5分でわかるブロックチェーン講座

加熱するNFT市場、アートなどの「デジタル所有権」をブロックチェーンで、約75億円でのオークション販売事例も、Taco Bellも参入

NFTの発行方法や事例、「疑問に思いがちなこと」も解説

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

MessariがNFTレポートを公開、タコベルも参入

 ブロックチェーンの分析サービスを提供する米Messariが、昨今話題のNFTに関する包括的なレポートを公開した。NFTの特徴や発行方法、NFTに対する誤解などをテーマに考察されている。

 NFT(Non-Fungile Token)は、ブロックチェーンによって発行される2種類のトークン分類のうちの1つだ。ユーティリティトークンと呼ばれるもう一方に対して、NFTはトークン全てに識別子が付いているため、唯一無二のトークンとして発行することができる。

 この特性を利用して、昨今はNFTに資産価値を見出す人が世界中に急増してきた。例えば、デジタルアートやデジタルカードをNFTとして作成することでそのアートやカードをコピー不可能な状態で取り扱えるようになるため、オークンションやマーケットプレイスで活発に売買されている状況である。

 今週は、フードチェーン大手のタコベルがNFTの販売を行なったことで話題を集めた。NFTのマーケットプレイスRaribleで5種類のNFTを販売し、当初の販売価格が0.01ETH(約2ドル)だったものが現在は10ETH(約2万ドル)にまで跳ね上がっている。

 また、Beepleという名で活動するアーティストが、250年以上の歴史を誇るオークションハウスChristie’s(クリスティーズ)で自身のNFTコンテンツをオークションにかけたところ、6900万ドル(約75億円)で落札されたことで世界に衝撃を与えた。

 今週の後半パートでは、バブルの様相を呈するNFT市場で何が起きているのか、また実際にNFTを発行するにはどうすれば良いのかについて解説する。

参照ソース


    Explain It Like I Am 5: NFTs
    [Messari]

GMOがステーブルコイン年間レポートを公開

 GMOインターネットグループ傘下の米法人GMO Trustが、米メディアThe Blockに委託する形でステーブルコインに関する年間レポートを公開した。2020年のステーブルコイン市場概況や事例、取引推移などが網羅されている。

 レポートでは、ステーブルコイン市場の主要指標として主に次のようなデータが公開された。

  • 総供給額:59億ドル → 542億ドル(約900%増)
  • 月間取引額:235億ドル → 3840億ドル(約1600%増)
  • 日次アクティブアドレス:5万3000 → 30万7000(約580%増)
  • 日次取引数:9万8000 → 59万4000(約600%増)
  • 全体の70%がイーサリアム上に発行されている
  • 全体の40%が100ドル〜1000ドル規模のトランザクション
  • 全体の40%が取引所に、11%がDeFi市場に供給されている
  • アジア圏はTether(USDT)が、アメリカ圏はUSD Coin(USDC)が主に使用されている

 ステーブルコインはDeFi市場における基軸通貨としての役割を担っている。以下の図は、ステーブルコインがどの領域のサービスに使用されているかを表した図であり、レンディングや分散型取引所(DEX)を中心に、デリバティブ取引や決済手段として使用されているようだ。

ステーブルコインがどの領域のサービスに使用されているかを表した図

 ステーブルコインには、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型」の3つの種p類が存在する。それぞれ何を担保資産として発行するかによる分類だ。このうち、大部分は法定通貨担保型となっており、全体の99.5%が米ドルを担保に発行されているという。

 これは、現実世界における基軸通貨である米ドルがデジタル世界における基軸通貨にも影響を与えていることの表れだと言えるだろう。

 ブロックチェーンの実現するWeb3の世界では、米ドルや日本円などの法定通貨を単にデジタル化しただけでは機能しない。大前提としてブロックチェーン上に発行されていなければ他のアプリケーションとの互換性を実現できないため、CBDCなどでも場合によってはその役割を果たすことは難しいだろう。

 ブロックチェーンを考察する上で、ステーブルコインは1つの重要なトピックとして、市場概況や事例などを把握しておくことを推奨する。

参照ソース


    Stablecoins: Bridging the Network Gap Between Traditional Money and Digital Value — Brought to you by GMO Trust
    [The Block]

今週の「なぜ」NFTの特徴や発行方法、事例、誤解について解説

 今週はMessariのNFTレポートとGMOによるステーブルコイン年間レポートに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

NFTの本質は、金銭的な価値ではなく「デジタルコンテンツを唯一無二のものにする」特性
自身でNFTを発行するにはウォレットと少額のイーサリアムがあればOK
NFTは「コピーをコピーと瞬時に証明できる」点が特徴

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

NFTの特徴

 今週も先週に続きNFTに関する考察をまとめていく。NFTの重要性については先週分で紹介したため、今週はMessariのレポートを元に「NFTの特徴」「NFTを発行する方法」「NFTの事例」「NFTに対する誤解」などについて紹介したい。

 まずはNFTの特徴について、レポートでは次のように説明している。

・一意の存在でありブロックチェーンでデータの検証が可能
・永続的な情報とデータを含有している。このデータにはメッセージや画像、音楽、署名、その他の情報を含めることが可能
・NFTの実態は単なるコードであるため、いかようにでもプログラムすることが可能
・パーミッションレスなものとして発行される
・所有権は発行者または発行者より譲り受けた本人に帰属される

 先述の通り、NFTはデジタルコンテンツに紐づけることで唯一無二の存在として流通させることが可能だ。これまでのデジタルコンテンツは、良くも悪くも簡単にコピーすることができていたため、それに伴う弊害も発生していた。

 NFTの本質は、唯一無二のものになることによる金銭的な価値の発生ではなく、プログラム可能でありながらもコピーや改ざんができないデジタル資産として発行できる点にある。

NFTの発行手順

 ブロックチェーン上に発行されるトークンということもあり、NFTを発行するためには専門的な知識が必要になると思われがちだが、昨今はNFTを簡単に発行するための環境が整備されてきている。ここでは、NFTのマーケットプレイスRaribleにおける具体的な発行手順を紹介する。

1.事前にNFTを発行する対象のコンテンツを決めておく。対象はビジュアルファイル(JPG、PNG、GIFなど)や音楽ファイル(MP3など)、3Dファイル(GLBなど)が可能
2.イーサリアムに対応したウォレットを用意し、NFTマーケットプレイスに接続する
3.NFTを作成するには少量のイーサリアム(ETH)を手数料として支払う必要がある
4.マーケットプレイスにウォレットを接続した上でコンテンツをアップロードする

 事前にウォレットさえ用意しておけば、コンテンツはどんなものでもNFT化することが可能だ。実際、下図のようにこれまでに多くの分野のコンテンツがNFT化され売買されてきた。

 主要な分野としては、アートやトレーディングカード、ゲームアイテム、ドメイン名、所有権、ライブチケットなどがあげられる。

NFTで疑問に思いがちなこと

 最後に、NFTに対して誤解されやすいことを解説する。

「スクリーンショットが撮れない」わけではない

 NFTに紐付けられたからといっても、画面上に表示されるデジタルコンテンツのスクリーンショットを撮ることが不可能になるわけではない。重要なのは、 コピーがコピーであることを証明できる かどうかという点だ。

 NFTはブロックチェーンに記録され誰でも閲覧することができるため、そのデータがコピーなのか本物なのかは瞬時に検証することができる。

NFTの価値は「デジタルコンテンツを唯一無二のものとして流通できる」こと

 バブルの様相を呈するNFTだが、真の価値はまだ定かにはなっていない。暗号資産の祖であるビットコインすら、未だにその価値を疑う人の方が大部分であることを考えると、NFTのムーブメントは始まったばかりではないだろうか。

 ドットコムバブルやDeFiバブルのように、昨今はNFTでも投機需要ばかりが目立ってしまっているものの、本質的にはデジタルコンテンツを唯一無二のものとして流通させることができる点にある。この特性に気づいた人からNFTの真の価値を見出すようになるのではないか。

NFTのロイヤリティは「カスタマイズ可能」

 先述の通り、NFTの実態は単なるコードであるため様々なカスタマイズが可能だ。例えば、発行者による最初の販売だけでなく、二次流通市場における売買においても少額の収益を発行者が受け取るようにプログラムすることもできる。

 これをロイヤリティと呼ぶが、ロイヤリティを組み込むには現実世界の影響を考慮しなければならない場面が存在する。例えば、音楽をNFT化して発行および販売し、二次流通市場における全ての購入者が音楽を再生するたびに少額の収益を受け取るといった仕組みにする場合、音楽が再生されたかどうかを判断する術を得なければならない。

NFTの可能性は「デジタル所有権」

 我々の生活では、時間を増すごとにデジタル世界の規模が大きり続けている。これに伴い、現実世界と同様デジタル世界における所有権も徐々に重要な意味を持つようになってきていると言えるだろう。

 NFTはデジタル世界における所有権を証明するための役割を果たすことができ、個人が生み出す唯一無二の価値が実際に制御可能であることを保証する機能を持っている。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami