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ファッションは言語の壁を超える ~プーペガール代表取締役社長 森永佳未氏(後編)
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● サイバーエージェント入社、人事本部抜擢
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サイバーエージェントでは新卒の配属でも「第1希望や第2希望に決まる人がほとんど」。森永氏も希望した人事部に配属された
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入社したのは、2006年のことです。私の同期の半数が営業志望だったのですが、私も入社するまでは営業を志望していました。収益で会社に貢献したいと思ったからです。
入社後、1カ月みっちりと人事本部が行っている研修を受けるのですが、それを通して、モチベーションがさらに上がりました。その時、人に影響を与えて動かせる仕事はすごい、いつか人事をやってみたいと思ったのです。そこで社長に告げたところ、「それなら最初からやれば」と言われて。
うちは、配属は第1希望から第4希望まで書くのですが、第1希望や第2希望に決まる人がほとんど。「やりたい」と積極的に手を挙げると、基本的には「じゃあやってみろ」と背中を押してくれるし、ありがたい環境だなと思います。
人事本部に入ってからは、新卒対応をしました。就活生に会社の魅力を伝えて入社してもらうという仕事です。それまでは総合職だけだったのですが、その年から、社長要望によりエンジニアも新卒採用をすることになりました。新しいことにトライできるのが楽しそうだと考えて、エンジニア採用担当への希望を申し出たのです。
担当になってからは、社内のエンジニアに話を聞いたりしました。新卒のエンジニア採用は過去の実績もベースもないので、すべてが手探り状態です。ですが、自分に課せられた「エンジニア採用」への期待に応えたいと愚直にアクションしたことが功を奏したのか、1年後、目標とされていた人数のエンジニアを採用することができました。後から見たら反省点も多かったのですが、最初から完璧を狙っていたとしたら、萎縮してしまって何も行動できずに終わっていたのではないかと思います。
● 社長アシスタントへ
エンジニア採用が何とか成功し、次は2009年度新卒入社を扱うことになりました。人事採用は、非常にやりがいがありましたが、私の中では、入社当事に抱いていた「収益や事業に関わる仕事がやりたい」という気持ちが強くなっていました。
そこで、社長室に異動になっていた入社当事の上司に自分の考えを相談をしたところ、「じゃあ、うちに来るか」と言われて。基本的に、悩んだら「挑戦する」方を選ぶようにしているので、2年目の6月に、社長アシスタントとして、社長室に異動しました。元上司と私と、私より1つ年下のスタッフから成る、若い組織でした。
仕事の内容は、サイバーエージェントの代表取締役社長である藤田から言われたことすべて。ちょうど、藤田が「Ameba」を自分が直接テコ入れすると言っていた時期でした。「ここが盛り上がっていないので、盛り上がる企画を考えて」と言われて、みんなで考えたりしましたね。
● プーペガール事業部への異動
プーペガールは、入社1年目の2007年2月に生まれていました。仲良くしていたエンジニアの男性とデザイナーの女性が作ったサービスで、もともとは「Ameba」の一事業でした。私はその頃から使っており、ヘビーユーザーです。
ファッションに関する情報や、ブランドに関する情報を得ることができて、自分のファッション情報を送るとアバターの着せ替えアイテムがもらえるという今までにない新しい仕組みに、わくわくしました。自分が着たい服を人形で試したり、どんなファッションが流行っているか、他人の持ち物が見られるのも楽しいんです。
「アバター」というと、抵抗がある人もいると思うのですが「プーペガール」は、第一印象で「可愛い!」と思いました。(笑)ネットサービスでおしゃれなものはあまり知らなかったので、とても新鮮でした。女性って感覚を非常に重視しているので、第一印象でポジティブな印象を持ってもらえるかどうかが肝なんです。
藤田に「プーペガールがもっと盛り上がるように、方法を考えて」と言われて、ヘビーユーザーにヒアリングしたり、盛り上がる方法を相談したりするようになりました。そうするうちにどんどんはまっていって、「この仕事を、片手間ではなくもっと全力でやりたい」と思うようになっていました。
私の気持ちが通じたのか、社長に「プーペガールに異動するか」と言われて、8月に異動になりました。社長室にいたのは、結局2カ月間でした。プーペガールのチームはまだ数人しかいない状態で、参加しました。
● こだわりが通じて実現!ルイ・ヴィトンコラボ
「ブランドとコラボしたい」と思っていたので、いわゆる一流ブランドといわれているところには積極的に提案に行きました。ルイ・ヴィトンは、最初は興味を持って頂けなかったのですが……何度もご提案することで、プーペガール内での展開が決まりました。
ブランドはクオリティに命を懸けているので、アバターという限られたイラストで、どこまでブランドを表現できるかということをルイ・ヴィトンの方は懸念されていたのです。この点、プーペガールでは、アイテムの細部にこだわっています。アイテムを拡大して見ていただくと、ステッチの数やロゴまで正確に表現されているのがおわかりいただけると思います。
具体的にはたとえば、アバターのつけている時計のアイテムがあるのですが、それを、実際に拡大してみると、実際の時と同じ時刻を指していて、秒針も動いているんです。
また、同じブランドでも量販店で買うのと直営店で買うのは全く違います。直営店で購入するということは、それ自体が“ブランド体験”の一部なのです。そこで、そのブランド体験をどうプーペガールで再現するかと考えたんですね。
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プーペガール内のヴィトンショップ。普通のアイテム購入とは違い、店員の接客も含めて「ブランド体験」ができるようこだわった
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ヴィトンのバッグ。一瞬写真かと思ってしまうほど、精巧なイラストがドットで表現されている
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バッグを拡大して見たところ。ステッチの数までこだわって正確にイラストで再現されている
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普通のアイテムでは購入の際に「買いますか」「はい」というやりとりがあるだけなんです。そこを、ルイ・ヴィトンの場合は、店員に扮したアバターが表示され、ユーザーがルイ・ヴィトンのプーペアイテムを購入すると、「お買い上げありがとうございました」とていねいな接客を体験できるようにしました。
そのように、「プーペガールで、いかにブランド体験ができるか」という点を前面に押し出して、お話させていただいたのです。プーぺガールの見えないところでも手を抜かないという考え方と、老舗のプライドがリンクして、コラボが実現したのではないかと思っています。
● 入社2年目での社長抜擢!
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突然社長の声がかかって「正直、仰天しました(笑)」
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ある日、藤田が「プーペガールを子会社化しようと思う」と言うので、「いいですね」と答えると、続けて「社長をやってくれないか」と。正直、仰天しましたね(笑)。
けれど、プーぺガールが好きで、大きくして世界に羽ばたかせたいと考えていたので、「役職は何でもいいので、やります!」とその場で答えました。両親には、事後報告だったので「えーっ!」と驚かれましたね。親戚には「よっ、社長」と言われたり(笑)。
社長に選ばれた理由は、新卒の頃から成果に対してしつこかったのが少し認めてもらえたのかなと思います(笑)。
● 口コミで広がったプーペガール
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プーペガールのコメント例。まさに女子独特の会話の世界だ。男性の登録も可能だが、ここに男子が混じるのは難しいかも? 男性の場合は、プーペが好みの女性像であることが多いという
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プーペガールユーザーの98%は女性で、10代と20代が40%ずつ、30代以上が20%です。あまり宣伝はしていないのですが、口コミで30万人まで増えました。
最近は、取材の申し込みをいただくことも多くなってきました。今までは「プーぺガールって何?」という人が多かったのですが、記事を見た人が登録してくれたりして、じょじょに会員が増えています。
一応女性向けのサービスなんですが、男性ユーザーも若干います。男性がプーぺを作ると、恋人そっくりになったり、自分の好みの女性像を作る傾向がありますね。だから、気になる男性がいたら、まずプーペを作らせてみると好みがわかるかも(笑)。
ただ、「可愛い!」「キュート!」的な女子独特のコミュニケーションの世界なので、男性はなかなかなじめないかもしれないですね(笑)。
● 外に目を向けて、勝つための方法を考える
会社としては、目標は当然あります。自分でも立てていますし、会員数やPV(ページビュー)など、妥当な線よりちょっと上を狙ったりしていますね。
プーぺはみんなで育てている子どものようなものです。社長になってからは、もっと外を見なければという意識が生まれました。愛情を持って育てている以上、独りよがりのサービスではなく、一人でも多くの人に私同様に愛情をもってもらえるサービスにしたいと思っています。なので、世間でモテるとされていることがあるなら、それを勧めるのが私の仕事です。
今世間で注目を集めているものがあり、それをプーペガールで再現できるのであれば、しっかりと良いところは取り入れていき、モテる子に育て上げたいですね。
親バカかもしれませんが、たくさんの人から好かれるポテンシャルを持っているサービスだと思っているので、その可能性を目一杯開花させたいですね。
● 目で見てわかるサービスは海外にも通用する
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着せ替え遊びは万国共通の、女の子が好きな遊びだ。サービス開始当初から、ブラウザの言語が英語に設定されていると、ほとんどの部分が英語で見られたというが、今後中国版なども提供していきたいという
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日本以外からのユーザーもいて、日本語以外のユーザーは3割に上ります。始めた頃から、ブラウザの言語設定を英語にするとほとんどの部分が英語で見られるようになっています。アクセスは60カ国以上からあり、英語圏が一番多く、次がポルトガル語圏、スペイン語圏、中国語圏という順です。
今後、中国語版などもやりたいですね。ファッションなど、目で見てわかるものは国を超えて発信しやすいんでしょうね。ニューヨークに行く時に向こうのプーペの服を見て、「今寒いのかな」ということがわかったりするんですよ。
日本女性は恥ずかしがりやだし、理由もなく自分の服を自慢してくれないだろうと考えて、服の写真をアップするとアバターの服がもらえるという仕組みを考えたんですね。
それに比べて、海外の人はアグレッシブです。プーペガールでは顔は出してはいけないのですが、海外だと思いっきりポージングした顔出しの写真をアップする人がいるんです(笑)。「キュート」とか「ベリーナイス」などのメッセージを気軽に送ってきたり、コミュニケーションにためらいがない感じがしますね。
海外のサイトは、ユーザビリティが良いものが少ない気がします。けれど、海外のユーザーはわからなくてもごりごり進むし、あっと言う間に会員が集まって収益化してしまう。一方、日本人はユーザビリティに厳しいので、設計が大変です。だから、日本人が使えるサイトなら、海外でもたいてい問題なく使えるんですよね。このままいくと、海外の方がユーザー数が一気に多くなってしまうかもしれませんね。
● ユーザーの要望から生まれた機能も
ミクシィのプーペコミュニティやご意見ポストで出てきた要望から、たくさんの機能が生まれました。「バレンタインでこういうアイテムがほしい」という意見を取り入れたり、アイテムをあげられるプレゼント機能ができたり。Facebookや「Ameba」でもプレゼントがあげられますが、プレゼント機能があるとコミュニケーションがより楽しくなると思うんですよ。
ブログでプーぺガールでの出来事を書いている人もたくさんいます。一度プーペに着せた服はいったん脇に置けるのですが、たくさん服を出しまくって「ポルターガイスト」と書いてる人がいたり(笑)。プーペには吹き出しがつくのですが、これをチャットみたいに使って、「暇な人集まれ」という吹き出しにレスが1000件ついたり。
ユーザーの方がどんどん面白い使い方を見つけてくれるので、見ていて非常に面白いですね。
● プーぺを世界に羽ばたかせたい
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目標は「全人口の半分、つまり全世界の女性にプーペガールを使ってもらうこと!」。1人でも多くの女性に愛情を感じてもらえるサービスにしたいという
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今後は、プーぺガールをもっと大きくして、世界に羽ばたかせたいです。満足できるくらい大きくなるまでは、プーぺガールに全力投球します。実現したら違うことがやりたくなるかもしれませんが、何かあった時にはチャレンジする方を選びたいと思っています。
プーペガールのアイテムは、現在4000くらいあります。やりたいファッションは、人とかぶらずに実現できるはずです。ファッションは言語を越えるので、世界に羽ばたけると思うし、チャレンジしたいと思っています。
目標は、全人口の半分、つまり全世界の女性にプーペガールを使ってもらうこと! 1人でも多くの女性に愛情を感じてもらえるサービスにしたいと思っています。(おわり)
(→ 前編をみる)
関連情報
■URL
プーペガール
http://pupe.ameba.jp/
サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/
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・ ファッションは言語の壁を超える ~プーペガール代表取締役社長 森永佳未氏(前編)(2009/03/30)
2009/03/31 11:38
取材・執筆:高橋暁子 小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。 PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。 |
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