5分でわかるブロックチェーン講座

ブロックチェーンの分析ツールが活況、BitMEXは規制当局に告発されCTOの身柄が拘束

ブロックチェーンの透明性について考察

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産の格付けサービス

 120種類以上の銘柄を格付けするWeiss Ratingが、暗号資産の最新ランキングを発表した。Weiss Crypto Ratingでは、全体ランキングに加えて実用化の観点や投資リスク観点といったランキングも公表している。

 今回はテクノロジー観点でのアップロードがあり、テゾス(Tezos)やコスモス(Cosmos)などがビットコインやイーサリアムを上回る結果となった。

 Weiss Ratingは、古くから暗号資産の格付けを行なっており、ファンダメンタルズで投資を行う際の1つの指標として愛用されている。実際、Weiss Ratingでのランキング変動が暗号資産の価格に影響を与えることも少なくない。

 Weiss Crypto Ratingでは、暗号資産の格付け以外に取引所のデータも公開している。ブロックチェーンには高い透明性があるため、暗号資産業界にはこういった分析サービスが豊富に存在するのだ。技術的な理解が難しいプロジェクトの場合でも、分析ツールを活用することで投資に活かせるかもしれない。

参照ソース


    Weiss仮想通貨格付け|テゾスなど技術ランク最高評価、総合評価1位はビットコイン
    [CoinPost]
    Weiss Crypto Ratings
    [Weiss]

EYが新たなブロックチェーン製品を発表

 大手監査法人EYが、新たに2つのブロックチェーン製品を発表した。資金調達プラットフォームの「EY OpsChain Network Procurement」と解析ツールの「Explorer and Visualizer」だ。

 EYはこれまで、得意とする監査領域を中心にブロックチェーンに対して積極的に取り組んできた。ブロックチェーンは透明性が高い一方、暗号資産の取引では一定の匿名性も確保されているため、流通するデータの管理は困難を極める。

 今回発表した2つの製品のうち、Explorer and VisualizerはまさにEYらしいソリューションだといえるだろう。企業の監査部門を対象に提供し、自社サービスにおけるトランザクション管理に使用する。まずはビットコインのブロックチェーンに対応し、追ってイーサリアムのブロックチェーンにも対応する予定だ。

 もう1つのEY OpsChain Network Procurementは、イーサリアムに特化したソリューションである。イーサリアムは2016~17年頃に発生したICOブームの火付け役だ。ERC-20というイーサリアム上の共通規格が開発されたことにより、誰でも簡単に独自の暗号資産を作ることができるようになった。そのため、イーサリアムはブロックチェーンを使った資金調達(ICO)プラットフォームともいえるのだ。

 EY OpsChain Network Procurementは、イーサリアム上に構築されたプライベート型の資金調達プラットフォームである。通常のICOはパブリック型で行われ、良くも悪くも非常に多くの投資家が参加するためプロセスが煩雑になり管理も難しい。

 プライベート型にすることで、ICOを特定の投資家に限定して参加してもらうようにでき、スムーズに完了させることができる。EYによると、従来の資金調達と比べて90%以上の時間と40%以上の費用を削減できるという。

参照ソース


    監査法人EYがパブリックブロックチェーンを活用したグローバルな調達ソリューション「EY OpsChain Network Procurement」を発表
    [あたらしい経済]
    EY Releases First Business Application on Ethereum Blockchain
    [Decrypt]

BitMEXを米国規制当局が告発

 レバレッジ取引が最大100倍まで可能なことで人気の暗号資産デリバディブ取引所BitMEXが、米国司法省(DOJ)と商品先物取引委員会(CFTC)に告発された。事態は、CTOの身柄が拘束されるにまで至っている。

 BitMEXは、2020年5月に施行された改正金融商品取引法の影響により、法規制を遵守する方針を明らかにした上で日本市場からの撤退を発表していた。しかしながら今回、AML(アンチマネーロンダリング)とKYC(本人確認)に関する米国のルールに違反したとされている。

 香港に本社を持つBitMEXは、これまで各国規制の様子を見ながらもライセンスは取得せずに営業を続けていた。米国でもライセンスを取得していなかったため、今回の告発に繋がってしまったのである。

 今回の影響で、BitMEXからは大量のビットコインが引き出された。その額は41,000BTCを超えるという。なお、引き出されたビットコインは主にBinance、Gemini、Krakenに流れたという分析結果も出されている。今回の一件は、ブロックチェーンにおける透明性の高さを裏付ける要素にもなった。

参照ソース


    BitMEXの「米国法逃れ」で逮捕事例、何があったのか──ビットコイン下落要因に
    [CoinPost]
    Binance, Gemini, Kraken So Far the Winners From BitMEX’s Legal Woes
    [CoinDesk]

今週の「なぜ」ブロックチェーンの透明性はなぜ重要

 今週はWeiss RatingやEYのブロックチェーンソリューション、BitMEXの告発事件に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

「ブロックチェーンは改ざん不可能」は誤解
ブロックチェーンの透明性はビジネスになる
Web3.0はデータの透明性が前提

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

ブロックチェーンは改ざんできる

 ブロックチェーンの特徴の1つに、記録されるデータの透明性の高さがあげられる。よくある誤解として、ブロックチェーンに記録されたデータは改ざんができないというものがあるが、これは間違いだ。

 ブロックチェーンに記録されたデータ自体は、むしろ簡単に誰でも改ざんすることができる。優れているのは、改ざんを検知する速度と正確性だ。ブロックチェーンを管理するノード(マイナー)たちは、全員が同じデータベースを保有しているため、どれか1つを書き換えたところですぐにバレてしまうのである。

 改ざんが即時検知されると、誰もそのデータベースを保有しようとは思わない。そのため、そもそも改ざんしようとしないのだ。これがブロックチェーンの耐改ざん性の1つである。

 仮にブロックチェーンを改ざんしたい場合、全てのノードがそれぞれに保有するデータベースを瞬時に書き換えなければ意味がない。ビットコインの場合、世界中に散らばる10,000以上のノードがその対象だ。確率論でいった場合、ブロックチェーンの改ざん可能性は限りなくゼロに近いことになる。

透明性を活用したサービスが成長

 透明性は、Web3.0を実現する上で非常に重要な要素となる。Web3.0は、「価値革命」や「プロセス革命」といわれるため、まさに流通するデータの透明性が欠かせないのだ。

 今回のWeiss RatingやEYのソリューションのように、ブロックチェーンの透明性を活用したサービスが数多く開発されているのも、この業界ならではといえるだろう。

 他にも、イーサリアムの分析ツール「Etherscan」やビットコインの分析ツール「Blockchain.com」、DAppsの分析ツール「DappRader」などがあげられる。最近は、DeFiの分析ツールとして「DeFi Pulse」も知名度をあげてきた。

 いずれも、名だたるベンチャーファンドから資金を集め、世界中から多くのユーザーを獲得しているサービスに成長している。データ分析ツールがここまで豊富な市場は、他にあまり存在していないのではないか。

Web3.0はデータの透明性が前提

 Web2.0では、Google Analyticsのような集権的な分析ツールが主流となり、当たり前のように他社の出すデータを信じている。しかしながら、蓋を開けてみるとトラッキング用のタグが二重に実装されていたり、営業のために数字を誤魔化していたりといったことが発生している。

 我々はそれを仕方がないこと、よくある話といって受け入れてしまっているのだ。Web3.0では、このブラックボックスが開かれデータに信頼性がもたらされるようになる。そうなった場合に、Web2.0のサービスとWeb3.0のサービスのどちらが生き残るかは、もはや言うまでもないだろう。

Bitnodesでは、ビットコインネットワークを管理するノードがどの国に散らばっているか確認できる

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami