中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/12/24~2021/1/7]
1都3県に緊急事態宣言が再発出――リモートワークの問題点 ほか
2021年1月8日 12:45
1. 各専門メディアが取り上げた2021年の展望とは
年初にあたり、専門メディアはそれぞれの分野について2021年を展望している。ここではそのいくつかを紹介する。
ハードウェアやOSなどのプラットフォームについては、アップル、マイクロソフトについて、ともにプロセッサアーキテクチャの変更についての指摘が目立つ。すでにアップルはArmベースの独自プロセッサ搭載機を出荷し、その評価も高いが、マイクロソフトがどう出るかというところに注目が集まる(ITmedia、ITmedia)。もちろん、それに対抗するインテルの動きも注目のポイントとされる。
何よりもコロナ禍が収まらないなか、テレワークについても進化が見られそうだ。ビデオ会議、情報共有というだけでなく、仮想オフィスでの臨場感を生み出す取り組みも見られる(日経XTECH)。リモートワークによりチームの一体感が弱まることなどが指摘されるが、こうした演出によりそうした課題は解決されるだろうか。さらに、セキュリティに関しても昨年から引き続き、リモートワークに伴う脅威が継続するとみられる(ZDnet Japan)。とりわけ、社外からのアクセスが増加していることから、セキュリティを担保する体制の確立も急務となるだろう。さらに、ランサムウェアの悪質化、さらには5G、IoTなどの新興の技術を狙う脅威なども指摘されている。
また、GAFAの動向も大きな局面を迎えつつある。「反トラスト法(独占禁止法)に違反したとして米司法省や米連邦取引委員会から訴えられているグーグルとフェイスブックにとっては、2021年は試練の年になりそうだ。実際に会社が分割される可能性は低いにしても、独禁法関連の訴訟は会社にとって大きな負担になる。2000年代のマイクロソフトを思い起こしても、それは明白だからだ」という分析もある(日経XTECH)。
そして、5Gについてガートナージャパンの池田武史氏は「単品のテクノロジーの話ではなく、流行る・流行らないという切り口にすると、そこまで5Gはインパクトはありません。なぜかと言うと、5Gだけが脚光を浴びるのではなく、5GによりDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速していくという捉え方をすべきだから」と指摘している(マイナビニュース)。つまり、通信経路が「高速」「低遅延」「高密度」を実現したことで、それを使って何を変革するか、どのような新しい価値を提供するかということが主眼だということだろう。
このように各メディアが扱っている話題と分析を総合すると、コロナ禍という世界的な課題を抱えるなか、さまざまなトランスフォーメーションの胎動が始まっているということと、そこからプラットフォームも含めて、産業構造の大きな変化の可能性があるとまとめることができるのではないか。
ニュースソース
- 2021年のWindows 10を改めて見渡す[ITmedia]
- 2021年のパソコンはどう進化する? 注目はやはりApple、Intel、Microsoftのプラットフォーム変革[ITmedia]
- 2021年のリモートワークは次のステージに、「仮想オフィス」に毎日出勤へ[日経XTECH]
- ガートナー亦賀氏が語る2021年のクラウド予測 (1)[マイナビニュース]
- セキュリティベンダー各社が予想する2021年の脅威動向[ZDnet Japan]
- 2021年のエンタープライズIT業界を占う--海外発の予想を一気読み[ZDnet Japan]
- アップルは大吉でフェイスブックは凶か、GAFAの2021年を占う[日経XTECH]
- ガートナーが予測する、2021年の5G展望 - サービス本格化は2~3年後 (1)[マイナビニュース]
- クラウド、職場、セキュリティ--激動経て、2021年に注目したいテクノロジー動向[ZDnet Japan]
- デジタル主導によるCOVID-19からのビジネス回復--2021年のIT戦略[ZDnet Japan]
2. 注目すべき今後の市場規模推移
年末年始に各社が市場規模の推移を発表している。
矢野経済研究所はQRコード決済の市場について、サービス提供事業者の取扱高ベースで2019年度の1兆8369億円が2024年度には10兆290億円まで拡大するという予測を発表した(IT Leaders)。コロナ禍で貨幣に触れないという「新たな日常」はさらなる拡大をするということか。
LINEは2020年下期のインターネット利用環境についての調査結果を発表し、日常的なインターネット利用環境は「スマホのみ利用」が5割と最多となり、デバイス別でもスマホ利用者が増加傾向で全体の9割超にななったとしている。一方のPCは「PCのみ」と回答した人はわずか2%にとどまるとした(Media Innovation)。
マクロミルが発表した新成人の意識調査では「新成人のデジタル端末の所有率は、『ノートPC』(73.6%)が『iPhone』(66%)を抜き、3年ぶりの1位となったと発表している。同社では「コロナ禍で学生のオンライン授業が増加した影響」と分析しているようだ(ITmedia)。
国際的にも「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で、多くの人が仕事や学業をリモートワークやオンライン授業に切り替え」たことにより、「PCの需要が増加している」「2020年におけるノートPCやデスクトップPCの総販売台数は2008年に記録された3億台まで回復する」とロイター通信が報道している(Gigazine)。
コロナ禍は皮肉なことに、情報通信産業にとっては追い風となっているように見える。今後の課題はそのうえで、価値の創出が順調に行われていくかどうか、そして人々が広い意味で豊かになれるかどうかということか。
ニュースソース
- 2019年度のQRコード決済市場は1兆8369億円、2024年度に10兆円を超える─矢野経済研究所[IT Leaders]
- インターネット利用環境、スマホが9割、PCは横ばい…LINEの定点調査[Media Innovation]
- 新成人のデジタル端末、ノートPCがiPhoneを抜き1位に[ITmedia]
- PCの販売台数が2008年以来の水準まで回復、新型コロナウイルス感染症の影響で[Gigazine]
3. NTTグループの再編計画と今後の注目ポイント
2020年末、日本電信電話(持株会社)はNTTドコモの完全子会社化を完了したが、さらに2021年夏にはNTTコミュニケーションズをNTTドコモの子会社にし、NTTレゾナント、NTTコムウェアを含めた再編が行われるようだ。そして2022年には各社で重複する部門などの整理が進められるという。個人向けはNTTドコモが中心となる一方で、法人事業はNTTコミュニケーションズへ一元化するという計画があることが報じられている(ケータイWatch)。これは2020年12月末に開催された総務省の有識者会合で明らかになったことだ。
NTTグループとしては国際競争力の向上などを目的として掲げているが、国内の各社からは国内市場での強すぎる立ち位置を懸念する声も出ている。
今後、2年間での再編計画がどのように進展するかは今後の注目すべきポイントとして年初に挙げておくべきだろう。
ニュースソース
- 「NTT Comをドコモ子会社化」は2021年夏に、法人事業を一元化――NTTの方針明らかに[ケータイWatch]
4. 1都3県に緊急事態宣言が再発出――リモートワークの問題点
1月7日、1都3県に緊急事態宣言が再び発出された。今回はこれまでの知見の積み重ねから、ピンポイントでの対策を行うとし、飲食店の営業時間短縮とリモートワークの推進などが求められている。リモートワークについては、昨春から導入が進み、すでに慣れた人も増え、なかには地方への移住などをした人も話題になったりしている。一方、徐々にオフィスでこれまでどおりの勤務に戻りつつある人も増えている。その理由はさまざまだが、一つはチームのコミュニケーション不足が挙げられるようだ。
「月刊総務」で全国の総務担当者を対象に行った調査結果によると「リモートワークによる気軽なコミュニケーションの取りやすさに変化があるか尋ねたところ、『取りにくくなった』と回答した割合は72.3%だった。つまり、日常的なコミュニケーションが取りにくくなったことで、モチベーションへも影響を及ぼしている可能性がある」と指摘をしている。さらに、コミュニケーションが減ることは、企業への帰属意識の低下にもつながっているという指摘もしている(ITmedia)。
また、別の調査結果によると「出社時と比べて『会話』や『雑談』をする時間が減った」としている人が70.9%に達し、その結果、「ちょっとした不安」(39.7%)、「孤立感が増えた」(37.2%)、「寂しさが増えた」(25.6%)、「気分の落ち込み」(23.1%)などの影響が見られるとしている(ITmedia)。
通勤時間の減少という効率性や密を作らないという行動変容という観点ではリモートワークへの理解は進みつつあるとはいえ、メンタルへの影響などを軽減する工夫もあわせて工夫をする必要がありそうだ。
5. 2021年以降の「マイナンバーカード」のマイルストーン
国のデジタル化政策においてキーとなるのがマイナンバーカードだろう。健康保険証や運転免許証との一体化など、これまで散発的に発表されてきた一連の計画について、まとめた記事にも目を通しておくべきだろう(Impress Watch)。
これまではそれほどの利便性を感じていなかった人も、こうしたサービスが続々と提供されるとなるとマイナンバーカードを取得しておこうという人は今後も増えるとみられる。しかし、その事務処理を役所で行うには限度もあるということから、「政府がマイナンバーカードの普及促進に向け、携帯電話のショップでも申請手続きができるようにする方向で検討している」と報じられている(ITmedia)。さらに、マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載することを目指し、「令和4年度(2022年度)内のにAndroid端末への搭載を目指し、必要な制度整備のため、次期通常国会に公的個人認証法改正案を提出する。iPhoneについても早期実現を目指す」ということも報じられている(Impress Watch)。
一方で、マイナンバーカードに包含される「マイナンバー」と「公的個人認証サービス(JPKI)」についての認識を深める必要がありそうだ。例えば、2020年末に「政府が小中学生の学習履歴や成績をマイナンバーにひも付けてオンラインで管理する仕組みをつくる」と一部のメディアで報じられ、「学習履歴が生涯管理されるのか」という批判があったが、文科省は「利用を検討しているのはマイナンバー自体ではない。そもそも行政機関がマイナンバーを利用できる用途は法律で限定されている。マイナンバーカードの内蔵ICチップに搭載した公的個人認証サービス(JPKI)を使うものだ」と説明をしている(日経XTECH)。一般的には分かりにくいこうした制度や技術の背景について、今後も広く説明を続けていく必要があるだろう。
ニュースソース
- マイナンバーカード、2021年は健康保険証対応。'22年度末全国民普及へ[Impress Watch]
- マイナンバーカード、携帯ショップでも申請 政府検討 休日対応で普及促す[ITmedia]
- マイナンバーカード機能、2022年度Androidスマホ搭載へ。総務省[Impress Watch]
- デジタル庁設立でマイナンバーはどう変わる?政府の「抜本的改善」を読み解く[日経XTECH]