5分でわかるブロックチェーン講座

米大統領選が決着、暗号資産業界への影響はどうなる?

SBIとCoincheckが決算発表

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 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

国内大手暗号資産取引所の決算

 国内大手暗号資産取引所であるSBI VCトレードとCoincheckの決算が発表された。両者はいずれもグループ全体を通して好調であり、その中でも暗号資産事業の成長が著しい結果となっている。

SBI VCトレード

 まずはSBI VCトレードを運営するSBIホールディングスから、2021年3月期第2四半期決算より暗号資産事業に絞って紹介する。

 取引所事業にあたるSBI VCトレードの業績としては、上半期税引き前利益が前同期比44.4%増の47億1200万円となった。10月には、Zホールディングスの傘下であった取引所TAOTAOを買収している。今後は、グローバルでM&Aを積極的に推進していく方針だという。

 SBIグループ全体における暗号資産の位置付けは、顧客の分散投資を促すことができる対象としている。暗号資産の価格変動は、株や債券といった伝統的な金融資産との相関性が低く、既存顧客も暗号資産に分散投資する可能性を示唆した。

 中でも、2020年5月の改正金融商品取引法施行により日本国内での取り扱いが本格的に開始した、セキュリティトークンを次世代の金融資産として将来性に期待している。今後は、セキュリティトークンを取り扱う私設取引所を設置する計画も明らかにした。

 これは、企業に新たな資金調達の手段を提供することにより経済の流動性を高めることが目的だ。グループ内で運営するアクセラレータによってサポートする方針も打ち出している。

なお、6月の経営近況報告会で発表された暗号資産ファンドについては、運用開始を2021年度中とした。また11月中には、SBI VCトレードを通して暗号資産のレンディングサービスを開始することも明らかにしている。

Coincheck

 続いては、Coincheckを運営するマネックスグループの2021年3月期第2四半期決算だ。Coincheckは、国内で最も多くのユーザー数を誇る取引所であり、マネックスグループ内でも収益の柱として見込まれている。

 国内におけるビットコイン取引量は減少する一方、Coincheckにおける販売量は昨年と変わらず維持できているという。登録ユーザー数は年々右肩上がりとなっており、200万ユーザーを突破した。アプリダウンロード数は308万、登録ユーザー数は215万、本人確認口座数は99万となっている。

 取引所事業の利益は、前四半期比7倍となる7億円で着地した。これは、マネックスグループ参画後の最高益になるという。好調の要因としては、アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)の取引量が増加した点にあるといい、Coincheck最大の特徴が活きている格好だ。

 今後は、コア事業から派生したサービスとして「IEO(Initial Exchange Offering)」や「NFT(Non-Fungible Token)」、「ステーキング」にも注力していくという。

参照ソース

米大統領選と暗号資産

 史上稀にみる激戦の末に決着のついた米大統領選は、暗号資産業界にも大きな影響を与えた。バイデン氏勝利の報道が出始めた11月8日、ビットコインは約1000ドルの大幅な下落を記録している。曜日に関係なく常に取引を行うことができる点も、暗号資産の特徴だ。

 これは、バイデン氏が選ばれたからというわけではなく、それまで上昇し続けていた価格が1つの分岐点を迎えたためと考えられる。暗号資産市場から抜けた資金は、週明けの株式市場に流れるのではないか。

 なお今週の後半パートでは、バイデン政権下における暗号資産・ブロックチェーン業界の動向について考察していこうと思う。

 今回の選挙に関してブロックチェーン業界で話題になったのが、AP通信が選挙結果の記録にブロックチェーンを採用したというトピックだ。AP通信は、通常の結果配信に加えて、ブロックチェーンに記録した結果も配信すると発表している。

 具体的には、選挙結果をイーサリアムとEOS(イオス)に記録し、独自のAPIを介して政府部門や個別団体へ提供するという。改ざんされない透明な選挙結果を届けるための新たなアプローチだ。

 AP通信のような著名企業がブロックチェーンを活用するというニュースは、業界にとって非常にポジティブなニュースだといえるだろう。

参照ソース


    Integrate your election systems with AP Elections API
    [AP通信]
    バイデン氏当選確実、ビットコインは15000ドル割れ──暗号資産市場、次の注目の的
    [CoinDesk]

今週の「なぜ」貿易業務にブロックチェーンはなぜ重要か

 今週は国内大手取引所の決算と米大統領選に関するトピックを取り上げた。ここからは、米大統領選後の暗号資産・ブロックチェーン業界の動向について、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

バイデン政権の財務長官は誰か
大統領選でのバイデン氏を支えた暗号資産業界の人物
選挙結果の記録にはオラクル問題が生じる

それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

バイデン政権の財務長官

 大統領選が始まる数週間前より、暗号資産市場には活気が溢れビットコイン価格は2020年の最高値を更新し続けていた。様々な要素が影響していることは自明だが、大統領選による新たな変化を大いに期待してのことだともいえるだろう。
 トランプ政権は、暗号資産に対して否定的なポジションを取ることが多く、個人的にはバイデン政権の今後に期待している。

 現時点でバイデン氏は、暗号資産・ブロックチェーンに限らず政権の主要ポジションの配置案を明らかにしていない。しかしながら、財務長官にはFRB(連邦準備理事会)理事のブレイナード氏を任命することが予想されている。

 ブレイナード氏は、ボストン連邦準備銀行によるデジタルドルの研究調査を監督している人物だ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、他には元CFTC(商品先物取引委員会)委員長のゲンスラー氏も候補としてあがっているという。いずれも暗号資産に明るい人物であり、積極的な法整備が期待できるだろう。

大統領選を支援した暗号資産業界の人物

 バイデン氏が今回の選挙を乗り切るにあたり、暗号資産業界から多額の寄付を行った人物がいる。暗号資産デリバティブ取引所大手のFTXでCEOを務めるフリード氏だ。

 フリード氏は、バイデン氏の選挙陣営に対して520万ドルの寄付金を提供している。この資金はFTXの米国支社から提供されているため、バイデン氏の今後の政策に多少なりとも影響を与えそうだ。業界全体としても、フリード氏の行動には賞賛すべきだろう。

 なお、フリード氏は昨今注目を集めるDeFi市場でも存在感を放つ人物だ。DeFiの法規制については、SEC(米証券取引委員会)も頭を悩ませており、このまま市場が成長を続けた場合には新政権の暗号資産に対する論点の1つになることが予想される。

 デリバティブ取引とDeFi、この2つは規制観点から暗号資産業界で何かと話題になることが多い。そういった意味でも、フリード氏の動向には引き続き注目していきたいところである。

選挙結果とオラクル問題

 AP通信が今回の選挙結果記録にブロックチェーンを活用するという件についても言及したい。ここで論点になるのは、なんといっても「オラクル問題」だ。

 ブロックチェーンは、記録されたデータの耐改ざん性や透明性は非常に高いものが保証できる。しかしながら、ブロックチェーンに記録される前のデータそのものに誤りが生じていた場合には、ブロックチェーンがなんの意味も持たなくなってしまうのだ。

 これをオラクル問題といい、ブロックチェーンの抱える最大の課題の1つとして様々なアプローチが進んでいる(データベースのオラクル社とは無関係)。

 今回AP通信は、ブロックチェーンに記録する選挙結果を、ウィキペディアの類似サイトであるEveripediaやオラクル専用ツールであるOraQleから取得するとしている。これは、これらの第三者サービスが提供するデータを完全に信頼することを意味する。

 ブロックチェーンは非中央集権を思想に持つ仕組みだが、実用化のためには多少の犠牲も致し方ないのだ。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami