5分でわかるブロックチェーン講座

FCバルセロナが130万ドルの資金調達、「ブロックチェーン版クラウドファンディング」で

スポーツチームによる「ファントークン」が活発化

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

FCバルセロナが独自トークンで130万ドルを調達

 スペインの人気サッカーチームFCバルセロナが、独自トークン「BAR」を発行し2時間で130万ドルを完売した。BARは計106ヶ国で販売され、日本からも多くの購入が入ったという。

 昨今、スポーツチームによるブロックチェーンを活用した独自トークンの発行および販売が盛り上がりをみせている。これらを「ファントークン」と呼び、資金調達を目的として発行される。独自トークンによる資金調達といえばICOが有名だが、スポーツチームによるものはどうやら区別して「FTO(Fan Token Offering)」と呼ばれているらしい。新型コロナウイルスで再び注目を集めているクラウドファンディングに近い取り組みだ。

 FTOは、多くがChiliz(チリーズ)というプラットフォーム上で行われている。ICOと同様、プレセールという形でChiliz上で販売を行い、その後ファントークン専用の取引所に上場されるという。そのため、購入したファントークンは他者へ販売することができるのだ。なお、Chiliz上で発行されるトークンは、イーサリアムのERC-20とバイナンスのBEP-2の、2つのプロトコルを採用している。

 ファントークンの保有者は、チームの重要な意思決定に対して意見を述べることができるようになる。これは、ブロックチェーンネットワークにおけるガバナンストークンに近い性質を持っているといえるだろう。

 バルセロナの他にも、ユベントスやパリ・サンジェルマン、総合格闘技団体UFCといったスポーツチームが、既に独自のファントークンを発行している。

参照ソース


    サッカーチーム「FCバルセロナ」のファントークン、2時間で完売
    [CoinPost]
    From today, Barça fans can get the first Fan Tokens to take part in Club surveys
    [FCバルセロナ]

中国のブロックチェーン国家プロジェクトがChainlinkおよびCosmosと提携

 中国のブロックチェーン国家プロジェクトである「BSN(Blockchain Service Network)」が、Chainlinkのブロックチェーン外データ(オラクルデータ)を統合する意向を発表した。

 BSN自体はブロックチェーンではなく、様々なブロックチェーンを組み合わせたプラットフォームだ。中国では、ブロックチェーンを国家戦略として位置づけており、BSNを整備することにより、政府から民間への後押しが進められている。

 Chainlink以外にも、中国政府はCosmosに関する開発を行うIris Foundation Ltd.と技術提携を結び、クロスチェーンへの対応を本格化させるという。合わせて、Polkadotに関する開発団体とも協議を進めていると発表した。

 CosmosやPolkadotは、ブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互互換性)に取り組むプロジェクトだ。BSNは、イーサリアムやイオスといった複数のパブリックブロックチェーンに対応予定のため、インターオペラビリティは欠かせない要素になるのだ。

参照ソース


    中国の国家ブロックチェーン構想:ChainlinkとCosmosが参画した理由
    [CoinDesk Japan]
    中国の国家ブロックチェーンサービス、Chainlinkのオラクルに導入──過去最高値付近の仮想通貨の現在
    [CoinPost]

今週の「なぜ」中国の国家ブロックチェーンにとっての「オラクルデータ」と「インターオペラビリティ」はなぜ重要か

 今週は中国のブロックチェーン国家プロジェクト「BSN」に関するトピックを取り上げた。ここからは、「なぜ重要なのか」解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

BSNに残された大きな課題はオラクルとインターオペラビリティ
「オラクルデータ」の信ぴょう性はChainlinkで解決
インターオペラビリティはCosmosやPolkadotで解決

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

 2019年より、中国はブロックチェーンを国家戦略として位置づけ、習近平国家主席が自ら旗を振っている。背景にあるのは米国との覇権争いだ。ブロックチェーンは基盤技術であることから、一度システムに採用されると代替しづらい性質を持っている。そのことを理解している中国は、現時点で汎用性の高いブロックチェーンプラットフォームを構築しようとしている思惑だろう。

 その役割を担うのがBSNである。しかしBSNには、大きな課題が2つあるといえる。1つ目が「オラクル問題」、2つ目が「インターオペラビリティ問題」だ。

 前者の「オラクル」とは「外部のデータ」という意味で、例えば保険をブロックチェーンで扱う場合は、保険で扱われるような事象(入荷の遅延や事故など)が「オラクル」となる。そして「オラクル問題」とは、この外部のデータを「ブロックチェーンに信憑性を担保した状態で取り込むこと」を意味する。ブロックチェーンに記録される以前にデータそのものが改ざんされていた場合、ブロックチェーンが意味をなさなくなってしまうからだ。

 この課題の解決に取り組んでいるのがChainlinkである。Chainlinkは、オラクル問題に対するソリューションの中で最も実績を残しているプロジェクトであり、中国政府のテクノロジー感度の高さが伺える。

 後者のインターオペラビリティ問題とは、異なるブロックチェーンで管理されるアセットに相互互換性を持たせることを意味する。現状、ビットコインブロックチェーンで管理されるBTCは、イーサリアムブロックチェーンで直接扱うことができない。

 身近な例でいうと、AndroidとiOSそれぞれにネイティブアプリを開発しないといけない理由と同じである。要するに、異なるプロトコルを採用しているため相互互換性がないのだ。

 この課題の解決に取り組んでいるのがCosmosやPolkadotである。これらのソリューションはクロスチェーンと呼ばれ、異なるブロックチェーンのハブとなることで互換性を持たせている。

 クローズド思考のイメージが強い中国政府だが、今回のChainlinkおよびCosmosとの提携は、民間視点でも非常に“センスが良い”。既得権益とレガシーコードで構築された日本の政府系システムとは、天と地ほどの差があるだろう。BSNの動向には、引き続き注目していきたい。

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami