中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/12/17~12/24]

行政のデジタル化の動き:新型コロナウイルス感染に関する情報ポータル、デジタル教科書、そして3D都市モデル ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 行政のデジタル化の動き:新型コロナウイルス感染に関する情報ポータル、デジタル教科書、そして3D都市モデル

 行政のデジタル政策に関し、新たな動きをまとめておく。

 文部科学省の有識者会議は、小中高校の児童生徒が使うデジタル教科書について、授業時数の2分の1未満と定めている基準を撤廃することで合意したと伝えられている(朝日新聞デジタル)。この提言を受け、文科省は来年度から制限なくデジタル教科書を使用できるように省令を改正するとしている。

 厚生労働省は新型コロナウイルスの新規感染者数などのデータをまとめたウェブページを公開した(ITmedia)。「全国の自治体から報告されたデータを集約し、感染者数の推移などをグラフで表示」する。

 国土交通省は実世界の都市を仮想空間に再現する3D都市モデルを整備する「Project PLATEAU by MLIT」を公開した(CNET Japan)。これは国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトである。この3D都市モデルとは「都市空間に存在する建物や街路といったオブジェクトに名称や用途、建設年といった都市活動情報を付与することで、都市空間そのものを再現する3D都市空間情報プラットフォーム」で、「都市空間に都市活動情報のレイヤーを重ねることができ、官民問わずあらゆる分野の知見が集積する」としている。今後、この上で、人流などの都市活動データ、ユースケース開発・実証実験をオープンにし、アイデアソンやハッカソンの結果発表なども実施するとしている。

 そして、2021年秋の「デジタル庁」発足に向け、外部のIT人材約30人を非常勤の国家公務員として募集すると発表した(ITmedia)。

 行政のデジタル化に向けた動きはこれまでになく活発になり、2021年はさらに具体的なかたちになっていくことだろう。その開発に向けた動向はもとより、社会的影響についても注視していきたい。

ニュースソース

  • デジタル教科書、来年度から使用制限撤廃へ 文科省方針[朝日新聞デジタル
  • デジタル庁、民間人材を募集へ 兼業もOK[ITmedia
  • 厚労省、新型コロナ情報サイトを新設 全国のデータを網羅、感染者数の推移を表示[ITmedia
  • 国交省、実際の都市を仮想空間に再現する「PLATEAU」公開--まちづくりのDXを支援[CNET Japan

2. 年末年始もセキュリティには万全の備えを

 内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)、JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)、情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンターがサイバー攻撃などへの備えを呼び掛けた。

 IPAはマルウェアに対する警戒を呼び掛けている(ITmedia)。同機構によると「メールの添付ファイルを通じて感染するマルウェア『Emotet』(エモテット)の攻撃メールが、年末になって再び出回り始めた」という。これまでのところ、「クリスマス」や「賞与支給」などの年末に関連する件名や添付ファイル名を使うことでユーザーをだまそうとしているようだ。今後は年始にかけても目先を変えた同様な手口が増加する可能性も否定できないだろう。

 さらに、NISCは「例年の年末年始休暇に伴うセキュリティ対応に加え、現在は新型コロナウイルス感染症への対応も長期化している点」を挙げ、「長期休暇中の監視体制の不備、休暇明けのメールの大量処理に加え、長期休暇中を利用したシステムの更改などに伴うリスクを的確に把握し、管理することが重要」だというメッセージを出している(ZDnet Japan)。

 さらに、ウェブブラウザーの拡張機能にも注意が必要だ(PC Watch)。アプリよりも安易に入れがちだが、こちらも懸念すべき状況である。

 年々、巧妙化している手口に対し、システム管理者による対策はもとより、ユーザーもリテラシーを高めていく必要がある。

ニュースソース

  • 「Emotet」また襲来 「メリークリスマス」「賞与支給」などの件名でだます[ITmedia
  • 年末年始のサイバー攻撃に注意を--Emotetの拡散活動も再開[ZDnet Japan
  • ChromeやEdgeの拡張機能複数にマルウェア実装。すでに300万人がダウンロード[PC Watch

3. NTTドコモに続き、ソフトバンクも安価な新料金プランを発表――MNP手数料無料化なども

 NTTドコモが安価な携帯電話料金プラン「ahamo」を発表したことに対し、競合する事業者の対応も明らかになってきた。ソフトバンクはahamoと同水準での新プラン「SoftBank on LINE」を発表した(ケータイWatch)。これにあわせ、従来のLINEモバイルは新規受付を終了するとしている(ケータイWatch)。これにより、年明けにも発表されるとみられるKDDIの対応、そして安価なサービスで差別化をはかってきた楽天の対応に注目が集まる。

 総務省は「携帯電話ポータルサイト」(総務省)をオープンし、消費者に対して料金プランの見直しを呼び掛けている(ケータイWatch)。データ通信をあまり利用していないのに、契約時のままで経過している人は適切な料金プランに変更することを喚起する意図があるとみられる。また、「携帯ブランドのイメージ」という項目では、MNOブランドと、MVNOブランドについて図示されていて、業界動向に詳しくない人に対しても理解を広める意図も感じられる。

 さらに総務省はMNPガイドラインを改正し、消費者が携帯電話事業者を変更する際の「引き止め」と呼ばれる有利な条件の提示を禁止したり、手数料を無料化することを提示した(ケータイWatch)。これは今回発表されている安価な料金プランへの変更にも適用される。今後の論点はeSIMの導入などに移るとみられる(ITmedia)。

 多くの人にとって欠くことのできないインフラになったモバイル通信インフラの利用料金が安価になるということは歓迎すべきことだが、通信事業者や業界の国際的な競争力の維持についても今後の突っ込んだ議論が必要ではないだろうか。

ニュースソース

  • 「ahamo」、3月の開始時からMNP手続き不要に変更[ケータイWatch
  • ドコモ、21年4月1日にMNP手数料廃止へ[ケータイWatch
  • ドコモ、月額1650円で通話5分定額とデータ1GBの「はじめてスマホプラン」[ケータイWatch
  • ドコモから「5Gギガホ プレミア」と「ギガホ プレミア」、5G使い放題で6650円[ケータイWatch
  • 22日のソフトバンク新料金プラン発表まとめ[ケータイWatch
  • ソフトバンク、20GB/2980円の新料金プランを2021年3月提供[ケータイWatch
  • ソフトバンク、無制限の4G/5Gプラン「メリハリ無制限」を3月に提供、6580円[ケータイWatch
  • ソフトバンクとワイモバイルの切り替え、店舗での手数料も0円に[ケータイWatch
  • LINEモバイル、21年3月末で新規受付終了へ[ケータイWatch
  • ソフトバンクがLINEモバイルの完全子会社化と吸収合併を検討[ITmedia
  • 総務省が「携帯電話ポータルサイト」オープン、料金見直し呼びかけ[ケータイWatch
  • 総務省がMNPガイドライン改正、引き止め禁止や手数料の原則無料化[ケータイWatch
  • 総務省でeSIM導入に向けた4社ヒアリングを開催――楽天モバイル「すべての周波数に対応せよ」に違和感[ITmedia

4. 業務のデジタル化に対する格差――大企業と中小企業で顕著に

 人材シンクタンクのパーソル総合研究所がテレワークの実施状況についての調査結果を発表している(ITmedia)。それによれば、テレワーク実施率はこの11月に24.7%となった。緊急事態宣言直後からの複数回の調査結果と比較しても、微減かほぼ横ばいという結果である。しかし、従業員規模で見ると、従業員1万人以上の企業では45%となった一方、100人未満では13.1%となり、その差は約3.4倍にも及んでいるとされる。中小企業ではテレワークのためのインフラ整備、各規則整備などが追いつかず、なじむまでに時間がかかるということか。こうした格差は今後のコロナ終息に向けた取り組みにも影響があるとみられる。

 また、パーソルプロセス&テクノロジー(パーソルP&T)は「業務のデジタル化に関する意識・実態調査」を実施し、その結果を公表している(CNET Japan)。それによると、勤務先での業務のデジタル化状況としては「ウェブ会議の導入・整備」が最も高く、「テレワーク環境の整備」「業務データのクラウド化」「業務内容の電子化」などが続いているとしている。とりわけ、「ハンコの撤廃や電子契約ツールの導入」はコロナ後に大きく伸びている。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大は続いていることから、2021年以降も新しい働き方に関する取り組みは拡大をしていくとみられるが、大企業と中小企業との「デジタル格差」がクローズアップされつつある。

ニュースソース

  • 2万人調査、コロナ禍で拡大する「テレワーク格差」――継続希望者は増加するも……[ITmedia
  • ウェブ会議の導入は9割で、コロナ禍前の3割から大きく伸長--パーソルP&T調べ[CNET Japan

5. 2021年以降の注目ポイント――アップルカーのうわさ

 通信社ロイターが伝えたところによると、アップル社は自動車の開発を続けていて、2024年までには生産を開始するという(Reuters)。もちろん、うわさの域を出ない話ではあるが、現地のメディアはこれを取り上げている。

 各メディアの記事によれば、「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」は2019年ごろに関係者の大幅削減が行われ、事実上のプロジェクト中止とみられていたが、それが存続していただけではなく、「画期的バッテリー技術」と「自動運転技術」とを搭載した電気自動車であるというのだ。このプロジェクトを指揮しているのはダグ・フィールド氏で、彼はテスラ社でエンジニアリング担当上級副社長を務め、Model 3発売を支えた重要幹部の1人だったとされている。

 今後、どのような製品が発表されるのかは全く具体的には分からないが、こうしたうわさが出るということはこれから2021年以降、折に触れてメディアでその開発動向などが「うわさ」されることになるのではないか。

ニュースソース

  • 「アップルカー」の噂が再燃、2024年発売を示す新たな報道[TechCrunch日本版

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。