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「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生

マルチスペクトルカメラ搭載ドローンで水稲圃場モニタリング

 地理空間情報(G空間情報)をテーマにしたイベント「G空間EXPO2017」が10月12日~14日、東京・お台場の日本科学未来館で開催された。その中から、国土交通省(国土政策局・国土地理院)が主催するコンテスト「Geoアクティビティコンテスト」についてレポートする。

 このコンテストは、地理空間情報に関する独創的なアイデアやユニークな製品・技術などを持つ企業や教育・学術関係者、NPO法人などによる展示やプレゼンテーションの機会を提供し、表彰するもの。今年は16名のプレゼンターが選ばれた。

 最優秀賞を獲得したのは、愛媛県立伊予農業高等学校の2年生・村井麻里亜氏による「ドローンを用いた水稲圃場の低コストモニタリング手法の開発」。DJIのドローンに搭載したカメラを撮影して植生の分布状況や活性度を示す「正規化植生指数」を求める手法で、昨年のコンテストでは「教育効果賞」および「来場者賞」を獲得したのに引き続き、今年はマルチスペクトルカメラによる4波長同時撮影も行い、従来のBlue-NVDIカメラと比較して有効かどうかを検証した。その結果、マルチスペクトルカメラのほうが正規化植生指数が、より鮮明に映し出されることが分かった。また、実際に周辺農家と連携して撮影を行い、導入が可能かどうかも検討した。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 DJIのドローンに搭載されたマルチスペクトルカメラ
DJIのドローンに搭載されたマルチスペクトルカメラ
「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 マルチスペクトルカメラによる4波長同時撮影
マルチスペクトルカメラによる4波長同時撮影

 デザイン賞を受賞したのは、佐賀大学芸術地域デザイン学部の杉本達應氏による「データ駆動型地図表現ツールの開発」。杉本氏は、統計データを地図にビジュアライズするウェブアプリ「DataMapp」を開発。スマートフォンやタブレットによるタッチ操作で簡単にコロプレスマップ(塗り分け地図)を作成でき、配色もさまざまな色の中から選択できる。また、面積カルトグラム(人口の多い都道府県を大きく拡大して表示すなど、面積によってデータの大きさを表現した地図)も作成できる。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 コロプレスマップ
コロプレスマップ
「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 面積カルトグラム
面積カルトグラム

 デザイン賞としてはこのほかに、株式会社楽しいチリビジの真野栄一氏による「動画で理解!わが家のハザードマップ」という作品も選ばれた。同作品は、住所と建物の種類などの情報を入力するだけで、位置情報を確定し、ハザードリスク判定を行った上で、水害リスクや津波リスク、土砂災害リスクなどさまざまなハザードリスク判定を動画コンテンツとして提供する。動画では「30年以内に○○川氾濫の可能性の70%」といった内容が表示され、地図を読めない人にも災害リスクを「自分ごと」として簡単に理解することができる。なお、同作品は、来場者の投票によって選ばれる「来場者賞」も同時に受賞している。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 さまざまな災害リスクを動画で分かりやすく提示
さまざまな災害リスクを動画で分かりやすく提示

 奨励賞には、株式会社ドリコムが2016年にリリースした、地図を活用したコミュニケーションアプリ「PASS」などが選ばれた。PASSは、地図上にアパレルショップや美容室、カフェなど店のアバターが表示され、各アバターからリアルタイムにテキストや画像などのつぶやき情報が発信される。地図上の「たまご」に近付いてタップするとクーポンを取得することが可能で、指定の店舗に行くとクーポンの引き替えも行える。同アプリは「ファッションウィーク福岡2017」や「SHIBUYA PIXEL ART2017」といったイベントでも公式アプリとして導入されている。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 「ファッションウイーク福岡2017」で公式アプリとして利用された
「ファッションウイーク福岡2017」で公式アプリとして利用された

 奨励賞の中でもう1つ注目されたのが、農研機構農業環境変動研究センターが4月に公開した「日本土壌インベントリー」およびiOSアプリ「e-土壌図II」。いずれも、日本の多様な土壌の分布状況や土壌温度を簡単に調べることが可能なデジタル土壌図で、任意の点を選ぶと、その地点に分布する土壌の種類と特徴などの情報を読める。デジタル土壌図はオープンデータとして無償提供を行っているほか、地図タイルも配信しており、独自のウェブサイト構築も行える。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 「日本土壌インベントリー」
「日本土壌インベントリー」

 このほか、古地図やイラストマップ上でスタンプラリーを楽しめる探索型周遊アプリ「MapPacker」という作品も出展された。同アプリは、古地図・絵地図プラットフォーム「Maplat」をベースにスタンプラリー機能を融合したサービスで、現在、サービス開始に向けて開発が進められている。Maplatは古地図やイラストマップを歪めずにそのままの形で現代地図と変換を行う技術で、類似の技術に比べて現代地図との違和感のない重ね合わせが可能な点が特徴だ。GPSで取得した現在地を古地図上に表示させることが可能で、古地図を活用した歴史散策イベントや、商店街マップを活用したイベントなど、さまざまなシーンで活用できる。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 「MapPacker」
「MapPacker」

 さらに、独自デザインによるウェブ地図提供サービス「MIERUNE地図」も出展された。同サービスは2017年6月に提供開始したばかりのサービスで、OpenStreetMapの地図データをもとに、二次利用や商用利用が可能な美しいデザインの地図を提供している。市販の一般的なサービスと比較して2分の1~10分の1程度の低コストで導入可能だ。現在、8種類のデザインが用意されており、その中の2種類はフリーで提供している。オプションでカスタムデザインも可能で、特定のテーマカラーで背景を作りたいという要望にも対応できる。

「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 「MIERUNE地図」
「MIERUNE地図」

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。