中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/9/16~9/23]
iOS 15に実装された「プライベートリレー」に注意 ほか
2021年9月24日 12:00
1. 出版業界でも進む「NFT」への取り組み
国際的にもNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)に対する関心が高い。そのようななか、日本の出版業界でもNFTを応用する積極的な試みが始まっている。
電子書籍取次大手の株式会社メディアドゥと出版取次大手の株式会社トーハンは「NFTデジタル特典付き出版物」を開発し、全国の書店を通じて販売をすると発表した(Media Innovation)。なお、メディアドゥとトーハンでは「購入した出版物などの特典として入手できるNFTを活用した資産的価値を持つデジタルコンテンツを総称して、『NFTデジタル特典』と呼んで」いて、現在、商標登録出願中としている。
まず、扶桑社・主婦の友社の3タイトルにNFTデジタル特典を採用する。扶桑社では「SPA!オフィジナルデジタルトレカ」を「週刊SPA!」創刊33周年企画の誌面に掲載される33人のグラビアアイドル大特集と連動して、33種類のデジタルトレーディングカードを作成する。これは、1冊購入するとランダムで5枚入手できるというもの(INTERNET Watch)。NFTデジタル特典の入手には、「出版物に添付されたカード上の16桁のギフトコードを自身のデバイスで読み込む」ことで、自身が保有していることが証明可能なデジタルコンテンツが取得できるという流れだ。
また、電子出版取次の株式会社モバイルブック・ジェーピーもNFT事業への参入を発表した(官報ブログ)。「出版社のコンテンツにNFTを付与し販売」「ユーザー同士がNFTをオークション形式で売買するサイト」「出版物にNFTを付与、発行する仕組みの提供」などを事業の骨子としている。
そして、LINEは「NFTマーケットβ」において、知的財産権を保有するクリエイターらが発行したNFTアイテムに対して「売買の度に手数料を受け取れる設定」が可能になったことを発表した(Impress Watch)。こちらも作品の二次的な流通市場に対して可能性を広げることが期待される。
ニュースソース
- メディアドゥとトーハン、世界初・NFTデジタル特典付き出版物の刊行へ・・・扶桑社・主婦の友社の3タイトルで販売[Media Innovation]
- 雑誌「SPA!」で世界初のNFTによる特典、袋とじでグラビアアイドル33人の「デジタルトレカ」を提供 10月12日発売号にて、創刊33周年企画と連動[INTERNET Watch]
- 電子出版取次事業の「モバイルブック・ジェーピー」がブロックチェーン技術を活用したNFT事業への参入を発表 2021年秋[官報ブログ]
- LINEのNFTマーケット、売買の度にクリエイターが収益受取可能に[Impress Watch]
2. アップルが大学や製薬会社とメンタルヘルス分野への応用を研究
アップル社がカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)や製薬会社Biogen社とともに「うつ病や認知機能低下の診断を支援するiPhone機能を開発している」と報じられている(CNET Japan)。
これまでもスマートデバイスにはさまざまなセンサーが搭載され、バイタルの変化、睡眠の質、運動量などを計測したりできるようになっていることから、それらのデータを分析して、生活習慣や健康管理に役立てようというアプリケーションは開発されてきた。それがメンタルヘルスの分野まで支援をすることができるということは興味深い研究といえよう。
記事によれば、「睡眠パターン、移動、文字入力の仕方などを含む、iPhoneユーザーの生体データに見られる信号を特定することにより、信頼性の高い検出アルゴリズムを開発したい」としている。事前に予兆をつかむことで、悪化する前に改善を促すことができるようになるなら、助かると感じる人も多いかもしれない。
ニュースソース
- アップル、うつ病診断に役立つ「iPhone」機能を米大学などと共同開発か[CNET Japan]
3. アマゾンが新製品を発表か
アマゾンが米国時間9月28日にオンラインイベントを開催する。現地メディアでは「Ring」「Fire TV」「Echo」シリーズの最新製品やサービスを発表するのではないかと伝えている(CNET Japan)。
実際に発表されるかどうかは分からないが、これまでの経緯からすると「Ring Always Home Cam」の発売が期待される。これは昨年、屋内ドローンとして発表したが、発売日は明らかにしていない。屋内ドローンは自宅のセキュリティ監視用に利用でき、通常はドックに格納されているというものだ。ひょっとしたらペットカメラにもなるかも。もし、これが発売されれば、これまでになかったジャンルの商品として人気が出そう。
ニュースソース
- アマゾン、9月28日に発表イベント開催--「Echo」「Ring」の新製品登場か[CNET Japan]
4.「ワクチン接種証明書」の実現に向けた動き――アップルではApple Walletでの保存も可能に
デジタル庁が新型コロナワクチンの接種証明書の電子交付に関する仕様案を公開した(Impress Watch)。また、それに対する意見の募集の開始した(9月30日まで)。スマートフォンを使って確認できる接種証明書の年内提供開始を目指している。デジタル庁が示した仕様案では、これから提供される「接種証明書アプリ」をダウンロードして、「マイナンバーカード+4桁の暗証番号で申請」「接種情報を二次元コード(QRコード)付き証明書の形で交付」となっている。
また、アップル社ではiOS 15の「ヘルスケア」アプリで、「新型コロナウイルスのワクチン接種や検査結果の証明書などの『証明可能なヘルスケアレコード』をダウンロードし、保存することができる」としている(CNET Japan)。この機能と日本で検討されている「接種証明書アプリ」との関係は不明だが、いずれにしても、こうしたデジタル証明書を持ち歩き、提示が必要になるのが「新しい日常」ということになるのか。
ニュースソース
- デジタル版「ワクチン接種証明書」はマイナンバーカードで申請。仕様案公開[Impress Watch]
- 「Apple Wallet」にワクチン接種証明を保存可能に--「iOS 15」今後のアップデートで[CNET Japan]
5. iOS 15に実装された「プライベートリレー」に注意
ソフトバンクとNTTドコモがiOS 15とiPadOS 15以降で追加される「iCloud+」のプライバシー保護機能「プライベートリレー」をONにした場合の挙動について注意喚起をしている(ケータイWatch)。ソフトバンクでは動画SNS放題が対象外になる可能性があること、NTTドコモではパスワードの確認や2段階認証の設定、dアカウント利用履歴などのメニューが利用できない可能性があることなどを挙げている。
アップル社のサポートページによれば、プライベートリレーは「iPhoneから送出されるトラフィックが暗号化され、2つの異なるインターネットリレー経由で送信されます。これにより、Webサイト側からあなたのIPアドレスと位置情報が見えなくなり、ネットワークプロバイダもあなたのブラウズアクティビティを収集できなくなります。Webサイトまたはネットワークプロバイダが、ユーザの身元と閲覧しているWebサイトの両方を同時に把握することはありません」と説明している。
プライベートリレーは匿名性を高めることでプライバシーを守る機能としてはかなり攻めた機能として興味深いのだが、クライアント側のIPアドレスを利用しているような他のサービスなどでの影響はまだ分からないので、今後の情報には留意が必要そうだ。また、不具合と感じた場合はこの機能をOFFにするというトラブルシューティング方法も念頭におくべきか。
ニュースソース
- ドコモとソフトバンク、iOS 15の「プライベートリレー」で注意呼びかけ[ケータイWatch]