視聴をブロックしている)」とメッセージが表示される
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年始に中国で最も人気の動画共有サイトのひとつ「YOUKU(優酷網)」と「土豆網(TUDOU)」が、日本と韓国からのアクセスを遮断していることを、大手ポータルサイト「QQ」が明かした。NHKをはじめとしたコンテンツベンダーから数百もの動画に対する削除要求があり、こうした著作権侵害への対応策としてアクセスを遮断したという。実はアクセス遮断は12月から始まったものではなく、数カ月前から実施されていたこともその後明らかになった。
日本からアクセスしてみると、サイトにはアクセスできるが、動画を再生しようとすると、両サイトとも「あなたの地域からの視聴はブロックされている」という旨のメッセージが表示される。ところが一方で、アップロードに関しては日本からも問題なく行える。
このため、日本で放送されたばかりの最新アニメコンテンツが各動画サイトにアップロードされているのは従来通りという状況だ。
アクセス遮断を伝えるニュースの感想掲示板上では、YOUKUやTUDOUの対応を歓迎するユーザーの書き込みが多数掲載されていることが確認できる。
またYOUKUは、日本や韓国など中国国外だけでなく、中国国内の百度の動画検索サイト「百度視頻」やGoogleの同サービス「谷歌視頻」から検索されないよう対策を進めているため、両サイトで検索しても、YOUKU内に不法アップロードコンテンツがあったとしても、検索では探し出せないようになってきている。
なおYOUKUは、12月21日に「需要改変(Change We Need)――2008中国視頻営銷盛典(2008年中国動画共有サイト大会)」というフォーラムを開催。その中で中国における動画共有サイトの利用者が2億人を超えたことを発表している。
■インターネット利用者は去年11月末で2億9000万人
12月30日、中国政府国務院の王晨氏はインターネット利用状況を発表。2008年末の段階で、インターネット利用者は2億9000万人、ブログは1億を突破したという。「中国でインターネットサービスが開始された1994年以来増長の一途をたどっている」と王氏はコメント。
また発表の中で王氏は「インターネットの秩序を守るべく管理を強化していく」、「インターネットの問題は世界各国と協調して対処する」、「10月に公布した、北京五輪以降も外国メディアに開放的な取材態度を取るという姿勢は、外国にもオープンである中国であることを表す」などとコメントしている。
「インターネットの秩序を守るための管理」のひとつに、ポルノ画像対策があるが、12月20日、企業ぐるみでポルノ画像28枚をアップした4名の被告に対し、北京西城区法院はそれぞれ懲役3年と5年の刑を言い渡したことが報道された。
また、12月24日には、杭州市でインターネット安全保護管理条例を制定。ネット上で悪質なデマや捏造を流布したり誹謗中傷を行った場合には、個人の場合最高で5000元(約7万円)、企業の場合最高で1万5000元(約21万円)の処罰を行うことを明らかにした。国家だけではなく、地方政府においてもインターネットを中国流で管理する傾向が強まっている。
■中国ブラウザシェア争い、さらに白熱
11月のニュース「Firefox中国版がリリース~中国向けの機能追加も」で紹介したとおり、単なる中文化にとどまらないFirefox中国語版が出た、12月もさらに中国市場に新しいブラウザが投入された。
ひとつが16日に正式リリースとなった「Opera中国版」。こちらも単なる中文化ではなく、中国で人気のダウンローダーとの連携や、中国向けのデザインなど、機能やデザイン面も中国向けにこだわった仕様となっている。
もうひとつが、中国3大ポータルサイトのひとつ捜狐(SOHU)が開発したタブブラウザ「捜狗瀏覧機(捜狗ブラウザー)」。軽快な動作や、フリーズしにくい作り、それに最近中国でも意識されつつあるプライバシー保護機能が特徴。
■中国メディア、個人情報売買の実態を紹介
12月31日に中国のIT系ニュースサイト「比特網」が、個人情報が販売されている実態を紹介する記事を掲載した。個人情報の漏洩について意識が高まったきっかけが、2008年初頭に起きた、香港の人気俳優エディソン・チャンの写真流出事件だ。日本に比べるとかなり遅いが、中国でも現在個人情報ビジネスは急拡大しているようだ。筆者が中国で生活している経験からも、個人情報が売買されていることを感じるようになった。
比特網の調査によれば、個人情報のうち最も高い値段で取引されるのが、オンラインゲームのアカウントだ。人気ゲームで強力な装備や道具を持っているアカウントなどでは、最高500元(約7000円)で販売できるという。一方で意外に換金性の低いのが、実名登録で趣味趣向などが登録されたSNSのアカウント情報だそうだ。「1件数角(1角=0.5元=1.4円)」。中国最大のアカウント数を誇るチャットソフトQQのアカウント情報に至っては「1件数分(1分=0.01元=0.14円)にしかならない」という。
また、個人情報を盗むためのクラック産業も盛んで、あるクラックサイトでは、各種個人情報を盗むためのトロイの木馬生成プログラムを、600~1500元(1万円~2万円強)で販売していると同記事で報告している。
今年はさらに個人情報を利用した裏ビジネスが加速するだろう。
■百度のC2Cショッピングサイトに「タイムサービス」
昨年11月にサービスが開始されたばかりの百度のC2Cショッピングサイト「有〓(〓は口へんに阿)」が、中国人ウケするサービスの拡張を行った。
そのサービスの拡張とは、一部出店者と提携した昼12時からのタイムサービス「午間購」だ。扱う品目は店それぞれだが、特徴的なところでは、輸入品をはじめとしたお菓子を扱う店が多い。食後にすぐ食べたいという利用者が、同じ都市の食品を扱う店に交渉し、発送してもらうのだとか。
オンラインショッピングの利用者は、そのほとんどが大都市部のホワイトカラーだ。公務員やそれに準じる職業の人々では、仕事をしないでオンラインショッピングばかりというような人が少なくない。会社員も、そこまでひどくはないものの、オフィスで自由にインターネットが利用できる環境が普通なので、昼休みには多くの会社員がオフィスのPCでオンラインショッピングを楽しむ。「有〓(〓は口へんに阿)」の午間購は、中国人による中国人を知りつくした百度らしいサービスと言えるだろう。
■百度の2008年検索キーワードでは「mp3」が首位脱落
百度は年末恒例となる、検索ワードランキングを発表。1位はチャットソフトの「QQ」、2位は昨年まで不動の1位だった「mp3」。3位は「小説」、4位は「電影(映画)」、5位は「遊戯(ゲーム)」となった。海賊版、自作を問わず、PCで小説を読むのが人気だが、今年は今まで以上に小説の人気があったような気がする。
mp3が1位から脱落したことは、インターネットベースのエンターテイメントが、去年まではmp3だけだったのが、動画や小説など様々なコンテンツに分散したためだろう。
また、2008年は「〓川地震(〓はさんずいに文)」「北京奥運(北京オリンピック)」「メラミン」「金融危機」など事件・イベント系の検索キーワードが目立った。「〓川地震(〓はさんずいに文)」が「北京奥運」以上だったということは、中国インターネットの主役である若者の注目が、北京オリンピックよりも四川大地震に集まっていたということを意味する。
■百度のmp3検索、北京の高等裁判所が合法と判決
百度mp3検索はグレーなサービスにもみえるが、これに対する最新の判例が北京の高等裁判所から出た。判決は百度の無罪というもの。
中国の音楽コンテンツベンダー「娯楽基地」が、百度に対し、同社のmp3検索サービスがコンテンツベンダーの権利を侵害していると、1億元(約14億円)の損害賠償を請求する訴えを起こしていた。
この裁判で、北京の高等裁判所にあたる「北京市高級人民法院」は12月、百度を無罪とする判決を下した。「現在の技術ではデータが海賊版か否かは識別することはできず、百度はリンクを生成しているのみで、データを百度が伝播しているわけではない」というのがその理由だ。
娯楽基地は、百度を提訴したのは今回が初めてではなく、少なくとも6回は訴訟を起こしている。このため、今回敗訴しても、今後も同様に百度を提訴する可能性がある。
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http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2008/05/14/19539.html
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http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2009/01/15)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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