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第94回:地図ソフト「プロアトラス」の新旧バージョンを比べてみました


「プロアトラスSV6 全国版」パッケージ

 株式会社クレオは、地図ソフト「プロアトラス」の最新版「プロアトラスSV6」を9月17日に発売する。「プロアトラス」シリーズはベクトルデータを使った地図ソフトで、地図データをローカルディスクにインストールして使用できる。年4回・3カ月ごとに地図データを更新することが可能で、購入してから1年間は常に最新の地図データを閲覧できるのが特徴だ。また、1つのパッケージでPCが2台まで利用できるのも、この地図ソフトならではの魅力である。

 今回のバージョンで強化されたのは、詳細地図の収録エリアが大幅に増えた点だ。最も縮尺の大きい「5千市街図」のエリアが、前バージョンは1281市区町村だったのが1484市区町村に拡大し、カバーする面積は全国版で3.6倍、首都圏・中部・関西版では2.7倍に増えた。

 詳細地図では建物の形が細かく描かれており、密集したビル街や住宅地の様子がよくわかる。信号や一方通行表示、バス停、陸橋、県道番号などの注記も充実していて、記載内容も前バージョンの「プロアトラスSV5」に比べて情報量がアップした。地下鉄の駅についても従来は簡易的に表示されていたのが、SV6では駅の形状が詳しく描かれるようになり、都市部のユーザーにとっては使い勝手が良くなってる。

 なお、詳細地図データが充実したことにより、インストールに必要なディスク容量も増えた。SV5で地図データのフルインストールに必要なディスク容量は全国版が8.7GB、首都圏・中部・関西版が6.3GBだったのに対して、SV6では全国版が16.7GB、首都圏・中部・関西版が10.4GBと、2倍弱の容量となっている。これに伴ってインストールする時間もかなり長くなった。


機能やインターフェイスはSV5とほぼ同じ100万広域図
2.5万詳細図航空写真が見られる5千都心図

地下エリアの形状を忠実に再現

 それでは5千詳細図のデータ内容がどのように変わったのかを比べてみたい。まずは都心の主なエリアを見てみよう。


上野駅(SV5)上野駅(SV6)
秋葉原駅(SV5)秋葉原駅(SV6)
東京駅(SV5)東京駅(SV6)
銀座駅(SV5)銀座駅(SV6)

 最も大きな違いは、地下鉄や地下街の描き方だ。SV5は簡略化された図だが、SV6は実際の地下の形状に近く、ほかの路線との位置関係や接続の仕方がよくわかる。地上への出口についても、階段がどちらの方向に向いているのかがわかるので現地で迷いにくいだろう。

 もう1つ目立つのが、SV6には交差点に信号機を示す記号や、道路沿いにバス停を示す記号が掲載されているところ。交差点名も青地に白抜きの文字で目立つように記載されており、わかりやすい。情報量が増したので、デザインは全体的ににぎやかな印象を受ける。さらにSV6には幹線道路に道路番号が目立つように記載されており、国道・県道・都道などがすぐ区別できる。

 建物の描き方も両バージョンで異なっている。上野駅周辺を見比べてみると、SV5は建物間の隙間が空いているが、SV6のほうはぴったり付いているのがわかる。これを見るとSV5のほうが建物の形状はわかりやすく感じるが、銀座エリアで比べてみるとSV6の描き方のほうが建物の形状がわかりやすく、両バージョンともに一長一短という印象を持った。

球場や鉄道のホームの描き方が変更

 次に球場などの大規模スポーツ施設を見てみよう。東京ドームはSV5だと建物の形状しか描かれていないのに対して、SV6ではドームの屋根の模様が再現されている。明治神宮野球場を見ると、SV6はシートの配列なども細かく記載されており、国立競技場のフィールドにもサッカーコートの線が入っている。


後楽園(SV5)後楽園(SV6)
明治神宮外苑(SV5)明治神宮外苑(SV6)

 渋谷駅前を比べるとわかるが、SV6では道路を横切る歩道橋が記載されるようになった。また、一方通行を示す矢印が細かく入っているのも便利だ。新宿中央公園では「水の広場」や「富士見台」など、公園内の施設名が記載されるようになったのがわかる。


渋谷駅(SV5)渋谷駅(SV6)
新宿中央公園(SV5)新宿中央公園(SV6)

 大都市だけではなく、地方都市の地図にも違いが見られる。SV6のほうが情報量が多く、表記が全体的にわかりやすい。ただ、鉄道のホームの描き方が変わり、日和田駅のように駅の存在感が目立たなくなったところも少なくない。


郡山駅(SV5)郡山駅(SV6)
日和田駅(SV5)日和田駅(SV6)

 郊外については、横須賀美術館周辺のように、SV6になって等高線が入るようになった地域が見られた。このほうが現地の地形をイメージできるので、個人的には好みだ。那須高原道路については道路番号が入ったくらいで、あとは大きな変化は見られない。ただし、有料道路だったのが2009年に無料化されたので、有料区間の色が変わり、料金所が無くなっている。


横須賀美術館(SV5)横須賀美術館(SV6)
那須高原(SV5)那須高原(SV6)

 前述したように、詳細図の収録範囲が大きく変わったので、従来は収録していなかったエリアの詳細図が新たに見られるようになった。安達太良SA付近もその1つだ。


東北道・安達太良SA(SV5)東北道・安達太良SA(SV6)

機能的には変更なし

 地図データの違いについては以上の通りで、機能自体は従来と変わっていない。略地図を使った案内図作成機能や、ルート全体をミニ地図帳として印刷できる機能、ジオタグ付きの写真を撮影地点に自動的に貼り付ける機能、地図から3D画像を作成するジオラマ作成機能など、以前から搭載されている機能は健在だ。

 また、CSVデータをインポートして簡易分布図を作成したり、棒グラフを表示させたりと、GISの機能も持っている。GARMIN社製のハンディGPSの軌跡ログとデジタルカメラの写真の撮影時刻をマッチングさせる機能や、GPS機器をPCと接続して使うリアルタイムナビゲーション機能も搭載しているので、さまざまな使い方が可能だ。

 1つ気になるのは、地図データの情報量が多いために地図のスクロールや縮小・拡大が重く感じること。マシンスペックが低いとストレスを感じる可能性もあるので注意しよう。この点に納得できれば、特に都市部で地図をよく使う人にはかなりおすすめだ。前バージョンのユーザーも、詳細地図が大幅に充実したのでバージョンアップする価値は十分にあると思う。詳細図については、今後もさらなる収録範囲の拡大を期待したい。


画像の貼り付けが可能ジオラマ作成機能




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2010/9/16 06:00


片岡 義明
地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。