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「DeFiバブル」で不具合プロジェクトに500億円が集まる、YAMトークンの栄枯盛衰
LibraトップがFacebook決済部門の責任者に就任
2020年8月18日 08:50
LibraトップがFacebook決済専門チーム責任者に就任
米Facebookが、決済およびコマース専門の部隊「Facebook Financial」を社内で立ち上げた。チームの責任者に、暗号資産Libraを率いるDavid Marcus氏が就任したことで話題となっている。
今回の組織再編により、FacebookはMessengerやInstagram、WhatsAppといった主要メッセージングサービスと、Facebook Payを中心とする決済機能を更に近づける方針だ。また、LibraトップのMarcus氏がこの事業をリードする予定であることから、各種メッセージングサービスへの将来的な暗号資産決済の導入が予想できそうだ。
今回の発表についてMarcus氏は、今後もLibraプロジェクトは継続して指揮を取っていくと発言している。
一方で、これはLibraがFacebookの「持ち物」であることを案に裏付けする結果にもなった。暗号資産プロジェクトは非中央集権を思想に持ち、Libraも当初はLibra協会に参画する100以上の団体から運営される方針だったが、規制当局からの反発により加盟者の脱退が相次いでいる。
YAMトークンに480Mドルが流入
かなり先端的なトピックだが、今週(8/11~8/17)のブロックチェーン業界はこの話題で持ち切りだったため紹介したい。テーマは「DeFiバブル」である。
ガバナンストークンにより発生したDeFiバブルについては、以前こちらの記事でも紹介している。そんなDeFiバブルを象徴する出来事が発生した。事の発端は、Yam FinanceというDeFi市場にトークンの流動性を供給するLiquidity Miningのサービスだ。
急速に成長しているDeFi市場だが、株式市場や暗号資産市場と比較すると、まだまだ市場の流動性に欠けている。そのため、Liquidity Mining(流動性マイニング)という市場への資金供給を行うサービスが必要となるのだ。
Liquidity Miningを行うサービスを利用すると、資金を供給(ロック)する代わりに独自のトークンを受け取ることができる。Yam Financeの場合はYAMトークンだ。
昨今のDeFiバブルに乗り遅れまいと、Yam Financeはわずか10日間でこの「YAMトークン」を発行した。手抜きと言っていいほどの開発実態とは裏腹に、瞬く間に資金は流入し、わずか1日にして480Mドル(約510億円)もの大金がYAMトークンに集まった。
この話には続きがあり、この後のパートで説明するが、結論として、YAMトークンの価格は発行開始の翌日に大暴落している。
今週の「なぜ」YAMトークンの栄枯盛衰はなぜ重要か
今週はFacebookの新設した決済部門とYam Financeに関するトピックを取り上げた。ここからはなぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
バズワード化する「Yield Farming」と「Liquidity Mining」
不具合だらけのプログラムに480Mドル
ICOバブルと同じ道を辿るDeFi市場
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
バズワード化する「Yield Farming」と「Liquidity Mining」
昨今のDeFiでバズワード化しているのが、「Yield Farming」と「Liquidity Mining」だ。
Yield Farmingとは、主にDeFiレンディングサービスを組み合わせて利用することでリターンを出す、投資活動のことを意味する。一方のLiquidity Miningは、そんなYield Farmingに不可欠な流動性を供給する行為だ。Liquidity Miningでは、対価としてプロジェクト固有のガバナンストークンを付与されることが多い。
今回取り上げたYam Financeは、先述の通りYield FarmingのためのLiquidity Miningを行うサービスだ。まさに昨今のDeFiを象徴するプロジェクトだと言っていいだろう。
不具合だらけのプログラムに480Mドル
Yam Financeの発行するYAMトークンには、わずか1日で480Mドルもの大金が集まった。プログラムで全てが動作するブロックチェーンプロジェクトの場合、通常は開始前にコード監査が行われる。スマートコントラクトの性質上、一度スタートしてしまうと修正するのが難しいからだ。
しかしながらYam Financeはコード監査を行なっておらず、トークンを発行するための規格もERC-20を独自にカスタマイズしており、意図しない不具合が発生する可能性が多分に指摘されていた。にも関わらず、大金が集まっていたのである。
案の定、翌日には不具合が明らかとなり短すぎる栄枯盛衰となってしまった(そもそも栄えたと言えるのかすら怪しいが...)。不具合は、リベースと呼ばれるYAMトークンの価格を一定に保つためのプログラムであり、プロジェクトの基礎となる部分であった。
ICOバブルと同じ道を辿るDeFi市場
2013年より暗号資産・ブロックチェーン業界に身を置き、2017~2018年のICOバブルを経験した著者としては、今回の一件でDeFi市場のバブルを確信した。ICOバブルは、中身のないアルトコインに資金が集まった結果発生したが、今回も中身のないガバナンストークンに資金が集まっているわけである。
一方で、ICOとは異なりDeFiには一定の知識がないとアクセスすることが難しい。そのため、DeFiバブルが弾けた際の人数的な被害は、ICOと比較すると小規模にとどまるのではないだろうか。不幸中の幸いとはまさにこの事だ。知識として有しておく必要はあるものの、今のDeFiに投資をすることは絶対に推奨できない。
編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください