5分でわかるブロックチェーン講座

成長著しいDeFi市場にバブルの兆し、その根拠とは?

世界中で「ガバナンストークン祭り」が発生

(Image: Shutterstock.com)

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

DeFiで「ICOバブル」が再来か

 成長著しいDeFi市場に、バブルの兆しが出てきた。DeFiの市場規模を計測する場合、こちらの記事で紹介した通り現時点ではロック(デポジット)額を指標に用いることが一般的だ。これをTVL(Total Value Locked)と呼んでいる。

 そんなTVLが、今週(07/28~08/03)40億ドルを突破した。わずか1ヶ月で4倍もの成長率である。一見すると、右肩上がりの綺麗な成長曲線を描いているように見えるだろう。しかし、この成長の背景にある要因には注意が必要だ。詳しくは末尾の考察で説明するが、2017年から2018年にかけて発生した「ICOバブル」と似た兆候が伺える。

参照:DeFi Pulse

参照ソース


    Around the Block #7: Understanding yield farming and the latest developments in DeFi
    [The Coinbase Blog]
    The great big DeFi bubble—will it burst?
    [Decrypt]

人気DeFiプロトコルの運営組織が解散

 少し専門性の高い内容だが、ユニークかつ重要なトピックであるため紹介する。

 人気DeFiプロトコルのSynthetixを運営するSynthetix Foundationが、“予定通り”解散を発表した。Synthetixは、DeFiにおけるデリバディブプラットフォームだ。

 ブロックチェーンによって実現されるWeb3.0の時代には、プロジェクトは分散型の組織によって運営されることが一般的となる。そのため、発足時点から株式会社ではなくFoundation(財団、非営利組織)の形を取る場合が多く、SynthetixもSynthetix Foundationによって運営されてきた。

 他にも、Bitcoinの場合はBitcoin.orgが、Ethereumの場合はEthereum Foundationがそれぞれ中心となって開発を進めている。

 そんなWeb3.0を形成するプロジェクトの多くが、将来的にプロジェクトの運営をコミュニティに移譲し、Foundation自体は解散するというロードマップを描いている。限りなく完全に近い、分散型の運営形態を目指しているためだ。

 Synthetix Foundationも例に漏れず、発足当初より今回の解散を予定していたのである。従って、決してネガティヴなものではなく、コミュニティへの権限移譲ができている証拠だといえるだろう。

 一方で、実際にFoundationがロードマップに従って解散する例はまだまだ稀有であり、今後の参考事例として有益な取り組みだといえる。海外では大きく取り上げられていた。なお、今後のSynthetixは「protocolDAO」「grantsDAO」「synthetixDAO」という3つのDAO(自律分散型組織)により、役割を分担した上で運営される。

参照ソース


    Synthetix Foundation Decommissioned
    [Synthetix Blog]
    Is decentralization the answer to DeFi's SEC problem?
    [Decrypt]

今週の「なぜ」DeFiの急成長をなぜバブルといえるのか

 今週はDeFi市場に浮上したバブルの兆候と、そんなDeFi市場を形成するSynthetixに関するトピックを取り上げた。ここからは、昨今のDeFi市場における急成長がなぜバブルといえるのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

DeFi市場の急成長はガバナンストークンが牽引
ガバナンストークンに期待値以上の価格がついた
Yield Farmingとしてバズワード化

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

DeFi市場の急成長はガバナンストークンが牽引

 先述の通り、DeFiの市場規模については6月の初旬にも一度紹介している。当時は10億ドルを突破したタイミングであり、イーサリアムエコシステムに閉じていたDeFi市場に、ビットコインの資金が流入したため市場規模が増加した、という背景があった。

 今回の急成長の要因は、DeFiレンディングプロトコルCompoundに始まる一連の「ガバナンストークン祭り」だ。

 Synthetixのパートで紹介した通り、基本的に全てのWeb3.0プロジェクトが分散型の運営形態を志向している。そんな分散型の組織を形成するには、何かしらのインセンティブが必要だ。Bitcoinの場合はマイナーに対してBTCを付与、Ethereumの場合はバリデータに対してETHを付与している。DeFiの場合、この役割を担うのが「ガバナンストークン」だ。

 Synthetix以外にも、MakerDAOやCompoundなどがそれぞれ独自のガバナンストークンを発行している。ガバナンストークンの保有量によって、そのプロジェクトへの影響力が変動する設計だ。

バブルの裏付け

 このガバナンストークンに対して期待値以上の価格がついてしまっていることが、今回のDeFiバブルを生み出している要因だ。これはICOバブルの発生要因と酷似している。

 今回の急成長がバブルであることの裏付けとして、下図のデータを紹介したい。

参照:Compound Labs

 これは、CompoundにおけるDAIの流通量を表した数値だ。緑色の右枠内の数字がCompound上で借りられているDAIの総量、赤色の左枠内の数字がCompound上に存在するDAIの総量である。

(8/5 12:57 更新)記事初出時、画像内の赤枠・緑枠の説明が誤っていました。お詫びして訂正させていただきます。

 こちらのサイトで確認できる数値だが、DeFi市場における基軸通貨DAIの流通量が(執筆時点では)約220Mドルであったのに対し、Compound上に存在するDAIの総量が約675Mドルとなっている。1つのプロジェクト上に存在する総量が、市場全体の総量を上回っているのだ。

 これは、中身のない再帰ループによって発行されたDAIが多く存在していることを表す。レバレッジと言ってしまえば聞こえはいいが、根拠がない市場の成長はバブルを意味する。

「Yield Farming」として囃し立てられている

 DeFi界隈では、この状況を「Yield Farming」と呼んでいる。わかりやすく言い換えると「より馬鹿理論」だ。これはバブル前に発生する典型的な兆候であり、語弊を恐れずに言うと、「中身はないが買うから価格が上がる、上がるから買う………」という状況を示している。

 形成されてまだ数年のDeFi市場には、様々なリスクが存在している。レゴブロックのように各プロジェクトを組み合わせて利用するDeFiサービスには、その隙間をついたスマートコントラクトのエクスプロイトが潜んでいるのだ。

 またこれまでのDeFi市場は、過剰な利子率によって資金の流入を促してきたため、担保資産に対する高い清算リスクも潜在している。瞬間的な価格の暴落により、多大な損害を被る可能性は計り知れない。

 幸いなことに、ICO市場と比べてDeFi市場は少数の投資家によって形成されている。これは規制が整備されたことの成果であり、徹底的な消費者保護の裏返しだといえる(一方で、イノベーションを阻害していることは言うまでもないが...)。バブルが弾けさらに規制が厳しくなる、なんてことにならないようイチ事業者としては願っている。

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami