5分でわかるブロックチェーン講座
記事を読むほど暗号資産がもらえる!Webメディアのビジネスモデルは「Decrypt Token」で刷新なるか?
アフリカ初のDeFiプラットフォームがローンチ
2021年3月30日 10:51
記事を読むほど獲得できるDecrypt Token
米大手暗号資産メディアDecryptが、独自トークン「Decrypt Token(DCPT)」を一般ローンチした。2年以上の開発期間を経て、2020年中旬ごろより約半年間の試験運用を行なった後に今回の一般ローンチとなっている。
Decrypt Tokenは、Decryptで公開されている記事を読んだりSNSでシェアしたりすることで獲得することができる暗号資産だ。イーサリアム上に発行されており、一定量が溜まるとオリジナルグッズやNFTなどと交換することができる。
記事を読んだかどうかは、当該ページを一定時間以上開いていることで判定されるようだ。実際に手元で計測してみたところ、スクロールを開始してから1分間開き続けたタイミングでトークンが付与された。トークンが付与された直後に専用のウォレットに暗号資産が付与される感覚は、これまでにはなかったユーザー体験だと感じている。
「〇〇するほどトークンがもらえる」というサービスは、トークンエコノミーやDApps(Decentralized Applications)という言葉と共に2016年ごろから爆発的に誕生してきた。今となっては真新しいものではないものの、Webメディアとしては珍しい取り組みであることから多くの話題を集めている。
Decryptは、Webメディアの一般的なマネタイズ手法であるデジタル広告に依存しないビジネスモデルを構築するとして、今回のトークンモデルを提唱していた。近年のWebメディアは、ユーザーが求めていないWeb広告に依存せざるを得ない状況だといい、またGoogleやFacebookの登場でこのビジネスモデルも崩壊しつつあると言及している。
今週は、Webメディアにおけるトークンモデルの重要性について考察したい。
参照ソース
Decrypt Launches Its Own Reader Token
[Decrypt]
米メディアDecryptが広告モデルからトークンモデルに移行
[仮想通貨 Watch]
アフリカ15億人の人々へDeFiサービスを届ける
ナイジェリアのXEND Financeが、アフリカ15億人の人々へ金融サービスを届けるべく、Binance Smart Chainを利用したアフリカ初のDeFiプラットフォームをローンチした。
日本でも、2020年6月のCompoundによるガバナンストークンの発行開始を機に、主に投資対象としてDeFiが急激な盛り上がりをみせたが、その本質は金融包摂にある。
既存金融の場合、管理者が営利事業として金融サービスを提供するため、自然と所得の低い顧客からはサービスが離れていってしまう。日本にいるとあまり実感できないが、世界にはスマホを持っているが銀行口座は持っていないという人々が無数に存在する。
DeFiは元々、こういった人々へ金融サービスを届けることを目的に誕生した。しかしながら、各DeFiサービスが享受するシニョリッジから月利数十%といった既存金融では考えられない利率を実現するものが次々と誕生し、DeFiはいつの間にか主に投資対象となってしまった。
これに伴い、多くのDeFiが使用するイーサリアムの取引手数料が増加し、例えばDeFiで1000円を取引するのに3000円の手数料が発生するといった事態に陥っている。そのため、当然ながら本来の対象であった所得の低い人々がDeFiから締め出されてしまっているのだ。
金融包摂の対象が主に東南アジアやアフリカの人々であることから、今回XEND Financeはこういった人々にDeFiサービスを届けるべく、イーサリアムではなくBinance Smart Chain(BSC)を使ってサービスを開発している。
BSCは、イーサリアムのような無数のノードが運用するのではなく、暗号資産取引所Binanceが中心となって運用しているため、取引の処理性能が高く結果的に手数料を安価に抑えることができるのだ。(イーサリアムは完全なパブリックチェーンである一方、BSCはプライベートチェーンに近い)
参照ソース
FIRST DECENTRALIZED FINANCE (DEFI) AND BINANCE SMART CHAIN-BUILT COMPANY LAUNCHES OUT OF AFRICA
[XEND Finance]
成長著しいDeFi市場にバブルの兆し、その根拠とは?
[INTERNET Watch]
今週の「なぜ」Webメディアのトークンモデルはなぜ重要か
今週はDecryptのトークンモデルやDeFiの金融包摂に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
Webメディアのトークンモデルによるマネタイズは、キャピタルゲインと広告イメージの刷新
トークンがもらえるならPR記事でも読んでみようと考える(実際にそう考えた)
GoogleとFacebookが牛耳るWeb広告費を取り戻すトークンモデル
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
トークンを使ったビジネスモデル
ブロックチェーン上で発行されるトークン種類が多岐にわたっているように、その用途も次第に確立されるようになってきた。1つはガバナンストークンとして発行することで、オープンソースプロジェクトに持続性を与える可能性を提示している。
プロジェクトにコミットするとガバナンストークンが付与され、価格が上がったタイミングで売却すればオープンソースプロジェクトでも収益を上げることができるためだ。このガバナンストークンに対して投資することで、間接的にオープンソースプロトコルの価値が可視化されるようになったのも、トークンならではの新規性だろう。
もう1つが、Decryptが挑戦しているトークンを使った営利企業のビジネスモデルだ。ここでいうビジネスモデルには、主に2つあると考えている。1つ目は、原資ゼロで発行したトークンの価格を上げていくことで発生するキャピタルゲイン(この場合はシニョリッジとも言える)を得る方法だ。これは先述のガバナンストークンの例に類似する。
トークンモデルが変えるPR記事のイメージ
暗号資産が注目されるようになった最大の特徴はボラティリティの高さであり、トークンの発行体も将来的な値上がりを期待してプロジェクトを開始している。
例えば、2014年にICOを実施しイーサ(ETH)の発行を開始したイーサリアムは、営利企業ではないものの当時調達した約1800万ドルを元手にプロジェクトを拡大し、現在は開発を主導するイーサリアム財団が保有するイーサの総額が約7.3億ドルとなっている。
Decryptも、収益源の1つとしてトークン価格の値上がりによるキャピタルゲインは見込んでいることだろう。
トークンモデルの2つ目は、トークンの持つ新規性から来るWeb広告のイメージ刷新だ。
今回、Decrypt Tokenのローンチに伴い、分散型ストレージプロジェクトFilecoinがローンチパートナーとして協力している。Decryptの記事を読むとFilecoinの発行する独自トークンFILが受け取れる、という組み方ではないものの、個人的にはローンチパートナーとしての宣伝には決してネガティブな印象を受けなかった。
ローンチに伴い公開されたFilecoinについて紹介するPR記事も、読むとDecrypt TokenがもらえることからPR記事であることをネガティブに意識することなく読んでみようという気にさえなっている。さらに、Decrypt Tokenのような新規性のある取り組みにいち早くパートナーとして協力したFilecoinには、先見性があるとして非常にポジティブな印象を抱くようになった。
Webメディアの鍵を握るトークン
おそらく、Filecoinに対して私と同じ印象を抱いた人は少なくないだろう。Webメディアが、読者に対してこの感覚を維持させることができるのであれば、メディアの姿が今まさに再定義されているのだろうなと感じる。
次世代ブラウザBraveが、スクリプトタグをブロックすることで結果的にデフォルトで広告を非表示にし爆発的な成長を遂げていることからも、我々ユーザーがどれだけWeb広告を嫌っているかが伺えるだろう。
トークンモデルによってWeb広告のイメージが刷新されれば、例えばPR記事のような純広告はこれまでよりも高い効果を発揮することが予想され、広告の出稿者も増加するのではないだろうか。
Decryptが警鐘を鳴らすように、昨今の広告費は大部分がGoogleとFacebookに独占されているため、トークンを使った新たなビジネスモデルが巻き返しの鍵になるかもしれない。