5分でわかるブロックチェーン講座
ツイッター乗っ取り事件、送金されたビットコインを追跡すると………
MUFGが独自通貨の発行を公表、ホットペッパーグルメの加盟店で利用可能に
2020年7月21日 15:43
MUFGがブロックチェーン活用の独自通貨を発行へホットペッパーグルメの加盟店で利用可能に
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、ブロックチェーンを使った独自のデジタル通貨「coin(コイン)」を、2020年度中に発行する方針を明らかにした。まずは、リクルートの運営するホットペッパーグルメの加盟店で使えるようになるという。
MUFGの亀沢社長は、コインの発行について次のように述べている。「いろいろあって遅れた面があるが、新型コロナウイルス問題もあったのでタイミング的にはちょうど良いかもしれない」。
MUFGは2017年に、coinの前身となる「MUFGコイン」の発行計画を明らかにし話題を呼んだ。その後2018年に、MUFG以外の企業も独自通貨を発行できるプラットフォームを立ち上げるべく、MUFGコインのリブランディングを行なっている。
利用者は、「1coin = 1円」のレートでcoinを使用することができ、支払いや円との換金、個人間送金といった場面で活用できるようになるという。
新型コロナウイルスの影響もあり、各国でCBDCや企業発行のデジタル通貨に関する取り組みが加速している。世界中で通貨が乱立するようになると、それら全てに互換性を持たせる必要が出てくるはずだ。
基盤技術にブロックチェーンが使われるのは、既定路線だといえる。むしろブロックチェーンを使わずに発行された通貨は、すぐに淘汰されるといっても過言ではないかもしれない。
Twitterで大規模な乗っ取り事件が発生送金されたビットコインを追跡すると……
暗号資産・ブロックチェーン界隈に限らず多くの話題を集めたニュースが、著名人のTwitterアカウントを標的とした乗っ取り事件だろう。クラッカーがハッキング後の不正投稿でビットコインの送金を促したため、特に暗号資産界隈で注目を集めたように感じている。
本件について、暗号資産界隈内の視点から解説していきたい。また、この後のパートでは本件から学ぶべき3つの要素についても紹介する。
事件の概要はこちらの記事に譲るが、クラッカーが金銭獲得にビットコインを使用したため、トランザクション履歴やウォレットアドレスを追跡することで、事件は既に収束に向かいつつある。
使用されたウォレットアドレスは以下の2つであり、実際にブロックチェーンを閲覧することで資金の流れを見ることができる。閲覧可能なURLを付与しているためぜひご覧いただきたい。ブロックチェーンの透明性を実感することができるだろう。
bc1qxy2kgdygjrsqtzq2n0yrf2493p83kkfjhx0wlh (12.86911529 BTC)
bc1qwr30ddc04zqp878c0evdrqfx564mmf0dy2w39l (0.55302586 BTC)
上記のアドレスをさらに追跡すると、受け取ったビットコインの一部を大手取引所Coinbaseで換金しようとしていることがわかる。Coinbaseで口座を開設するには本人確認(KYC)が必要なため、クラッカーの身元が判明するのも時間の問題だ。その他の取引所では、当該のアドレスからの送金をブロックする対応が実施されている。
なお、米国連邦捜査局(FBI)が本件について既に調査に乗り出していることも明らかになっている。
今週の「なぜ」Twitterハッキング事件はなぜ重要なのか
今週はMUFGの独自通貨「coin」とTwitterのハッキング事件に関するトピックを取り上げた。ここからは、トピックを後者に絞り「なぜ重要なのか」解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
Twitter社の著しい集権性が露呈
事件の大規模度合いとは裏腹に被害額は小さい
事件の原因はビットコインではなくTwitter
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
露呈したTwitter社の中央集権ガバナンス
今回の事件では、クラッカーがソーシャルエンジニアリングを駆使して不正アクセスに成功した。これは、Twitter社の著しい集権性が原因だといえるだろう。一部の従業員には、Twitterアカウントをコントロールできる権限が付与されていたのだ。
この管理体制は、当然のことながら外部には知られていない。果たして本当に必要な権限だったのか疑問が残る。
事件の目的は未だ不明
クラッカーは、アクセス権を不正取得したTwitterアカウントを通して、ビットコインを特定のアドレスへ送金するよう投稿している。先述の通り、不正に獲得したビットコインは13BTCを超えるものの(約1300万円)、乗っ取られたアカウントが持つ知名度からすると、被害は小規模にとどまったといえるだろう。
この結果について界隈内では、金銭目的ではなくメッセージ性のある政治犯による犯行だったのではないか、という意見も出ている。実際、クラッカーは当該ウォレットアドレスから実行されたトランザクション内に、次のようなメッセージを残している。
「JustReadALL TransactionoutputsAsText YouTakeRiskWhenUseBitcoin BitcoinisTraceabLe WhyNotMonero forYourTwitterGame」
これを意訳させていただくと、「複数のトランザクションにメッセージを残したので、全て読んでほしい。ビットコインを使うとリスクが伴う。ビットコインは追跡可能だからだ。Twitterのようなゲームをする場合、なぜモネロを使わないんだ?」というような内容だ。
なお、元の英文は、実際のメッセージを読みやすいように加工したものだ。実際のトランザクション内メッセージは下図の通りだ。
これを受けて、界隈内では暗号資産モネロ(Monero)の保有者による宣伝目的ではないか、との見方も浮上した。クラッカーからのメッセージ通り、犯行にビットコインを使ったことで身元が判明するのも時間の問題となっている。プライバシー性能の高いモネロを使えば、トランザクションの追跡は困難だ。
その点を理解していてあえてビットコインを使ったと考えると、金銭目的での犯行ではなく、何かのメッセージを伝えるためのものだった可能性が高いといえる。
Twitter株価の下落幅よりもビットコイン価格の下落幅が大きい
今回の事件を受け、Twitter社の株価は3%ほど下落した。一方で、クラッカーの送金対象に使われた“だけ”のビットコインは価格が10%ほど下落している。
これは、ビットコインを含む暗号資産のイメージが未だに良くないものであるということの裏付けだろう。毎年繰り返される取引所のハッキング事件と同様、またしても暗号資産のイメージを悪くする出来事が起きてしまったのだ。
一定のリテラシーを有する読者の皆さんにとっては自明のことであるが、今回の事件は全てTwitter社に原因があり、ビットコインには何の欠陥も存在しない。むしろ、トランザクションを追跡可能な性質が改めて浮き彫りとなり、素早い事件の収束に貢献してすらいるといえるのではないかと考えている。
編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください