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Twitterがビットコインの送金機能をテスト、ライトニングネットワークを使った少額送金を実現へ
イーサリアムのバーン量が新規発行量を初めて上回る
2021年9月14日 06:50
Twitterでビットコイン送金が実現へ
Twitterにビットコインを使った送金機能が実装される計画がリークされた。少額決済を可能にするビットコインのサイドチェーン技術「ライトニングネットワーク」を活用するとされている。
ビットコインの送金機能は、Twitterに実装済みの投げ銭機能Tip Jarに追加されるという。これまでTwitter上でビットコインを送金できる仕組みはいくつか登場していたものの、いずれも公式からの提供ではなかった。
Tip Jarに組み込まれるビットコインの送金機能は、ライトニングネットワークを使ったペイメントサービスであるStrikeとの連携によって実現される予定だ。併せて、Twitterのプロフィールにビットコインとイーサリアムの送金用アドレスを表示するための機能も計画しているという。
TwitterのCEOであるJack Dorsey氏は、以前よりビットコイン愛好家として知られており、界隈でも大きな影響力を持っている。そんなDorsey氏率いるTwitterがビットコインの送金機能への対応を計画しているというニュースは、今週世界的にも注目を集めた。
参照ソース
Twitter appears to be adding the ability to tip using Bitcoin
[The Block]
イーサリアムのバーン量が新規発行量を上回る
24時間あたりのイーサリアム(ETH)のバーン量が新規発行量を初めて上回った。これにより、市場に流通するETHの量が減少し、デフレ要素が強まる状況となっている。
イーサリアムでは、8月にEIP-1559が実装され、トランザクションごとに発生するガス代(取引手数料)のうち一定量をバーン(焼却)する仕組みが組み込まれた。ビットコインのように発行上限のないイーサリアムは、長期的に価格を上げていくロジックが備わっておらず、今回の実装でデフレ要素が加えられた形だ。
EIP-1559は、ETHの新規発行量を減少させることを目的に実装されたが、現在は新規発行量を減少させるどころか総発行量まで減少させる結果となっている。総発行量まで減少させる結果となったのは、EIP-1559の実装後初めてのことだ。
背景には、NFT市場の盛り上がりが存在する。高額売買が続くNFT関連のトランザクションにおいては、ガス代も高騰する傾向にあり、その結果バーンされる量が新規発行量を上回った。また、トランザクションが増加したことでネットワークが混雑していることもガス代高騰の原因となっている。
参照ソース
More Ethereum Has Been Burned Than Minted in the Past 24 Hours
[Decrypt]
今週の「なぜ」Twitterのビットコイン送金機能はなぜ重要か
今週はTwitterのビットコイン送金機能やイーサリアムのバーン量に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
Twitterがウォレット機能を提供する可能性も
ビットコインの少額送金・決済はライトニングネットワークに期待か
Twitterとイーサリアムは競合するのか
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
Twitterがウォレット機能を提供する可能性
暗号資産・ブロックチェーン界隈では、Twitter上での発信および情報収集が活発に行われている。おそらくTwitterユーザーと業界ユーザーとが類似していたのだろう。
そんなTwitterがビットコインの送金機能に対応することは、市場をさらに拡大する大きなきっかけとなりそうだ。併せて、ビットコインとイーサリアムのウォレットアドレスをプロフィールに表示する機能が計画されていることも、重要な動きだと言えるだろう。
暗号資産市場が思うように新規ユーザーを増やせていない理由の1つに、ウォレットアドレスの問題があげられる。64桁からなるウォレットアドレスは、デジタルに明るくない人には管理が難しく、デジタルに精通していても紛失してしまうことが珍しくない。
今回のTwitterの計画では明らかになっていないものの、おそらくTwitterがウォレットのような機能を果たすための仕組みを導入することも検討しているはずだ。バックエンドでは64桁のウォレットアドレスが存在していたとしても、インターフェースがTwitterアカウントになることで、多くのユーザーが新規参入できることになるだろう。
ライトニングネットワークの台頭
ビットコインやイーサリアムには、セカンドレイヤー(レイヤー2)という仕組みが整備されつつある。ビットコインやイーサリアムのようなプロトコルをレイヤー1と定義し、その上に実装される技術群をレイヤー2と呼んでいる。
レイヤー2は、レイヤー1に足りない性能を補うための仕組みであり、主にスケーラビリティを担保したものが多い。ライトニングネットワークは、ビットコインのレイヤー2ソリューションの1つであり、ほとんど唯一のポジションを築いている。
イーサリアムと比べてビットコインは、用途が送金・決済に限られているため、レイヤー2ソリューションもライトニングネットワーク一択で済んでいるような状況だ。その分ライトニングネットワークへの期待度は高く、長年実用化が待たれてきた。
ライトニングネットワークは、複数のトランザクションをまとめて1回のトランザクションとしてビットコインのブロックチェーンに記録できる仕組みである。これにより、毎回のトランザクションに高い手数料を支払う必要がなく、投げ銭のような少額送金を可能にする。
Jack Dorseyがビットコインに注力する理由
Jack Dorsey氏は、以前よりイーサリアムではなくビットコインを推進してきた。本来であれば、DAppsプラットフォームであるイーサリアムの方がTwitterとの相性はいいはずなのにである。
おそらくDorsey氏は、巨大サービスとなったTwitterを分散化することは難しいと判断し、イーサリアム上でのプロジェクトとは競合するという道を選んだのだろう。イーサリアムの分散思想を取り入れるのではなく、純粋にビットコインを使ったTwitter機能の拡張に乗り出している。
具体的には、先述のTip Jarで送金可能な選択肢に、Cash AppやPayPalに加えてビットコインとイーサリアムを追加するようだ。ほかにも、ビットコインを活用したDEXやハードウェアウォレットを開発する計画も公表している。
イーサリアムなどのブロックチェーンによる分散性を取るのか、ビットコインなどの暗号資産による金融機能性を取るのか、それぞれ一長一短あるが、大企業にとっては非常に難しい選択だと言えるだろう。